マリス・フライングバットレス   作:エターナルドーパント

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何処かから来たカレ等

「恐れ慄け。赦しを請え。私の強さは─────

 

─────桁外れだ」

 

地獄の底から響くような声に、全員がサウザーの方を向く。しかしサウザーの眼にまず映ったのは、真っ黒な肌で脳味噌剥き出しの大男、改人脳無に、腕をへし折られる相澤だった。

「来やがったか金ピカ野郎」

「処理する!」

【THOUSAND JACKER!】【JACKRIZE!】

ジャッカーを構え、素早くジャックライズ。アビリティを選択し、目標を睨む。

「まずは、離れろッ!ロケットォ!パァンチッ!」

【JACKING BREAK!】

ジャッカーから太いガントレットのような構造のエネルギー弾を生成し、脳無に撃ち込んだ。

 

───JACKING BREAK───

©ZAIAエンタープライズ

 

相澤を離してガードした腕をブヨンと波打たせ、衝撃を吸収する脳無。しかしこのロケットパンチは只の衝撃では無く、当たっても尚推進し続けている。故に、馬乗りになっている脳無を辛うじて押し飛ばす事に成功した。

「へぇ、結構やるじゃん金ピカ野郎」

「品の無い渾名で呼ぶのは辞めなさい。私は仮面ライダーサウザーだ」

相澤を庇うように前に立ち、ジャッカーを構えるサウザー。それに対して、黒ずくめの2人が歩み出た。

「仮面ライダーを確認」「抹殺対象・・・」

2人は、自分を覆っていたマントをバサリと取り去る。

1人は、動きやすそうな黒服を着た青年。もう1人は、上裸に短パンにサスペンダーと言うとち狂った服装の筋肉質な男だ。

「どうも~!腹筋崩壊太郎ですっ!」

「は?・・・ッ!」

気の抜ける自己紹介に一瞬唖然とする出久だったが、直後に2人のとある部分を見て、マスクの下で眼を見開く。

それは、耳を覆うヘッドセットのような赤く光るユニット。アークから見せられた資料でのみ知っている、本来ある筈の無いもの。

「ヒューマギア、だと!?」

頭をハンマーで殴られたような衝撃が、サウザーを襲った。これを建造出来る技術力は、今のこの世界にはある筈が無いのだ。

(アーク!漏洩の可能性は!?)

『限り無く0に近い。アレのデータは一切のハードウェアに移さず、お前の精神世界で見せたモノだけの筈だ』

「では、仕事を始めましょう」

そう呟いて、2人・・・腹筋崩壊太郎と暗殺ヒューマギアは、ドライバーのようなバックルを取り出した。それは何処かレイドライザーによく似た、シンプルなバックル。

その名も、ゼツメライザー

それを2人が腹部に押し当てると、バックル両サイドから夥しい数の棘のような接続プラグを備えたベルト帯が展開。それを突き立てるように、腰回りに装着される。

 

BEROTHA(ベローサ)!】【DODO(ドードー)!】

 

そして、ポケットから取り出されたプログライズキー・・・否、絶滅種のデータ(ロストモデル)を封入した異端のキー、ゼツメライズキーを起動。ゼツメライザーに装填した。

フォースライザーやレイドライザーとまた違う、変調と複雑な合音によって恐怖を煽る待機音が鳴り響く。

「私の仕事は・・・雄英、壊滅」「暗・・・殺」

 

【【ZETSUMERIZE(ゼツメライズ)!】】

「パワァァァァァァアッ!!」「ハァァァァアッ!!」

 

絶叫と共に、双方の表皮が焼き尽くされた。その下から現れたのは、人間を模した金属骨格。しかし、間も無く口からは大量のコードが飛び出し、顎から上、人の顔に似せたカバーパーツがパージ。骸骨のような基礎骨格が剥き出しになり、その上から天狗巣状の繭のようにコードが絡み付く。

そしてその繭が弾け飛んだ時、2つの異形が姿を現した。

「ベローサマギアに・・・ドードーマギア・・・」

その異形(マギア)もまた、サウザーの脳内にデータがある。

人間社会に奉仕する事を使命としたロボット(ヒューマギア)を、無理矢理に兵器転用したものだ。

「へ、変身した!?」

「拙いですね」

『早急に始末しろ、出久。マギアの装甲は、並大抵では貫けない』

「分かってる」

混乱を一時振り払い、敵の排除を念頭に置き直すサウザー。背後には、黒霧が飛ばし損なったのであろう芦戸に麗日、瀬呂、砂藤、障子がいる。教師としてもヒーローとしても、生徒と敵の間で狼狽えるなどは言語道断である。

