臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第十一話

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

「早朝の鍛錬はここまでにしましょう。今日は、『怪物祭』で忙しくなるので」

 

「ありがとう………ございました…………」

 

 

地面に仰向けで倒れ、息を荒くしながら師匠であるリューさんに感謝の言葉を述べる。リューさんの姿が『豊饒の女主人』の中へと消えたのを見計らったのか、左手に宿るドライグから声をかけられる。

 

 

『今日もボロ負けだな、相棒』

 

「なんだよ、笑うためだけに起きたのかドライグ」

 

『まぁな。だが、イッセーよりは速い段階で成長している』

 

「そうか。あー、早く禁手に至って無双したい」

 

『それはまだ先だな。いくら神の【恩恵】があるとはいえ、まだまだ禁手に至るにはまだ程遠いぞ。それこそ、タンニーンのような龍王とサバイバルをすれば話は別だがな』

 

「カァー、現実は辛いねぇ」

 

 

ドライグに禁手に至るのにはまだ遠いと口にして言われてげんなりしていると、あることが頭の中を過る。それは、イッセーのように身体の一部をドライグと取引して無理矢理にでも禁手に至る方法だ。しかし、それは最終手段として残して置こう。自力で禁手に至れるのであれば、それに越したことはない。

 

そして、願わくば最低でも18階層に出てくる黒いゴライアスと戦う前には『赤龍帝の籠手』を禁手に至らせておきたい。そう思っていると店の裏口からウエイトレス姿のヴィクトリアが顔を覗かせてきた。

 

 

「おーいケンマ、ミアが起きれるならご飯を作ったから食べちゃいなさいって」

 

「ヴィクトリアか、了解」

 

 

先のことをありこれ考えても現状は変わらないので、頭を切り替えて飯を腹に入れることに行動を移す。カウンター席に置かれた湯気がまだ立ち登っている料理を椅子に座って、味わいならが食べているとミアさんから声がかかる。

 

 

「坊主、今日もダンジョンかい?」

 

「それについてはちょっと迷ってて、せっかく『怪物祭』があるみたいなんでパーティーメンバーと相談して、見て回ろうか悩んでます」

 

「そうかい。なら、オススメは祭の中心にある円形闘技場だね。あそこで【ガネーシャ・ファミリア】のモンスター調教が行われるからね」

 

「なるほど、祭のメインイベントってことですか」

 

 

とは言ったものの。そのコロシアムにいる【ガネーシャ・ファミリア】がダンジョンから連れ出したモンスターたちが美の女神であるフレイヤの魅了にかかり暴れだすのであまり近付きたくないのが本音である。

 

また、『ダンまち』の外伝として『ソード・オラトリア』で、同じ時期に出てくるイレギュラーなモンスターである食人花をなんとか倒して【ロキ・ファミリア】の推しの一人であるレフィーヤ・ウィリデスの好感度を上げるのもありかもしれないと気持ちが半々だ。最悪の場合は、自分ルールに従って《エクス・デュランダル》を使うことも視野に入れて置こう。

 

 

「ご馳走さまでした」

 

「はい、お粗末様」

 

 

食後のお茶をゆっくりと飲みながら小休止をしていると、タイミングよく手が空いているリューさんの姿が目に入ったので防具について訪ねることにした。

 

 

「あっ、リューさん。ちょっといいですか?」

 

「なんでしょう?」

 

「防具について、上級冒険者の意見を聞きたくて」

 

「なるほど、そうでしたか。それで、イシグロさんはどのような防具を求めているのですか?」

 

「考えとしては、私服同様に使える頑丈な戦闘衣がいいですね。下手に全身鎧なんて着けたら、鎧があるから大丈夫なんていう安易な考えが生まれるので」

 

「確かにそれは間違っていない。上級冒険者な中には、戦闘衣だけや致命傷になる部分だけを鉄製の防具で守り、他は戦闘衣にしている者もいます」

 

 

前者はリューさんのようなモンスターの攻撃でも破れることのない戦闘衣。後者は、アイズのような戦闘衣と鎧の混合。俺としては、『赤龍帝の籠手』が禁手に至ることによって具現化される『赤龍帝の鎧』を見越して出来るだけ軽装な防具を装備したいのだが。

 

そこまで考えたところで、『ハイスクールD×D』のアニメや原作では語られなかった部分の疑問が浮上したので心の中でドライグに訪ねることにした。

 

 

(なぁ、ドライグ)

 

『なんだ、相棒』

 

(歴代の赤龍帝の中で、『赤龍帝の鎧』の下に全身鎧を着けた宿主はいたりするか?全身鎧だと、二重に鎧を装備することになるだろう?)

 

『全身鎧とまではいかないが、胸当てやライトアーマーくらいは付けていた宿主は居たな。ま、大半は俺様の鎧で十分だったがな。なにより、神器は宿主の想いに呼応する。相棒が強く想いば、それに応える形の鎧になるだろう』

 

(ということは、俺が強く望めば動きやすい形で『赤龍帝の鎧』は具現化すると?)

