臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百十三話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

「ケンマ、態々神アルテミスがキミにその冒険者依頼を依頼した理由はなんだい?」

 

 

アルテミスの冒険者依頼が大精霊たちが封印した古代モンスター『アンタレス』の討伐だったと知るとフィンさんは、何故そんな厄災のようなモンスターをLV.2 に【ランクアップ】を果たして間もない俺へと依頼したのか、その理由を尋ねてくる。

 

 

「少し今回の話のネタバレになりますが、アルテミスが俺に依頼してきた理由はヘルメスが主催した伝説の武器を引き抜くイベントで偶々それを俺が引き抜いてしまったからなんですよ」

 

「伝説の武器?一体どんな武器なんだい?」

 

「神造武器です」

 

「ブフッ!神造武器やとッッ!?」

 

 

俺が『神月祭』で引き抜いたのが『神造武器』だと告げると女神であるロキがテーブルに乗り出して驚く。主神のあまりの驚きように興味を持ったのかリヴェリアさんがロキに尋ねる。

 

 

「ロキ、シンゾウ武器とはなんだ?」

 

「神造武器は、元々天界にあって神ですら殺すことのできる武器の総称や。何でそんなけったいな代物をアルテミスとヘルメスはケンマに渡しとんのや!神殺しでもさせるつもりか!?」

 

「そのつもりだったみたいですよ。ヘルメスも、アルテミスも………」

 

「「「「なっ……!!」」」」

 

 

ヘルメスとアルテミスの二柱が人間である俺に神殺しをさせるつもりだったと、それを今になって知ったロキたちは驚愕のあまり言葉を失った。

 

 

「ちょっと待てや!人間の神殺しは大罪中の大罪やぞ!なのに、何でそれをヘルメスとアルテミスがケンマにやらせようとするんや!?」

 

「その理由はアルテミスがアンタレスに喰われて、取り込まれたからです」

 

「……は?アルテミスがアンタレスに……モンスターに喰われて、取り込まれたぁあ!?」

 

 

前代未聞の神を喰らって、取り込むだなんて未知の能力をアンタレスが持っていたことにロキは驚き叫ぶ。フィンさんたちも叫びはしなかったものの、目を見開きながら開いた口が塞がらないでいた。

 

過去は知らないが、この世界の物語が始まってから神を取り込むモンスターなんてアンタレスくらいなものだと俺も思っている。いや、そう思いたい。

 

 

「ケンマ、今の話を聞いた限りだと僕は少し矛盾を感じた。アンタレスに取り込まれたはずの神アルテミスが何故オラリオにやって来れたのか、どうやってケンマたちとエルソスの遺跡に同行出来たのかだ。普通ならば、身体が一つしかないのにキミの説明だと、まるで神アルテミスは二人居るように聞こえる」

 

「その認識で間違いないですよ、フィンさん」

 

「嗚呼、もう何がなにやら訳が分からん!アルテミスがアンタレスに喰われて、取り込まれるは!アルテミスが二人になってるわで頭が混乱しとる!」

 

「儂も理解が追い付かぬことが多いのう」

 

「これは、あの時レフィーヤとアイズをケンマたちと共に行かせるべきだったか?」

 

 

フィンさんは俺の説明でアルテミスが二人居ることに気付いて、尋ねてきたのでそれを肯定するとロキは頭が変な言い回しをした所為で混乱し、ガレスさんも理解が追い付いていない様子、リヴェリアさんは話が壮大過ぎて俺一人に説明させるのではなくて【ロキ・ファミリア】の者で説明できる人物を欲しがったのかアルテミスの冒険者依頼にレフィーヤとアイズを同行させなかったことを後悔しているようだ。

 

俺も自分で説明していて、口であの出来事の全てを語るのはかなり難しいと感じていた。出来ることならば、動画とかを流しながら所々に補足を加える形の方が─────ん?

