臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈Sideケンマ〉
「よし、着いた!」
【プロモーション】の『魔法』を使って、『騎士』へと昇格した状態で自分のホームから【ヘスティア・ファミリア】のホームである廃教会へとやって来た俺は、そのまま教会の中へと入り、アニメの知識を頼りに地下に繋がる扉を数回ノックして中にいる人物たちを呼び出す。
「ちわ~す。ベルに神ヘスティア、いますか?」
少し大きめな声で二人の名前を呼ぶと五分もしないうちに扉が開いて、中からベルが出てきた。
「いらっしゃい、ケンマ。今日はどうしたの? 明後日までは完全にオフだって………」
「それがちょっと困ったことがあって、ベルと神ヘスティアに相談したくてな。ここだと誰が聞いてるか分からないから中に入れてくれるか?」
「うん、いいよ」
ベルに先導してもらい、俺は地下の居住区画へと進んで行く。地下に降りるとそこにはアニメで見慣れたソファーとベット、テーブルがあった。
始めて【ヘスティア・ファミリア】のホームへとお邪魔して、最初に脳裏に浮かんだのは「聖地巡礼」というアニヲタならばやってみたいことの一つが浮かんだ。大体の作品であれば日本の埼玉や東京、神奈川が聖地として上げられるが異世界物となれば聖地巡りは完全に不可能。
であれば、『ダンまち』の聖地巡りを出来るのは他でもない唯一の転生者である俺だけの特権ということなる。これは優越感で心をピョンピョンしてしまいそうですね。
「神様、ケンマが来ましたよ」
「おや、珍しいお客さんだね」
「どうも、神ヘスティア」
ヘスティアに軽く挨拶をしてから彼女に促されるままにソファーへと腰を落ち着かせる。
「それで、今日はどうしたんだい?先日、キミたちは明後日までは完全にオフにするって言ってたけど」
「それがちょっと困ったことがありまして………ベルと神ヘスティアならば何か知っているかなと」
「困ったこと? まぁ、ボクたちで何とかなるなら話してみてくれ」
「それでは、単刀直入にいうと【ステイタス】を更新したらアルテミス関連のスキルが発現しました」
「「!?」」
単刀直入に二人へアルテミス関連のスキルが発現したと打ち明けると、これでもかと目を大きく見開いて驚きを表現する。
まぁ、そういう反応をするだろう。原作ではどうだったかは知らないがアニメ四期までに神々に関連するスキルを発現させたキャラクターを俺は知らない。なので、今現在で神々に関連するスキルを所有しているのは俺だけということだろう。それも二つもだ。
「あ、あああアルテミス関連のスキル!?」
「神様関連のスキルだなんて、それってレアスキルなんじゃ………!?」
「ああ、間違いないなくレアスキルだな」
あっけらかんとした態度でベルとヘスティアに返答する。
「いやいや何を呑気な!」
「そうだよ、ケンマ。そんな重大なことを僕たちに教えちゃって大丈夫なの?」
「大丈夫も何もエルソスの遺跡にあった野営地で俺は神ヘスティアに【ステイタス】を更新してもらってるんだぞ? なら、今更スキルの一つや二つを教えたところで弊害はないな」
「「あー、確かに………」」
本来ならば他派閥の主神や冒険者に己のスキルについて明かすのは自殺行為にも等しい行いだが、既に背中をヘスティアに晒していることを言うと二人は、ようやく納得したようだ。
「さて、話を戻すぞ。俺が困ってるのは、アルテミス関連のスキルが発現してしまったのを主神であるヴィクトリアにバレたことだ」
「あー、なるほどな。確かに自分の眷属なのに他の神のスキルが発現したとなれば、主神としては面白くないよね。むしろ、ムカつくね」
「あははは………それでケンマは、ヴィクトリア様のご機嫌を直すために僕たちに相談を?」
「いや、エルソスの遺跡から出た後にアンタレスが残したアルテミスの矢、あれをどうにかしたあと五日も眠り続けていた俺にアルテミスが何かしてないかと聞きたくて来たんだ」
「アルテミスがケンマくんに?」
「僕はこれといって心当たりがないかな。神様はどうですか?」
「いんや、ボクもアルテミスが眠り続けているケンマくんに何かをしていたような行動や素振りを見受けられなかったよ」
アルテミスの神友であるヘスティアとその眷属であるベルでも彼女が俺に何をしたのか知らないとなると原因究明の可能性が格段に低くなる。
「二人が分からないとなるとアルテミス関連のスキルの発現原因は何なんだ? ヴィクトリアの時は、額にキスされたのが発現……原因……だったから……ん?」
「「ん?」」
「「「キス?」」」
「「「あああああああ!!!」」」
そうだよ!思い返してみれば、されてるじゃんキス!