「来い。我がザイアエンタープライズ社の誇りに掛けて、貴様等を始末・・・もとい、叩き潰す!」

「おい、コイツ大企業の社長らしいぜ!」「良いモン持ってそうだよなぁ!」「恵まれた大企業様には、俺らの気持ちなんざ理解出来ねぇだろうなァ!」

サウザーの宣言に、弾かれたように群がる敵衆。半円状に獲物を囲み、息を合わせて襲い掛かる。

「甘い」【HARD!】

【Progrisekey confirmed. Ready to break.】

【THOUSAND RIZE!】【THOUSAND BREAK!】

「ハァァアッ!!」

サウザーはジャッカーにインベイディングホースシュークラブを装填し、サウザンドブレイクを発動。カブトガニ型のシールドを5枚召喚し、自分を中心に回転させた。

 

神盾嵐旋突(イージス・ハリケーン)!」

 

───THOUSAND BREAK───

©ZAIAエンタープライズ

 

「ぐおっ!?」「グハッ!?」「うがっ!?」「おがっ!?「ぐへっ!?」

シールドは襲い来る敵を容易く跳ね飛ばし、悶絶する程の激痛を与える。

『シャラァッ!!』『ルゥアッ!!』

しかし、叩き飛ばされた敵を隠れ蓑に近付いたマギア達が、至近距離からそれぞれの獲物を振り翳した。

「ッ!」

左にドードー、右にベローサ。アークと接続した頭脳を高速回転させ、最適解を予測する。

「ハッ!」

振り上げられた翼状の剣(ヴァルクサーベル)が振り下ろされるより速く、ドードーの懐に飛び込むサウザー。そしてギロチン気取りの剣を持つ右手首を取り、更に体軸を捻りながら脇下に右肩を差し込む。

そのままドードーの右腕を両手でホールドし、重心を一気に前に落とした。

合戦柔術・一本背負い。

『ゴアッ!?』『グゲッ!?』

ベローサの緑に輝く大鎌(トガマーダー)はサウザーの角先を掠め、代わりにドードーの背中を強かに叩き切る。更にライダーのパワーアシスト込みで投げ飛ばされたドードーがベローサに激突し、地面に叩き落とされた。

「私の技術はホンモノだ。貴様等のような即席(インスタント)とは違う」

『出久、決めろ。何もさせるな』

「言われずとも」

脳内で急かすアークに答え、ドライバーのキーを叩く。

 

【THOUSAND!DESTRUCTION!】

「ウルァッ!!」

 

─バゴンッ!─

 

エネルギーを充填したフルパワーで、サウザーは思い切り地面を踏み付ける。その衝撃で浮き上がったドードーの身体を、直上に高く蹴り上げた。

「もう1発!」

 

【THOUSAND!DESTRUCTION!】

「ハァァァァッ!!」

 

其処に再びキーを叩き、エネルギーを再充填。重力に引き戻され自由落下を始めたドードー目掛け、石畳を砕く程の力で跳躍し、渾身のライダーキックを叩き込んだ。

 

───THOUSAND DESTRUCTION───

©ZAIAエンタープライズ

 

必殺級の蹴りに貫かれ、ドードーは爆散。その爆炎すら振り切って、サウザーは空中で体勢を立て直す。

そして更に、其処から直下。未だ体勢を立て直せず藻掻くベローサに向けて、重力を味方に付けた両脚の狙いを定めた。

「ラァストォォォォォッ!!」

そのストンプキックはベローサの胴体を容易く踏み潰し、此方も花火へと変える。

 

───THOUSAND DESTRUCTION───

©ZAIAエンタープライズ

 

「し、死んだ!?」「社長!何してんの!?」

「落ち着きなさい!これは人では無く、ロボットです!精巧に作られていますがね・・・!」

敵を殺害したと勘違いする生徒を一喝し、パニックを抑えるサウザー。マギアの厄介さの一端は、正にこのような側面である。

「オイオイ、呆気ねぇな・・・アレで良いのか?ホントに」

「倒される事は織り込み済みです」

「そうかよ・・・脳無、あれ拾って来い」

「ッ!」

 

─ガゴンッ─

 