 

 

「………動画?」

 

 

いや、確かに俺の【魔力操作】で動画を魔法で再現して、アルテミスの冒険者依頼の記憶を再生すれば口で語るよりかは簡単で分かりやすくはなる。

 

しかし、それをやってしまえば俺が秘密にしている『赤龍帝の鎧』や『魔剣創造』、『聖剣創造』の情報をフィンさんたちに明かすことになる。ここは横着せずに普通に口頭説明にしよう。人間は文明が発展すると簡単な方へと行きたがるし、やりたがる。人間の悪い所の一つだな。

 

 

「リヴェリアさん、神ロキが混乱してるようなので今までの話の内容の重要な部分を紙に書いてみたらどうですか?」

 

「ああ、そうしよう」

 

「終わるまで俺はレフィーヤが淹れてくれたお茶を飲んでるので、終わったら声を掛けてください」

 

 

そう言ってから少し冷めてしまったレフィーヤが淹れてくれたお茶を口にする。推しキャラであるレフィーヤがせっかく淹れてくれたんだ、本来ならば一番美味い時に飲みたかったが少し冷めても美味しかった。

 

多分、リヴェリアさんが後任育成の一環としてレフィーヤに指導したのだろう。副団長として団長が不在の時の客人応対のためだろうな。

 

 

「そろそろいいかい、三人とも?」

 

「まだはっきりと整理が出来てへんけど、何とかウチは大丈夫や」

 

「私も大丈夫だ」

 

「ロキと同様に判断材料が足りんが、儂も大丈夫だ」

 

「よし。ケンマ、三人とも情報の整理が追い付いてきたようだ。話の続きを頼むよ」

 

「分かりました」

 

 

レフィーヤが淹れてくれたお茶を飲み切る頃に、フィンさんたちも情報の整理が出来たようで、話の再開を求めて来たので手に持っているティーカップを同じ柄のソーサーにゆっくりと壊さないように乗せる。

 

 

「さて話の続きは、少し日数が飛んでオラリオを出て十日目の夕方、俺たちはエルソスの遺跡まであと少しの所まで来ていて渓流を下っていた時です。渓流の抜けた先には、森が緑から紫に変色していたんです」

 

「森が紫に?」

 

「なるほど、さっきケンマとリヴェリアが言っていたアンタレスの情報にあった、陸を腐らせてあらゆる生命から力を奪う……地脈から力を奪っていた訳か」

 

「はい。そして、ある程度紫の森を進んだその時でした。突然、アルテミスが胸を抑えて苦しみ出したので嫌な予感がしたので俺の奥の手を切る準備をすると突如として空から無数の光の矢が降り注いだんです」

 

「光の矢やと?!そら、アルテミスの矢なんとちゃんか!?」

 

「ええ、恐らくというか間違いなくアルテミスを取り込んだアンタレスの攻撃でした。幸いとある理由から光の矢は俺の奥の手で何とか相殺することが出来ました」

 

「神の攻撃を防いだのか!?」

 

「ええ、とある理由で絶対的な力はなかったみたいです。本当にあの時は助かりました」

 

「ケンマ、とある理由とは何じゃ?」

 

「神ロキなら知っているはずですよね?あの日の夜空には月とは別に、まるで三日月と見間違うように天に作り出された絶対的な力の矢を………」

 

 

劇場版ではロキとフレイヤ、ガネーシャ、ウラノスが夜空に形成された三日月が『矢』だと認識している場面があった。なので、確信を持ってロキに尋ねた。

 

 

「そうや。あの夜、月とは別に三日月が空に浮かんでたのはアルテミスの『神の力』で作られた天界最強の純潔の矢。それが下界に放たれたら最後、オラリオ中の神々が全力の『神の力』で受け止めようとしても地上は滅びる………そうなるはずだったんや」

 

「そうはならなかったのは、あの摩訶不思議な大穴が全てを呑み込んでくれたお陰だね、ロキ」

 

「フィンの言う通りや。そんでケンマ、自分らなんやろ?アルテミスの純潔の矢を呑み込む大穴を開けたんは」

 

「答えはイエスですけど、誰があの大穴を開けたかは後で分かります。流石にこれ以上のネタバレは説明する側からしても面白くありませんからね」

 

 

やっぱり、あの時に開けた『次元の狭間』はオラリオでも見られていたのか。流石にあのサイズの『矢』を次元の狭間にぶちこむにはそれなりの大きさがないと無理だもんなぁ。であれば、オラリオから見えていても不思議は無いわけだ。

 

 

「そんな訳で夜空に浮かんでいた矢───この場合は『純潔の矢』と呼称しましょう。純潔の矢にリソースが割かれていたお陰で何とか俺の奥の手で光の矢を相殺しましたが、爆風までは相殺することが出来ずに全員不時着することになりました」

 

「それでも『神の力』が込められた攻撃を防ぐとは、一体どんな奥の手なんだいケンマ」

 

「そうですね………教えられる事といえばヒントは二乗です」

 

「じじょう………それがどんな意味の「じじょうか」は教えてはくれないんだね」

 

