臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈Sideケンマ〉
【アポロン・ファミリア】からヘスティアたちと共に『戦争遊戯』を申し込まれた俺たちたちは、ヘスティアとは別に明後日かまたはヘスティアたちが『戦争遊戯』を受けると答えを出したらこちらも受けると述べてから『神の宴』の会場を去ることにした。
その去り際、ヴェルフにはしばらくダンジョン探索には参加できないことを、ロキには以前『怪物祭』でレフィーヤを助けた報酬として要求したことを頼んでから今度こそ会場を去る。
そして馬車をホームではなく、『豊饒の女主人』へと走らせる。
「ヴィクトリア、今から『豊饒の女主人』に向かうぞ。今ならまだやってるだろうしな」
「もしかして、まだ食べたりなかったの?」
「まぁ、それもあるが【アポロン・ファミリア】がヴィクトリアを狙って来た時の対策だ」
「それはどういうことだ、ケンマ?」
【アポロン・ファミリア】がヴィクトリアを狙ってくると述べると、ヴィクトリアの隣に座っているアルテミスが尋ねてきた。
「それがどうやらアポロンは気に入った他所の【ファミリア】の眷属が居れば、ペナルティを承知で市内で戦闘を仕掛けてでも『戦争遊戯』を成立させようとしてくるみたいなんだ。だから、今回もそうならないとは限らないからヴィクトリアには安全な場所に居てもらおうと思ったんだ」
「なるほどね。それは一利あるわね」
「アポロンも自分の【ファミリア】が中堅クラスだからギルドのペナルティなど痛くも痒くもないということか。つくづく、呆れ果てたものだ」
アニメ知識から知っている【アポロン・ファミリア】の仕出かしを二人に説明すると、ヴィクトリアは納得し、アルテミスは怒りを通り越して呆れ果てていた。
そんな訳で『豊饒の女主人』へと到着した俺たちは普通に店内へと入り、普通に料理を注文するのだが自分たちの格好が周りのお客たちの目を惹いているようで視線が集まっている。
「お飲み物と料理をお持ちしました」
「ありがとうございます、リューさん」
「いえ、これも仕事ですから。それとイシグロさんたちのその格好から察するに、【アポロン・ファミリア】が主催した『神の宴』の帰りですか?」
「ええ、まぁ………。それとミアさんにちょっとお願いしたいことがあると伝えて貰っていいですか?」
「お願い、ですか?」
「はい。それから早朝鍛練なんですが、明日からしばらくの間は出られないかもしれないです」
「理由をお聞きしても?」
早朝鍛練に出られないことをリューさんに説明すると、当然の如く理由を求められるので小声で【アポロン・ファミリア】の策略により【ヘスティア・ファミリア】と共に『戦争遊戯』を仕掛けられたと伝えた。
「なるほど、そういうことですか」
「なので、ミアさんにはしばらくの間はヴィクトリアを『豊饒の女主人』に匿って貰おうと思ってます。できれば、アルテミスも共に」
「イシグロさんはどうするのですか?」
「俺はとある【ファミリア】で戦争遊戯に備えて鍛練をしてくるつもりです。それから俺のことはケンマでいいですよ?エルソスの遺跡では普通に名前呼びでしたし」
「そ、それは……あの時の私は冷静さを欠いていたというか………」
「まぁ、呼び方はリューさんに任せます」
俺の呼び方が前のような名字呼びに戻っているので、『エルソスの遺跡』の時のように名前呼びで構わないとリューさんに伝えると彼女は当時の自分は冷静さを欠いていたと恥ずかしいそうに頬を赤くしながら御盆で顔を隠す。
すると思いの他、リューさんと喋っていたのかカウンターにいるミアさんからリューさんへ怒号が飛んで来る。
「リュー、いつまでくっちゃべってんだい!?早くこっちの料理を持って行きな!」
「す、すみませんミア母さん!」
ミアさんの怒号を聞いたリューさんは、肩を跳ねさせてから急いで給仕の仕事へと戻って行った。彼女のそんな後ろ姿を見ながら、申し訳ないことをしたと苦笑いを浮かべるしかなかった。
それからしばらく三人でミアさんが作った『神の宴』よりも美味い食事に舌を打ちながら、俺はヴィクトリアに『戦争遊戯』で主神としてどんな勝ち方をご所望なのかを尋ねる。
「なぁ、ヴィクトリア。【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯で勝ち方とかに縛りとかある?」
