臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百◯八話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「おお~~!!ヘスティア、ミアハ!ベルくんとナァーザちゃんも!」

 

 

俺たちよりも少し遅れてアポロン主催の『神の宴』へと姿を現したベルとヘスティア、ミアハとナーザの四人を発見したヘルメスは早々に絡みに向かった。

 

それを見ていた眷属の俺たちも主神たちがヘスティアたちの下に集まってたので便乗する形で、ベルの下と集まることにした。

 

 

「相変わらず騒々しいな、ヘルメス………。まさかタケたちと一緒にいたとはね」

 

「別に好き好んで一緒にいた訳じゃ………」

 

 

ヘスティアの言葉にタケミカヅチは、ヘルメスのことをあまり好きではないと全く隠すことなく告げるがそれを聞いたヘルメスは気にしていない様子でタケミカヅチの首に腕を回して絡み始める。

 

 

「水臭いぜタケミカヅチ~。オレたち、一緒にベルくんたちの救出作成にあたった仲じゃないか~!」

 

「おい、止めろ!暑苦しい!」

 

 

タケミカヅチに拒絶されると次の絡み相手を見つけてターゲットを変えたのか、ベルとナァーザさんの前にヘルメスは躍り出た。

 

 

「うん!命ちゃんたちも素敵だが、二人とも決まってるじゃないか!だが見てくれ!!うちのアスフィもなかなかだろう?」

 

「や、やめてください、ヘルメス様……。本気で殴りますよ……?」

 

 

まるで道化のような演技をしながらヘルメスは己の眷属であるアスフィさんを俺たちに見せびらかす。流石にアスフィさんも恥ずかしいようで顔を赤くしている。

 

そして、ヘルメスがアスフィさんに何かを耳打ちすると突然ヘルメスが勢い良く吹っ飛び、会場の壁に激突した。

 

 

「な、なぁ、ベルにヴェルフ。今のアスフィさんの動き、見えたか?」

 

「う、ううん………全然」

 

「俺もだ。ヘルメス様が吹っ飛んでから気付いた。てか、LV.3 の一撃を受けてヘルメス様が無事だとかどうなってんだよ?」

 

「この場合、ヘルメスの耐久値が優れているのかアスフィさんの手加減がそれこそ神掛かっているのか全く分からないな」

 

 

三人で自分たちよりも強いアスフィさんの一撃を受けて生きているヘルメスの○○○○(通称:ジョウジーまたはG)並みの生命力に驚いていると、今回の宴の主催者である変態神もとい太陽神のアポロンが姿を見せた。

 

 

『───諸君、今日はよく足を運んでくれた!』

 

 

しかしだ。元々知っていたがアポロンとヴァーリの声を同じ声優さんがやっているためか、少し眼を瞑って脳内でヴァーリを浮かべながらアポロンの話を聞いているとキャラ崩壊がヤバいことになってしまった。

 

 

『今回は私の一存で趣向を変えてみたが、気にいってもらえただろうか? 日々可愛がっている子供たちを着飾り、こうして我々の宴に連れ出すのもまた一興だろう!』

 

 

宴の主催者として盛装するアポロンの声はマイクなど無くともよく通っており、娯楽または日々変化を求めている神々はアポロンがもたらしたちょっとした変化を気に入ったのか乗り乗りでやんややんやと声を上げて、喝采を送る。

 

この感じはまるで…………。

 

そこまで感じてしまえば、『ハイスクールD×D』の原作第五巻に出てくる若手悪魔会議に似ていると感じるのは転生者だからなのだろう。それからアポロンの背後にいるヒュアキントス、ダフネ、カサンドラの三人に視線を向けると何故かヒュアキントスと視線が合い、睨まれた。

 

 

『多くの同族、そして子供たちの顔を見られて、私自身も喜ばしい限りだ。───今宵は新しき出会いに恵まれる、そんな予感すらする』

 

 

アポロンが「予感」という言葉を発すると直ぐ側にいるベルが背後を確認するような素振りを見せたので、アポロンの奴と視線が合ったのだろうと推測する。

 

