この鎮守府に来て島風の初めての任務は遠征任務であった。
雷同提督から遠征の為に第3艦隊遠征部隊の旗艦、天龍を訪ねるようにと指示され島風は遠征部隊のブリーフィングルームへと案内された。
その日の秘書艦であった球磨に案内される道中この鎮守府の天龍について聞かされた。
曰く、相手が戦艦だろうが怯むことなく立ち向かうヤツだと。
曰く、弾が尽きても刀で敵艦を滅多刺しにするヤツだと。
曰く、己が大破しようと必ず敵艦隊を撃滅して帰ってくるヤツだと。
人呼んで『不死身の天龍』
出撃の度に血塗れになり敵艦隊を屠ってきた天龍についた二つ名であった。
そんな天龍を心配した妹の龍田が提督に懇願して遠征部隊へと配属になったのだと。
コンコンコン、少し緊張気味にノックする島風。
少しして「入れ」と返事がきた。
ドアを開け入室した島風の目に飛び込んできたのは
部屋の中を動き回る自動掃除ロボットのル◯バを鋭い眼光で見つめている天龍だった。
しかも黒いスーツにエプロン姿で。
「イモ引いてんちゃうぞ!!しっかりカドまで追い詰めたらんかいっ!!!………あ、誰だお前は?」
島風は思った。
この天龍、人相が悪い、と。
「この度、遠征部隊配属となりました。駆逐艦島風です!よろしくお願いします!」
「……俺が天龍だ……(ニィィー)」
島風は思った。
この天龍、コワイ、と。
やがてブリーフィングルームに遠征部隊の面々が集合した。
天龍、龍田、島風、雪風、黒潮、巻雲である。
島風を含め駆逐艦達は初任務であった。
雪風達も天龍のことについて聞いたのか皆いささか緊張した面持ちである。
「お前ら、たかが遠征とナメとんちゃうぞ、俺らが日頃からブツ集めてるおかげでこの鎮守府は潤っとるんや」
ブリーフィングでは天龍がそう切り出した。
「姉貴、ブツって……?」
黒潮がそう零した。
緊張からか口調がおかしい。
天龍は続ける。
「お前らの中からはやがて第1艦隊に配属される奴もいるだろう。そうなった時に俺ら遠征部隊の頑張りを覚えていてほしい……」
そう言って天龍は目を閉じ一呼吸おいた。
今は遠征部隊だが天龍もかつてはそこに所属していた。
その時のことを思い出しているのだろうか。
天龍が今回の任務について説明を始める。
「今日は長距離演習航海や。鋼材、弾薬を掻き集めたれ。
…遠征の途中で運良く輸送ワ級に出くわすことがある。チャンスやでぇ、なんでか分かるか?」
天龍が島風達に問う。
「はい!」と元気良く声と手をあげて雪風が答えた。
「なるほど、ダンプでカチコんでワ級の物資を奪うんですね!?」
「アホンダラぁっ!!」
天龍の喝が飛ぶ。
「敵勢力やゆうても相手は戦闘目的ちゃう、俺らと同じブツ集め目的の云わば同業や、おんなじ目的で航海しとるナカマ相手襲撃なんてアコギなマネ出来るかいっ!!」
「えぇ……」
「……情報交換や」
〜~~〜~〜
「お疲れ様です。そっちの方どないですか?」
『ア、こりゃどうも。まあボチボチってとこデスね。それにしてもウチの姫さん達、ワ級使いが荒いのなんの、もう太平洋あっちこっち行ったり来たりデスよ!
この前なんてバシー付近で大量の艦載機に襲われましてね。こちとらいくら護衛がついてるとはいえあの護衛のヤツラほぼバカンス気分デスから。
そうじゃなくてもあの絨毯爆雷撃、たまったもんじゃありませんデシタよ』
「あ~あの辺…、このクソ暑い中ご苦労さんです。あ、良かったら自家製なんですけどレモネードいかがです?」
『えぇ!いいんデスか!?ありがたくいただきマス。………ぷはぁー生き返るぅ!…お詫びと言っちゃなんデスが、ここから3時の方向にアナタ達にとって使えそうな物があるのを見かけマシタヨ。それではこの辺で、アナタ達の航海の無事を祈りマス!』
「そっちこそお気をつけて」
〜~~~~~
島風達は思った。
ワ級めっちゃ喋るやん、と。
自家製レモネードいいな~、と。
「そして、ワ級から得たタレコミを基にその穴場ヘ向かうと……」
「向かうと…?」
「海の底に沈んだ、艦娘達が気持ち良〜くなるキラキラしたブツを回収できる。コイツはキメると飛ぶでぇ〜(ニィー)」
……ゴクリ
「海の底に沈んだ、キラキラしたキメると飛ぶブツ……?」
「そう!修復材や!!」
ーーーー修復材かよ!!ーーーー
その後、天龍の自家製レモネードを飲んで出撃した遠征部隊は無事に大成功を収め資材と修復材を鎮守府に持ち帰ったのだった。
「「「「ワ級めっちゃ喋るやん!」」」」