「んー、そうね………無難な勝ち方でいいんじゃないかしら?」
「じゃあ、エクス・デュランダルを使わないもいいのか?」
「だって貴方、態々エクス・デュランダルを使わなくてもブーステッド・ギアに禁手化があるのだから負ける要素が何処にあるのよ?」
「あっ………」
そうだった。ヴィクトリアにはまだブーステッド・ギアがしばらく使えないことを伝えていなかったんだった。まぁ、アニメ通りであればヒュアキントスを倒すだけならば基本アビリティがオールSに到達している今の俺なら普通に倒せるだろう。
もしも仮にイレギュラーでヒュアキントスがLV.4 へと【ランクアップ】を果たしていたとしても【一刀修羅】で全アビリティを何十倍にも引き上げれば勝てるはずだけど、念には念を押すために態々ロキに『神の宴』の去り際に声を掛けたのだから今後のことも考えても基本アビリティを上げられるだけ上げて置きたい。
「ケンマ、今、何に対して「あっ……」と言ったのか教えてくれるかしら?」
「い、いやぁ、ヴィクトリアが気にすることじゃないから大丈夫。うん、気にしない気にしない」
「それを判断するのはわたしよ。主神命令としてホームでゆっくりと聞かせてもうわね」
「…………はい」
その後、ホームでヴィクトリアにブーステッド・ギアがしばらく使えないことを打ち明けるともの凄い剣幕で怒られた。更に【ロキ・ファミリア】で十日くらい鍛練をすれば勝てるはずだと、思わず溢すと『神会』で『戦争遊戯』まで十日は勝ち取ってくるから死にもの狂いで鍛練をしろと主神命令を下された。
またミアさんからは『戦争遊戯』に勝ったら『豊饒の女主人』で祝勝会をしろとも言われた。無論、俺の金でである。
そんな訳でどの世界でも報・連・相は大事だと改めて思った。
○●○
【アポロン・ファミリア】から『戦争遊戯』を仕掛けてられた翌日の早朝、俺は今【ロキ・ファミリア】のホームである『黄昏の館』の扉の前で怖気付いている。
何故、怖気付いているかと問われれば、ヴィクトリアに死にもの狂いで鍛練をしろと言われたが俺の今の【ステイタス】はオールS。なので態々痛い思いをしなくてもいいのではと思い、今に至る訳だ。
「んー、態々痛い思いをしたくないし。でも、ヴィクトリアに怒られるのも面倒だしなぁ………」
ああでもない、こうでもないと一人で百面相をしながら何か良いアイデアはないかと思考を廻らせていると、突然『黄昏の館』の扉が押し開かれた。
「いつまでそんなことにいるつもりですか、ケンマ?」
「うおっ!れ、レフィーヤ!?」
突然、扉が開かれたこととレフィーヤにバレていたことに二重で驚き、思わず軽く後方へ飛び退いてしまった。
「門番の人がケンマを敷地内に入れたということは、ロキか団長の許可は得てるんですよね?」
「あ、ああ。昨日の【アポロン・ファミリア】主催の『神の宴』で、神ロキに許可を貰ってある」
「では、まずは団長へ挨拶をしてもらうので執務室へ案内しますね」
「わ、分かった」
痛い思いをしない件について何も策が決まることなくレフィーヤによって、団長であるフィンさんがいる場所へと案内され始めてしまったので半ば自棄糞気味に「やればいいんだろう!!」と内心で叫び、自分を納得させていた。
以前来た時もそうだが、『黄昏の館』の内部は見た目よりも通路が狭い上にルートがややこし過ぎる。上下に繋がる階段が幾つも存在するので新参者はホームなのに迷ってしまうことだろう。
「まるで、小さなダンジョンだな」
「ケンマもやっぱりそう思います?」
「やっぱり、ってことはレフィーヤも迷ったことがあるのか?」
「はい。学区の【バルドル・クラス】から【ロキ・ファミリア】に『改宗』して暫くの間は、何回も………」
「コンバージョンって、レフィーヤは元々【ロキ・ファミリア】じゃなかったのか」
「そうですよ。言ってませんでしたっけ?」
「ああ、初めて聞いた」
アニメでは描かれていないレフィーヤの過去設定を今更ながらに聞いて驚いていた。その理由はダンジョンから離れて冒険者などの知識を学ぶ場所である『学区』でレフィーヤは少なくともLV.2 に【ランクアップ】を果たしていたのだ。
ダンジョンがあってもLV.1 からLV.2 に【ランクアップ】を果たすのは才能がある者だと、『ダンまち』の世界では定義されている。更に上と【ランクアップ】するのは選ばれし者だとも云われている。これを現代っ子の俺の主観で例えるならば、偏差値四十五の高校で校内試験の順位が最下位の奴が自力で東大や早稲田、京大、大阪大などの国立大学に合格するようなものと思ってくれればいいだろうと思う。
