貰った特典、死亡フラグ   作:一方逃避

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一ヶ月以上空けていたという……。
すいませんでした!


9話:真実とは何が何で何なのか?

「らァ!!」

 

 力強く振り下ろす刀。だが、それは“ストライクカノン”によって防御された。もう片方の刀で切りつけるが、それも避けられる。

 

(強すぎだろ、この人っ……)

 

 切っては避けられ、砲撃されては避ける、そんな鼬ごっこの様な攻防を俺と高町なのは一等空尉はずっとしていた。それでも、互いの攻撃は少しではあるが当たっている。そして、俺は不利であった。

 

「ファイアッ!!」

 

 高町一等空尉の“ストライクカノン”から放たれる砲撃。それは俺の攻撃が止まるわずかな時間を狙い、“フッケバイン”に着弾していた。

 

「くそっ……たれが」

 

 踏んできた場数が違いすぎる。たった3ヶ月の短い期間を戦ってきた俺と、17年という長い間に戦闘技術を積み重ねてきた高町なのは一等空尉。その差はあまりに歴然だった。そして俺の強さはエクリプスウィルスの恩恵だ。それでもその3ヶ月がなければ、俺はこの人の前に立つことなど出来なかっただろう。

 

 そして、俺は確かに動揺していた。ここを突破して、早くマリを探したい。それだけを考えていた。それが俺のただえさえ単調な動きを、さらに単調にしていたのだ。

 

「俺は! マリを探さなきゃならないンだ! こんな所で捕まっちまう訳にはいかねェンだよォ!!」

 

 だが、そんな叫びを平和を守る側である特務六課が聞くわけにはいかないのは、重々承知している。仮に俺が特務六課に協力しようとしても、それは叶わぬ妄言でしかないのだ。この身体では協力など出来るはずがない。それに俺は人を殺しすぎた。今さら正義の領域に立てる人間ではない。いや、もはや人間ですらないのかもしれない。

 

「だったら、こんなことしてちゃ駄目! 武器を捨てて!」

 

 互いのかける言葉も、願っていることも、それは平行線を辿っている。正義の側と、犯罪者の側。譲り合うことなど出来はしない。こんな身体で誰かを守ることが出来るというならば、最初から誰も殺してなどいない!

 

「俺は……エクリプスウィルスなンて物を生み出したやつを必ず見つけ出す。そのためには、ここで武器を置くなンてことはァ、出来ねェンだ!」

 

 この世界はただのマンガなのかもしれない。元を見ればそれは、人々の娯楽のための物だ。それは1つの物語をつむぐ。言うなれば、それは1つの世界であるということだ。外から見ているだけではわからない、初めて中を見てわかる現実。たとえマンガであろうと人は生まれ、人は死ぬ。この“世界”に転生して初めてそれがわかった。この“世界”は俺にとって、俺が生きていく現実。物語の設定などではない、俺の生きていく世界だ。

 

(だから、俺だってやるしかねェンだよ!)

 

 俺の役目は“ヴォルフラム”の主砲の足止めをし、逃げる時間を作ること。とは言え、このままでは消耗戦になる。そうなれば、まず俺に勝ち目はない。そこまでの差がある。ならば……少し手法を変えてみよう。

 

「モード変更、“槍鎧装(スピードランサー)”」

 

 モード“槍鎧装(スピードランサー)”。その名の通り槍やランスを主な武器とした武装形態。俺の持つ武器が二刀一対の刀から二丙一対のランス――形状からして――となる。この武装形態は速さが売りだ。俺が最初に使ったモードでもある。

 

(問題は、これを使って対等に戦えるか、なんだがな……)

 

 “剣鎧装(ソードナイト)”よりは使い慣れている。なら、何故最初からこれを使わなかったかと問われれば、“剣鎧装(ソードナイト)”を実戦で使ったことがないからだ。試験的な意味で使ってみたが、痛い目を見た。

 

