──────あの頃は良かった。この頃は良かった。
なんて言葉が日本にはある。社会人はこの言葉を学生の頃を思い返し使い、学生はたかだか数年前頃を思い返し発する言葉。
『若い頃は良かった』そんな言葉は時に両親から聞き、俺自身も「昔は良かった」なんて若い事を言う。
先程から何故この様な昔話というかタラレバと言うか愚痴となる物を考えているのには理由がある。と言うのも、俺は春から進学し高校1年生となった。偏差値は普通の普通の公立高校。
受験に無事晴れて合格した身として、そして今から始まる『高校生活』となる物に俺は胸を高鳴らせていた。あー友達出来るかな。『部活入ろうかな』勉強めんどくさい。と最初はこんな期待をしていた。
けれどそんな期待が保ったのは最初の数ヶ月だけ。今じゃ薔薇色の高校生活なんて物には別れを告げて、吐いた息が白くなる様な学園生活を送っている。先程述べた様に最初は楽しかったのだ。友達も普通に出来て勉強も嫌々する。
そう。中学生の頃と変わらない怠惰で退屈な日々が1ヶ月ほど続いたある日。俺は魔が刺してしまったのだろうか。──────とある出会いをする。
この出会いが吉と出るか仇となるか。そんなもん最初に分かるわけがなかった。
──────けどそれが俺の灰色の高校生活に色を与えてくれる様な気がした。
「パス! パス! ドフリーだって言ってんだろ!?」
「いや、ポジショニング悪いってお前。てか出したとこでお前なんか出来んのか?」
どこかで聞こえる努声、喧騒。ここはとても賑やかな場所の様だ。こんなとこ早く抜けて家でゲームしてぇ。ここはとにかく騒がしい。今は先輩が日課の喧嘩をしてるし、別の場所では「ナイシュー!」「ゴラッソ!」とか言う嬉々した声も聞こえて来る。こんなうるさい場所でも自分の思考力には驚愕する。今じゃこの環境、サッカー部にも慣れ己の煩悩に思考を割いている。まぁ今でも先輩同士の喧嘩は怖いのだけれでも。
……ここは公立高校サッカー部。部員数は数百を超えそれなりの強豪らしい? 何故疑問系かと言うと俺も分からないから。春に入部し成り行きのまま来て現在、冬。俺は春にした選択を後悔しかけていた。そう。俺が薔薇色の高校生活にする為にした事が1つ。部活動入部。小中でのスポーツ経験、習い事をしてこなかった俺はアクションを起こした。
『サッカー』それは210を超える国から愛される代表的な球技スポーツ。世界で最も人気があるスポーツと言っても過言ではない。(Wikipedia参照)
そんなありふれたスポーツを俺は軽い気持ちで始めた。小さな頃から興味もないが聞いた事のあるスポーツだったし、幼き頃は夕日を見ながらボールを追いかけた俺だ。(遊び)そんな国民的スポーツに興味が出ない訳ない。……あとほら? ね? サッカー部てなんかチャラついてて楽しそうじゃん? 彼女の1人や2人くらい出来るか。……そんな浮ついた邪で曖昧な理由で俺が始めたサッカー人生。
「クロス行ったぞ!」
そんな早口と同時に飛んで来た球体の名はサッカーボール。サッカーは点を入れたら勝つスポーツだ。実に分かり易いスポーツ。コンマ数秒で点は入り試合は動く。その数秒を考える暇なんてない。考えるより先に俺の身体は動いた。足を精一杯伸ばしボールに足を当てに行く。横から飛んで来たボールが前方に動き出した時、俺のゴールは確定した。倒れ込みながらのシュート。華がなく泥臭い。けれどサッカーと言うのはボールがゴールに入れば良い。俺のシュートはキーパーの意表を突いた。相手ゴールキーパーはピタリとも動かず俺のゴールを見送る事しか出来なかった。……これがノーチャンスて奴か。
「ゴラッソ」
俺の一言が空を舞った。ゴールを決めた主人公に来るのはチームメイトの拍手喝采かそれまた興奮した俺の雄叫びか。……それは時間が解決してくれるだろう。
「ピピー。お前オフサイド」
「ラインちゃんと見ろって。俺、お前の後ろの奴狙ったんだけど」
「まぁまぁ。元々あんな速い球、俺は合わせられなかったし。ナイシューじゃん」
「「「ナイシュー」」」
……とまぁ。俺の実力がわかっただろう。サッカー歴半年。技術、知識、身体能力、部活内ヒエラルキー最下位。