一瞬早く差し込んで盾にしたジャッカーごと、サウザーは叩き飛ばされた。原因は、一瞬で其処まで移動した脳無である。

「ゴハァッ!?」

気が付けば、サウザーは空中をすっ飛んでいた。ジャッカーを地面に突き立てて無理矢理ブレーキを掛けながら、痺れる腕に舌打ちする。

(オールマイトに殴られた時も此処までダメージは通らなかった!それに加え、装甲構造もあれから更新していると言うのに・・・)

『流石に拙いぞ。替わるか?』

「まだまだッ!」

【JACKING BREAK!】

ダイナマイティングライオンのアビリティをジャックライズし、後方に向けて爆風を放つ事で強引に爆裂発進。ゼツメライズキーを回収して死柄木に投げ渡した脳無に対し、フライングボレーを叩き込んだ。

しかし、トン単位のキックをモロに受けて尚、脳無は平然としている。

「くっ」【JACKRIZE!】

「ベローシングストライザー!」

【JACKING BREAK!】

ベローサのアビリティを選択し、緑の刃を複数飛ばして脳無に嗾けた。

それらは脳無を切り裂きはしたものの、傷は3つ数える間も無く修復される。

「衝撃耐性に再生能力(リジェネレーション)か、面倒な」

「ああそうさ!その脳無は対オールマイト用に作った最強のサンドバッグ人間!素のパワーがオールマイト並みで、超再生にショック吸収持ち!打撃は通用しねぇのさ!

ソイツを殺したきゃ、肉をゆぅっくり抉り取るとかが有効だねぇ!それが出来ればの話だけどさぁ!!」

上機嫌に解説する死柄木。サウザーの脳内には既にアークから譲渡されたスペックデータがあるのだが、死柄木の解説のお陰で対抗策をすぐに出しても不自然では無くなった。サウザーからすれば好都合である。

「成る程・・・ならば、お誂え向きが1つある。掛かって来なさい、木偶人形」

「その態度も何時まで保つかなァ!殺れ!脳無!」

死柄木の命令で、その凶悪な左拳を振り上げる脳無。しかし、それは逆に好都合。姿勢を下げて前にステップし、拳をジャッカーで滑らせ受け流して懐に飛び込んだ。其処からジャッカーの刀身を、擦れ違いざまに脇腹に叩き込む。

「更にッ!」

【JACKRIZE!JACKING BREAK!】

「ジャッカー!チェインサクリファイス!」

選択されたアビリティは、バイティングシャーク。

ジャッカーの周囲に、金と紫が交互に連なるチェーンソーのようなエネルギーが発生。鏃のような刃は淵では無く面を並べ、シャベルが土を掘るように脳無の肉体を削り取る。

ブチブチと血と肉片をまき散らして、凶暴な牙の無限軌道は脳無の脇腹を肋骨ごと、半ばまで抉り取った。

 

───JACKING BREAK───

©ZAIAエンタープライズ

 

横一文字に振り抜いた姿勢から血払いをし、サウザーが振り返る。

「は・・・?は、ハハハ!見ろよ!あの野郎、マジで殺す気しかねェ技使いやがったぞ!大企業の社長様ともなれば、敵1人殺しちまっても世間は許してくれるってか!?」

そんなスプラッタな有様を見て、死柄木は狂ったように笑った。

「何を言っているか分かりませんね。貴方自身、先程言ったでは無いですか。これは改人、則ち兵器。私は兵器を攻撃しただけです。何の落ち度もありはしない」

「ハッ、そんな詭弁を認めてくれねぇのが、お前らが必死こいて護ってる()()()だろうがよ!まぁそんな攻撃も無駄だけどな!脳無!」

社会の理不尽さを叫びながら、脳無に命令を飛ばす死柄木。それに応え脳無は立ち上がりサウザーに向き直るが、その姿勢は酷く右側に傾いていた。

その原因は、一目瞭然。ジャッカーの一薙ぎに抉られた左脇腹が、未だに治っていないのである。

「おやおや・・・ご自慢の玩具が壊れかけですね。少々、荒っぽく遊び過ぎたようだ」

「ど、どういう事だ黒霧!?何で脳無の傷が治らない!?」

「分かりません。恐らく相手の能力でしょうが・・・イレイザーヘッドの個性でも無いようです」

主犯格2人が混乱しているが、脳無の再生が鈍い理由は単純明快。チェーンソーとして振るわれたサメの牙が折れて、傷口に刺さり残っているのだ。それが原因で再生が滞っており、中々修復出来ないでいる。

