約束だ、姿が見えなくても君達を見守っている。   作:クソザコぎつね

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対話宇宙人

 

「さて……」

 

大赦本部へと向かう二人の少女をバックミラーに確認すると、ワゴン車の中は一瞬の静寂に包まれる。気まずい沈黙の様なそれが流れた後、運転手がタバコを吸おうと胸ポケットに手を掛けると、自分に冷たい物が当たる様に感じた。

ゆっくりと助手席の方を振り向いて見ると、青年がこちらに銃口を突きつけているのが見える。

その銃は、本来この地球には存在する筈のないものであり、赤にペイントされたそれが人外に向けて放たれれば、相手はタダでは済まない。

それを向けられたという事は、運転手は人外と疑われているという事だ。それと同時に青年も、この地球のものではないと裏付けている。

 

「正体を表せ」

 

「……おっかないねぇ」

 

運転手が掛けているサングラス越しに見えた青年の目は、その優しげな顔つきとは打って変わって鋭い物だ。眉を細めながら瞬きを一切せずにこちらへと銃口を向け続ける青年を一瞬見つめると、男は胸ポケットに手を掛け、マジシャンが驚かす様に手を広げてタバコを青年の前に突き出す。

 

「はっはっは、何か出るとでも?」

 

「……」

 

「つれないねぇ、まったく。私の事を忘れたのか?」

 

そう言って運転手がライターでつけたタバコを口に咥え、煙を吐こうと摘んだタバコを口から離した瞬間、運転手の姿は一瞬にして赤い体へと変わった。黄色い発光体を輝かせながら、ハサミとも人間の手とも似つかないその手で器用にタバコを摘む。

運転手は宇宙人だった。その名はメトロン星人。

 

「……お前だったか」

 

「ん?どうしたその口調。アイツに変な影響でも受けたんじゃないか?」

 

青年が銃を下ろしながらホッとしていると、メトロン星人は苦笑いしながら遠い思い出を引っ張り出す。

何やらうんうん頷きながらタバコを吸うメトロン星人は、何処か哀愁が漂っている。

 

「……彼はもういない」

 

その一言を聞くと、メトロン星人は動きを止め、思考を整理し始める。

 

「どういう事だ?」

 

声を震わせながら呟くと、青年は淡々とした口調て告げる。

 

「彼は最後まで彼だった。そして、消えた」

 

「そうか……」

 

メトロン星人は夕焼けに染まるビル群へ顔を向け、その窓に映る太陽を覗き込んだ。

まもなく月が昇る。

 

「すまない」

 

「いや……いいんだ。それが彼の選択なら、何もいう事はない」

 

ワゴン車の中を、再び静寂が包み込む。やがてタバコの火が指に近くなる頃、メトロン星人は灰皿にタバコを擦り付け、青年へと言葉を投げかける。

 

「さて、時間だ。手続きはもう済んでるだろう?なら、私の家に来ないか」

 

「……そうさせてもらおう」

 

メトロン星人が人型へと再び擬態し、アクセルを踏み込む。青年は外の風景をじっくりと見つめながら、考え事に没頭する。その目に映るのは、現代的な眠らない街。

ビルも少なくなり、住宅街へ差し掛かると、一つのボロアパートに着く。

車から降りて二階への階段に足を掛けると、ギシギシと不安定な音を鳴らし、手すりはサビがそこらじゅうについている。

チカチカと接触不良の伝統に虫達が群がって居る。それを青年が眺めていると、視界の隅に先程部屋に入ったメトロン星人が手招きしているのが見えた。

 

「さあ上がってくれ」

 

「……邪魔する」

 

見ると、部屋はそれほど広くなく、だが壁にはいくつかの写真や、コレクションであろう物が所狭しと並べられている。その一つ一つが、今この時代では手に入らないであろう物だ。300年程前の写真が、程よく残っている。

部屋の真ん中には、ちゃぶ台が一つ。床は畳。昔懐かしい昭和の家だ。

 

「お茶でもどうだ」

 

それに青年がこくりと頷くと、擬態を解除したメトロン星人がキッチンらしき場所へと姿を消す。

先程は詳しく見れなかったが席を立って目を凝らすと、写真の中でも特に大事にされているらしき物が、棚に飾られている。

それは色褪せる事なく、埃一つも被っていない。

思わずそれを手に取り、席に戻って再度何の写真かを確認する。

 

「……」

 

それを見つめる青年の表情は変わらず無表情。だが彼を知る物なら、そこに彼が感じた感情を読み取れるだろう。

その写真に写っていたのは、メトロン星人、青年の幼少期、そして、六人の少女達であった。

じっと見つめていると、茶を注いでお盆を手に乗せたメトロン青年が戻ってきた。

 

「ハハハ、私としたことが挨拶を忘れていたよ」

 

青年はその写真を戻し、横に置かれた小さな写真を見つめる。小さな写真に写っていたのは、メトロン星人と青年のツーショットだった。撮られた場所はこのボロアパート。

写真に写る青年の表情は眩しいほどに明るく、笑顔を浮かべている。対して今の青年は無表情だ。

そんな今の青年の背中に、湯呑みを置いたメトロン星人が一言。

 

「ようこそウルトラマンマックス。私は君が帰って来るのを待っていたのだよ」

 

 




メトロン星人

カラフルに彩られた体と、点滅する黄色い発光体が特徴。性格は温和であり、擬態状態ではまんま近所の優しいおじさんである。
300年程前地球に来た時以来、神樹の結界に囲まれて母星に帰らずじまい。
青年とはお父さんの様な間柄であった。
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