剣の世界と臆病少女   作:亜白

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(どこだろう、ここ)

 

目を覚ますと、そこには沢山の人がいた。

見慣れない広場に、見慣れない服装の人たち、みんな剣を携えている。なんだか御伽話の中にいるみたい。

ふと、腰のあたりに違和感を覚えて見てみると、私もナイフを携えていた。

 

それを抜こうとするとビーッと音がなり、知らない言葉が目の前に出てきた。読めないけど、きっと「ここでは抜けないよ」ってことかな。

文字は読めなくても大体わかる。人が沢山いるところで危ないものを振り回してはいけないから。

辺りを見回すと四方に伸びる大きな道があり、どうやらそれらは街の外に繋がっているみたい。そしてそれらの内の一つ、目の前、その道の奥に見える…、白く天まで届くあの塔は一体何だろう。

吸い込まれるようにその道を進んでいく。

 

この辺りなら誰もいないしちゃんとナイフを抜ける、それに

近くで見ると大きいな、白い塔が迫ってくるようだ。これがお城とかだったらもっと感動したんだろうな。

なんて、無粋なことをつい考えてしまう。

 

それにしても…なんだろう、さっきから遠くの方で誰かが獣たちと戦っている音が聞こえてくる。

 

「一応行ってみようかな、襲われてるのかもしれないし」

 

足を運んでみることにした。来た道を戻ることになるけど。

目的地に向かう途中で此処に来てからのことを思い出していた。

いきなり見たこともない所に来ていた、そしてそこは御伽話のようなところで、道行く人々はみんな何かしらの武器を携えていた。

拳銃とかじゃなくて今どき剣なの?

ここはそんなに田舎なの?

かと思ったら目の前にいきなり文字が出てきたり、アニメや漫画の中の近未来な部分があったり…、色々チグハグだと思う。

 

そういうことを考えているうちにあっという間に目的地に着いた。

奥の方で二人の男性が青いイノシシと戦っているのが見える。

様子を見るに一人がもう一人に戦い方を教えている感じかな。教わっている方は腰が引けていて、全然だめだと思う。

使っている武器はナタ?それなら突進してきたイノシシめがけて投げるのがいい…

 

「そう例えば…、こんなふうに」

 

我に帰った時はもう遅かった。

私の手から離れたナイフは、今まさに男性めがけて突進しようとしているイノシシに向かって真っ直ぐと飛んで行った。

”サクッ”と軽めの音が聞こえ、青いイノシシはガラスが割れるような音とともに消えた。

 

 

「……え?」

 

 

私は呆気にとられた。

夢を見ているの?

もしもそうならこんなに鮮明な夢は少し不気味だ。

でも多分これは夢じゃなくて…いや、でも夢じゃないならアレは何?

どうしてイノシシは消えてしまったの?

 

私は走り出していた。

ここ怖い。。

なんなの一体。気が付いたらいつの間にか知らない場所に来ていて、周りの人は剣や斧みたいな危ないモノ振り回して笑ってる。挙句の果てに殺された動物は割れたガラスみたいになって音を立てて消えてしまう。

こんな御伽話みたいなところ嫌だ。帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい。

 

私はひたすら走っていた、いや逃げていた。どこにではなく、どこかへ。

 

何分?何時間?何日?疲れることはなかった。

街の中を、街の外を、塔の中を。そして隠れた、洞窟に、廃墟に、路地裏に、そして橋の下に。

小さな石造りの橋の下。

いつの間にかそこは私の居場所になっていた。

覚悟を決めて少し出歩いては怖くなってまた戻ってくる。

その繰り返し、一歩が踏み出せない。一歩も前に進めない。

それを何日繰り返して来ただろうか。文字が読めるようになったし、言葉も分かるようになった。

周りの人は日本語で話すし、掲示板や店の商品なんかも日本語で書いてあった。

 

でも、だから?

言葉が分かるようになったところで此処ではあまり意味を持たない。

だって此処は戦えないといずれは淘汰されてしまうところなのだから。

 

戦う?何と?

あの訳の分からない動物と?

動物だけじゃない、ワイバーンやゾンビを見たことだってある。一目見ただけで逃げて帰ってきた私に何ができるの?

そうだよ私は此処では何もできない。何かの手違いで連れてこられただけ。私には関係ない。

 

だからあの娘が来た時も聞こえないフリをして無視をし続けたんだ。

でもあの娘は何度もやって来て、何度も励ましてくれた。その度に私は何回も無視をしてきた。

ある時名前を教えてくれた。アルンという名前らしい。

そしてある時、パンとミルクをくれた。此処では疲れないし、眠くならないし、お腹もすかない。全てが機械的で人工的。

このパンも機械的だった。でもなぜか食べるのをやめられなかった。ミルクも飲み干した。

またある時、服をくれた。此処に来た時から着ていたのは既にあちこち破れ肌が露出しているところも多かった。

いつの間にかこの辺りには人がいなくなっていたから羞恥心はあまりなかったが、綺麗な服を着れるのはうれしかった。

飾り気はあまり無かったが白い服で清潔感があった。せっかく貰ったから汚さないようにしようと思った。

 

 

 

こうしてアルンは少しずつ歩み寄ってきてくれた。それに答えるように私も少しずつアルンに心を開いていった。

この人がどうして私にここまで尽くしてくれているのか分からなかったけど、私にはただその存在がありがたかった。心の底から欲していた。

 

だからだと思う。考えるよりも、自然に言葉が出た。

 

 

「あり…がとう、そばにいてくれて…ありがとう、アルン」

 

 

強張っていた体の力が抜けて、張り詰めていた緊張が解けた。

そして泣いた。アルンに抱き着いて全力で泣いた。

知らない場所に連れてこられて怖かった。その恐怖で自分の殻に閉じこもった。その所為でアルンに冷たくあたっていた。そんな私をずっと励ましてくれていた。

 

今までの恐怖や葛藤や申し訳なさが混ざり合って、それが身体を埋め尽くし涙や叫びとなって私の中から出ていく。

 

それらを出し切るまで私は泣いた。

泣き続けた。

 

ひたすらに。

 





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