俺はヒュアキントス、ベルはアポロンとお互いに面倒な輩に目を付けられてしまったものだと溜め息が溢れる。

 

 

『さあ、夜は長い!皆存分に楽しんでいってくれ!』

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

『神の宴』の主催者であるアポロンの挨拶が終わると皆好きなように動いた。主催者であるアポロンに改めて挨拶する者、親交が深い者と共に宴を楽しむ者、宴の料理を遠慮なく食べる者…………まぁ、一番最後のは主にヘスティアだけがあまりにもバクバクと遠慮なく食べるものだからアルテミスとヘファイストスがそれとなく注意をしていた。

 

因みに俺も料理を楽しんでいたりする。何せ、普段は手が出せないような高級な肉料理や魚料理などが振る舞われているので食べない手はないだろう。

 

 

「ベル、こっちの料理も美味いぞ!」

 

「…………えっ?あっ、うん、貰うかな」

 

「なんだいベルくん、アポロンと話をしたいのかい?」

 

 

俺が皿に盛った料理をベルに差し出すとワンテンポずれてから反応する。何故、ワンテンポずれてから反応したのかと思いベルが向けていた視線の先を追えば他の神々と談笑しているアポロンの姿があった。

 

先ほどの挨拶でアポロンはベルに熱烈な視線を向けていたので納得していると、ヘルメスがベルにアポロンと話をしたいのかと訪ねて来た。

 

 

「ヘルメス様………いえ。神様とちょっと挨拶をって思って………」

 

「アポロンとは天界の頃から付き合いがあるんだが、面白い奴だよ。特に色恋沙汰には話題が尽きなくてねぇ、冒険者でもないのに【悲愛】なんて渾名を付けられているほどさ」

 

「バ○ス?」

 

「それは破滅の呪文だよ、ケンマくん。とにかく恋愛に熱い神、ってことさ。なぁ、ヘスティア?」

 

「知らないよ!」

 

 

アポロンのことでヘルメスが話をヘスティアに飛ばせば、過去にアポロンと何かあったのか頬にパスタを付けたままで明後日の方向へ顔を不機嫌そうに振ってしまう。

 

 

「後はそうだな………執念深い」

 

「女々しいの間違いじゃなくてか?」

 

「相変わらず神を相手にズバッというね、ケンマくんは」

 

 

俺の言葉にヘルメスは笑いながらそう言うが、俺にとって神様なんてものはこの世界にやって来てからようやく観測できた者なので尊敬とか崇拝とかの感情は持ち合わせていない。そのため、神が相手だろうとスバっと言ってしまうのだ。

 

三人でアポロンのことについて話していると突然入り口の方が騒がしくなったので、何だろうと視線を向ければそこには青紫色のドレスに身を包んで綺麗な銀髪が際立っている女神フレイヤとそれをエスコートする外套に身を包みながらも逞しい【フレイヤ・ファミリア】の団長オッタルが『神の宴』に姿を現したことで周りの神々やその眷属たちが騒ぎ出したのだろう。

 

まさかのオラリオの二大派閥の一角である【フレイヤ・ファミリア】の主神と団長の姿を見て、ヘルメスも珍しいと思い、次のような言葉を述べた。

 

 

「おお~、これまた大物が来たな」

 

「あの女神様は?」

 

「聞いたことはあるだろう?【フレイヤ・ファミリア】の主神、フレイヤ様さ」

 

「あれが………フレイヤ様」

 

 

ヘルメスの説明を聞きながらフレイヤを見ようとベルが目で追おうとするも先ほどまでパクパクですわ!をしていたはずのヘスティアがベルの背後から頭に飛び掛かり、ベルがフレイヤを見ないようにしていた。

 

 

「フレイヤを見るんじゃない、ベルくん!!」

 

「へあっ!?」

 

「子供たちが『美の神』を見つめると、たちまち虜になって『魅了』されてしまうんだぁ!ぐぐぐうぁ~!」

 

 

ベルを押し倒そうとするヘスティアとヘスティアに押し倒されないよう踏ん張っているベルを他所に、俺は『スキル』の検証のためにフレイヤをガン見する。

 