こうしたからかいも、さっきの先輩の日課の如く当然になっていた。
「うっさいじゃぼけ! 合わせられたからゴールじゃ! キーパーも見送ってたし」
「いや、ギリオフサイやと思って見送ってた」
と相手ゴールキーパー苦笑い。結論言うと、俺の根性入れまくったダイビングシュートはオフサイドで1点にはならず敵からは情けをかけられていたのだった。
「アレやなお前。ようあんなボール決めるわ」
「確かにあれは反応出来んて」
「お前部活で1番下手やけど点は決まるよな」
ようやく俺の凄さが分かったのか。チームメイトは褒めて来た。いや馬鹿にしてんのか? 俺は起き上がりユニフォームに着いた砂埃を叩いた。
「「「ナイスダイビングシュート」」」
やっぱり馬鹿にされていた。
「全体集合!」
げっ。と言う言葉が似合う気がした。その人物が発した言葉と共にさっきまでの喧騒は静まり返る。監督からの号令。これを聞いた者は例えオフサイドゴールで浮かび上がっている状態でも集合しなければならないし痴話喧嘩をしている先輩も例外ではない。この瞬間は脳内がピリつく。煩悩は消え監督からの恐怖で俺は真っ先に移動し、監督に萎縮し硬直し恐怖し次の命令を待った。何十人と人が集まってくる。サッカー部総勢数百。その中で俺はとても小さく感じられた。
「……。全国大会へのスタメン及びベンチメンバーを発表する。今年もこの季節がやって来た。大会まで残り少し。発表された者はその自覚と誇り持ちサブメンバーは上級生、下級生関係なくサポートする様に。
ではメンバーを発表する」
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「あーさむ」
「それな」
「帰りコンビニ寄らね?」
時と場合は変わり部活終わりの放課後。
俺はサッカー部2人と帰路に着いていた。無意味で発言が皆無な様な軽い駄弁り。この時間にメリットがあるとしたら教えて欲しい。けど『こんな物が』青春。と言ってしまえば納得出来た。数年かそれよりも先か分からないが、能動的に勉学に励み、若かりし事のスポーツ経験に友達と過ごす放課後。これら全ては時々辛く楽しかったりする。この帰り道も習慣になったな。と考えられる程俺は今の生活に慣れてしまっていた。
「コンビニ別にする事ねーじゃん。それに金の無駄遣い。俺カラオケ行きたい」
「うわー。コンビニより無駄遣いじゃん。ブーメランて知ってる? で、どこの店行く?」
耳が何故2つあるのかわかった気がした。どうでも良い事は片方から通り抜けて、もう一つの穴は聞きたい話を聞く為。奴らが上げた話題にどちらかと言えば後者だ。
「コンビニの横は? 安いし持ち込みOKでドリンク飲み放題」
「お、良いなそこ。ファミリーチキンと唐揚げくん買お」
「いや両方チキン。てか二つは店舗違う」
「はぁー。何言ってんだお前は。俺達『公立高校サッカー部』は練習終わりに栄養補給必須」
「あー、一応そっか。なら家帰って飯食えよ。愛しのお母さんがお前の帰りを待ってるぞ」
「母さん料理よりコンビニ飯が美味いのが悪い。それに部活終わりの遊びの誘惑! ここで家帰ったら俺は高校生じゃないねぇ」
と言って、奴は俺に肩を回して来た。辞めろ汗臭ぇ。暑苦しくもある奴の誘いはうざったくはあったが嬉しさもあった。自然と頬が緩んだ。
「で、お前はどうする。期待の一年生さん?」
からかいとも取れる薄い笑み掲げ奴は聞いた。この声を聞いて俺は今日あった出来事を思い出した。
数時間前の部活。そこで確か大会でのメンバーが監督から発表された。3年生、2年生、が多く名を連ねる中、上背の奴の名前は呼ばれた。一年生ながらの抜擢。俺を含む大衆はそれに驚きを感じた。上背のコイツは「はい」と堂々と返事したのだった。
「揶揄ってんのか? 俺ベンチでセンバの変わりいねーからの補欠補完。背があるってだけで好きなポジションやらねーし」
「いや、ごめん。素直に凄いと思ったからなぁ。ベンチだけど一年で選ばれたんお前だけじゃん? 俺ら2人はベンチどころか人手不足の副審か女マネが役割じゃん」
「男子マネージャーて略して何て言うん? ダンマネてあんま聞かん気がする」
俺は女マネて言いやすいなぁー。とジェンダーレスの時代に偏った考えしか持たず適当に話を合わせていた。そんな俺を
