臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百◯十話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

ヘルメスから【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の過去の惨劇や『三大冒険者依頼』の話を聞いて、俺の『アンタレス』からもしかしたら他にも同じくらい強力なモンスターが未だに地上に封印されているか、或いはこれからダンジョンから産み出されるのではないかという空想的な話をして不穏な空気になるが、今考えても答えは出てこないのでこの話はここで打ち切ることにした。

 

仮にアンタレスと同レベルのモンスターがいた場合、今の俺たちにはどうすることも出来ない。【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・フレイヤ】よりも強かったという【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の冒険者たちには少なからずLV.7 以上の強者がいたはずなのでそう考えると現在のオラリオの冒険者では『黒いモンスター』には歯が立たないだろう。

 

それこそ、俺が『真紅の赫龍帝』を目覚めさせるか、または『希望の赤龍帝』を完全に使いこなせない限りは目立ったダメージは与えられないのではないだろうか?

 

 

「俺の話は空想の域を出ないから、もしかしたらという頭でいてくれれば良いぞ、ヘルメス」

 

「あ、ああ………ケンマくんがそう言うならそうするよ」

 

 

言い出しっぺの俺がそう言うとヘルメスもそれ以上深く考えるの止めた。

 

 

「ところで、ベルくんとケンマくんは踊らないのかい?」

 

「えっ?」

 

「今も行われているダンスさ。見てご覧よ」

 

 

ヘルメスが指で示した先には、大広間で『神の宴』に参加した【ファミリア】の主神と冒険者、または主神同士で流れる音楽に合わせて踊っている。

 

 

「キミの育ての親も言ってたんだろう?ここには世界が羨む美女美少女が揃っているんだぜ?お近づきになる好機だ」

 

「で、でも僕は踊り方を知らないですし、いいですよっ。パーティーに参加させてもらえただけでも十分………」

 

「何を抜かしているんだ、ベルくん。さぁさぁ、キミの好みの女の子は誰だい?」

 

 

下種のようにニヤニヤした笑みを浮かべるヘルメスに肩を組まれるベル。体の自由を半ば奪われてしまっているベルは、そのままヘルメスによって会場内にいる女性を視線だけで漁り始める。

 

そんな二人に苦笑いを浮かべながら俺はどうしようかと悩む。もしもここにレフィーヤが居たのならば、ダンスに誘っていたかもしれない。推しと一時を楽しめるのはオタクとしてこれ以上ない喜びだろう。

 

だけど、それはタラレバなので諦めることにした。他に誰かいないかと探しているとヘファイストスたちと共に食事を楽しんでいるアルテミスの姿を捉えた。その刹那、俺は『エルソスの遺跡』の近くに設置していた【ヘルメス・ファミリア】の夜営地の側にあった湖で月光に照らされながらアルテミスと二人で踊った記憶がフラッシュバックした。

 

 

「これは決まりだな」

 

 

一人でそう独り言を呟くと、ヘルメスが一人でいるアイズに向かってアニメ通り道化のような台詞を言い放つ。

 

 

「ああ、麗しの【剣姫】!どうかこのヘルメスと踊って頂けないかな?」

 

「えっ?」

 

 

流石のアイズも突然ヘルメスにダンスの誘いをかけられて、どう反応していいのか分からず、一度ロキとヘスティアがいる方へと顔を向けるがその表情は困惑の色を残したままだった。

 

 

「ほら、ベル。アイズが困ってるぞ。助けに行ってやれよ」

 

「で、でも何をしたら!?」

 

「そんなの簡単だろうが。アイズをダンスに誘えばそれでいいんだよ」

 

「あ、アイズさんを!だ、ダンスに!?」

 

「それじゃあ、俺もダンスに誘う相手がいるから。あとは頑張れよ、白き英雄殿」

 

「ちょっ、待ってよ、ケンマ!」

 

 

一人にしないでと、手を伸ばしてくるベルを躱して、そのままアルテミスの下へと向かう。そして、頃合いを見計らってからアルテミスに声をかける。

 

 

「アルテミス」

 

「ケンマ、どうかしたのか?」

 

「俺と踊ってくれないか、アルテミス」

 

「えっ?」

 

 

俺から手を差し出してアルテミスにダンスの誘いをすると、ワンテンポ置いてから彼女の頬に赤みが指していく。まさかの誘いに困惑していると隣にいたヘファイストスがやれやれと行った肩でフォローをしてくれる。

 

 

「せっかくの誘いなのだから行ってきなさい、アルテミス」

 

「ヘファイストス!だ、だが………」

 

「嗚呼、もう!いつまでもモジモジしてないでさっさと行きなさい!お皿とフォークは預かるわ。ほら!」

 

 

少し強引にアルテミスから皿とフォークを奪うと顎で「行きなさい」とヘファイストスは指示を出す。

 

 

