臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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転生と【ファミリア】
第一話


 

 

 

 

「はい。じゃあ、この用紙に好きな願い事を書いてね」

 

「………」

 

 

眼鏡をかけて如何にも公務員のようなスーツ姿で、背中に純白の翼、頭にはあるあるの天使の輪っかを浮かべている天使のおじさん? から差し出された一枚の用紙を確認する。

 

その用紙には、『公平な抽選により転生者に選ばれました』と太字で書かれていた。どんどん読み進めていくと、願い事の欄、転生先の欄、天使の対応についてのアンケート欄などがあった。天使とは公務員なのでは?

 

色々情報処理が追い付かないようで、自然と眉間にシワが寄るが良く良く考えてみればこんな夢物語のような事が現実であるはずがない。きっと夢なんだと、夢ならば自然とそのうち覚めると思いながら目を瞑る。

 

 

「あー、夢だかと思ってるんだろうけど、一応現実なんだわ。お疲れさん」

 

「えっ、本当に…………?」

 

「本当本当。ちなみに、時間制限もあるからね」

 

「時間…………制限?」

 

 

天使のおじさんが指で示した先を見ると、そこにはレトロなパタパタ時計があって、その時計には残り十分と書かれていた。

 

それを見た俺は、言い表しようもない焦りに襲われて、焦りのままに願い事と転生先を考えることになったのである。

 

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!?」

 

 

あれこれ願い事を考えるが、転生先によってはどれも相性が悪い物になってしまうので頭を抱えてしまう。

 

 

「あと五分だよ」

 

「あー、もう!こうなったら……」

 

 

自分が死んだ原因は分からないが、まだ死ぬ前までの記憶は残ってる。そこから一番最近のことで覚えているアニメや漫画、ラノベ関連から願い事を抽出していく。

 

そして、記憶から導き出されたのは前世で自分が書こうとしていた二次元創作、つまりクロスオーバー物の願い事と転生先を書くことにした。

 

 

─────────────────────────

 

【容姿】

 

・ラノベ主人公みたく格好いい容姿。

 

 

【能力、武器est】

 

・『赤龍帝の籠手』

 

・『魔剣創造』

 

・『聖剣創造』

 

・『エクス・デュランダル(完成版)』

 

・『エクスカリバーの鞘』

 

・『魔力操作』

 

・『魔力の才能』

 

・『魔法の才能』

 

・『プロモーション(ハイスクールD×D)』

 

・『言語和訳』

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

とまぁ、以上が前世で書いていたオリジナル主人公のチート設定+αだ。これくらいあれば、大抵のことには対処できるだろうという考えで作ったが、いざ自分がこのチート能力で転生するとなるとかなり物足りない感じがしてならない。

 

別に、転生先で世界を変えてやろうだとか英雄になろうたどかは思ってはいないけど。せっかく転生するなら、メインヒロインの一人と結婚したり、あわよくばハーレムなんて…………。

 

 

「おっと、ヤバいヤバい。色々と妄想を膨らませていたら残り時間が二分三十秒しかないや。あとは、転生先だけ」

 

 

転生先の欄に『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』をフルネームで書いてから不備がないかとを確認してから天使のおじさんに提出しようとしたところで、一番下に小さく米印があったので目を細めながら確認する。

 

するとそこには、注意事項のようなことが書かれていた。

 

 

「えーなになに、この用紙に書いた願い事は後に最高転生審査員たちによって精査され、その意向によってはお望みの願い事とは別の物が与えられることがありますのでご了承ください…………ふざけんな!! 要は、神様たちの気分次第では用紙に書いた願い事は叶わない可能性があるってことだろう! なら、何で好きな願い事なんて書かせたんだよ! 最初から叶えられる願い事の一覧表でも作って置けよ。公務員の格好してるんだから天使でも公務員なんだろう!?」

 

 

用紙に書いてあった注意事項を読み切るとその内容に苛立ちを覚えて、頭を抱えながら叫んでしまった。俺は悪くない。ちゃんとお客様目線で対応が出来ていない天使ならび審査員の神が悪い。