 

『ま、そういうことだな』

 

(なるほど………)

 

 

ドライグの説明で、『赤龍帝の鎧』は俺に合わせた形で具現化するということなど、それを纏う前から動き難いとそれがそのまま反映されてしまうということなので、より一層に鎧よりも戦闘衣が良いと結論が出た。

 

出来れば、リューさんについて来て欲しいので一か八かで頼んで見ることにした。

 

 

「あの、リューさん………できれば俺の防具を買うの手伝って欲しいですけど……出来ませんか?」

 

「そうですね…………一応、イシグロさんの師として選んで差し上げたいのは山々ですが、近いうちに休暇を取れるシフトではないので」

 

「そうですか、なら仕方ないですね。相談に乗ってもらってありがとうございます」

 

「いえ、師として当然のことです」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「どうして、俺は皮剥きなんてしてるんだろうか?」

 

 

リューさんに防具を買う付き添いを断られてあと、手持ち無沙汰になった俺は何故かミアさんに言われてベルが来るまで中庭で野菜の皮剥きを頼まれてしまった。

 

別に、料理が苦手とかではなくて普通に出来るが何故ゆえ『豊饒の女主人』の店員でもない俺が手伝わされているのだろうか?

 

 

「あー、包丁でチマチマ皮を剥くのは疲れる。一層のこと、イッセーの【ドレス・ブレイク】みたいに魔法で皮が剥ければなぁ…………」

 

『おい、相棒』

 

「せめて、ピーラーくらい………」

 

『相棒ッ!!』

 

「なんだよ、ドライグ」

 

『芋の皮が剥けてるぞ』

 

「は?」

 

 

ドライグに言われて、手元にある芋に視線を向けると何と言うことでしょう。見事綺麗にツルッツルに皮が剥けているでありませんか。それも皮だけが綺麗に剥けている。

 

これは間違いなく、イッセーの十八番技の一つである洋服破壊に間違いない。洋服破壊のきっかけとなったあのシーンを脳裏に浮かべていたからなのか、無意識に【魔力操作】のスキルで洋服破壊が発動していたのだろう。

 

 

「マジか…………」

 

『相棒、あえて聞いておくが、分かってるな?』

 

「………………分かってるよ」

 

『おい! 今の間はなんだ!?』

 

「いや、この魔法をアレンジできないか考えたんだよ。イッセーの場合は、対象が女性だけかも知れないけど、俺の場合は性別種族問わず鎧や外皮なんかを剥けないかなってさ。モンスターの中には、皮膚が硬い奴とか居そうだしさ」

 

『なるほどな。相棒は、イッセーと違って戦闘面のことも考えているのだな。安心したぞ』

 

「あははは………ドライグのためにも名前を変えてやってみるか」

 

 

左側の籠に入っている皮剥きが終わっていない芋たちに意識を集中させて、精神力を流し込んで洋服破壊ではない別の魔法名をあえて口にする。

 

 

「武具破壊」

 

 

すると、名前を変えても洋服破壊と同様に、一瞬にして芋の皮が全て弾け飛ぶように剥ける。洋服破壊は元々詠唱文がないため、この世界で使うとなれば速攻魔法に分類されるだろう。

 

魔法名の変更も完了したので、武具破壊の感覚がなくならないうちに残りの芋や人参、玉ねぎといったありふれた野菜たちの皮剥きを武具破壊で素早く終わらせていく。全部終わったところで、小さく息を吐くと少し身体がダルく感じた。流石に野菜籠三杯分の野菜の皮剥きを【魔力操作】でしたとはいえ、それなりに精神力が削られてしまったようだ。

 

 

「おーい、ケンマ。皮剥きは進んでるかい?」

 

「ええ、全部終わりましたよルノアさん」

 

「えっ、本当!?」

 

 

俺に声をかけてきたのは、【デメテル・ファミリア】に身を寄せているリューさんと同じくLV.4 の元冒険者、二つ名は【黒拳】。そんな彼女に野菜の皮剥きが終わったことを告げると慌てて本当かどうかを確認し始める。

 

一つ一つ桶に入られている野菜を確認するルノアさん。全ての野菜の皮剥きが終わっていることを確認し終わるとギロリと俺のことを睨んだあと、両肩を掴まれた。

 

 

「どうやったの? どうやれば、こんな綺麗に芋の皮が剥けるのよ!?」

 

「えーっと、魔法の応用でやりました」

 

「魔法の応用?」

 

「はい」

 

「ふーん、魔法の応用ねぇ」

 

 

ルノアさんは何やらしばらく考えた後、店の方へ姿を消すとの数分してから何故かリューさんと共にルノアさんが帰ってきた。

 

 

「イシグロさん、ルノアからあなたが野菜の皮剥きを魔法の応用で行ったと聞きましたが本当ですか?」

 

「そうですけど、どうしてリューさんが?」

 

「それは、ルノアから素手での鍛練指南を彼女が請け負いたいと申し出たので、それでイシグロさんに確認をと思いまして」

 

「ねぇ、どうかな? こう見えて、私もリューと同じLV.4 の元冒険者なのよ」

 

 

確かに素手での格闘鍛練をルノアさんにしてもらえたらかなり上達するだろう。しかし、野菜の皮剥きを魔法でやったと聞いてから動いたから彼女は、優しい笑みを浮かべている裏では餌を吊るして『鍛練』という餌に俺が食いつくのを待っているのだろう。

 

そして、あわよくば自分の仕事を減らそう等と考えているのではないだろうか?

