転生ヒスイ人のガラル紀行   作:はっぱ

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プロローグ 木の実で餌付けは基本

 

 

 

 

 

 あっ! やせいの──が とびだしてきた!

 

 そんな文章を何度も見てきた。草むらから飛び出すような感じで、ありきたりで分かりやすいものだ。

 それがふと、何で草むらから飛び出してくるのかと思うようになった。

 

 草むらということは人が通るような場所、道ではないということ。

 つまり道から外れてはいけないといっているのだろう。

 人が通らないような場所には必ず狂暴でとても恐ろしいポケモンがいるのだと、俺は前世で解釈している。

 

 そんな俺は死んで、ポケモンがいる世界へ転生した。

 だから前世の頃から感じていた疑問がヒスイで生まれて理解できたような気がする。

 

 前世でゲームとして遊んでいたポケモンだが、シリーズを通してやるごとに何故なのかという疑問が頭に思い浮かぶようになっていたから。

 まあ、そのときは現実にいないポケモンだからそこまで深く考えたわけではないけれど。

 

 ただ何故主人公がポケモンを持ってない状態で草むらに入らないのか。システムの都合だとしてもそれが現実だったら何で入れないと言われているのか。

 

 その時は、ポケモンとは動物と同じだと思っていた。

 人と寄り添い生きていくペットがいたとしても、それとは逆にとても狂暴で飼うことの難しい動物がいる。

 まあつまり、主人公が草むらに入らないのはそれが死を意味するからだと思えたのだ。

 

 でも、転生して気づいた。ポケモンはとても恐ろしく扱いが間違えば死ぬのは確実だと。草むらに入らないというのは最低限の自衛のため。きっとこのヒスイの土地より時代が進んだだろうシンオウ地方などでは土地開発が進んで安全な場所が確保できているはずだ。ヒスイでいう所々に設置されたキャンプ地のように。

 

 だからそこまで行けば安全を増やした結果がゲーム世界であり、草むらだけは危険だと教えられてきたということ。

 

 今の時代、俺がいる町ではポケモンは危険視されている。小さい頃の俺は前世でのゲーム知識があるから大丈夫だと楽観視していたが駄目だった。町から少しだけ外れた場所。それでも人の手は行き届いているためポケモンが来ることはないはずの場所に、偶然ポケモンが迷いこんできたのだ。まだ五歳だった。俺が一人で散歩していた時に、アゲハントに出会った。

 

 ヒラヒラと飛んでいるそれに、目を奪われた。初めてポケモンをみたんだ。なんせこのヒスイ。それもコトブキ村に生まれた俺にとってポケモンは凶悪だと教えられ見ることすら叶わなかったのだから。

 

 とても綺麗な模様をしたそいつに近寄ってしまった。ふらふらと蛾が電灯に惹かれるがごとく。

 

「コウキ!」

 

 その煌びやかな羽から放たれたのは、きっとポケモンの技。それをまともに食らったせいで1ヶ月ほど歩けない状態になってしまい両親に心配をかけてしまった。

 よく聞けばコトブキ村の警備や調査を担当してくれるギンガ団に助けられたとか。たぶんギンガ団にもポケモンを持っている人がいるらしいのでその人たちのだれかに救われたのだろう。アゲハントがいた場所を立ち入り禁止区域にし、ポケモンが侵入した経路を探すと言っていた。

 それが彼らの仕事というのは分かっている。村のために最善を尽くすのは理解できるが、自分の好奇心が原因だし警戒なく近づき手を伸ばしたのがいけなかったと思うので、余計な仕事を増やしたかなと申し訳なくなった。まあ俺じゃなくても子供の誰かが事故にあう可能性を考えれば妥当か。

 

 ポケモンによって怪我を負ったけれど、それで恐怖したわけじゃない。むしろ夢だと思っていた現実から目が覚めた。

 

 今回は俺が悪かったけれど、逆をいえば地雷さえ踏まなければポケモンは寄り添い生きていくことも出来るという可能性をみたのだ。

 痛い目にあったとしてもそれは俺が何も知らなかった無知さ故の事故。自業自得でポケモンのせいじゃないのは明らか。

 

 だから今度は計画し、ポケモンと仲良くなることを目標に行動を開始した。

 

 もう両親に迷惑はかけられないからひそかに。なるべくギンガ団に見つからないようなところで。

 

 

 

 

 

 そこにいたミジュマルはなんともまあ大食らいというか常に腹ペコというか。

 木の実で餌付けをしてみるとミジュマルはとても嬉しそうに鳴いて木の実を食べ始めた。野生の警戒とはなんだったのか。こいつ昔人間にでも飼われていたのか?

 

 人が怖くないのか問いかけると、ミジュマルは首を横に振る。つまり俺の言葉が理解できるということ。

 もぐもぐと、まるでヨクバリスかと思えるぐらい頬に木の実が詰め込まれた姿に思わず笑ってしまった。それにミジュマルは機嫌を悪くしたので慌てて弁解する。木の実をまたいくつか与えると俺の手から食べてくれるようになった。懐くの早すぎないか?

 

 

「俺さ」

 

「ミジュ?」

 

「どこか遠くに旅をしてみたいんだ」

 

 

 ミジュマルはふと食べるのを止めて俺を見た。その顔はいつもの楽しそうなものとは違い真面目で、鳴き声など発せずとても静かだった。

 

 

「ミジュマルは何か夢とかあるか?」

 

「ミィ……ミジュマ!」

 

 

 首を傾けて悩んだ様子のミジュマルが、ふと手元に持っていた木の実を見せてきた。

 

 

「美味しいものを食べたい?」

 

「ミッ」

 

「ならさ、一緒に旅しないか?」

 

「ミジュ?」

 

「木の実だけじゃない。世の中にはまだまだ美味しい料理がいっぱいあるんだ。だからそれを食べに行こう」

 

 

 ミジュマルは目をキラキラさせこちらを見ていた。

 口元によだれが垂れているのはたぶん美味しいものを食べる自分を想像したからだろう。

 

 ずいぶんと食いしん坊だけど、頼もしいのは確かだ。このミジュマルには助けられたことがたくさんある。

 襲いかかってきたコリンク相手にも臆さず、俺の指示すら聞いてくれて倒してくれたのだから。

 

 

「ミジュマルと一緒に旅をしたいんだ。辛いこともあるだろうし、後悔するかもしれないけど……」

 

「ミジュ!」

 

 

 楽しそうに頷いてくれたことに、内心でガッツポーズをした。

 

 

「よろしくなミジュマル」

 

「ミッジュ!」

 

 

 その小さな手を握り、この時から俺たちは相棒になった。

 

 ────まさかミジュマルがダイケンキ(ヒスイのすがた)になるまでたくさんの旅をして、たくさんの仲間に恵まれた後に時空の歪みへ身体ごと巻き込まれ、はるか未来のガラル地方にぶっ飛ばされることになるとは思いもしないまま。

 

 

 

 

 

 

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