尤も、この副次作用はサウザーとしても想定外、嬉しい誤算というモノなのだが、敢えて口にはしない。

「社長~!!」

「被身子さん!戻りましたか!」

そんなサウザーに、上空から迅が声を掛ける。その隙を突いて、黒霧が動いた。

「この2人を下ろしたら、すぐに助太刀します!」

「分かりました!早く2人を─────」

 

─バゴギャッ─

 

「ごェ!?」

突如として、脳無の肉体が急再生。右の裏拳を振り抜き、サウザーを殴り飛ばす。

植えられた木々を薙ぎ倒して、サウザーの姿は彼方に消えた。

「しゃ、社長ッ!?」

「チッ、黒霧、勝手に使ったのか」

「えぇ。使わねばならぬ局面と判断しました」

黒霧のした事。それは、脳無の背後にゲートを開き、とある薬液を注入する事だった。

その薬液は個性因子の作用を増強し、脳無の再生能力を本来のスペック以上に引き出したのだ。

「ひ、ヒィィィィ!!?」

「お、落ち着いて峰田ちゃん!」

今までそれなりに強者として振る舞ってきた出久(サウザー)が容易く殴り飛ばされ、元々肝の小さい峰田はパニックを起こす。それを収めようとする蛙水だったが、その実峰田と同程度には動揺していた。真横で感情が噴出した峰田がいたからこそ、比較的冷静になれただけなのだ。

「くっ・・・大丈夫です!社長は生きてます!さっさと向こうに逃げて下さい!」

【JUMP!】【FORCE RIZE!】

【ライジングホッパー!】【BREAK!DOWN!】

脳無のスピードに迅では相性が悪いと判断し、即座に001へと再変身。迅の装甲はリストレントケーブルから解放する事でパージし、脳無にぶつけて隙を潰す。

「トガー!そいつ打撃が効かないから気を付けてー!」

「ありがとうございます三奈ちゃん!」

振り抜かれた拳を容易く躱し、001はマスクの中で口に含んでいた生分解性プラスチックの血液錠剤を噛み潰す。ベースは勿論出久の血液であり、アークの性質をコピー。手からモデリングビームを照射し、アイテムをプリントアウトする。

ATTACHE(アタッシュ) CALIBUE(カリバー)!】

それは、一見すると分厚いアタッシュケース。しかし001が側面のボタンを押すと、其処を起点に蝶番として展開。鋭利な剣へと変形する。

(社長ならきっと、アークさんがどうにかしてくれる筈!だったら私に出来る事は・・・時間稼ぎ!)

「来なさい(ヴィラン)!私が相手です!」

アタッシュカリバーを逆手に構え、001は吠え叫んだ。

 


 

『キャロりん、状況分かる?』

マルチプルパルス放射によるエネルギー枯渇から復帰したハングドマンは、先行した迅を追い掛け広場に向かっていた。

『未だ不明です。ですが先程、サウザンドライバーに搭載されたフュージョンリアクターの起動波形をキャッチしました。社長が戦闘を開始していると言う事は、ほぼ確実かと』

『あ、そうなんだ。こりゃ負けてられないねェ・・・って、アラ?』

パンダレイダーの動体センサーが、けたたましく鳴り始める。見上げると、空から何かが降って来ていた。

 

─ドゴゥッ─

 