 

しかし、そんな叫びを上げたところで天使や審査員の神が聞き入れてくるはずものなく、カウンターにひらひらと落ちた用紙を天使のおじさんが手に取り、時間制限が過ぎたようで何かの判子を作業として押したあと、浮遊感に陥り、そのまま意識が途絶えた。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

次に目が覚めた場所は、何処かの病室だった。

 

 

 

「お目覚めになりましたか?」

 

「ここは?」

 

「【ディアンケヒト・ファミリア】の病室です。今朝、うちの店の前で倒れているあなたを見つけたので、病室に運びました」

 

 

【ディアンケヒト・ファミリア】。

 

それは、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に登場する迷宮都市オラリオでも一二を争う程、大手派閥の医療系【ファミリア】だ。そして、目の前にいる美少女は間違いなく【ディアンケヒト・ファミリア】の団長を勤めている【戦場の聖女】という二つ名を持つアミッド・テアサナーレ、本人であり。

 

けれど、ここは普通に知らない振りをするのがベストだろう。下手に、この世界のことを知っていえは在らぬ疑いを掛けられかねない。

 

 

「ディアンケヒト、ファミリア?」

 

「もしかして、【ファミリア】をご存知ないのですか?」

 

「えーっと、多分、俺は【迷い人】だと思います」

 

 

【迷い人】。

 

それは前世で書いていた二次創作に登場させようとした、いわゆる転生者を別の言葉で表した存在。更に詳しく説明すると、異世界からの【迷い人】は誰しもがLV.1から必ずレアスキルを発現させることのできる存在を示すことでもあるのだ。

 

が、前世ではそのレアスキルを持って登場させようと考案したのはオリジナル主人公のみで、他のキャラクターはまだ考えている途中だっためにこの世界ではどういった風に反映はされるのかは分からない。

 

 

「迷い人? 一体、それは……?」

 

「簡単に言えば、別の世界から飛ばされてきた存在のことです」

 

 

アミッドの反応からするに、彼女は【迷い人】については知らない。となると、この世界は俺が描いた世界とは異なる世界あるいは原作と同じ世界と考えた方が良さそうだな。

 

取り敢えずは、【迷い人】らしく情報を集めるところからにするか。

 

 

「あの近くに役所とかないですか? 正直、手持ちがなくて入院費も払えない状況でして…………」

 

「そうですか。でしたら『ギルド』に行ってみては如何でしょう。そこなら色々と手助けをしてくれるはずです」

 

「ギルドですね、ありがとうございます」

 

「ちなみに、入院費はしっかり働いてから払ってもらいますからね」

 

「えーっと、マジですか?」

 

「冗談です」

 

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

念のため身体を診察してもらったあと、アミッドに渡された地図を頼りにギルドへと向かうのだが、道中で色々な種族を実際に目の当たりにすると珍しいさからキョロキョロとあちこち見てしまう。

 

逆に、俺の格好を珍しく感じた冒険者たちも俺のことを見てくるのでお相子だろう。

 

 

「やっぱり、パーカーにジーンズはこの世界だと珍しいんだろうな」

 

 

あまりにも色々な視線を受けて、耐えきれなくなった俺はパーカーについているフードを深くかぶって、そそくさとギルドに向かうのだった。

 

数々の視線を潜り抜けて、ようやくギルドへと到着すると先ほどよりも色々な種族が物々しい武装を身に纏って行き交っていた。

 

 

「ここがギルドか…………さすがはファンタジー世界」

 

 

圧巻とはまさにこの事かと、実体験していると一人の眼鏡をかけたエルフの女性職員が声を掛けてきた。

 

 

「あの……よろしければ御用件をお伺いしますよ」

 

「初めてこの街に来たので色々と情報を知りたくて」

 

「そうでしたか。では、こちらでご説明いたします」

 

「よろしいお願いします。あっ、俺、石黒ケンマって言います」

 

