魔法少年は青空に焦がれる。   作:korotuki

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 みんな大好き宝石おじさん。


第1話 適正年齢は11歳となります。

「やぁ」

「へっあ…ど、どうも」

 

 夢の中で目が覚めるという初めての体験をした僕の目の前には、立派な髭と白髪が生えたお爺さんがいた。

 挨拶をされたので返すと、お爺さんは「クツクツ」と微かに笑い愉快そうに僕を見る。

 

「突然ですまんな。どうしても君に手伝ってもらいたいことがあるんだ」

「は、はぁ……ところで貴方は?」

「…ん?あぁ、そう言えば君の家は時計塔との関わりを絶っていたのだったな。まぁ翔くんが封印指定を受けたから当然か」

 

 口ぶりからして有名な人なんだろうか?しかし家族以外の“魔術師”はそれこそ父様の個人的な知り合いしか会ったことがない。「時計塔」は…えっーと確か大学の魔術版で、魔法使いを目指す魔術師の魔術の最先端の場所だっけ。

 封印指定は…なんだろう。字面からして封印をされるなにかということかな?しかし父様が封印……?

 …考えてても仕方ない。取り敢えず挨拶だ

 

「(父様の知り合いの方)…青空家の三男「青空勇飛(はやと)」です。初めまして」

「あぁ始めました。儂のことはそうだな…「宝石おじさん」とでも呼んでくれ」

 

 強面な顔に似合わない悪戯っぽい表情と共にお爺……じゃなくて宝石おじさんは名乗った。   

 そういえば最初見た時は気付かなかったけど、その指には宝石が嵌まった指先大の宝石が光る指輪をしている。

 

「では、改めて宝石おじさん。僕に頼みたいこととは…?」

「ひとまずこれを見てくれ」

 

 宝石おじさんは懐から一枚のカードを取り出し僕に見せた。見ろと言われたので目を凝らし見つめる。

 トランプやUNO、TCGに比べると大きい…タロットカードとかに近い大きさ。

 絵柄のこれは…甲冑を纏い剣を持った剣士だろうか?意匠が簡潔すぎてインテリアには使え無さそうだな。魔術的な意味でこのような柄なら……

 

「…一種の召喚媒体とかですか?」

「その年にしては鋭いな。見込みがある」

 

 そう言うと宝石おじさんはカードを持っている手とは逆の手で懐から同じカードを取り出すと、それらを全て空中に並べた。観察してみると合計7枚のカードはそれぞれ絵柄が違うことが分かる。

 

「これらはクラスカード…まぁこれは形だけ似せた複写品(ブランク)だけどな。使い魔についてはどこまで?」

「メジャーなものなので一通りは、専門と呼ばれると自信はないです」

「正直でよろしい。では英霊については?」

 

 急にジャンルが変わった。魔術の中には彼らの力を再現、もしくは借り受けて利用するものもあるのでこちらにも一定の教養はあった。

 

「ええっと…生前強大な力や伝説的な逸話を残した英雄が、死後“英霊の座”に招かれ一種の霊体となった存在。でしょうか?」

「………」

「あっ、それでその英霊が呼び出された時は使い魔の最高位。サーヴァントと呼ばれるとは聞いたことあります」

「加点一点。と言っても君と儂は教師と生徒の関係ではないが」

 

 感心したように浅く頷く宝石おじさん。なんだか照れ臭い

 

「これは“クラスカード”と呼ばれる物だ。製作者・用途・詳細な構造何も不明だったが、唯一「英雄の力を引き出せる」ことが分かった」

「英雄、いや。英霊の力を……」

 

 口から思わず鸚鵡返しに呟いてしまう。だってそうだろう、その言葉に嘘偽りがないのなら「絶対に折れない剣」「地平線まで届く弓と矢」「必ず心臓を射抜く槍」「戦術兵器めいた威力の魔法を行使する杖」などがこの現代に蘇ることに等しい。

 

「それが、今君がいる冬木にいる突然現れた」

「!?」

 

 思わず地面を見るが、夢の中のためそこには黒いモヤが漂っているだけだった。

 

「…アレ?でもカードなら“使用”しないと悪影響はないんじゃ……」

「だったらよかったのだがな」

 

 嘆息する宝石おじさんの顔は「面倒なことになった」と言わんばかりで、僕はその時点で次の言葉を察した。

 

「まさか、暴走を!?」

「現実世界に実害は出ていないが、このままカードがこの地の魔力を吸い続けたら……な?」

「ッ!」

 

 なんだソレは、まるで足元に時限爆弾が埋まっているのと同義じゃないか。

 

「さて、君はそんな爆心地にいて。今こうして儂の前にいる。そして「君に頼みたいこと」がある」

「手伝え、でしょうか?」

「流石にここまで言えば察せてしまうか」

 

 宝石おじさんはカードに手を翳しそれらを全て消し去る。その代わりに僕らの目の前に木製の丁寧に艶消しされたシックな椅子と机が現れた。机上には丁寧にティーポットもある。

 

「さて、どうする?」

 

 椅子に座った宝石おじさんは、どこか試すようなふてぶてしい笑顔で僕を見る。

 つまり、僕が椅子に座るかどうかで参加の可否を決めるということらしい。

 

 ――決まっている。

 

「…………。」

「即決か。理由を聞いても良いかな?」

「僕はセカンドオーナーの息子だ。例え隣市だとしても土地のトラブルを見過ごすわけにはいかない…からです」

「そうか」

 

 最初から僕が参加することを知っていたかのような淀みない声と共に、宝石おじさんは懐から僕の握り拳大のアクセサリー?を取り出した。

 ひし形(ランバス)に猛禽類を思わせる羽根をあしらえられたそれは、これまでの宝石おじさんの雰囲気からすると少し…いやかなりファンシーなものに見える。色は…透明感のある白で、僕はそれに石英(クォーツ)を連想した。

 それを取り出した机上においた宝石おじさんはスッと僕の方にそのアクセサリーを差し出した。

 …???