すると、僅かに背中が熱を持ち始めたのを感じて『スキル』が発動したのだと理解する。それからもう一度、フレイヤに視線を戻すが彼女に対して確かに綺麗だと思う。けれど、()()()()だ。

 

『スキル』の検証も終えたので食事を再開しようとすると、ヴィクトリアとアルテミスが俺の側にやってくると先ほど俺が何をやっていたのか察しているようで、敢えてこんな風に尋ねてきた。

 

 

「ケンマ、あなたはフレイヤを普通に見ているようだけど大丈夫かしら?」

 

「ああ、問題ない。確かに綺麗だとは思うが、恋愛感情と崇拝感情はないな。流石はアルテミス、恋愛アンチの恋愛撲滅委員長なだけあるな」

 

「それは褒めているのだろうな、ケンマ?」

 

「一応は褒めてる。これならいつか下層に行った時に魅了を使ってくるモンスターが現れても対処できる」

 

 

『美の神』であるフレイヤの『魅了』を無効化できたのはかなり大きいメリットだ。フレイヤの『魅了』さえ効かなければその下位互換であるイシュタルの『魅了』も効かないということになる。なので、『スキル』の検証は大成功と言えるだろう。

 

なので、今度こそ食事を再開しようとすると次はコツ、コツとヒールで歩く音がどんどん近付いて来ているのでアニメ通り、フレイヤがこちらにやって来たのだと察した。

 

であれば、とある事のけじめとして挨拶くらいはしておかなければ【ヴィクトリア・ファミリア】の団長として恥ずかしいだろうと思い、フォークを刺し込んだ肉料理を食べるのを止めた。ちくせう。

 

 

「来ていたのね、ヘスティア。それにヘファイストスとヴィクトリアも久しぶりね。特にアルテミスは天界以来ね。久しぶりに会えて嬉しいわ」

 

「っ………やぁ、フレイヤ」

 

「元気そうで何よりよ」

 

「私も貴方と接点があまりないといえ、同郷の者と会えて嬉しく思う」

 

「それで何しに来たんだい?」

 

 

ヘスティアはベルから離れると威圧感を出しながらフレイヤに問う。

 

 

「別に、挨拶をしに来ただけよ?とても珍しい顔ぶれが揃っているものだから、つい足を向けてしまったの」

 

 

そう言って、フレイヤは男神たちに流し目を送ると目が合った男神たちはデレデレとしながらフレイヤの美しさを褒める。すると、それに『魅了』よりも嫉妬心が勝ったのか命とナァーザさんが自分たちの主神の尻を力一杯摘み、それによって二人の男神は痛みで悶えていた。

 

そんな二人の男神とその眷属たちのやり取りを見た後、次はベルに歩み寄り、右手をベルの頬に添えながらフレイヤ。

 

 

「───今夜、私に夢を見せてくれないかしら?」

 

「───見せるかァーーーーっ!!!!」

 

 

フレイヤの問い掛けとほぼ同時にベルの頬に添えられた手をヘスティアは叩き落とした。

 

 

「キミもなに赤くなってるだ、ベルくん!この女神は男とみれば手当たり次第に食べてしまう奴なんだー!キミみたいな子なんか一瞬で取って食われるぞー!」

 

「ごっ、ごめんなさいごめんなさい!」

 

 

女神の中で一際美人であるフレイヤにベルが見惚れていたことに主神であるヘスティアが激怒し、ベルも自分の主神を怒らせてしまったと必死に平謝りを繰り返す。

 

それを見ながらフレイヤは次に俺へ声をかけてくるだろうと身構える。魔導書をアレン経由で俺に渡してくるあたり、ベルほどではないが目を付けられているのは間違ない。

 

 

「あら、残念ね。なら、あの子の代わりにあなたが私に夢を見せてくれないかしら?」

 

「…………僭越ながら自分には貴女様に夢を見せることは出来かねます」

 

 