(主砲の“砲”は潰す。“主”の方はその後だ)

 

 リスクの高い方は選ばない。“ストライクカノン”を潰したら、逃げればいい。それに、カレンなら特務六課の連中は殺すな、と言うだろう。いや、実際に言っていたか。

 

(これ終わらせて、早く“約束の日”を……)

 

 これ以上はあまり、時間をかけられない。空にいるもう一人の“主砲”に来られては面倒だ。俺には予定が詰まっている。ここで逮捕なんて、冗談じゃない。

 

 “翔翼”を前方に展開し、加速の準備をする。更に、ランスの柄に付いているブースターを点火。“槍鎧装(スピードランサー)”最大の技。加速へ更なる加速。

 

(これでそろそろ終わらせる!)

 

 前へと踏み込む。“翔翼”とブースターのコラボ。周りの景色が後ろへと吹っ飛んでいく。超加速の突進。

 

「うらあァァァ!」

 

 二丙のランスを使った突進。この調子なら“ストライクカノン” を破壊できる。

 

(懐に入ってぶち壊す! まずはそっちだ!)

 

 このままなら成功する。だが……運命は、いやこの世界自体俺に味方をしなかった。

 

「かへっ……」

 

 空気が震えた。何が起きたのかはわからない。ただ、俺のリアクトが解除された。

 

 車は急に止まれない。加速した俺は止まれない。この現象によって、俺は姿勢を大きく崩し、“ヴォルフラム”の上を転がった。自分の姿勢を制御出来ないまま、そのままの加速。起こることはただ1つ。“ヴォルフラム”の上から下――海への落下。

 

「しまっ……」

 

 体は先ほどの現象のせいか動かず、飛ぶことすら出来ない。鎧装ではなく、生身のままの自由落下。

 

(そうか……さっきのは“ディバイドゼロ・エクリプス”!)

 

 “ディバイドゼロ・エクリプス”。トーマ・アヴェニールの、ゼロ因子適合者(ドライバー)の力。魔力結合だけではない。人間の生命活動、リアクトさえ分断する力! これほどのものか!

 

(でも、このまま落ちたら痛いだろうなぁ……)

 

 幸い、思考するだけの余裕はあった。海に落ちたとしても、病化特性もあるし、死にはしないだろうが、とても痛いだろう。例えば、着水による全身強打。

 

 どうやら、“ディバイドゼロ・エクリプス”の効果は、かなりのものらしい。段々と意識が薄れてきた。眼前には近づく海面。気を失ったら、溺死するかも。

 

(でも、死なないんだろうなぁ)

 

 薄れゆく意識のなかで見たものは、俺の周りに蒼十字の書のページが舞っている様子。それはまるで、天使の羽の様……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな話をしたことがある。

 

「将来の夢? 何だ、唐突に……」

 

 あの開墾地にいた頃の2日目、昼食後。腹一杯になった俺はイスに座って休憩していた。4人用のテーブルに、イスを4つ。マリは向かいの席に。俺のとなりはアルさんだったりする。

 

「だから、ダレンは何になりたいのかなぁって。私達くらいの年頃だとみんな、悩んでるからさ~」

 

 確かに17歳というのは高校卒業後の進路などを決めなければならない時期かもしれない。でも、それはこの世界でも同じなのか?

 

「でもなぁ、俺は記憶の方を……」

 

 ここでは俺は、記憶喪失ということになっている。真実は俺しか知らないし、下手にしゃべったら何かバレそうだ。それに、“特典”のこともある。今は、そういうことを考えられなかった。

 

「あ……そっか……ごめん、ダレン……」

 

「いや、そこで謝らなくてもいいんだけど……」

 

 俺が嘘をついている分、謝られてしまうと罪悪感がハンパない。それに、空気を悪くしたくない。マリには暗い顔なんてして欲しくないし……。

 

「いや、あれだ、マリはどうなんだ? 将来の夢。言い出しっぺなんだから、ちゃんとあるんだろ?」

 