『どわっ!?何なに、何が来た!?』

『主任!社長です!社長が降って来ました!』

『何そのパワーワード・・・』

「う・・・ぐぁっ・・・」

『ってマジなんだ!?ちょ、社長!?ダイジョブかい!?』

キャロルとのお巫山戯も、土埃が収まり聞こえて来た呻き声に直ぐさま引っ込む。

地面が小さく陥没し、其処に横たわる出久。右上腕部はヘシ曲がっており、一目で骨折していると分かる。

『これ以上は無理だな。代われ』

「あぁ・・・ごめん、アーク・・・」

『気にするな。私はお前の唯一無二の相棒で・・・()()だからな』

「ん・・・後は、お願い・・・」

『あぁ・・・任せろ」

出久の左眼が真っ赤に光り、髪に白黒のメッシュが入った。

「ぐっ・・・あぁ、洒落にならんな」

『あらアークさん、お久し振りかな?』

「外に出るのは、そうでも無い・・・痛覚カット、と・・・出久が、ネクタイを結べないからな。偶に出て来る」

『あ、そうなんだ』

『意外な弱点ですね』

そんな取り留めの無い話をしながら、アークは左手の指先を液体金属で覆い、先端を針のように尖らせた。

それを右腕に突き刺し、体組織を補修する急造ナノマシンを注入する。

『エンポリオ~!治癒ホルモン!』

『ぱっと見やってる事は似てますが違うと思いますよ主任』

「急造品の補修用ナノマシンだ。損傷した骨、筋肉、神経、血管を応急的に再結合させた。痛みは私が脊髄でカットしてある。5日もすれば完全に細胞と置き換わるだろう」

拳を握ったり腕を振って状態を確認し、肉体の修繕が完了した事を認識するアーク。細かい神経を無理矢理接合しているので痛覚信号自体は大の大人が泣き叫ぶレベルのそれが流れているが、脳に届く前にカットしているので問題にはならない。

『はぁ~、便利だねぇ?』

「まぁな。よし、結着完了。此処からは私が出撃しよう」

【アークドライバー!】

『あ、ちょっと待って』

「ん、どうした主任」

『どうせならさ、()から行かない?』

「何だって?」

訳の分からないハングドマンからの提案に、本気で困惑するアーク。原点のそれと違い、このアークは人間なのだ。困惑もするだろう。

『いやサ、向こうにもしアークさんのリアクター起動波形をキャッチ出来るヤツがいたらヤバいんじゃ無い?だったら俺が上空にぶん投げて、空中で変身した方が正体バレのリスクが少ないかなーって訳よ』

「ふむ、成る程。一理あるな・・・で、本音は?」

『こっちの方が良いじゃん!絶対面白いよ!』

そんなこったろうと思った(その結論は予測済みだ)

『ギャハハハハハ!』

半ば呆れつつ、楽しそうに笑うハングドマンにコメカミを押さえるアーク。この主任、中々のツワモノである。

「しかし、有用性があるのも確か。頼むとしよう」

『ハイハ~イ!じゃ、いっちょ行きますか!』

肩のウェポンハンガーにアークを乗せ、ハングドマンは全身各所のスラスターを点火。重量と慣性を振り切り、自分ごとアークを打ち上げる。

「アリバイ工作、頼んだぞ」

『お任せあれィ!じゃあ、頑張ってねェ!』

それなりの高度に達し、ハングドマンは更に上に向けてアークを投げ飛ばした。

アークは空中で上手く姿勢を整え、ドライバーのアークローダーを押し込み呟く。

「変身」

 

【ARK RIZE!】

 

そしてこの世界に於いて、初めて破滅の使者が日の光を浴びた。

 


 

「ハァッ、ハァッ・・・クッ!」

 

─ジャグッ─

 

肩で息をしながら、アタッシュカリバーで脳無の拳を受け流す001。しかし幾ら思考を加速出来ると言えど、所詮は人間。異常な密度の攻撃を最低限のダメージで捌こうとも、体力は削られ、息も絶え絶えだ。

「クッ・・・ハァッ!!」

 

【ライジング!ディストピア

 

膝を突いたままでレバーを操作し、必殺技を発動。赤黒い粒子を血のように噴き出しながら、ライジングディストピアで超加速する。そして擦れ違い様に何度もアタッシュカリバー斬り付け、脳無を相手にダウンを取った。

「こんのっ・・・しぶと、過ぎですよ!」

しかし、その傷も立ち所に修復される。先程の増強薬の効果で、再生能力が大幅に強化されているのだ。同時に打たれ強さも向上しており、今では斬撃ですら相当に力を込めないと深くは斬り込めない。それが余計に001の体力を削っているのが現状だ。

(流石に・・・ヤバい、です・・・社長・・・助け、て・・・)

 

【ARK RIZE!】

 

そんな祈りに答えるように、上空から禍々しいオーラと絹を裂くような悲鳴、悪意に塗れた嘲笑が降り注ぐ。

「こ、これって・・・!」

「な、何だよォ!?また新しい敵かよ!?」

その正体をよく知る渡我(001)は、仮面に隠れた顔が希望を、そうでない者達は絶望を湛える。

そして空を見上げれば、其処には黒い太陽があった。

「ま、まさか新手の敵!?」

「クソッ!流石に今はヤベェって!」

知ると知らぬが雲泥の差。まさにそんな状態である。問題は、泥に対して雲が少な過ぎる事だが。

《良くやった、001》

(アークさん!)