思念体のアルテミスが本体のアルテミスに戻る際に、助けてくれたお礼だと言って右頬にキスをしてから消えていった。あれが今回の【月光の傾慕】のスキルの発現原因だったのか。
そうであれば、アルテミスが耳まで真っ赤にしながら真実を口にすることを拒否するのも頷ける。だって、彼女は純潔を重んじる女神だ。彼女的には破廉恥行動だったと認識したのだろう。
「「人工呼吸!」」
「は? え? 人工呼吸?」
一人でスキルの発現原因の心当たりを思い出していると、ベルとヘスティアが俺とは全く異なるスキル発現の原因を述べ始める。
「そうだよ、人工呼吸だよ!嗚呼、どうしてボクはあんなことを今まで忘れてんだー!だけど、なるほどね。あれがケンマくんに発現したアルテミスのスキルの発現原因だったのか」
「確かにあれはある意味ではキスにはなりますね。一応、人命救助なんですけど?」
「ちょっと待ってくれ、話の流れが見えてこないんだが。できれば、俺が分かるようにもっと詳しく説明してくれないか?」
俺だけ二人の話に置いてきぼりにされているので、二人の話に着いて行けるように詳しく説明してもらえるようにお願いする。
「そうだね。ここまで話してしまったし、何よりアルテミスのスキルが発現してしまった今、アルテミスからされた口止めも意味をなさないし。どうせ、ヘルメス辺りに面白可笑しく暴露されるのも時間の問題だろうから別に構わないよ」
「本当に良いんですか、神様?」
「ただし!もしも、このことがアルテミスにバレて、アルテミスの機嫌を損ねてしまった時は、キミも一緒にボクとの仲直りの手伝いをしてもらうからね、ケンマくん!」
「神友のアルテミスが神ヘスティアのことを嫌いになるなんてないと思うけどな………取り敢えず、頑張ってみます」
「ケンマくん、言質は取ったからね!」
「あははは………」
ヘスティアにアルテミスが俺に隠していることを打ち明けてもうため「頑張ってみます」と答えると、ヘスティアはテーブルに乗り出して指で俺を指し示しながら言質取りをしたと述べ、それを隣で見ているベルは苦笑いを浮かべる他なかった。
「さて、アルテミスの人工呼吸の話だけど、ケンマくんは『矢』を何とかした後、自分がどうなったか何処まで覚えているんだい!」
「『矢』を何とかしたあと、空間を切り裂いて開けた穴の引力から全力で逃げてる途中で体力が限界になって鎧を維持出来なくなったあとは引力も弱まって、そのあとは…………」
「遺跡の周りにある湖に落ちたんだよ」
「そうだったのか」
「でもね、ここが一番大変だったんだよ。何故なら、ケンマくんをベルくんとヴェルフくんの二人が湖から引き上げた時、キミは息をしていなかったんだ」
「は?」
俺が息をしていなかった? えっ、マジで?
