あぁ、あそこの鎮守府の話ね…   作:お手元ポテト

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赤ちゃんって何でも口に入れちゃうから…


ロッカーの思い出

 

その日の執務が一段落し、お茶をしばいていた島風は雷同提督が何やら満面の笑みでファイルらしきものを眺めているのに気づいた。

 

尋ねてみると彼女の愛娘勇ちゃんのアルバムらしい。

 

当然島風は見せてほしいとせがむ。

雷同提督はここぞとばかりに愛娘の可愛らしさを写真を交えながら語り出した。

 

勇ちゃんがまだ赤ん坊の頃、鎮守府に連れてきたことがあったという。

その話をした時、同じく執務室で話を聞いていた大淀が一瞬びくと震え、窓の外を見遣る。

 

大淀はその時のことをひっそりと思い出していた。

 

 

 

 

「私の天使が寝ている。騒いで起こすなよ」

 

執務室までベビーカーを押してきた提督が言った。

ヒトの赤ん坊など見たことのない大淀は興味あり気にどれどれとベビーカーを覗いた。

 

「ッ゛!!!」

 

その時、大淀に衝撃走る。

ふっくらしたほっぺ、寝ているのに時折ムグムグと動くおしゃぶり。

見ているだけで癒やしの最高峰。

普段提督があれだけ惚気けるのも納得ものであった。

 

 

ベビーカーの中ですやすやと眠る勇ちゃんをみて大淀は即落ち(キラ付け)した。

 

「ひ、ひぃ~~♡、おててちっちゃいでちゅね〜♡」

 

「勇ちゃんを連れてきてなんだが、執務はいつも通り頼むぞ大淀。私は少ししたら執務室を離れねばならないが一応鳳翔に後からきてもらうつもりだ」

 

「ひぃ~、何かモグモグしてる〜きゃわ~♡」

 

大淀の口調が少しおかしくなってはいるが、勇ちゃんの可愛らしさの前では仕方なかろう、と提督は微笑ましく眺めていた。

 

 

少しして提督の携帯に着信あり。

 

「はい、…はっ!了解であります。では……。…っく、もうか、大淀、先程言った通り少し空ける。後から鳳翔を子守として寄越すから。頼んだ」

 

「は、はい了解しました。提督、お気をつけて」

 

提督は少し足早に執務室を後にした。

ベビーカーを覗き込んでいた大淀は我に返る。

執務を遂行しなければと腰をあげたその時、勇ちゃんと目が合った。

 

ーーー天使が私を見ている。

いや、ではなくて起こしてしまったか!?ーーー

 

勇ちゃんは眠たげな眼で大淀を見つめ、おしゃぶりをムグムグと動かし、やがてぷっと吹き出し泣いた。

 

「ふ、あぁ~、あぁぁ~!!」

 

「っ!!?」

 

パニクる大淀、鳳翔さんはまだ来そうにない。

動揺しながらも大淀はおそるおそる勇ちゃんを抱き上げて抱えた。

 

「よ、よ~しよし、泣かないで〜」

 

大淀のファインプレイ。

勇ちゃんは大淀に抱きかかえられると泣き止んだ。

 

大淀は優しく揺りかごのように勇ちゃんをあやした。

腕の中の勇ちゃんから目が離せない大淀。

この時大淀は自身に今までにないほどの温かい感情が溢れているのを感じた。

 

ムグムグと動く勇ちゃんの口元を見つめ、

やがて大淀は服を胸上まで捲り上げ片乳を勇ちゃんの口元に当てた。

 

ーーーおっぱいをあげねば…!ーーー

 

勇ちゃんは何の躊躇いもなく大淀のソレを食んだ。

 

「ーーーっ!!!」

 

大淀、この日二度目の衝撃走る。

 

ーーー私がママだったのかもしれないーーー

 

 

「っ!?」

 

その時大淀の電探に感あり。

執務室に近づく者の気配、トリップしかけて気づくのが遅れた。

大淀は勇ちゃんをベビーカーに戻し、執務室のロッカーに身を隠した。

 

ふと、私はなぜ隠れる必要があったのだろう、と大淀は我に返ったが時既に遅し。

ノックの後、執務室のドアが開いた。

 

現れたのは金剛であった。

 

「ヘイ!テートクゥ!って……留守の様デスね~。あれ?ベビーカー?」

 

金剛は日課である提督をお茶に誘いにきたところであった。

提督は留守だったが、執務室に見慣れないモノがあるのに気づき様子を見に近づく。

 

そしてベビーカーの勇ちゃんと目が合う。

 

「ーーーっ!!?」

 

金剛に、衝撃走る。

 

金剛はベビーカーの前で腰が抜けてぺたりと膝をついた。

勇ちゃんにおそるおそる手をのばす。

金剛の指が勇ちゃんを小さな手の平に触れると、勇ちゃんはひしと柔らかく金剛の指を握った。

 

ーーーオーマイッ…!!ーーー

 

金剛はやがて立ち上がり、勇ちゃんを抱き上げて抱えた。

 

「ヘ〜イ♡ワタシがおねぇちゃんダヨ〜♡」

 

鎮守府の勇ちゃんの姉を名乗る不審者が誕生した瞬間である。

 

「ヘヘッ、おねぇちゃんがご飯あげるデース♡」

 

「うー?」

 

金剛は自身の片乳を出し勇ちゃんの口に含ませた。

 