「…………わ、私でよければ……」

 

「喜んで」

 

 

おずおずと出して来る細い手を適度な力で握り返しながら引っ張って、ダンスを踊っている男女の中へと混じって、俺たちも踊る。

 

最初こそ、困惑や羞恥心などで強張っていたアルテミスもしばらくダンスを踊っていれば、次第に強張りが解けて、表情も笑顔になって行く。

 

 

「こうしてアルテミスと踊るのは、あの夜の湖以来だな」

 

「そうだな。あの時は、こうしてケンマとまた踊れるとは思っても見なかった」

 

「なら、命賭けで助けた甲斐があった」

 

「ああ、ケンマ───いや、オリオン!私を助けてくれて、ありがとう!」

 

「どう致しまして」

 

 

今日一番のアルテミスの笑顔に笑顔で返しながら、俺たちは音楽が止まるまであの夜の続きを目一杯まで楽しむ。その間、途中途中でベルとアイズがお互いの呼吸が合わずに足を踏んでしまって、困っていたが命やミアハ、タケミカヅチの助言を受けて何とか普通に踊れるまでにはなっていた。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

あの後、アルテミスが少し疲れるまでダンスを堪能した俺たちは、渇いた喉を潤すためにジュースを飲んでいるといつの間にかヴィクトリアが側にいた。

 

 

「やけに楽しそうだったわね、お二人さん」

 

「ヴィクトリアか、まぁ確かに楽しかったな」

 

「私もあそこまでダンスを楽しめたのは生まれて初めてだ!」

 

「それは良かったわね、アルテミス。それも愛しのケンマと踊れたのがとても良かったみたいね」

 

「か、からかわないでくれ、ヴィクトリア!」

 

 

ニヤリ顔でアルテミスを揶揄するヴィクトリアに、アルテミスは顔を赤くしながら揶揄するなと咎める。

 

二人のやり取りを見ているといつの間にか音楽が鳴り止んでいることに気付いて、アニメ知識から次の展開を予測して、身構えると『神の宴』の開催宣言をやった場所にアポロンは再び姿を現した。

 

 

「───諸君、宴は楽しんでいるかね?」

 

 

その問い掛けの後、アポロンはゆっくりとベルとアイズの下へと向かう。そんな最中、突然会場内の明かりが消えるとベルとアイズの居る場所だけが明るくなる。

 

招待客はこれもアポロンの催しの一つだと思っているのか、騒ぐことはなかったが俺はこの先の展開を知っているので暗闇の中でヴィクトリアとアルテミスに視線を送り、二人が頷いてくれたので俺たちもベルの下への集結することにした。

 

 

「……フフフフ……」

 

「っ!?」

 

「ベルくん!」

 

 

突然アポロンから厭らしい笑みを向けられたベルは、思わず息を飲み込んでしまう。そこへすかさずヘスティアがベルを守ろうと二人の間に割って入る。

 

 

「やぁヘスティア。先日は私の眷属たちが世話になったようだね?」

 

「あ……ああ、僕の方こそ……」

 

「私の子はキミの子に重傷を負わされた。それなりの代償を要求したい」

 

「なっ……!どういうことだい!?こっちだって、ヘファイストスの所のヴェルフくんが怪我をして帰って来たんだ!そんな一方的な話が───」

 

「これを見ても同じことを言えるのかな?」

 

 

そう言ってアポロンは半身を左に引くと、そこには身体中に包帯を巻いて、松葉杖まで着くあの時『焔蜂亭』にいた【アポロン・ファミリア】の小人族がそこにはいた。

 

終いには────

 

 

「痛ってぇ!超痛てぇよ~!!」

 

 

──そのあまりの大根役者っぷりに思わず笑いが漏れてしまった。

 

 

「ブフッ!」

 

「今、ルアンを笑ったのは誰だ!」

 

「あ、ヤベッ」

 

 

漏れた笑い声をアポロンに聞かれ、思わず反射的に口元を手で抑えながら呟くも既にアポロンにはバレていたようで、こちらを睨んでくる。

 

 

「貴様か、私の可愛いルアンを笑ったのは!?」

 

「いや~、あまりに露骨な演技だったので、ついね………」

 

「まぁいい。今はこちらが優先だ」

 

 

自分の眷属を笑われた怒りに任せるかと思いきや、アポロンは存外にも冷静さを失わずに再びベルとヘスティアに向き直った。

 

 

「先に仕掛けたのはそちらだと聞いている。証人もいる。言い逃れもできない」

 

「証人って、どうせヴェルフとベルに一方的にボコられた負け犬団員のことだろう?」

 

 

先ほどの件でいっそのこと開き直ることにして、アポロンが呼んだ三人に見覚えがあったので普通にそいつらはベルとヴェルフに負けた負け犬だと指摘する。

 