「コイツ。高校生活の部活の役割が女マネで良いって。ん? 女マネが良いのか? でもうち可愛い子居なくね?」
前言撤回とまでも行かなくなくとも奴の発言は失礼極まりない事だった。やだぁ。奴とは距離取ろう。俺は女子に嫌われたくない。
「はは。まあお前らも頑張れよ。俺も頑張るからさ。2人がダンマネで良いってなら話は別だけど」
「はぁー? 俺達は『公立高校サッカー部』だぜ? このままサッカー以外の事でサッカー人生終えてたまるか。よし決めた! 俺は高校一のウィンガーになる!」
「俺もセンバじゃなくて、やりたいポジションで点を取りたい。俺はとりあえずトップのレギュラー目指す」
奴は無邪気な笑顔で目標を掲げ、上背なコイツは爽やかな笑顔で目的を叫ぶ。各々の意見を言い合って満足したのか2人の目線が俺に回って来た。
「でお前は? このままサッカー部でサッカー以外の事をするのか?」
「それで満足なのか!?」
2人は冗談混じりに揶揄いながらも俺の答えを待つ。俺はそれにこう答えた。
「うーん。わかんね。でもとりあえずは」
「「とりあえずは?」」
「試合に出たい」
俺がそう言うと。彼等はため息混じりに肩をすくめた。外国人が良くやりそうなジェスチャー。勝手なイメージだけど。なんだか2人がするそれはうざかった。
「正直、同情するわ」
「同感。サッカー歴半年で始めたのが高校生。基礎が出来てなけれゃあルールも曖昧」
「「お前よくサッカー部入ったな」」
「うるさいわ。自分でもどうかしてると思ってるよ。でもさ、ある日お前らみたいな奴が夢中でボール追いかけてるとこ見たんだよ」
そんな恥ずかしい俺の言葉と共に沈黙が流れた。あれ、なんだろ。皆んな目標やら何やら言っていた空気じゃない。辞めろこの時間。こっ恥ずかしいじゃないか。心なしか余計に肌寒くなって来た。
「よし。俺も決めた。俺は試合に出てゴールを決める!」
沈黙が耐えきれなくなって俺は夕陽に叫ぶ。ゴールを決める。ただそれだけなのにそこには強大な壁がある事ぐらい俺も少しは分かっていた。だからこれが俺のサッカー人生の目的であり目標であり夢だ。俺にはまだ彼等の様に強烈なサッカーへの情などない。けれどゴールを決めたい。それは俺の中で確立した考えだった。
「おー、その意気だ」
「ゴールて事は俺は2人をアシストするクロサーで」
「早いの頼む。出来ればフライの方で」
「OK。でお前の分は早くて低い弾道な。よ、未来のツートップ共!」
「はは。まだ気がはえーよ。3人でのホットラインな」
「パスとドリブルは俺に任せとけ。理想はお前がタメ作って、抜け出しは」
「……俺?」
ぶわぁと笑い声が響く。「お前が点取るとか想像出来ねー」とか抜かしやがる。馬鹿野郎、今日、点取ったろ。……オフサイドだったけど。しかしここで俺にある疑問が浮かんだ。夢や目標を語り合った仲だ。分からない事は詳しい人に聞くのが良いだろう。
「俺、FWなの?」
────────────────────────────────
機器たちが並びこの場所は薄暗く、広いのか狭いのかが分からないそんな場所に男は居た。大きなモニターの前に位置し映し出させている映像を淡々と事務的にそして機械の様に観ているこの男の脳内は不明だ。
ただ映し出されている映像は汲み取れる。ディスプレイ、モニターが数々と並びその映像の内容はどれも似たよった物。この膨大な数の物をよく集めた物だ。男はそれをただ観ている。
「よくまぁこれだけの数集めましたね」
男の頭上から聞こえた高い声1つ。どうやら若い女の様だ。
彼女の声音には驚きと呆れの二つが混じっている様だった。
「国内トップリーグの全試合に留まらず、まさか全国の高校生サッカーの試合も観戦とは……。放送局や資金な事に目をやると頭が痛くなりそうです」
「しかも非公式の紅白戦、部活、クラブ内のミニゲームまで……」
「馬鹿言うんじゃないですよ。デカパイちゃん。国外の試合もフットサルの試合も観てるわボケェ」
「デカパイ!?」
男のセクハラめいた発言に女は驚愕する。セクハラと暴言にも驚いたがこの男がしている仕業を。国内のプロサッカーの試合だけで数は50を軽く超える。それに加え国外のサッカー、フットサルともなると何百時間の試合や【サッカー】の映像をこの男は観てきたのだろう。