それ程までにダンジョンを使わずに【ランクアップ】を果たすのは難易度がアホみたいに高いらしいのだ。
「レフィーヤは凄いなぁ」
「そうですか?えへへ」
素直にレフィーヤの努力を褒めたら笑顔で喜んでくれた。推しの笑顔が見えて、オタクとしてこちらも嬉しくなってしまう。
そのまま執務室までの道中、ここ最近のアルテミスからの冒険者依頼の旅でどんな発見がオラリオの外にはあったのか等の話をしているとあっという間に到着してしまった。
執務室の部屋の前にレフィーヤが立つと三回ノックしてから扉越しでフィンさんへと話しかける。
「団長、レフィーヤです。ケンマをお連れしたので入ってよろしいですか?」
『ええよー!』
「失礼します」
「お邪魔します」
フィンさんの代わりにロキが入っていいと返答が返ってきたので扉を開けると、そこにはフィンさんとロキ以外にも【ロキ・ファミリア】の三巨頭のニ頭であるガレスさん、リヴェリアさんの二人がいた。
「やぁ、ケンマ。朝早くからよく来てくれたね」
「ロキから『怪物祭』の時に言っておったお主を鍛える約束を果たすと聞いておる。今日から儂らがびしびしと鍛えてやるからのう」
「私も時間が空いたら参加しよう。ケンマの魔法にはとても興味がある」
「あははは………これは痛い思いをしない選択肢はなさそうだな」
今なら思うアニメでよくキャラクターが内心思っていることが良く分かる。過去の自分を殴りたいと…………。
「それでは、私はこれで失礼しますね」
「待ってくれ、レフィーヤ。ケンマとしばらく話をするつもり故、人数分のお茶を頼む」
「分かりました。直ぐにお持ちします」
レフィーヤが執務室から去り際に、リヴェリアさんからレフィーヤに人数分のお茶を用意をする指示を出すと快くそれを受けてレフィーヤは俺たちに一礼してから執務室を後にした。
レフィーヤが去ったあと、俺は必死に思考を巡らせていた。リヴェリアさんが言っていた俺との話とは一体なんだ?俺が知っている『ソード・オラトリア』の話はフィンさんたちには既に話している。
他に俺から聞きたいことは一体…………。
「すまない、ケンマ。キミのことだから僕らに挨拶をしたら直ぐに鍛練の時間になると思っていただろう」
「いえ、でも俺から聞きたいこととは一体なんですか?正直、フィンさんたち【ロキ・ファミリア】に有益となる情報は今のところあまり無いんですが………」
「今回、自分と話しをしたいのはウチや」
「神ロキが?」
ロキが俺と話をしたいだなんて、益々分からなくなってきた。ここは受け身になるしかないだろう。あまりにも俺に手札が無さすぎる。
「先日の『神月祭』でアイズとレフィーヤからアルテミスと出おうて、ケンマに冒険者依頼を依頼したって聞いとる」
「はい。確かにアルテミスから冒険者依頼を受けましたが………ん?」
あれ?これってヤバい話なんではないだろうか?
アルテミス関連の話となれば、嫌な予感しかしないのだが。『アンタレス』然り、『次元の狭間』然りで女神の一柱であるロキがあんな大規模な『神の力』が影響している出来事を見逃すはずがない。
つまり、あの時の出来事を尋問される可能性………MAX!!
「そんでな、話は『神月祭』から十日くらい後の夜に移る。あの日、突然ギルドからオラリオ中の【ファミリア】に向けて『強制任務』が出されたんや。内容はダンジョンで暴走をはじめたモンスターの撃退」
「み、ミッション…………」
「その強制任務に行ったフィンたちからおかしな話を聞いたんよ。深層にいるはずのモンスターが中層まで上がって来たってな」
「深層のモンスターが中層に!?」
確かに劇場版ではワイバーンらしきモンスターが一匹、下の階層から登ってきてオッタルに倒されるシーンがあったが、あのモンスターは深層のモンスターだったことに驚きを隠せなかった。
この世界に転生してから『ダンまち』や『ソード・オラトリア』の記憶が自然と薄れていっている。こういう時に前世のスマホがあればと酷く思う。まぁ、スマホがあってもネットに繋がらなければ情報は何も手に入らないのだが。
「終いにはアキが、ケンマが冒険者依頼に出発する直前に
んー、これは詰んでね?自分でやっておいて詰んでね?
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に