 

「あの、これは?」

「君には、【魔法少年】になってもらう」

「…………はい?」

 

 突然の突飛な話に、僕は訳も分からず返答した。

 

 

 

 

「概要は、分かりました」

「ウム」

「詰まるところ宝石おじさんの弟子候補さん達が3日前からカードの回収任務についていて」

「危険度の高い任務だ」

「そして弟子候補さん達に預けたコレと同型の魔術礼装「カレイドステッキと言う」…カレイドステッキは、性能こそ高いがアシストのため入れた人工天然精霊の人格に難がある」

「どこで教育を間違えたのやら」

 

 よし、ここまではあってる。聞き間違えも言い間違えもないらしい。

 

「それで、カードの回収任務は文字通り英雄との戦いで。万が一もあり得る」

「心配よなぁ」

「だから僕にはこのカレイドステッキを使って【魔法少年】になって是非とも助太刀してほしい」

「あぁそうだ」

「…疑問点に思ったことを言っても?」

「君はもう立派な協力者だ。喜んで答えよう」

「なんで俺なんですか。兄さんも、兄様も。それこそ父様っていう選択肢もあるはずですけど」

「次男の快斗はカレイドステッキとは相性が悪く、長男駆音は次期当主としての研鑽がある。翔くんはシンプルに適正外だ」

「なるほど…」

 

 そう言われては黙るしかない。先程までの話から僕の力量では英霊達に立ち向かうには力不足のため、カレイドステッキの力を借り受ける必要性も分かった。…取り敢えず受け入れるしかないようだし、そもそも男に二言はない。

 

「このステッキの詳細についていいでしょうか?」

「識別名は【カレイドクォーツ】。弟子候補共に貸し与えているカレイドルビー・サファイヤの前身…性能実験機(プロトタイプ)に当たるものだ」

 

 宝石おじさんは何処からかホチキス止めされたA4用紙の束を取り出し、そこには【愉快型魔術礼装0号:カレイドクォーツ仕様説明書】と書いてあった。

 何とも複雑な気分になりながら、宝石おじさんが指し示した文章を目で追う。

 

「後継機とは違い、クォーツに魔力弾を発射する機構はついていない。その代わりにコレはステッキ周囲に魔力で精製された魔力刃などの短いレンジでの攻撃に強く調整した。謂わば接近戦仕様だな」

「…僕向けですね」

「因みにもう分かっているかもしれないが君のお父さんにも全面協力してもらった」

「」

 

 正直父様の話が出た瞬間察してはいたがやはり驚く。

 

「話を続けよう。特に特徴的なのは、自分とほぼ同じステッキを召喚することが出来る勿論機能はほぼ同じだ」

「原理どうなってるんですかそれ…投影の、いやでも…」

「私が持つ能力(第二魔法)のちょっとした応用さ」

「そうですか」

 

 理解しようとするだけ無駄なことは分かった。

 

「総括するとクロスレンジに特化したマジカルステッキとなる。無論仮想人格は入れる……あぁ心配するな、あの二本に比べたらマシな物にしよう」

「それはどうも…」

 

 自分でも分かるほど微妙な顔を浮かべクォーツ…長いから“クオ”でいいかぁ(思考放棄による順応)

 それを手に取って、見る…小学五年生でよかった。コレが中学生だとデザインの変更を要請していたかもしれない。

 

「では、よろしく頼むぞ。私はコレから急ピッチで急いで仮想人格を設定して君に託そう。目覚めた時には既に手元にあるようにしよう」

「えっ…く、空輸でも一夜では間に合わないのでは?」

「そこは秘密だ」

「アッハイ」

 

 話が終わると、ふと視界全体がボヤけるような感覚を覚えた。

 

「ではな、今度こそ良い夢を。あぁ最後に翔くんに「次会う時に一曲歌ってくれ」って伝えといてくれ」

「お、おやすみなさい」

 

 次の瞬間。僕は本当の意味で眠りについた。

 

 

 

 

「存外聡明な少年だったな。あの翔から生まれたとは思えない」

 

 勇飛に「宝石おじさん」と名乗った老人、第二魔法「並行世界の運営」の使い手である「魔道元帥」「宝石翁」「万華鏡(カレイドスコープ)」と呼ばれる魔法使い【キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ】は、カレイドクォーツを弄りながらそう呟いた。

 

 その目裏には、彼の父親である青空家現当主。【青空翔】を思い出す。

 

 封印指定を受ける程の魔術技量を持つ彼は、その昔はただ歌を愛する青年だった彼。

 

 不幸にも冷酷な魔術師の実験台となったかれ

 

 果てに放つ声全てが呪いとなったカレ

 

 そして――――

 

「年取ると考えに耽ることが多くていかんな。らしくもない」

 

 ふと我に帰った「宝石おじさん」は、調整が終わったカレイドクォーツを手に取る。

 

《…システム読み込み完了。カレイドステッキ0号機、個体名【カレイドクォーツ】起動しました。生み出してくれて感謝します。創造主(クリエイター)

「あぁ、励んでくれ」

 

 完成したカレイドクォーツを転移。勇飛の枕元に送ったゼルレッチはふと手を広げる

 

「このような時は平行世界を見るに限る」

 

 

 

 

「あっヤベ」




 お父さんはまぁ…前作主人公みたいなもんだと思ってもらえれば。ちなみに婿養子なので青空家の本流はお父さんの妻となります。
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