「私は、エイナ・チュールです」

 

 

眼鏡をかけたエルフの女性職員こと、エイナ・チュールによる迷宮都市オラリオの解説してもらっている最中、やはり目の前にいるのは『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のヒロインの一人である。

 

エイナさんの解説と転生する時に書いた願い事と合わせて、大体のオラリオの街については把握することが出来た。しかし、エイナさんは新規で冒険者になろうとするものをあまり好まない。なので、質問する形で冒険者になると伝えてみることにした。

 

 

「エイナさん、仮に冒険者になったとして、途中で冒険者を止めて他の職業に就くとなったら主神から【恩恵】を剥奪されたりする?」

 

「んー、どうだろう。私の知り合いで居酒屋の店主をしてる冒険者は【恩恵】を剥奪されていないみたいだったけど…………」

 

「じゃあ、俺もやりたい仕事を探して、安定した収入が入る仕事につけるまでは冒険者でやることにしたよ。どこか良い【ファミリア】はないか? 理想は、最近出来立てで人員も少なくて、団長が臆病な性格が良いんだけど……オススメの【ファミリア】とかない?」

 

「ごめんなさい。ギルドでは、そういった斡旋はしてないけど、色々な【ファミリア】の地図は渡せるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

エイナさんからもらった色々な【ファミリア】の地図を頼り、その【ファミリア】へと訪問したが何処の【ファミリア】も門前払いを喰らってしまった。

 

まるで、何かしらの業務を三年以上経験していないと募集要項に当て嵌まらない求人みたいだ。初心者でも採用してくれる【ファミリア】はないのか?

 

 

「取り敢えず入りたくない【ファミリア】は、ロキとフレイヤの二つ。【ヘスティア・ファミリア】は、色々と面倒ことに巻き込まれそうなのと面白しそうなのが半々といったところか…………」

 

 

手元にある資料をベンチで、眺めながら溜め息をつく。

 

先ほど述べた二つの【ファミリア】だが、まず【ロキ・ファミリア】に入った場合、後に原作主人公であるベル・クラネルと戦う未来が少なからずやってくる。次に【フレイヤ・ファミリア】、単純にフレイヤに目を付けられたくない。

 

最後に【ヘスティア・ファミリア】は原作通りであれば、強化個体ミノタウロス、黒いゴライアス、アンタレス、【アポロン・ファミリア】、【イシュタル・ファミリア】と上げただけでこれだけの戦闘がぎっしりと詰め込まれているのだ。いくら、チートな転生特典をもらっていたとしても、怖いと感じてしまう。

 

 

「はぁ………どうするかな」

 

 

転生して数時間で行き詰まってしまった。

 

 

「見つけたわよ、石黒ケンマ」

 

「誰?」

 

「わたし? わたしは勝利の女神ヴィクトリア。君をこの世界へと送り出した神々の一人」

 

 

黄金のような綺麗な金色の髪に、海のような青い瞳をした女性は、笑顔で俺にそう名乗った。彼女の容姿に見惚れながら思った。これは機会が巡ってきたのではないかと…………。

 

 

「送り出した、ってことはあの審査委員の中に?」

 

「ご名答。ついでに言うと、天界の仕事に嫌気がさして君と共に降りてきた。けれど、降りる位置が君と少しずれてしまった。なので、特徴的な服装をしている子を探した」

 

「なるほど、確かにジーパンにパーカーなんていう服装をこの世界の住人がしている訳がない。それで、もしかしなくとも俺をあなたの【ファミリア】の団員第一号に?」

 

「わかっているじゃない」

 

「鴨がネギを背負ってやって来たとは、このことか」

 

 

あまりの急展開に思わず笑みを溢してしまう。けれど、覚悟は決まった。

 

 

「いいぜ、俺はあなたの祝福を受ける。神ヴィクトリア」

 

「うん、よろしくね、石黒ケンマくん」

 

 

こうして、【ヴィクトリア・ファミリア】が結成された。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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