俺、FWなの?   作:名前決ま欄

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2話

 

──────その日、男は初めて痛感する。

 自分の弱さや無力さを。男は心の隅には少しの自信と驕りがあった。自分には才能がある。と言う小さなプライド。

【井の中の蛙大海を知らず】されど空の高さ知った。男にとってそんな日でもあった。己の実力、無知を知り男は青の頂点(ブルーロック)を目指す。──────これは日一京(ひいちきょう)が日本一のストライカーになる為の物語。

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「本間呆れたわぁ。君、どこでボール蹴ってるん」

 俺はそんな呆れ声を頭上に感じつつ、俺はサッカーコートに大の字で寝転がっていた。肩で息をしながら、口からはぜぇぜぇ。と情けない吐息が俺自身だとすると情けない。

 

「……はぁ。どこって……。わかんね。つま先?」

「なんで疑問系……。まぁええわ。ドリブルにも色々仕方があるやけど個人差あるしそこは追々として。……日一君は本間日一君やわ」

「それ褒めてる貶してる? てかお前らが凄いだけ。パスだのシュートだのドリブルだの。あと何だっけ。ワンツー、無回転、ダブルタッチ、 メッシ、PKが凄いわ」

「その発言で日一君が凄くない事がわかるわ。あと最後の発言は信者に殺されんで」

 

 俺はそれに戦慄し直接かの如く起き上がった。まったく信者て言うのは。同じサッカーをして憧れを抱くプロなんだから負の感情を持ち出したらサッカーが面白く無くなるのに。……あれ? 俺、今良い事言った? 「なぁ氷織」と賛同を頂こうとした所で、ある球体が動いた。それすなわちサッカーボール(・・・・・・・)だ。

 

 

 

「ふざけんなよ!? 氷織! 今、肩で息してたところ!」

 俺は数メートル離れた所にいる氷織に叫んだ。……まったく俺達と言う生き物はサッカーボールが動いたらその後追う習性でもあんのか。そんなキラーパスを出した氷織は呟いていた。

 

「それ追いつけんの凄いわ。足の速さは普通やけどボールに対する執着凄いなぁ日一君は。がむしゃら守備にもそこは顕著に出てるし……」

 

 何やら彼は1人考えている様子。足の速さが普通なのは気にしてるんじゃボケェ。でも練習中やボールを追いかけている瞬間は、何だか脚が速くなったように、疲れを知らない身体になったかのように思える。それを氷織に聞いてみる。

 

「多分、それアドレナリンや。歩くだけでも脳から分泌される訳やから、サッカー中、日一君はキマッてるんやろ」

「なんだそれ。……薬物中毒みたいだな」

「え? そうやで僕達はサッカー中毒(・・・・・・)や」

「ひぇー、ブルーロック怖ぁ。中毒者の隔離施設かよ」

「実際そんな所やろ。君はまだ中毒じゃないと。尚更腹立つはぁ。半年でゴール決めて今のパスにも反応するし」

 氷織が顰めっ面を見せて来た。俺はそれを目視しつつ、足元のボールを脚でコロコロと動かす。足裏コントロールと呼ばれる物をして俺は氷織に再度質問した。

「氷織こんなんで上手くなれんの? 今んとこ対面パスとかボールタッチだけなんだけど」

「何言うてんねん。対面パスはインサイドキックの基本、トラップの基礎や。ボールタッチだって君が今してるそれも技術になる」

 氷織は「プレー中、君の中で足裏コントロールてのが選択肢になる。ボールタッチて言うのはプレー中どこで触るかていう練習にもなるんやで」

 と至極当然の様に正論を言う。ただ、人間の脳が悪いのか俺の脳が悪いのかどうしても単調な練習には飽きてしまう。俺は足元のボールを転がしながら考えていた。

「逆に君に質問や。日一君がいるそこはペナルティーエリア前。ゴールまでの距離はまだ20m。そこで君は何を考えてどうする?(・・・・・) 実践どうぞ」

 

 氷織は腕を組みゴールとそして俺を見た。さぁ、やってみろ。とコーチの様な眼差しで俺を見ている。俺は直感を信じゴール目掛けて、力一杯ボールを蹴った。

 

 

「それが君の今の実力や。状況はドフリーでゴール前ど真ん中。DFからの激しいマークやコースの切り、そしてキーパーも居ない」

 

 俺のシュート(前に飛ばしただけ)はゴールポスト横を過ぎ、滑稽にそして俺の無様さを笑う様に俺の元へ帰って来た。

 