ベルと同じようにフレイヤの手が俺の頬へ添えられるが、それを俺は一歩引きながら頭を下げて回避する。更には『美の神』であるフレイヤの誘いを断ったことで周りの神々や冒険者たちが騒がしくなる。

 

周りが騒がしくなったのは些細なことなのか、フレイヤは俺が『魅了』の効果を受けていないことに気付いたのか或いは初めて自分の誘いを断られたからなのか、俺の言葉の意味を訪ねてきた。

 

 

「それはどういうことかしら?」

 

「自分はまだ若輩であり、弱者であり、なにより貴女様の隣に居られる兄弟子を先置いて、弟弟子たる自分が貴女様に夢を見せるのはあまりは無礼であると思いますので、お断りさせていただきました」

 

「…………なるほどね。ミアが鍛えているのであれば、オッタルが兄弟子なのも頷けるわ」

 

 

『嘘』はついていないのでフレイヤも兄弟子であるオッタルを差し置いて弟弟子である俺がフレイヤとキャッキャウフフなことは出来ないことを納得してくれたようだ。

 

いや~、事前にミアさんにオッタルは俺の兄弟子に当たるのかどうかを聞いておいてよかったぁ。ミアさんは口ではオッタルのことを弟子とは認めてはいないけど、俺みたいな駆け出し冒険者に鍛練を付けているのだからオッタルが兄弟子で間違いないだろう。

 

 

「それにしても、私の()()()()()()()()()()()だわ」

 

「ッ!!」

 

 

めっちゃくちゃ含みのある言い方をしないでよ、このアナザーリアス擬きが!!その所為でオッタルからの圧が俺に降り注いでいるんだけど!?

 

絶対に今顔を上げて、オッタルの顔を見たらゴミ屑を見るような目で俺を見下ろしているに違いない。だって、【フレイヤ・ファミリア】はフレイヤ様第一主義者の巣窟だからその中でもトップであるオッタルは、目の前で崇拝するフレイヤの誘いを断ったとなれば即処刑ものだが、今回は『神の宴』なので多分何とかなる。

 

 

「珍しい物が見れて、ヘスティアやアルテミスの機嫌を損ねてしまったようだし、もう行くわ。それとオッタル、あなたから可愛い弟弟子に兄弟子として何かアドバイスをしてあげたら?」

 

「わかりました」

 

 

フレイヤの指示を聞いたオッタルは、フレイヤよりも一歩俺へと近付くとその瞬間、最早反射的に近い感覚で俺は全力で全てのオーラで身体全体を覆おうとするが、それよりも先に、気付いた時にはオッタルの拳が俺の左側を通過しており、それによって左頬に軽く裂傷が生まれた。あまりの出来事に困惑するが、裂傷の痛みでようやく理解が追い付く。

 

 

「………ッッ」

 

「遅い、それに青いな」

 

「…………」

 

「貴様がミアの弟子と名乗り、ましてや美の女神たる我らがフレイヤ様の誘いを断ったのだ。その程度ではフレイヤ様の品位に泥が付く。強くなれ、俺からはそれだけだ」

 

 

言いたいことを言い終わるとオッタルは俺に背を向けてフレイヤに「お待たせしました」と述べてから二人して会場から去っていく。

 

それを眺めながら俺は現最強からの激励を受けたあと、遅れて笑いが出てくる。

 

 

「は、ハハ、ハハハハ!!」

 

「ケンマ?」

 

「ハハハハハハ!!」

 

 

どうしてだろう。普通なら今のやり取りに『恐怖』を抱くはずなのに、俺の感情は全く別のものに塗り潰されている。それは『闘争』という感情だ。

 

やっぱり、『ダンまち』の世界に転生してから俺の性格はおかしくなってしまったようだ。今は届かなくてもいつかはオッタルは闘いたい、競い合いたいとそんな風に思ってしまっているのだから。

 

もしかしたら、これは知らず知らずの内に俺の内側にあった1つの狂気なのかも知れない。あるいは、ドライグとの取引で内臓を全てドラゴンの物に変えてしまったからドラゴンとしての『闘争心』が焚き付けられたのかも知れない。

 

 

「嗚呼、強くならないとな」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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