臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百○六話

 

 

 

 

 

〈Side???〉

 

 

 

 

 

「それで何のようだ、ヘルメス。これでも私はとても忙しいのだが?」

 

 

向かいの席に足を組んで座るのは、同郷の友人で頭の月桂樹に赤いマントを身に付けて太陽を象ったようなマントが落ちないようにしている止め金が特徴的な男神、太陽神の一人であるアポロンだ。

 

まあ、他にもこいつの特徴的なものが上げれるが今はいいだろう。

 

 

「つれいなぁ、アポロン。それと聞いたぜ?お前の所の子供がヘスティアとヴィクトリアの子供と喧嘩になった、ってな」

 

「それがどうした?部外者である貴様には関係あるまいよ」

 

「まぁ、確かにな。で、狙いはどっちなんだ?」

 

「…………なにが言いたい」

 

「おいおい、隠すなよ。これまでお前がやってきたことを鑑みるに、ヘスティアかヴィクトリアのどちらかの子供が気に入って手に入れようって算段なんだろう?」

 

 

そう。先ほど上げてなかったアポロンの特徴的なことといえば、滅茶苦茶執念深い所なのだ。こいつは気に入った子供たちが居れば、その子の居場所を奪ってでも自分の眷属にしようと数々の蛮行を行ってきた。

 

神だからと家族を脅し、それでも駄目ならば周りの人間に多少なりとも危害を加えることすら厭わない。となれば、今度狙われているベルくんとケンマくんもそうなる運命にあるということだ。

 

 

「ヘスティアの所とヴィクトリアの所の子供、どちらかといえばお前の趣味からしてヘスティアの所のベルくんが狙いかな」

 

「だとしたら?」

 

「別に何もしないさ。ただ、少しだけ頼みがあるんだ。ちょっとしたオレの暇潰しのためにさ」

 

「貴様の暇潰しだと? ふざけるな!何故、貴様の暇潰しに私が付き合わなければならない!!」

 

 

お前ならそう言うと思っていたよ、アポロン。大方、お前がベルくんを狙う理由は18階層でヘスティアの『神威』に引かれてイレギュラーによって出現した『黒いゴライアス』に止めを刺したからなんだろう。

 

あの事件はギルドがそれなりに情報統制を行っているが、それでも完璧ではない。冒険者の間での噂話まで統制できるはずもなく、アポロンのような娯楽に飢えた連中が面白い半分に行動を起こしてしまうのだ。

 

 

「そう熱くなるなよ。なら、ちょっとした面白い話を教えてやるよ」

 

「面白い話?」

 

「アポロン、お前も知っているだろうが先日の18階層でのイレギュラーは知ってるな」

 

「ああ、もちろんだとも!あれは、ベルきゅんの大活躍の話じゃないか!!この私が愛して止まない可愛らしいあの子の話題を聞き逃すとでも?」

 

「そ、そうか………知っているならそれは良かった。なら、例の黒いゴライアスをたった一撃で18階層の天井へと殴り飛ばした『赤い鎧の冒険者』についても知っているな」

 

 

『赤い鎧の冒険者』の話を持ち出すと、アポロンは一瞬にしてその変態顔からいつもの神としての顔に戻した。

 

 

「もちろんだ。突如として現れ、ゴライアスに一撃を入れたあと、いつの間にか姿を消していたと言う未知の冒険者だ。それ故か、誰もその素性を知るものがいない」

 

「仮に知っている者がいるとしたら、どうする?」

 

 

悪いね、ケンマくん。キミにはアルテミスの件で恩を感じているが、これも世界の悲願のためだ。神々の試練という名の娯楽に付き合って貰うぜ。

 

何、問題は全くない。あの『アンタレス』からアルテミスを救い出して、単独で討伐できる程の腕を持っているのだから。仮に問題があるとするならば、その強大な力でアポロンの子供たちを蹂躙しないかが心配ということくらいだろう。

 

何にせよ、『赤い鎧の冒険者』について話をした途端、アポロンの奴もオレの話に食い付いてきた。

 

 

「ヘルメス、まさか貴様はあの冒険者について何か知っているのか!?」

 

「ああ、もちろんだとも。今ここで教えてもいいが、オレの頼み事を受けてくれたらだな」

 

「チッ………いいだろう。貴様の頼み事とやらを受けてやる」

 

「助かるよ、アポロン。オレの頼み事は、もしもヘスティアと事を構えるようならヴィクトリアも巻き込んで欲しいんだ」

 

「ヴィクトリアを巻き込めだと?そんなことに何の意味が…………いや、待て。 まさか、あの冒険者とヴィクトリアが何か関係しているのか、ヘルメス」

 