「驚いているみたいだね。そこで人工呼吸の話になる。ボクたちは息をしていないキミをどうしようとワタワタしているとヘルメスから鶴の一声がかかる。それが人工呼吸だ」
「あのヘルメスが………」
「ベルくんたち下界の子供たちは人工呼吸の正確なやり方を知らないし、ボクたち神々も説明している暇もなかった。そこで真っ先に動いたのがアルテミスさ。貞節を重んじるあのアルテミスが一心不乱にキミの呼吸路を確保するや否や人工呼吸を始めたんだ。それに続いてボクたちも心肺蘇生をなんとか交代で行い、キミを死の淵から蘇生させたのさ」
「なるほどな…………それがアルテミスのスキル発現の原因か。てか、俺のファーストキスの相手はアルテミスか」
「なんだい、アルテミスがファーストキスの相手じゃ不満かい?」
「いや、命を救ってもらっておいて不満も何もないですよ。強いて言えばアルテミスみたいな美人にファーストキスを奪われたのに、その瞬間を気絶していた自分がちょっと情けないやらせっかくのファーストキスなのに惜しいことをしたような」
「やれやれ、そんなことを言うだなんてやっぱりキミも男の子だねぇ…………」
ヘスティアから明かされたアルテミスの人工呼吸の話を聞いて、それがスキル発現の原因だと納得するのと同時に美人とのファーストキスを味わえなかったことに後悔が残った。
だって、ファーストキスだぞ!ファーストキス!!それも美人のアルテミスが相手!前世では普通の顔立ちで、スポーツも勉強も得意じゃないしこれといってファッションやオシャレに興味はないから女子にモテることはなかった。
そんな残念な男子である俺が人工呼吸とはいえど、美人とファーストキスをしたのだ。せっかくなら思い出として記憶にしっかりと焼き付けておきたかったと、切実に思っているとヘスティアからとあることを尋ねられる。
「ところでケンマくん」
「なんですか、神ヘスティア」
「あの時、アンタレスが残したアルテミスの『矢』を消滅させたあの大穴。あれは一体何なんだい?覆面エルフくんから万能薬を飲ませて貰う前、キミは彼女にできます、やりますとそう答えた」
「確かにあの時、ケンマはリューさんにそう言ってました……」
「キミは最初からあの大穴の正体や特性を知っていた。でなければ、一切の迷いもなくあんな行動は取れないはずだ。そうだろう、ケンマくん?」
「どうなの、ケンマ?」
おうおう、ヘスティアってば滅茶苦茶確信を持って攻めてくるな。それにベルもベルで『次元の狭間』について興味を持ってしまっているようだ。
しかし、どう答えたものか?
まぁ、でも、善神であるヘスティアなら話しても大丈夫だろう。これが娯楽好きのどうしようもない神々だったりヘルメス辺りならば教えることはないが。
「そうですねぇ……確かに神ヘスティアの言う通り、俺はあの大穴────次元の狭間については最初から知っていた。けれどあの時、次元の狭間を意図的に開くことができるかはかなりの賭けでしたよ」
「次元の狭間………それがあの大穴の名前なんだね」
「次元の狭間はその中に入ってしまえば一部の例外を除けば、ありとあらゆる万象万物が『無』へと消滅してしまう滅茶苦茶危険な空間です。それは無論、神の力を使える神々であっても例外ではありません」
「そうだね。天界でも有数の破壊力を持つアルテミスの一撃でさえ、完全に消滅させてしまうような空間。そんなものが危険じゃないなんておかしな話だ」
「まぁでも、次元の狭間への入り口を開こうにもそう易々とは開けませんけどね。あの時は、俺の精神力を殆ど注ぎ込んだクロス・クライシスとアルテミスの『矢』が衝突したことで空間が限界を越えたことで偶然開けた感じですし」
「当たり前だよ!そんな危険な場所の入り口をほいほい開けられたら下界が滅んじゃうよ!?」
ヘスティアの言葉は尤もだ。しかし、俺はここでこの世界の知識を知っているからこそ浮かび上がる破天荒な考えが生まれてしまった。
それは二期の作中でヘルメスがベルに明かす三大冒険者依頼の残りである『黒竜』を倒す方法である。内容は簡単で、何とかして奴を少しでも弱らせてから何かしらの方法で次元の狭間に放り込んで『無』によって消滅させることだ。
そこまで考えたはいいが、ぶっちゃけると前世のゲームにあった色違いモンスターとエンカウントするよりも稀な確率に等しいので、自分で考えておきながら「バカなんじゃねぇと?」のと脳内マッチポンプである。
「それから一応言っておきますけど、今までの内容は他言無用でお願いしますね。特にヘルメスには」
「もちろんさ!ヘルメスにこの事を知られたら何を仕出かすか分かったもんじゃないよ」
「二人のヘルメス様に対する反応が辛辣過ぎる…………」
「「だって、あのヘルメスだし……」」
「あははは………」
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に