《今から軽く蹴るフリをする。オーバーに吹き飛んで、変身を解除しておけ。此処は受け持つ》

(分かりました!)

脳のチップを介して、テレパシーの如く会話するアークと001。そんな中、悪意の繭は徐々に地上へと舞い降りる。そして地面に触れた瞬間、暗い繭は弾け、滅亡の悪魔が姿を晒した。

 

【ALL ZERO!】

 

赤や銀の配線やパイプが貫いたような漆黒のボディからは、赤黒い陽炎のような悪意のオーラ(スパイトネガ)が立ち上っている。

『・・・』

ユラリと幽鬼の如き挙動で振り向くアークゼロ。それに対し、動ける全員がビクリと身を震わす。

『・・・』

「がっ!?」

最初の緩慢な動きから一転、残像をも振り切る程の加速で001に詰め寄り、その腹を蹴り抜いた。

尤も、実際は当たる前にクーロンバリアの斥力反発で全面にショックを分散しつつノックバックだけに集中した蹴りであり、それに合わせて001が後ろに飛んだ事で大袈裟に見えただけである。しかし、それを知る術を持たない生徒達は大きく狼狽えた。

「そ、そんな・・・」「クラス屈指の実力者の、被身子ちゃんが・・・」「あ・・・あがっ・・・」「峰田ちゃん!」

そのショッキングな絵面によって、クラスメイトに根付いた絶望は加速度的に膨れ上がる。峰田に至っては、失禁しながら卒倒してしまう始末だ。

【MALICE LEARNING ABILITY】

そんな絶望を吸い上げて、アークゼロはスペックを底上げする。

「黒霧、あんな奴いたか?」

「いえ、あんな特徴的な姿であれば忘れるとは思えませんが・・・」

首謀者級2人の困惑を余所に、脳無にズンズンと近付くアークゼロ。そして次の瞬間。

 

─ボヂュッ─

 

脳無の胸に、穴が開いた。

『ふむ。こんなものか』

「は?」

アークゼロは何時の間にか拳を突き出した状態になっており、殴ったのだろうと遅れて認識する死柄木。

()()()()()()()()()()()()()()を、()()()()()()()()()()()()()

そのようにしか見えなかった。

実際は拳を当てる瞬間に腕の装甲を液状化させ、杭のように鋭く変形させて突き抜いただけなのだが・・・認識出来なければ理解も出来ない。

冷静に見れば、衝撃で貫いたならこんなに綺麗な穴にはならない。と、そう言う事にも気付けないのである。

「クソッ!クソクソクソッ!!そんな訳あるか!あって堪るかッ!!脳無!そいつを殺せッ!!」

口頭命令を受けて、脳無は拳を振りかぶる。対して、アークゼロは一切動こうとしない。そのまま、一気に凶悪な威力を込められた拳が振り下ろされた。

 

─ゴスッ─

 

『成る程、強いな。()()()()()()

だが、それは志半ばで止められる。アークゼロが、その腕を容易く掴み止めたのだ。脳無は振り払おうとジタバタ暴れるが、逆に腕を握り潰されてしまう。

『貴様等如き、私にとってはどうでも良い。目的は別にある』

手から溢れ出す、ドス黒く粘着質なスパイトネガ。それを脳無の腕に纏わせ、ベキベキと加圧しへし折って行く。

もはや肩口まで悪意の泥に侵蝕された脳無は、悪足掻きとばかりに蹴りを繰り出した。それすらも、クーロンバリアにより痛くも痒くもない様子である。

『結論は、出た』

 

─ドゴウッ!─

 

左手を軽く握ると、悪意のエネルギー集中するアークゼロ。そしてそれを、ボディアッパーで脳無の腹に叩き込んだ。

その瞬間、溜め込んだエネルギーが間欠泉のように噴出し、脳無を上空へと打ち上げる。

『この一撃で、脳無は滅亡(ほろび)る』

 

【ALL!EXTINCTION!】

 

再びアークローダーを叩き、ジワジワと浮上するアークゼロ。そして右脚に血よりも赤黒く禍々しいオーラを集約し、落ちて来た脳無にオーバーヘッドキックを叩き込んだ。

 

──ALL!EXTINCTION!──

 

「いけない!死柄木弔!」

蹴り込んだ方向には、死柄木と黒霧。黒霧が咄嗟に死柄木と共に脱出しようとゲートを開くが、ギリギリの所で間に合わず、飛んで来た脳無の巨体が死柄木の腕を襲った。

 

