転生ヒスイ人のガラル紀行 作:はっぱ
旅をすることが夢であった。
まあそれでもこの世界はかのポケットモンスターの過去。ヒスイ地方というまだポケモンと人との境目がはっきりしていない時代。ポケモントレーナーなんて職業はなく、ブリーダーもポケモンジムなどもないからポケモン専門職な旅人なんてありはしない。
だからまず俺は、ヒスイ地方から旅をすることに決めた。
コトブキ村で生まれ育ったおかげか、これから世界中を旅立ちたいからそのための金稼ぎをしたい、という私欲的な願いでもポケモンを捕まえられるのならとギンガ団に所属することが出来た。
たぶんそれは、モンスターボールに入れてなくても協力してくれるミジュマルのおかげだろう。
他の個体とは違って食いしん坊だけど人懐こい。そして襲い掛かってくるポケモンには容赦なく攻撃してくれる頼もしい一面も持っていた。まあ好戦的なのはきっと食事中にいきなり襲い掛かってきたレントラーのせいだな。ミジュマルが俺の作ったコトブキマフィンを食べてた時にいきなり襲われて泣き叫びながら攻撃してたぐらいだし。たぶんその時から襲い掛かってくる敵は食い物を粗末にする奴と認識しているのか、攻撃されたらすぐ反撃するようになった。
そうしてヒスイ地方を調べまわっている間に俺のポケモンは強くなっていった。ミジュマルも進化したし、ギンガ団のお仕事をしているためゲットしたポケモンもたくさんいる。
でもってそろそろ別の地方へ旅に出た方がいいかもしれない。お金も溜まったし、ポケモンたちも強くなった。もちろんギンガ団の調査のためある程度のポケモンは置いていく必要があるが、俺が一番思い入れのあるずっと一緒に居た何体かは必ず連れて行くと決めた。6体以上だけれど、この世界では手持ち6体という縛りはないし大丈夫だろう。
もしも俺が旅立つより先に主人公に会えたなら、その時は彼もしくは彼女の手伝いをしようと決めた。
そう思って別の地方へ旅立つ準備をしながら数日経ったんだが────。
「どこだここ?」
時空のねじれの中に入ってポケモンを捕まえている最中だったはずだ。なのに気が付いたら見知らぬ森の中にいた。
ヒスイ地方では見たことのないポケモンがいて、立派な木の実が至る所に実っている。
ぼんぐりとかはなさそうだ。ヒスイ地方では木の実が主流だが、何故かここらへんは林檎は実っている。いや、実り過ぎているというべきか。食料に困らないからいいけれど。
ちょっと状況がよくわからないので俺の仲間であるアヤシシをボールから出してその背中に乗せてもらっていろいろ探ってみる。
ボールでちゃんと捕まえることは出来た。まさかのキテルグマがいてビビッてメガトンボールを顔面にぶん投げてしまったが、まあ捕まえることが出来たので大丈夫。
アヤシシの背中でいろいろ見て回ったが────結論として、ここは俺が前世で見たことのあるガラル地方。それもゲームと同じ時代。つまりヒスイ人である俺にとって未来であるというのが明らかになった。
というか知ってるか?
俺の姿って実はダンデに似てるんだぜ。まあ衣服はギンガ団の衣装のまま。あの癖のある髪の毛もそのままにせず、ポニーテールにして結んでいる。
短くしようと思ったこともあったがポケモン調査しているうちに面倒になり止めた。それに短くしても俺の年齢がまだ子供なせいかダンデではなくホップになるのでどちらにしても同じ。それに俺の名前は『コウキ』で、未来時空たるダイパの男主人公のものと同じなんだけどな。
まあとりあえず、結論から言うと俺はヒスイ地方へやってきた主人公とは真逆に未来へタイムトリップしてしまったということ。
俺の容姿もあってか、この世界がガラル地方だというならあまり目立つ真似はしない方がいいだろう。
成り代わりというわけじゃない。彼らが子孫と確定したわけじゃないからな。ポケモンバトルでは弱い方だし。未だにクダリさんに勝てねえもん。
「よし、行こうアヤシシ。とりあえずいろいろ見て、ポケモンも捕まえておこう」
真面目な顔で頷いたアヤシシが、ゆっくりと動き出す。
目指すはガラル地方のポケモンを全て確保すること。アルセウスフォンはなくともそれぐらいはやった方がいいような気がした。
・・・
それはまだ、ホップ達がジムチャレンジを行っていない頃。
「新種のポケモンが草むらから飛び出してくる?」
ゴーゴートやオドシシに似たポケモンに乗った人の形に似たポケモンが『えんまく』をまき散らし、草むらから飛び出し襲い掛かってきた。そして驚いている人間たちに向かってモンスターボールに似た黒くてとっても重いモノを『なげつける』という。しかもそれをポケモンの襲撃と受け取ったトレーナーがとっさに逃げたり驚いて目を閉じた瞬間にはいなくなっているという不可解な目撃情報が相次いで報告されていたのだ。
ジムリーダーによる会議にて目をキラキラさせたダンデが好奇心のまま叫んだ。
「それは一体どんなポケモンなんだ?」
「エスパーにも見えるし、ゴーストタイプの可能性も近いと思うけど……ポケモンに乗ったポケモンねぇ……」
カブが考えるように俯く。
なんせ目撃されたのはワイルドエリアではない。町から町へ行くための合間。○○どうろにて発見されたのだという。
ワイルドエリアはポケモン解放区のようなもの。ポケモンが草むらに必ずいるような場所ではない。
長い歴史をかけてポケモンは人が使う道路などでは草むらに住処を作るようになり、そこに入った人間だけに敵対し襲うようになったのだから。
人が使う場所にポケモンがこっそり紛れ込むように、ポケモンたちがいる場所に人がこっそり行くように。それぞれの住処がはっきりと分かれている。だからきっと草むらから飛び出してきた人間に近い生き物もポケモンだろうと思い込んだのだ。
「よし!」
ふと、ダンデが椅子から立ち上がった。
「危険性は無いと思うが……何があるのか分からない。そのポケモンを捕まえよう」
ガラルチャンピオンの言葉は全ジムリーダーに伝えられる。
それがこの先どういう事態を引き起こすのかも知らずに────。