「御名答!流石はアポロン」

 

「態々、ヴィクトリアも巻き込めと言ったのだ。大抵の奴等なら直ぐに気付く。それでヴィクトリアとあの冒険者の関係はなんだ?」

 

「ここまで話がくれば決まってるだろう。彼とヴィクトリアは主神と眷属(親子)の関係なのさ」

 

「……なん……だと!?」

 

 

まぁ、驚くよな。オレだってベルくんを救出するために態々ダンジョンに潜り、18階層に赴かなければアポロンと同じ反応をしていただろう。

 

それにしても今思い返すだけで笑えてくる。あのバカデカイ黒いゴライアスを天井まで殴り飛ばすって、どんなバカ力なんだよ。まぁ、冷静に考えてみれば当時の彼はLV.1………いやアスフィ曰く、帰りの時にケンマくんは既にLV.2 の中位には相当すると言っていたな。だが、その程度であのゴライアスを殴り飛ばせるだけの強さを持ち合わせている訳がない。いくらレフィーヤちゃんから祝福のキスを受けたとしても、あの急激なパワーアップは不自然過ぎる。だとすると他に何かあるはずだと考えが至るのは時間の問題。

 

しかし、その何かがオレでもまだはっきりとは分かっていない。本人に聞いてもはぐらかされるオチが見えてくる。何せ、彼はオレの問いから逃げて見せたのだからね。

 

 

「色々と見定めさせてもらうよ、ケンマくん」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「おい、アレ見ろよ………」

 

「なっ!? 嘘……だろう……そんな……バカな……」

 

「なぁ、神友。オレは白昼夢でも見ているのか?」

 

「いや、ワタシも見えているから白昼夢ではないよ。これは現実だよ、神友」

 

「こんなのありえぬぁあいいッ!!」

 

 

ヘファイストスとの面会を求めてヴェルフをメッセンジャーとして送り出したあと、ヴェルフが帰って来るまで俺とアルテミスはバベルの中にある食堂で待っていると誰が呼んだか分からないがぞろぞろと名も知らない男神たちが集まり出した。

 

そして、お目当てであろうアルテミスが男である俺と同じテーブルで軽食を共にしている光景を目の当たりにした男神たちはまるでムンクの叫びのように阿鼻叫喚の嘆きを上げている。

 

 

「な、なぁ、アルテミス。なんか少し騒がしくないか?」

 

「気にすることはない。少し騒がしいのは何処ぞの破廉恥極まりない豚共(男神たち)が醜い声で鳴いているからだろうさ」

 

「そ、そうか………アルテミスが気にしないならいいけど」

 

 

ぶっちゃけると俺は滅茶苦茶気になって仕方ない、無論ウザイ方向でだ。ただアルテミスと軽食を共にしているだけで色々な男神たちから嫉妬の眼差しや呪言のような呟きが耳に入ってくるからだ。

 

男神たちからの嫉妬と妬みに耐えながら内心では、ヴェルフが早く帰ってくるように強く願わずにはいられなかった。けれど、そんな直ぐに戻ってくる筈もないのは俺も理解している。

 

そう思ったところで、丁度食堂に入ってきたとあるパーティーのエルフの女性が背負っている弓矢を見て、アルテミスが居るなら丁度良いじゃないかと彼女にあることをお願いすることにした。

 

 

「なぁ、アルテミス」

 

「今度はなんだ、ケンマ」

 

「できれば、俺に弓矢の使い方を教えてくれないか?」

 

「弓の使い方を? 何故、剣を得物にしているケンマが………ああ、そういうことか」

 

 

俺が弓矢の使い方を教えて欲しいと頼むと、アルテミスは最初俺の得物が剣なのになぜ弓矢を使うのかと尋ねようとしたみたいだが、先日発現した彼女が関連する『スキル』を思い出したようで頬を赤く染めながら納得してくれたようだ。

 

だが、アルテミスが頬を赤く染めたのがトリガーとなったのか、食堂の入り口で嫉妬と妬みの呟きを吐いていた男神たちから吐血したような断末魔が聞こえてきた。

 

 

「な、なぁ……あれはもうホの字ではないか?」

 

「お、オレはまだ信じないぞ……あのアルテミスたんが……グハッ!!」

 

「◯◯◯!!ヒーラー!ヒーラーは何処かにいないか!!」

 

「止めろ、神友よ。そいつの心配よりも己の心配を………グホァッ!!」

 

「□□□!!一体、何が…………ガハッ!!あ、アルテミスたんが頬を赤くして、恋をしたての生娘のようにモジモジしているだと………!?」

 

 