 

 

「ルノアさん、因みに本音は?」

 

「えっ?」

 

「俺の考え過ぎならいいんですけど、明らかに『鍛練』という餌を吊るして、自分の代わり野菜の皮剥きをしてくれる魚が食い付いてくれるのを待っている釣り人のように感じるのは俺だけかなって」

 

「うっ!」

 

「ルノア、あなた…………」

 

 

隠していた目論見がバレて、リューさんの冷たい視線を向けれるルノアさん。

 

正直なところ、皮剥き程度ならば代わりにやってもいいと思っている。安全に『魔力』の基本アビリティを伸ばせるのであればそれに越したことはない。加えて、格闘技術の鍛練が出来るのだから美味しい話だ。

 

 

「俺が決める前に、まずは店主であるミアさんに相談したらどうですか? ミアさんがオーケーをもらえたら考えます」

 

「…………わかったわ。ミアお母さんに聞いてくる」

 

 

リューさんの冷たい視線から逃げるようにそそくさとルノアさんは厨房にいるであろうミアさんの下へと向かっていった。

 

 

「よかったのですか? ルノアの話に乗ってしまって……」

 

「リューさんには悪いですけど、俺としては有難い話だと思っています。リューさんとは違ったバトルスタイル待つ、元LV.4 の冒険者が鍛練の相手をしてくれるというのは、小心者の駆け出し冒険者からした喉から手が出るほど手に入れたい関係ですから」

 

「なるほど、イシグロさんは小心者の駆け出し冒険者としてルノアの鍛練も受けたいと」

 

「そういうことです。欲を出して言ってしまえば、ミアさんにも師事したいところです。ブランクがあるといえど数少ないLV.6の冒険者から得られる物は、駆け出しからしたら計り知れないほどの財産になる。それこそ、ダンジョンに挑むよりも遥かに多く」

 

「あなたのその向上心は尊敬に値します。普通の駆け出し冒険者ならば、そんなことを微塵にも考えないはすだ」

 

「俺はただの臆病者ですよ」

 

「なら、その臆病をあなたは今後も大切にするべきだ」

 

 

"冒険者は冒険"をしてはならない。アドバイザーであるエイナさんの口癖通り、俺は臆病者だから綱渡りのような冒険はしない。するにしてもそれなりに準備をする。それは、前世でやっていたゲームと同じだ。

 

必要レベルよりも少し上までを上げて、防具も一番新しい村や街で買える高性能の物に変えて、回復アイテムも十分揃えてから次のステージへ挑む。それが出来ないなら進まない。某RPGゲームをやったことのある人なら大抵はそう考えるはずだ。

 

そう一人、頭の中で思っているで厨房にいるはずのミアさんがルノアさんの話を聞いてから俺の元へやってきた。

 

 

「ケンマ、ルノアから話は聞いたよ。アタシとしても、こんなに綺麗に野菜の皮剥きをしてくるなら有難い限りだよ。あと、お前さん次第だよ」

 

「そうですね。いずれは、一人立ちするかしれませんがそれまではお願いしようと思います。あと、出来ればミアさんやクロエさん、アーニャさんも鍛練の相手をしてくれると嬉しいです」

 

「ほう。アンタ、駆け出し冒険者にしては珍しいことを考えるね」

 

「リューさんにも言いましたが、駆け出し冒険者からしたらミアさんたちから得られる物はダンジョンよりも多い。なら、その機会を逃すのは命知らずのバカな冒険者しかいませんよ。俺は臆病者だからそんなことはしませんけど」

 

「なるほど、臆病者ねぇ。アタシからすれば、アンタは他の冒険者よりも命知らずに感じるよ。なんせ、『豊饒の女主人』にいるのはシルを除いて全員が第二級以上の冒険者だよ。それなのに、アンタは全員に師事しようとしている。笑えてくるよ」

 

 

俺の意見を聞いてからミアさんは獰猛そうな笑みを浮かべる。その目は、普段の店主としての目ではなく一人の冒険者としての目をしていた。

 

 

「一週間のうち、五日はアタシら一人ずつと早朝鍛練。残り二日は、身体を休めるためにも鍛練は無し。ただし、皮剥きは遠征や何かしらの用事がある時、または一人立ちするまでは毎日やってもらうからね」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 

こうして俺は、零細な【ファミリア】にしては豪華過ぎる面子の師匠たちが出来たのである。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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