─ベキョッ─

 

「ウガァァァァ!?クソッ!痛ぇ!!このクソ真っ黒野郎!いつかテメェだけは、粉々にしてやるからなァ!!」

へし折られた左腕を庇い、ゲートに消える黒霧。惜しくも、首謀者級2人には逃げられてしまった。

『・・・さて、少し遊んでみるか』

「死ねクソ敵ッ!!」

『その結論は、予測済みだ』

死角から突如飛び込んで来た爆豪。しかしアークゼロは然したる驚きも無く、突き出された掌を指先で弾いた。

 

─KABOM!!─

 

「おがっ!?」

「おりゃァ!!」

 

─ガキンッ!─

 

暴発させられた爆豪の爆煙に紛れて、切島が全体重を乗せた右ストレートを打ち込む。しかし、アークゼロはこれをクーロンバリアすら張らず、只の腹部装甲で完全にガードして見せた。

「堅、重っ!?」

『貴様等に用は無い』

「うがぁ!?」「ぐっ!」

特攻野郎2人組は共に頭を引っ掴まれ、容易く投げ飛ばされた。

其処に今度は、地を這う氷が襲来。アークゼロの身体を、脚から凍結させる。

『ほう・・・』

「動かねぇ方が良いぞ。身体が割れちまう」

白い息を吐き出して、広場に戻って来た轟が警告した。しかしアークゼロはと言えば、余裕綽々の何処吹く風だ。

『1つ訂正しよう。割れるのは私では無く・・・』

 

─バキバキバキッ─

 

『貴様の氷だ』

「なっ!?」

肩から下を覆う氷塊を、容易く砕き歩き出すアークゼロ。更にスーツ内の液体金属を激しく振動させ、発熱する事で細かくこびり付いた氷片を解凍し手で払った。

『随分と生温いな。此処までで消耗したか?ふむ、()()()()()()()()()()()とやらも、大した事は無いな』

「あ゛!?」

 

─ガキャンッ!!─

 

その一言に轟がキレた。

先程とは比べ物にならないサイズの大氷山を一瞬で作り上げ、アークゼロを閉じ込める。

『無駄だ』

しかし、それすらも衝撃波で砕かれ、ノータイムで突破されてしまった。

『ふむ。先程はセーブしていただけか。だとしても、冷却では私を倒す事は出来ない。我が儘を言っている場合では無いのではないか?エンデヴァーの最高傑作』

「黙れッ!テメェが何であのクソ親父の事を其処まで知ってるかはどうでも良い!二度とアイツの事を口に出すなッ!!」

普段物静かな轟がこうまで激昂する事に、クラスメイト達は並々ならぬ何かがあるのだと薄らと感じた。

「俺はアイツを認めねぇ!左を使わないままヒーローになって、アイツを完全に否定する!だから左は、死んでも使わ────」

『死んだぞ』

「がっ!?」

冷静さを完全に失った轟の頭を、一瞬で距離を詰めたアークゼロがアイアンクローで掴み上げる。

()()()()使()()()()()()から、10回は死んだ。その回数は現在進行形で更新中だぞ。何と無様な事か』

轟を散々に煽りつつ、こっそりとその個性データをジャックライズするアークゼロ。それを気取らせないように、態と精神を逆撫でる言葉を選んで冷静さを削ぐ。

恐怖憤怒憎悪絶望殺意・・・雑念が多過ぎる。

そもそも父を否定するならば、何故ヒーローにならないと言う選択肢を外した?お前の父を最も合理的に否定する手段は、ヒーローにならない事だ。既に自己矛盾を起こしている事にも気が付かないとはな。

そんな非効率的な事はする癖をして、家族間での交流は致命的に無いと見える。見事な家族不孝者だな?貴様の父親と何が違うやら。そのご自慢の冷却能力で頭を冷やしたらどうだ?どうせ其方しか使う気は無いのならば、有効活用すべきだろう』

「ア゛ァァァァッ!!黙れェッッ!!」

冷静さを完全に失った轟は、頭を掴まれたままジタバタと暴れる。自棄クソな蹴りはバリアで阻まれ、氷結は発熱で伝播を止められ、もはや何もさせて貰えない。

『期待外れだな。他にめぼしいモノも無────』

 

─ドガァンッ!─

 

アークゼロが肩を落とした直後、USJのドアが叩き飛ばされる。グルリと其方を見遣れば、立ち上る土煙を割って現れるナンバーワンヒーロー、オールマイトの姿があった。

「もう、大丈夫・・・

 