その男神たちの光景を見て、俺は苦笑いを浮かべてしまう。さて、そろそろ本題を切り出さないといつまでも話が進まないので今朝の早朝鍛練の話をアルテミスにすることにした。

 

 

「なるほど、それで道中頭を擦っていたのか………」

 

「まぁ、そういうこと……。それにベルたちとダンジョン探索する時、俺はオールラウンダーだから大抵後方支援で、前衛はベルとヴェルフのツートップ。これまでは短剣を投げてやっていたが、せっかく遠距離向けのスキルがあるならちゃんと使えるようになりたい」

 

「わかった。なら、少しだけ手本を見せよう」

 

「ここで、か?」

 

 

今朝の早朝鍛練の話とダンジョン探索での俺の役割を説明すると、それを聞いたアルテミスは弓矢の手本を見せると言って席を立ち上がる。そして、そのまま俺がアルテミスに弓矢の使い方を教えて欲しいと頼む切っ掛けとなった弓矢を背負っていた女性エルフの下へと足を進めて行った。

 

それからアルテミスは女性エルフと数回会話をすると、女性エルフから弓矢を貸りることが出来たようで俺の方を向くと手招きをしてくる。なので、彼女の下へと向かうことにした。

 

 

「よく見てるんだぞ、ケンマ。弓矢とはこう射つんだ」

 

「ちょっ、アルテミス!何処に矢を向けて…………!」

 

「なに、少しブヒブヒと雑音のごとく鳴き喚き散らしている畜生どもに一撃射れてやろうと思ってるだけだ、案ずることはない」

 

「いやいや、案ずるはッ!!」

 

 

食堂の入り口で俺とアルテミスを見ていた男神たちに弓矢を向けるアルテミスを必死に止めながら、誠に遺憾ながら男神たちに逃げるように声を張る。

 

 

「今のうちだアホ神ども!とっと逃げろ!」

 

「お、おう!」

 

「助かったぞ、名も知らない子供よ!」

 

「アルテミスたんの初々しい姿を観るのもいいが、今は送還されるよりかはましだ!」

 

「だなだな!アルテミスたんがオラリオにいるなら、何回でも観られる機会があるってことだもんな!」

 

「「「では、サラダバー!」」」

 

「バカなことを言ってないで、早よ行けアホ神ども!!」

 

 

終始アホなことを述べていたアホな男神たちに怒号をぶつけたあと、何とか男神たちが誰一人としてアルテミスの矢に射たれる前に食堂から去っていたのを確かめてからアルテミスの妨害を止めた。

 

すると、俺に妨害を受けていたアルテミスは怒りの表情で俺へと詰め寄る。

 

 

「ケンマ!なぜ、私の邪魔をしたのだ!」

 

「何故って、もしもあのままお前があのアホ神どもの一人でも矢で射貫いて送還してみろ。そんなことをしたらオラリオに居られなくなるんだぞ!?」

 

「そんなヘマはしない!頬を掠めて脅す程度で収めるつもりだったのだ!」

 

「それでも駄目だ。今のアルテミスにはあまり言いたくはないが、今お前を守ってやれるのは俺かベルくらいしか居ないんだぞ。そのことを十分に理解しているのか?」

 

「それは………」

 

「今直ぐに眷属を作れとは言わない。あんなことがあって、直ぐに眷属を作る気にはなれないのは俺でも分かる」

 

 

『アンタレス』に取り込まれて、自分の力を使われて、己の愛する眷属たちが一人また一人と殺されていくのを見ているしかなかったアルテミスが受けた心の傷は計り知れない。

 

そのため、眷属を作る気にならない今のアルテミスは無防備な状態と何ら変わらない。そんな彼女を周りの目を気にせずに守れるのは事情を知っている俺か、アルテミスの神友の眷属であるベルのどちらかしか居ないのだ。

 

 

「それにさ、せっかく皆でオラリオに戻って来たのに下らないことであのアホ神たちを送還して、アルテミスだけオラリオから追放や送還なんてされたら、お前を助けようとしてくれた皆が悲しむぞ。無論、俺もな」

 

「…………はぁ、そこまで言われてしまっては私には矢を収める以外ないではないか」

 

「理解してくれて助かる。弓矢の使い方はもっとちゃんとした場所で教えてくれ」

 

「ああ、わかった」

 

 

何とかアルテミスを説得することができたことで一安心するも男神たちの所為で、盛大に目立ってしまったことに思わず溜め息が出てしまう。

 

そんな時、食堂で起きたことを何も知らないヴェルフがようやく戻ってきた。

 

 

「何の騒ぎだ、これ?」

 

「遅せぇんだよ、クソネーミング鍛冶師」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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