 雰囲気が暗くなる前に話を進めてしまおう。俺のことを話題から逸らすんだ。

 

「え~私はね~」

 

 マリが両の人指し指をつんつんし始めた。照れている。良かった、雰囲気は暗くならなかった。

 

「なんだよ。恥ずかしがらずに言ってみろよ」

 

 相も変わらず、人差し指つんつん。少し、可愛い。だが、言いたいことははっきりと言って欲しい。たぶん笑わないから。

 

「えっとね、お父さんとお母さん達みたいな家族を作ることかなぁ~」

 

「あー、ラブラブだもんなぁ」

 

 マリが憧れるのもわかる気がする。いつまで経っても、仲良しこよし。良い両親だろう。だから、マリがこんなに良い子に育ったのか、と思わなくもない。

 

「お母さん達に言わないでね、ダレン。すっごく恥ずかしいから」

 

「いや、バレていると思う」

 

 あの2人はマリのことなら何でもお見通しだと思う。特にサーシャさんはとてもとても。あの人、絶対マリの反応楽しんでるよね。

 

 そして、台所からニコニコこちらを眺めているお2人さんを、マリは気付いていないのだろうか?後ろ見えないから、しようがないか。

 

「マリなら、まぁ……大丈夫だろ、絶対。かなりの高確率で」

 

 マリなら仲良しこよしの家族作れんだろ。俺にこんなにも優しくしてくれたし。それに、マリがだれかとケンカするっていうのが、思い浮かばない。

 

「ほんとに!?」

 

「ほんと、ほんと」

 

 俺の言葉を聞いて、マリはとても喜んでいた。でも、マリと結婚出来るやつは幸運だと思う。少し……そいつが羨ましいな。

 

「そっか、そっか~。うん、ダレンがそう言うなら大丈夫だね~! 安心した。それじゃあ、私は外行ってくるけど、ダレンも一緒に行く?」

 

「いや、遠慮しとく。子供達の視線に心折れそう」

 

 俺がマリと一緒にいると、子供達の視線が怖い。まるで、仇の様に見てくる。

 

「ふふっ、私は一緒にいて楽しいよ?」

 

「そうかい、そうかい。ま、早く行け。遅くなったら、俺が怒られそうだし。ね、マリお姉ちゃん(・・・・・)?」

 

「もう~、ダレン。行ってきます」

 

 怒った様で、でも嬉しそうな顔でマリが外に行った。てか、最初から最後まで、全部サーシャさん達に見られてたわけだけど、すっげー恥ずかしい。最後まで気づかないマリも、マリだけど。

 

「隠れたことになってないですから、それ」

 

「あらあら、やっぱりね~」

 

 やっぱり、マリは憧れるよね、この2人なら。良いご両親。羨ましい。

 

「あ、ダレン君。少し話があるんだけどいいかな?」

 

「へ?」

 

 思えば、これが始まりだったのかもしれない。

 

 

●●

 

 子供達は本当に羨ましい。無邪気で、とても楽しそうで。

 

「どうしたの? マリお姉ちゃん」

 

「え、あ、なんでもないよ~」

 

 ぼうっとしていたらしい。皆を見たまま突っ立っていた様だ。いけない、いけない。

 

「何か、嬉しさ半分、寂しさ半分な顔してたから。あ、まさかあの男の人が何か!?」

 

「いや、なんでもないよ~。ただ…………本当のことを話してしもらうためには、どうすればいいかなぁって……」

 

 私に話しかけた子はよくわからないという顔をしていた。まだ、難しい話なのかもしれない。

 

(本当は感じてるんだ……、ダレン。どうしたら、話してくれるのかなぁ……)

 

 私の知らないダレンがいる。私はそれが知りたい。だから……

 

 

 

 

そこに行くよ。




久しぶりなので、雰囲気が違うかもしれません。
戦闘を表現するのは難しいです。

新四話はもう少ししたら、投稿します。
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