 

「でもシュートは打ったしゴールポストも掠めた。試合だっていつもみたいに上手くいくって」

 

 俺は後ろ髪を描きつつ氷織に作り笑い(・・・・)を浮かべる。試合ではない状況で、フリーで、そしてキーパーも居ない状況でも俺のシュートは入らなかった。それが現実だと分かったから辛かった。

 

「確かにシュートを打った事は悪くない。けど日一君、君は何も考えずただがむしゃらに動いただけや。日一君も知ってるやろ。ゴールの大きさ」

 

 

 

 俺が下を向いているとボール1つ転がって来た。氷織だ。氷織は俺の横にボールを置きその先(ゴール)を見据えていた。

 「縦2.44、横7.32。それが120mにも及ぶコートのゴール(1点)や。相手ディフェンスにコースを切られた。ならボールを1つ分横に動かせば良い」

 氷織はアウトサイドでボールを横にスライドさせる。

「ゴールまでまだ遠い。ならボールを動かせば良い」

 氷織はボールを前に少し蹴った。

 

「ほら。地味で退屈な練習もこう言った時に生きる。ここまで来たら簡単や。【得点はゴールへのアシスト】」

 

 

 氷織がそう言い、蹴ったボールはカーブもせず高く飛ぶ蹴り方じゃない。インサイドでボールを前に押し出しただけ。

───ボールは綺麗に飛んで行きゴールに入った。それはまるで最も簡単なシュートに見えて、氷織羊の今までの努力が積み重なったシュートの様に俺は見えた。

 

「【止めて蹴る】サッカーの基本や。そこに派手なテクニックもスピードもキック力も関係ない。こう言った積み重ねが僕をレベルアップさせてくれんねん。日一君はボールをトラップする事に何を求めてるん?」

 

「……【ゴールを決める為】。シュートを打つ為。トラップする為に良いポジションにいる事。それまでの間、ゴールに直結出来る様な考えを持って。て事で合ってる氷織?」

 

 俺は氷織羊と言うサッカープレイヤーを見据えた。彼が言ったサッカーの基本【止めて蹴る】を体現している(・・・・・・・)プレイヤーが彼だと思ったから彼の答えが欲しかった。

「ま、及第点やなぁ。トラップにもワンタッチで相手を抜かトラップとかももあるしなぁ。それでも日一君はパス練やボールタッチに不満があるん?」

「ない。ごめん氷織。俺の態度が悪かった。試合ギリギリまで練習付き合って貰ってるのに」

「本間やで。優しいわ僕。京都人は嫌味だけちゃうやろ? まぁ、1人嫌味だけな奴もおるけど」

「あと暴言もやなぁ」と氷織は誰かのこと思い返しブツブツ言っていた。

 

 

 

「試合まで残り数時間。出来る事はやってると思う。日一君。サッカーに置いて一朝一夕で身につく技術なんて少ない。今日の試合は君の長所を生かしていこう」

「ゴールを決める。それが俺の武器だと思ってる。……試合勝てるかな氷織」

「それは日一君が決める事じゃない。試合を勝つのは君でもあって、僕や他の皆んなでもある。いつも試合を勝つ(決める)のは自分自身やで」

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【ブルーロック】

 第一次選考。五棟からなるブルーロックを一棟55名から5チーム作り、ワンチーム11名のサッカー試合。公式ルールから乗っ取りオフサイドなどの厳密な規則も適用する選考。

 

 各チーム、他チームと全試合し勝ち点3、引き分け1、敗北0となるポイント制で上位2チームがこの青い監獄で生き残れる。

 最初の鬼ごっことは違いこれはサッカーの試合だ。純粋に自分の力、自チームのチームワークが試される選考と言っても良い。下位3チームの中に一棟の得点王がいればソイツ1人は生き残れると言ったエゴイズム。他者を蹴落とし自分がのし上がるのも良しとするルールに俺は一抹の不安抱いていた。

 

 

 

 

 

【フォーメーション 4-4-2】

 このフォーメーションはサイド、中央に人を配置し、古来から攻守共にバランスが取れたフォーメーションと言っても良い。中高でのチームにこれが多いのも頷けるし、氷織含め俺やチームメイトも反論はなかった。ただ問題はポジション決め。なんせ全員がFWなのだ。当然、意義が上がったりを繰り返し、最終的にはチーム、ブルーロックランキング最上位者。氷織羊によってポジションは決められた。

 