「正直、これまでにもヴィクトリアに黙って教えているのでこれ以上は【ヴィクトリア・ファミリア】の───延いては俺の情報が丸裸にされてしまうのでここまでですね。でも、冒険者依頼の話は続けますよ」

 

「分かった。茶々を入れてすまなかったね、続きを頼む」

 

「………爆風で墜落してしまった俺たちは、アンタレスのテリトリーに入ってしまったことで窮地に晒されてしまいました。何故なら俺たちを中心に円を描くように例の蠍型モンスターの大群に囲まれていたからです」

 

「キミたちの戦力はどのくらいだったんだい?」

 

 

当時、森へと墜落してしまった時の俺たちの戦力についてフィンさんが尋ねてきたので素直に教える。

 

 

「俺とベルがLV.2、ヴェルフとリリはLV.1、残るは戦力外のヘルメス、アルテミス、神ヘスティアです」

 

「ん~、どうにかして突破口を開かないとかなり危険な状況だね」

 

「なら、ケンマの奥の手のやらで突破口を開いたのではないか?神アルテミスの攻撃を相殺した奥の手とやらで」

 

「どうなんだ、ケンマ」

 

「俺もそれは考えましたよ。ただ、それをやってしまえば森の一部がごっそりと消し飛んで後の生態系に関わると躊躇していました。そんな時、聞き覚えのある人の詠唱が聞こえてきたんです」

 

「詠唱……つまり魔法だね。それも聞こえてきたということは───」

 

「十中八九、平行詠唱を行える強者だな」

 

 

今の説明だけでフィンさんとリヴェリアさんは、詠唱している未確認人物は平行詠唱を行える強者であると即座に導き出してみせた。

 

座って冷静に考えられる今なら俺もフィンさんたちみたく、未確認人物の詠唱は平行詠唱だとはっきりと判断が出来る。理由は、当時の俺たちの周りにはアンタレスのクローンたちが居たことは周知してある。

 

つまり、環境状況からしてその未確認人物は木から木へと高速で移動しながら詠唱を続けているという結論に自ずと至る訳だ。

 

 

「そしてその聞き覚えのある人物を俺は、勘を頼りに俺の冒険者としての師匠だと山を張り、師匠の魔法攻撃を受けないために即座に俺の能力で作り出した剣で壁を作ったんです。こんな風に………身体は剣で出来ている」

 

 

疑似詠唱を唱えながら俺はテーブルの上に魔剣で出来たドームを作り上げて見せる。するとフィンさんたちは興味深そうに魔剣壁を眺め始めた。

 

 

「へぇ、ケンマの魔法は武器だけではなく即席の盾や壁にもなるのか………」

 

「遠征の時には役立ちそうだのう」

 

「剣を扱う者のために無尽蔵に武器を生成することや魔法部隊の詠唱時間を稼ぐために壁を作ってもらうのもありだな」

 

「えーっと、その流れだと俺を【ロキ・ファミリア】の大規模遠征に連れて行くようなニュアンスに聞こえるのは俺だけですかねぇ?」

 

「「「さぁ、どうだろうねぇ。(じゃろう(だろうな」」」

 

 

三人にともニヤリ顔で俺を見るのを止めて欲しい。

 

 

「話に戻ります。師匠の魔法攻撃によって周囲にいた蠍型モンスターは全滅、安全を確保できると師匠は壁越しにノックをして周囲に危険がないことを知らせてくれました。その後、現地で調査をしていたアスフィさんを筆頭に【ヘルメス・ファミリア】の皆さんと合流、エルソスの遺跡から少し離れた彼らの夜営地へと向かうことになりました」

 

「ケンマたちのパーティー構成を聞いてからずっと思っていたけど、神ヘルメスは自分の眷属の殆どをエルソスの遺跡に残して、神アルテミスと二人でオラリオまで戻って来ていたのか」

 

「地上はダンジョンより遥かに安全とはいえ、神が眷属の一人も護衛に付けずに十日間も旅をしたのか」

 

「主神が放浪癖とは【ヘルメス・ファミリア】の者たちが不憫でならんな。ま、酒癖やセクハラ癖があるうちもうちだがのう」

 

 

ヘルメスの悪い癖に続いて自分の眷属たちから悪い癖を指摘されたロキはバツが悪そうな顔をしている。

 

まぁ、ヘルメスは放浪癖の他にも覗き癖があるがそれは言わんでおこう。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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