ーーーワタシがおねぇちゃんダヨ〜♡ーーー

 

「ヘヘッ、へへへ♡」

 

その時金剛の電探に感あり。

執務室に近づく者あり。

金剛は勇ちゃんをベビーカーに戻し、執務室のロッカーに身を隠した。

 

 

ロッカーの先客、大淀との邂逅、青ざめる金剛。

自分はなぜ隠れる必要があったのか。

大淀はなぜこんなところにいるのか。

 

「…み、見てたデス?」

 

「…ごめんなさい」

 

 

執務室に現れたのは空母オバ…空母棲姫であった。

 

「雷同提督、今度ヤル合同演習会ノコトデ…ナンダイナイジャナイ。…アレ?」

 

空母棲姫は執務室に見慣れないモノがあるのに気づく。

ベビーカーに近づき勇ちゃんと目が合う。

 

「アラァ〜、ヒトノアカチャン!!カワイイッ!!」

 

たちまち相好を崩す空母棲姫。

自然と手が伸び、その指で頬をつつく。

勇ちゃんのほっぺはぷにぷにしていた。

ほっぺをつつかれた勇ちゃんは空母棲姫に笑顔を返した。

 

「う!」

 

「ヒィッ!カワイイッ!!アカテャン!!」

 

空母棲姫は勇ちゃんを抱き上げ、

おもむろに自身の片乳を勇ちゃんの口元に当てた。

 

「ーーーッ!!?」

 

空母棲姫に衝撃走る。

 

ーーーテ、テクニシャンッ!!ーーー

 

「…ッオ!…ォ゛ッ♡」

 

その時、空母棲姫の電探に感あり。

執務室に近づく者あり。

はっと我に返り空母棲姫はベビーカーに勇ちゃんを戻し、執務室のロッカーに身を隠した。

 

ロッカーの先客、大淀、金剛に気づく空母棲姫。

ナンデコンナトコロニ大淀ト金剛!?

私ハナゼ隠レル必要ガアッタノカ?

 

「…エト…」

 

「………」

 

気まずげに沈黙する三人。

 

 

 

執務室に現れたのは鳳翔であった。

 

「あら、どなたもいらっしゃらないですね。あのベビーカーは…」

 

提督に執務室に愛娘がいるので空ける間、世話をしてほしいと頼まれた鳳翔。

鳳翔はベビーカーを覗き込む。

勇ちゃんはすやすやと寝息を立てていた。

 

「あらあら、勇ちゃんは相変わらず良い子ですね」

 

眠っている勇ちゃんの傍らにあるおしゃぶりを勇ちゃんの口元に当てると勇ちゃんはムグムグとおしゃぶりを咥えた。

 

「うふふ、見ていて飽きませんけど、大淀さんも見えませんし執務を進めておきましょう」

 

鳳翔は勇ちゃんが大人しく眠っているのを確認して執務を始めた。

 

 

 

 

それをなぜか身を寄せ合い息を潜めロッカーから見守る三人。

さすがにロッカーの中に三人は息苦しい。

どうして我々はこんなことになっているのか。

普通に堂々としていれば鳳翔のように勇ちゃんの寝息を聞きながら執務するなり静かで穏やかな時間を過ごせていただろうに。

 

ふいにロッカーの三人の誰かの尻から「ぷすぅっ」と極々小さな音が漏れた。

 

ーーーッっ!!!ーーー

 

三人、悶絶である。

 

 

少しして鳳翔が立ち上がった。

楚々と執務室のトイレに入る。

 

 

ロッカーの三人、脱出の好機である。

しかし、

 

「ちょっと、誰デスか!?殺す気デスか!?」

 

「私ジャナイワヨッ!!」

 

「私も違いますからねっ!!」

 

この好機に喧嘩する三人。

 

 

やがて鳳翔はトイレから戻り、勇ちゃんの寝顔を見て執務に戻った。

 

しばらくして提督が執務室に帰ってきた。

 

「ただいま戻った。ん、鳳翔だけか?」

 

「おかえりなさいませ、提督。大淀さんは出られているみたいですね」

 

「そうか、勇ちゃんはどうだった?」

 

「大変お利口さんにしておられましたよ」

 

提督はベビーカーで寝ている勇ちゃんの様子を見る。

 

「ふふっ相変わらず我が子が可愛すぎるな。鳳翔は執務もやってくれていたのか、ありがとう」

 

「いえ、穏やかな時間を過ごさせていただきました」

 

「そうか、昼前だが勇ちゃんが寝ている隙にいっしょに昼食にしよう」

 

「でしたら私の店を開けましょう。食堂だと賑やかすぎて勇ちゃんがビックリしてしまうかもしれませんから」

 

「お、すまんな。では利用させてもらおう」

 

そう言って提督はベビーカーを押した。

 

鳳翔は少し片付けて提督の後につづく。

提督が執務室を出て、鳳翔はふと立ち止まり、呟いた。

 

「……誰か三人…いったい何を…?」

 

 

やがて鳳翔も執務室後にして、ロッカーの三人は外に出た。

去り際の鳳翔の言葉に戦慄しつつ、時にときめき、時に恥辱を味わい、時に怒り、互いに苦しい時を過ごした三人。

奇妙な達成感と連帯感を感じた三人は今日のことについて他言無用の誓いを立てたのであった。

 

 




パロディである。
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