すると、負け犬だと指摘された三人の【アポロン・ファミリア】は、あるあるの逆ギレを俺に向けてくる。

 

 

「なんだと!」

 

「もういっぺん言ってみろ!」

 

「ベートさんじゃないけど、負け犬ほど良く吠えるな」

 

 

多分だが、この三人はルアンと同じLV.1 の下級冒険者だろうと思いつつ、怒り心頭で今にも怒りを爆発させかねないアルテミスを宥めに動いた。

 

 

「アルテミス、今は抑えてくれ」

 

「どうしてだ!アポロンの主張は、完全にイカサマだぞ!?」

 

「俺もわかってる。でも、アルテミスがそれを言ったところで今の状況は変わらない」

 

「なら、どうしたら………!」

 

 

アルテミスは、神友であるヘスティアとその眷属であるベルが悪者にされているのが耐えられないのと自分に友人を助けられるだけの力がないことから俯きながら目の端に涙を溜めていた。

 

その間にもヘスティアとアポロンの話は進んでおり、そんな中でアポロンからアニメ通りに『戦争遊戯』の申し出があったがその内容にはアニメと違う点があった。

 

 

「ならば、仕方がない。【アポロン・ファミリア】はキミとヴィクトリアに『戦争遊戯』を申し込む!」

 

 

その申し出に泣いていたアルテミスも思わず顔を上げた、俺はというと、何故アポロンが【ヘスティア・ファミリア】だけでなく俺たち【ヴィクトリア・ファミリア】まで今回の『戦争遊戯』に巻き込んだのかが理解出来ない。

 

ベルはアニメ通り18階層で撃破した『黒いゴライアス』が原因だと分かる。しかし、俺は何が原因だ?黒いゴライアスの激闘でアポロンに目を付けられるようなことはしてない。仮に『赤龍帝の鎧』を纏った状態で黒いゴライアスを殴り飛ばしたのが原因だと言われても、俺はあの時、あの場にいた冒険者には顔を晒していない。

 

『赤龍帝の鎧』を纏って状態で顔を晒したのは未開拓領域の温泉で共に居たベル、ヴェルフ、リリ、ヘスティア、リューさん、レフィーヤ、桜花、命、千草、アスフィさん、ヘルメスの十二人のみだ。

 

そこから消去法で導き出されるのは────十中八九、間違いなくヘルメスが犯人だ。それ以外に考えられない。

 

 

「我々が勝ったらヘスティアの所のベル・クラネルとヴィクトリアの所にいる噂の赤い鎧を纏った冒険者を貰い受ける!」

 

 

ああ、そこまでアポロンから聞ければ十分だ。今のでヘルメスが今回の騒動に裏で関わっている確信が得られた。

 

なので、犯人であるヘルメスに向かって指を三本立ててやり、これで借りは三回だからなとジェスチャーで告げてから続けて親指で喉を切るようにして次は殺すとも告げておく。

 

速攻でバレたヘルメスは冷や汗を流しながら苦笑いを浮かべている。てか、あれで何故バレないと思った?アポロンは名指しではなくて「噂の赤い鎧を纏った冒険者」と言ったのだ、つまりLV.2 としての俺が欲しい訳ではないということが分かる。しかもアポロンは、俺が『赤い鎧を纏った冒険者』だと認識していないことからヘルメスが唆したのだと分かった。

 

 

「ケンマ、貴方はどうするの?ヘスティアは『戦争遊戯』を受けるつもりはないみたいで、早々に出て行ったわよ」

 

「んー、そうだな………明後日までに決める形でいいんじゃないか?それか神ヘスティアが『戦争遊戯』を受けたら俺たちも受ける流れで」

 

「分かったわ。アポロン、そういうことだがら明後日までには『戦争遊戯』を受けるか、受けないのかの答えを出すわ。それじゃあ」

 

「アルテミス、帰るぞ」

 

「ああ、分かった」

 

 

ヘスティアとは違って俺たちは明後日まで答えを出すとアポロンに説明したので、市内で戦闘を仕掛けてくる可能性は低くなっていると思いたい。

 

それから【アポロン・ファミリア】から『戦争遊戯』を仕掛けられるのは予想通りだったので、去り際にヴェルフとロキに声を掛けて置くことにした。

 

 

「ヴェルフ、悪いが明日からしばらく俺はダンジョン探索には参加できない」

 

「それは『戦争遊戯』に備えるためか?」

 

「ああ、そうだ」

 

「分かった。ベルとリリスケ、命には俺から伝えておく」

 

「助かる」

 

 

次はロキだ。

 

 

「例の約束、お願いしますね。神ロキ」

 

「どこまでがお前さんの予想通りや?」

 

「アポロンが『戦争遊戯』を仕掛けて来るまで」

 

「相変わらず、食えん男やな。門番にはウチから伝えておくから好きな時に来たらええ」

 

「では、明日の早朝頃に」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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