約束だ、姿が見えなくても君達を見守っている。   作:クソザコぎつね

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大怪獣現る

橋の根本近くに到着すると、やってくる大きな巨影が見えた。

 

「あれが…バーテックス」

 

それは身長60m、体重2万5000トンはあろう黒き体に、白い一本角が鈍く輝く。

目つきは鋭く、目下に群がる我々を嘲笑うかの様な瞳をしていた。

アーストロンと呼ばれた怪獣である。

耳をつんざく咆哮を放ったかと思えば、今度は口を広げ喉の奥からマグマの様に熱射の光線を辺り一帯に浴びせかける!

 

「侵食しているの⁉︎」

 

土煙を上げながらぐるりと一周を薙ぎ払うと、アーストロンの周りでは神樹の根が猛々しく燃えているではないか。

この樹海の世界においては、神樹の根にダメージが重なると現実世界に悪影響が起こるというシステムになっている。

ましてやマグマの光線など、効果抜群にも程がある。

 

すっかり灰色に染まった地面を一目見ると、アーストロンは満足したかのように再度咆哮をあげた。

 

「だったら!」

 

三ノ輪が一人勇敢にもアーストロンの頭部目掛け飛翔する。アーストロンからすれば蚊程のサイズではあるが、そこはバーテックス。

天の神に仇なす者は誰一人許さず、勇者とて例外ではない。

 

「危なっ……うわ⁉︎」

 

加減なくマグマ光線を三ノ輪に対して二度も浴びせる。一発目はすんでのところで回避が出来たものの、服に火が燃え移ってしまう。いくら耐久が強化されているとしても元は人間。焦って腕で叩いていると、前方からの二発目に焼かれてしまった。

焼かれながらも墜落する三ノ輪。落下時の風で消火はできたものの、服が所々焦げてしまっている。火傷一歩手前であり、触れると、針のような痛みが襲う。

 

「ミノさん!」

 

思わず前に飛び出す乃木。だがそこはアーストロンの射線上であり、遮蔽物は一切無いことに飛び出してから気づく。

目前に炎の悪魔が自分を狙っていることが分かると、今度は根を降り、下に回避した。

上の様子を伺うと、扇状に隙間なく焼けていることが確認でき、もし横に回避していたなら、あれの餌食になっていただろうと思うと背中を冷や汗がつたってくる。だが不安定な着地をしたせいか、体が上手く動かせない。

 

「二人共!」

 

見かねた鷲尾が追撃させまいと中距離から牽制の曲射を放つが、全くもって効いている様子がなく、強固な皮膚に矢が弾かれてしまっている。

本来、アーストロンの主食は鉄。その硬さと皮膚の暗さは食べ物に由来している。

ならば、このちっぽけな針では貫くどころか傷をつけることも叶わないだろう。

 

「ハァ……ハァ……ちくしょう!」

 

「……ッ!」

 

武器を支えにして立ち上がる三ノ輪と乃木。だが悲しいかな、アーストロンは回復の余地など与えさせはしない。天の神から承った使命、勇者の排除と神樹への到達が、彼に非情な性格を強いるのだ。もっとも、彼は元からそんな性格だが。

 

「乃木さん!」

 

「マズいッ!」

 

足もふらふらな乃木へと、トドメをさすべく何万度もあるマグマ光線を容赦なく放った!あまりの光景に目を覆う二人であるが、恐る恐る指の隙間から火の中を見ると、歪んだ合間からハッキリと何かを展開する姿が見える。

よく見ると、その人影の後ろだけ焼かれるのを回避しているのが理解できる。

 

「これ……盾になるんだった!」

 

その発言に胸を撫で下ろす二人。あの温度の炎に耐えられるとは、神樹の力も捨てたものではないらしい。アーストロンも最大火力の光線を防がれると思わなかったのか目を見開くが、すぐさま次の行動に移った。それは彼のもう一つの武器、尻尾。長くしなやかなその尻尾で、忌々しい蟻に一振り、箒のように掃いてやると、あっという間にそれは吹き飛ばされていく。

鋼鉄の二千倍の強度を持つそれは恐ろしい程に頑強であり、神樹の加護を受けた勇者でなければ、シミとなっていたであろう。

 

「こんなの、どうしたら……」

 

乃木は再度吹き飛ばされ、三ノ輪も火傷寸前。残ったのはただ一人。一歩踏み出せばそこは灰色に満ちた海であり、思わず後退りしてしまう。今、彼女達は絶望していた。シミュレーションとは違う実戦は、本当に生死を懸けた戦いであり、混沌としている。

マニュアルもなく、攻略法も分からない。近づかず、かと思えば遠くからでは通じないその相手に、人類ではなす術が無かった。

 

鷲尾の緑かかったその目には、幻覚が見えていた。

崩壊する建物と、人を踏み台にしながら悠々と行進する大量の怪獣達。そして空を覆う程の大量の小型バーテックス。

山はえぐれ、海は轟き、雷鳴が木霊する様子が確かに感じ取れる。果たしてそれは、今の人類のDNAに刻み込まれている記憶なのか、あるいは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から298年程前、人類は未曾有の危機に立たされていた。火を吐く大怪獣に、海から迫る大超獣。隣人は骨と大腸が露出し、自分もまた何かを失う。

そんな闇の時代に、諦めず最後まで戦い、不可能を可能にした者達がいた。

彼ら勇者はそんな先人達の末裔。ならば、こんな所で諦めてはいけない。

 

遂にトドメだと、アーストロンがその巨木のような足で乃木を踏み潰そうとしたその時。

真っ赤に燃える赤色の脚が、横からアーストロンの頭部目掛けて飛び蹴りをかました!

そのまま右方向に倒れるアーストロン。地面には5m程の陥没が起きた。

何者からの攻撃だと、アーストロンは起き上がりながら相手を睨みつける。それと同時に、勇者全員もその相手を見つめた。

 

そこら中に舞う土煙が晴れると、遂に彼は姿を現した。銀河の彼方から、彼はやってきた。僕らの明日を導く為に。

特徴的なプロテクターと、左右に伸びた六角形の眼が輝く赤と銀の光の戦士。

 

ウルトラマンマックスが。

 




バーテックス

未だに不明瞭な点が多く、大赦に於いても研究中である。地球上の生物と融合しているのでは無いかという仮説や、空想が現実になったのではないかという説もある。
現在データベース上でハッキリとしているのは、小型の白いバーテックスと、大型の怪獣と呼ばれる個体が確認出来るのみである。
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