私が、来たッ!」

 

羅刹の如き形相でアークゼロを睨むオールマイト。対して、当の本人はケロリとしている。

「轟少年を放して貰おうか、敵ッ!」

『ほう、珍しく遅い到着だな。朝食でも食い忘れたか?まぁ、目標は達成した。コイツにもう用は無い』

軽くジョークを交えつつ、轟を放すアークゼロ。其処に、オールマイトの音速の拳が迫る。

 

─ズガォッ!─

 

空気を破裂させる程の鉄拳はしかし、クーロンバリアを打ち付ける事でアークゼロを2歩後退させるだけに終わった。

「何ッ!?」

『フン、貴様と戦った処で、何の旨味も無い。何より、目標は果たした。そろそろ消えるとしよう』

「逃がすかッ!」

逃亡を許すまいと掴み掛かるオールマイトだったが、アークゼロはスパイトネガを放出して全身を覆い、姿をくらました。

「クッ・・・!」

歯を噛み締め、憎々しげに空を睨むオールマイト。直後に雄英職員も参入し、残党狩りが始まるのだった。

 


 

『ったぁく、あれヤバいんじゃなァい?やり過ぎじゃんどう見てもサァ』

『問題無い。それより、出久の身体とアリバイ証言、頼んだぞ」

『ハイハイ、まぁ()()()だからねぇ。そこはまぁ、ちゃんとやるさ』

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

・緑谷出久
現場急行したサウザンド社長。
其処らのチンピラやラーニングの浅いマギアを鎧袖一触し、更にえげつないチェーンソー技で脳無にも一時重大な損傷を負わせた。
しかし黒霧が増強ドラッグを脳無に打った事で即座に復活され、盛大に殴り飛ばされてしまった。
右上腕骨粉砕骨折、同部筋肉断裂・神経損傷・血管裂傷の大怪我を負ってアークと交代。その日中は目が覚めない。

・アーク
無双しまくった二周目悪意。
お遊びと称して各方面をこれでもかと煽り倒し、その上で轟の個性をジャックライズしつつオールマイトの拳を平然と受け止め悠々と撤退する(ように見せただけだが)と言う見事な序盤顔見せラスボスムーヴをカマした。
ナノマシンの注射により、傷の修復を早めている。

・渡我被身子
悪意追従変身少女。
梅雨ちゃんと峰田を迅で運び、サウザーが退場してからアークゼロが乱入するまで001で時間稼ぎを遂行した。お手柄。
アークゼロに蹴られた時は本当に自分からすっ飛んだだけなので、全くダメージは無い。

・主任
愉快なハングドマン。
アークゼロの存在を知っており、彼が暴れている間は出久が戦闘不能に陥っていたと証言する証人である。

・オールマイト
大遅刻して登場。
アークの事は一切知らない為、アークゼロが敵にしか見えず殴り掛かった。
尤も、簡単にバリアで止められてしまったが。

・腹筋崩壊太郎/ベローサマギア
コメディアン腹筋崩壊太郎。
ヒューマギアがいない筈の世界線でまさかの登場。原作通りベローサになったが、容易く仕留められた。
ラーニング1。

・暗殺ヒューマギア/ドードーマギア
暗殺ちゃん。
可愛いピコピコ暗殺ちゃんでは無く、最初からちょっとクールな暗殺ちゃんである。
打ち上げキックにて爆散。
ラーニング1。

~アイテム・装備紹介~

○ロケットパンチ
パンチングコングのジャッキングブレイク。
スパロボ御用達のお約束技。敵に向けて極太ガントレットを撃ち出す。
やろうと思えばロケットパンチ100連発も出来る。

神盾嵐旋突(イージス・ハリケーン)
インベイディングホースシュークラブのサウザンドブレイク。
カブトガニ型のシールドを複数召喚し、旋回させる事で敵の攻撃を防ぎつつ打ち据える攻防一体技。
元ネタは血界戦線のブレングリード流血闘術の技、旋回式連突(ヴィルヘムシュトゥルーム)

○ジャッカー・チェインサクリファイス
バイティングシャークのジャッキングブレイク。
サメの歯をキャタピラ状に回転させ、敵の肉を抉り取るえげつない技。しかも牙が折れて体内に残るので、再生能力を阻害する事も出来る。対マギア・脳無用の技になる。
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