「お、3分経った。ま、これ観ながらだと冷え冷えの伸び伸びカップ麺になるんだけど」
「いくら仕事と言えど食事中は控えられては? それに今日それが1食目ですよね?」
「うるせいわ。だから太るんだよボール娘が」
「貴方て人はサッカー以外でどうやって生きてきたんですか……」
男、
「高校生FW300人を集めたこの
彼女の問いの後、幾分の時間があった。沈黙とも言えるその時間に彼女は緊張感を覚えた。固唾を飲み絵心甚八の答えを待つ。
「アンリちゃん、FWの役割て何だと思う?」
「……え? えっと、前線の守備、身体能力、テクニック、……エゴ?」
「それもそうだけど。そうじゃない。サッカーに置いてFWに1番求められるのはゴールだ。前線の守備? 身体能力? テクニックにエゴ。どれも素晴らしい要素だと俺は思う」
「じゃあ、なら!」
「【サッカーは相手よりゴール奪う競技】だ。だから試合の円滑さや不平不満が出ない様にオフサイドなんてものがある」
「えーと、つまりどういう事ですか?」
「だからどんな形であれ【ゴールを決める】それがFWの仕事。派手なドリブルで相手を抜くのも結構。だがワンタッチでゴールを決める方がFWとしての効率は遥かに良い」
絵心はそう言って端末を動かし、あるサッカー部の練習映像を帝襟に見せた。それを見て帝襟は困惑した様な顔でそれを見た。
「
帝襟はこの映像を見て更に困惑した。未来のW杯を担うFWとしては些か力不足。一言で言うと初心者。と言うのが印象だった。
「公立高校サッカー部。それはそれは強豪。全国の常連にコイツは在籍している」
「勿論、学校名からここのサッカー部の実績は知っています。有名ですから。しかし、彼を選ぶのなら他にも居たのでは? それこそ1年で全国大会に選出された長身の彼、快速のウィンガーにも魅力的な選手はこの部には居ます」
「アンリちゃん、これ見てみろ。コイツが今日の練習でしたミニゲームのゴール数は5ゴール。ワンゴールはオフサイド。
「彼、FWなんですか? え、サッカー歴半年でゴールを? 例えそれが練習だとしても」
「ああ。強豪でこの結果だ。奴らは良い買い物したんだろうな」
帝襟の疑心が変わっていく。映像を見るにこのプレイヤーは初心者だと確実に分かる。けれどゴールを決めている。それも強豪チームでプレー歴半年でありながらだ。サッカーと言うスポーツは育成年代が組まれる程、幼少期の頃の教育が大事で、高校生でサッカーを始め活躍するのは一握りだと聞く。帝襟は不安は消えて行き、ゴールシーンを振り返って観てしまっていた。
「全部、……ワンタッチ」
絵心はその呟きに表情一つ変えずこう答える。
「有名な話だ。あるスター選手が居た。彼は若かり頃はそのスピードとテクニックで相手を置き去りにしていく快速ウィンガー。しかし年を取るにつれそのプレースタイルに変化が訪れた。相手を派手に抜き去る華麗なプレーから中央に位置し、ゴール前にいる
「つまり
「そうゆう事。半年でコイツは自分が何処に居たらゴールを取れるか見極めている。オフザボール、瞬発力、出し手の確認」
「……ブルーロックは才能を開花させる場所。彼に足りない物を合わせたら」
「コイツはゴールを決めるだけにプレーする
読了ありがとうございます。
出し手がいたら活躍する主人公なので蜂楽君や氷織君と相性良さそう。
奪敵決戦チーム
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二子、氷織
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士道、糸師凛
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時光、蟻生、
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剣城、我牙丸
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烏、乙也