【FW氷織羊 FW日一京】

 

 

 

 開戦の始まりが近づくに連れて他チーム11名がピッチに入場して来た。先にピッチに居た俺達はウォーキングアップ、ストレッチをし入念な作戦会議を開いた。

 

『戦術は基本、マンツーマンで行こう。前線の守備は僕と日一君が走るから、近い人が近い相手に着く。僕達はまだまだチームワークが足りない。試合中、声出しは基本的にやっていこう』

『あぁ。でも俺にも提案がある。やはり俺達はFWだ。そこで俺達の本気のプレーが出来る。疲労や体力の問題からツートップはローテーションすべきでは?』

『うん。そうやなぁ。君の言う通り僕らは全員FW。慣れないポジションでやりにくさがある。そこは試合中、皆んなの意見を尊重しよう』

『分かった』

『皆んな相手チームの選手に詳しいなら今の内に確認しておこな』

『長身の奴は俺と同じ関東のユース所属だ。やはりコイツはキープ力が高い』

『高いキープ力に同じユースねぇ。……わかった。その人がトップに居ると考えても良さそうやなぁ』

 その時、俺は一瞬だったが氷織の強張った顔を見た。その事が気になり率直に聞いてみた。

 

 

 

 

 

「来よったで。僕と同じ関西ユース所属の性悪が」

 ゾロゾロと相手チームがピッチに入ってくる。11対11が揃った時に氷織は俺に話しかけて来た。なるほど。アイツ(・・・)か。

 黒髪に泣き黒子。名前を先に聞いておりその風貌は名前が人を表すと言った具合の雰囲気を醸し出していた。

 

 烏旅人(からすたびと)

 氷織と同じ関西ユース所属で長身かつ技巧。高いキープ力と観察力が高いと氷織に教えられた。強力な相手。自由な時間は与えてはいけない特別な選手(・・・・・)だと言えよう。そんなプレイヤーがこっちに近づいて来て話しかけて来た。その顔にはうすら笑みが浮かんでいた。

「何や。お前、また女らしい顔なったんちゃう? 筋力は大丈夫なんか?」

「容姿いじりしか出来ひんの? 幼稚な奴やなぁ。焼き鳥にして食ったろか? (とり)野郎」

「はっ、相変わらず怖いわ。同じ関西人通し仲よーしようと思って。……そっちは新しい友達の日一京か?」

 一抹の会話を横目で聞きつつ俺の名前が烏に呼ばれた。別に知り合いでもはないし、これから互いの未来を潰し合う関係なのだから挨拶も無用だろう。俺は軽く会釈をした。

「ご丁寧にどうも。ま、大した事なさそうで安心したわ。アンタ良かったなぁ。こんな優しい奴がいて。パスが良かったら誰でも決められるで」

「あ? 言っとけよ。僻みか? 自分が点取れからって。俺の抜け出しに氷織が合わせてくれてんだよ」

 

 初対面で妙にうざったらしい烏に俺は少し苛立ったのかも知れない。氷織の事もあったし何より俺のプレーが否定されている様な気がした。

 

「めでたい奴やなぁ。初心者が点取れる訳無いやろ。全部は出し手や。90点のプレーできる奴に10点のプレイヤー居たら100点や。お前もお前やで。ここで言ったら自己主張、エゴが足りんのちゃう?」

「10点て誰の事だ。もう一回言ってみろ」

 

【両チーム、各自ポジションに着いて下さい。試合開始まであと3分です】

 

 無機質の機械音が響いた。それを聞いた烏は踵を返して行く。俺は頭を冷やし、アナウンスの指示通りポジション着こうとした。その時、横から氷織の声が聞こえた。

「気にせんで良いで。あーゆう奴やし。けどプレーは本物や。冷静にやで日一君」

「分かった氷織。いつもみたいにゴール前に早いの頼む」

 

 俺がそう言うと氷織からの返答はなかった。その沈黙の意味に俺は気付いていた。けれどこれ以上聞いてしまえば自分が傷付くのが怖くて聞かなかった。この過ちをもっと早く気づけば結果は変わっていたかもしれない。けれど時は進む。

 

【試合開始まで10秒前。5秒前】

 

「お前のラッキーゴールもここまでや」

 ニヤリと笑う奴の顔。挑発を受けとり

 

 

kickoff!

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奪敵決戦チーム

  • 二子、氷織
  • 士道、糸師凛
  • 時光、蟻生、
  • 剣城、我牙丸
  • 烏、乙也
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