人工的で機械的。それが此処のあり方であり常識だった。
だから真実を聞かされた時はあまり驚かなかった。
寧ろ、胸の中で何かがストンと落ちて冷静でいられた。
「そっか……此処、ゲームの中の世界だったんだ」
「不思議だね、気づいたらこのSAOにいたなんて」
「うん、何も知らなくて、眼を開けたら此処にいたの」
自分の置かれている状況を愁いている少女は、瞳に涙を溜めて何とか零さないように空を見ている。
肩の辺りで外にはねた白い髪は太陽の光でキラキラと光を帯びて、白い服は眩しいくらいにより白く、そして涙を溜めた瞳は空の色を反射したように碧い。
その姿に目を奪われるのも多少は仕方ないとはいえ、遠巻きにジロジロ見てくる男達にアルンは睨みを利かせた。
文句を言いながら離れていく男達をよそに向き直り言う。
「それで、シャルロットはこれからどうするの?」
その口調は諭すように優しくもあり、突きつけるような厳しさもあった。
どうするのが正解なんだろうか、そもそもこの世界に正解はあるのか、周りの人たちは正解を分かっているんだろうか。
ゲームは遊び方を分かっていれば攻略できるものだが、シャルロットは一度もゲームを遊んだことがなかった。
だからこの質問に対する答えは、
「わからない、どうすればいいの?」
「…ごめん、意地悪だったね」
アルンは立ち上がって思いきり伸びをした。
さっきの質問はただの意思確認のつもりで、自分自身への問でもあった。
意地悪だったと言ったのは彼女には意思がないのを分かっていたからで、それは決して悪い意味ではなくて、話を聞く限りシャルロットは重度の記憶喪失。
言葉が通じるだけの生まれたばかりの赤ん坊だと言っていい。そんな子に酷な質問をしてしまった。
アルンはもう一度思いきり伸びをした。
「私と、一緒に行こう?シャルロット」
差し伸べられた手を握るのは、今のシャルロットにとって未知への一歩だ。
何も知らずこのゲームへ招かれ、自分のこともよく分からないまま怖い世界だと植え付けられた。
自分の一挙手一投足に怯えながら過ごしてきた彼女にとっては、今こそが人生のターニングポイント。
大いなる一歩となるか、破滅への一歩となるか、今決断しなければいけない。
「私のことは、ロットって……呼んで?」
「……うん、よろしくねロット」
「よろしくお願いします、アルン」
数分の後、差し伸べられた手はしっかりと握りしめられていた。
共に励んで共に勇んでゆく、二人の剣士の始まりの一歩。
また次の投稿も遅くなりますが気長にお待ちください