転生ヒスイ人のガラル紀行   作:はっぱ

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第三話 ワイルドエリアは故郷

 

 

 

 俺の恰好が悪いのか、ちょっとした休憩にとやってきた町に入ったら何故かいろんな人にじろじろ見られてしまった。アヤシシは礼を言ってからボールに仕舞ったし、問題はない筈なんだけどな。

 やっぱり服がいけないのだろうか。────じゃねえな。なんで俺分かってなかったんだろうか。

 

 だって俺の顔はダンデにそっくりである。

 子供たちがこちらへ「ダンデだー!」やら「チャンピオンだわ!」やら歓声あげながら来た瞬間逃げてしまったけれど。それは仕方がない。話しかけられたら絶対にバレるし。

 

 ああ、なんで街中に入ってまでスニーキングしなきゃならないのか。どこにでもある草むらが恋しくなってきた。

 しょうがないので人目につかないよう気を付けながら道路の方ではなく、人間たちがあまりいない場所。ワイルドエリアへやってきた。

 

 ああ。それにしてもこれは問題だ。どうしようか。顔隠すか?

 なんせ俺はこのガラル地方にとって不審者そのもの。ダンデにそっくりの顔だけど変な格好をしたポケモントレーナーもどきだからな。

 ダンデファンだからそっくりに変装しているのかと思われるのも嫌だし、かといっていろいろ誤解されても困る。あと俺ヒスイ地方出身者だから、例え事故だとしてもガラル地方の人々が理解できなければただの不法入国者になるだろうし。

 

 というか、ポケモントレーナーって免許とかいるのかな?

 二次小説とかみたことあるけど、そこでポケモントレーナーにはポケモンを手持ちに加えるには免許が必要とか見た気がする。つまり無免許で暴走した不法入国者であり不審者ということか。犯罪者まっしぐらだな。

 

 

「さて、どうしようかな」

 

「グルゥ」

 

「腹減ったって? まあ確かにそうだけど……」

 

 

 ダイケンキはいつものごとく腹ペコである。

 木の実がたくさん生えている方へ歩き、わざわざ『ひけん・ちえなみ』を使って木の実を全て落としていた。ついでにヨクバリスが落ちてきて木の実を奪おうとした……いや、元々ヨクバリスのだったか?

 まあとにかく野生ポケモンに食料を奪われることを何より嫌う相棒が全力でぶっ飛ばして瞬殺し、俺を見ながら『早くしろコウキ! 他のポケモン共に奪われる前に!』と目線で訴えかけてくる。

 こいつほんと図太くなったよなぁ……前はもうちょっと遠慮ってもんがあったはずだぞ……。

 

 

 それにしてもこのワイルドエリア、なんだかとってもヒスイ地方に似ているような気がする。

 突然気候が変わるわけじゃないけれど空気が似ているのだ。

 

 ポケモンたちが闊歩するフィールド。

 人間が全くいない場所。隙を見せればこちらがやられる。常にどこかで誰かに見られている視線の数々がとても懐かしい。ワイルドエリアって俺達の故郷だったのか……?

 

 混乱している俺に気づいたのか、『しっかりしろ』と前足で俺を軽く叩く。勢いはそこまでなかったが、ふらりと倒れてしまった。

 草が生い茂った大地で仰向けに寝っ転がる俺に呆れたような顔をするダイケンキ。心なしかボールにいる仲間たちでさえ『仕方ねえなこのご主人は』というように軽く揺れた気がした。

 

 ダイケンキたちが何故呆れるのかは分かる。

 たぶん俺にグダグダ悩んでる暇あったら行動しろとでも伝えたいのだろう。でもそうするにはちょっとだけ準備が足りない。

 

 

「あー……どうしよ……」

 

「グル?」

 

 

 俺がここから動く気がないと分かったのか木の実をもぐもぐと食べているダイケンキを見ながらも、この先どう生き抜くのか考えなくてはならない事実に溜息を吐いた。

 

 何度も考えては同じ答えが出てくる。

 まず俺は不法入国者だ。事故だとしてもどう伝えればいいのか分からない。この時代にとって俺が持つボールは大昔のものだからそれを見せるという手があるが、きっと信じてくれないだろうな。ボールじゃなくてもっと確実なものが欲しい。

 せめてここがシンオウ地方だったらシロナさんとか博物館とかに突撃訪問していくんだけどな。

 

 そして一番問題なのがこのガラル地方にはまだローズ委員長がいるということ。

 彼が俺をどう扱うのか不明だが、知られてはならないと本能が訴えかけてくるのだ。

 

 過去から来た人間。それもダンデにそっくりな先祖疑惑のある存在。

 人権なんてなく、好き勝手に使える玩具が増えたようなものだ。だから俺はその身を隠すことに決めた。

 

 そのために人となるべく交流しない方がいいと思ったのだ。

 でも生きていくうえで必要な消耗品が足りなくなってきた気がする。主にボールだ。

 

 俺の持っているボールの素材となるものがこのガラルにはあまりにも少ない。なんか使えそうだなって思ったものもすぐ壊れる。流石にポケモンの命を預かる身なんだからボールもちゃんとしたものを使いたい。だから真剣に探したのだ。

 

 木の実があるならぼんぐりの実だってあるはず。

 たまいしは────使用用途がなかったのか、それともただの使えないガラクタとして扱われているのか。巨大な石に埋もれる形で生えているのが見つかったので回収することは出来た。

 

 ついでに変な渦を巻いたキノコを見つけた。これなんだっけ? どっかで見たことあるけど剣盾はメインストーリーしかやってないしなぁ。リアルに忙しくてアルセウス発売日までクリアできなかったし、後でDLCの追加パックやろうと思ってたぐらいだし。

 

 

「よし、ダイケンキ。ぼんぐり探そう。ついでに木の実とカレー。キャンプしてる奴らの匂い嗅ぐだけで腹減ってきた」

 

「ガル」

 

 

 ガラルにキャンプが流行っているのか。草むらに隠れていると香ばしい匂いがよくしていた。それもカレーである。甘辛中辛激辛。スパイシーでとっても美味しそうな香り。それは道路にいた時もあった。

 ダイケンキも匂いを嗅いだことがあるからか、こちらをじっと見て一声かけてきた。

 

 

「あいつらからカレーを奪えって? それは窃盗だから駄目だ。木の実はほら、自然に生えているものだから余ったものを貰ってるだけだしな。……あー。カレー食べるためには人と交流しなきゃならないのか。ならちょっとやばいから止めよう」

 

「グルァ!!」

 

「んな絶望した顔すんなよ。絶対食べられないってわけじゃないんだから」

 

「……ル」

 

「とりあえず時期を見よう。今は少し様子見で……ワイルドエリアにカレー用品とか落ちてるかもしれないしな」

 

 

 しょうがないなという顔でダイケンキが前を向いた。そして一度俺をチラッと見て身体を伏せた。

 

 背中に乗れと言いたいのだろう。

 アヤシシとは違い機動力はそこまでないが、まあいいか。

 

 

「頼んだぞ相棒」

 

「ガル」

 

 

 頷いたダイケンキに乗って、このエリアの地図を作るため白紙を取り出した。

 ────俺達の様子を上空から見ていたフライゴンに気づかずに。

 

 

 

 

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