臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百十四話

 

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

ヘルメスがエルソスの遺跡に自分の眷属たちを置いて、アルテミスと二人で神造武器を扱える者をオラリオで探した話になったことで、フィンさんたちは主神に放浪癖がある【ヘルメス・ファミリア】の皆さんを不憫に思いながら自分たちの主神も酒癖やセクハラ癖があると嘆いていた。

 

 

「そ、そないなこと今はどうでもいいねん!今はアルテミスの冒険者依頼の出来事をケンマから聞くのが優先や!!」

 

「逃げたね」

 

「逃げたな」

 

「逃げたのう」

 

 

目の前で行われているギャグのようなやり取りを見ながらお代わりのお茶を一口含んで一服する。

 

 

「仕方ないね。何度も悪いけど続きを頼むよ、ケンマ」

 

「分かりました。【ヘルメス・ファミリア】の夜営地で旅の疲れを少しでも癒していると、俺とベルを除いたヘルメスを筆頭とした男性陣が女性陣の水浴びを覗こうとして返り討ちに遭うだなんてことがありましたが、翌日の早朝にはエルソスの遺跡を攻略することになりました」

 

 

フィンさんたちが俺に求めているのは、あくまでも冒険者依頼で何が起こって、どうしてアンタレスに食われたアルテミスが今も無事に下界に居るのかなので、あの日の夜にアルテミスと水辺でダンスを踊ったことなどは言わなくてもいいだろう。

 

 

「決戦の早朝、俺たちは【ヘルメス・ファミリア】から万能薬などの道具を分けて貰いながら準備を進めました。準備が整うとアルテミスの指揮の下、俺たちは突入部隊と迎撃部隊に分かれることにかりました。突入部隊はアスフィさんと師匠を加えた俺たちのパーティー、迎撃部隊は残りの【ヘルメス・ファミリア】の皆さんが担当することになりました。そして、皆の士気が高まってきた所をモンスターからの奇襲を受けました」

 

「モンスターが奇襲だと!?」

 

「ケンマ、夜営地からエルソスの遺跡までの距離は?」

 

「体感的に約三Kほどだと思います」

 

「それだけ離れていれば普通のモンスターなら奇襲を仕掛けて来ないはず。となれば、何かしらの理由でモンスターたちは【ヘルメス・ファミリア】の夜営地に奇襲を仕掛けて来たことになる。どうなんだい、ケンマ?」

 

「流石はフィンさん、御名答です。モンスター及びアンタレスの狙いは、当時俺が所持していた神造武器とアルテミスです」

 

「なるほど、だからか………」

 

 

ダンジョンは神を恨んでいる。その特性からフィンさんは今回の未知の蠍型モンスターたちも何かしら狙う理由があるのではないかと推測を立てた。

 

そして、その推測は正しかったことを俺が肯定した。

 

 

「モンスターたちから奇襲を受けましたがアスフィさんを除いた【ヘルメス・ファミリア】の皆さんがモンスターたちを迎撃している間、俺たち突入部隊は一目散にエルソスの遺跡へと進行を開始しました」

 

「ようやくか………」

 

「色々情報量が多い所為か、長い間聞いているような気がする」

 

「ま、話が始まってから既に一時間は経過しておるからなぁ……」

 

 

ガレスさんの言う通り、アルテミスの冒険者依頼の話を始めてから途中でロキが情報量の所為で混乱したり、リヴェリアさんの議事録を書く速度に合わせたり、ちょいちょい補足を加えたりと意外と時間が掛かっている。

 

 

「エルソスの遺跡の内部まで何とか侵入することに成功すると、内部にはアルテミスを祀っていたり封印されたアンタレスのことを記しているような古代の壁面が見つかりました」

 

「ケンマ、その遺跡はまだ残っているか?」

 

「ええ、遺跡自体はまだ残ってますよ」

 

「そうか。なら、今後の楽しみが増えた」

 

「出たね、リヴェリアの知識欲求」

 

「相も変わらず、未知に目がないのう」

 

「う、うるさいぞ!」

 

 

リヴェリアさんからエルソスの遺跡が残っているか尋ねられたので、まだ存在することを伝えるとフィンさんがリヴェリアさんの悪い癖が出たと言い、それにガレスさんも乗っかると癖を指摘されたリヴェリアさんは恥ずかしいのか頬を赤くしながら二人に怒鳴る。

 

まぁ、人前で自分の悪い癖を指摘されたら恥ずかしくて赤くもなるし、反論で怒鳴ってしまうこともあるだろう。

 

 

「遺跡内部の奥まで行くとそこには門がありました」

 

「門?」

 

「はい。アスフィさん曰く、その門に阻まれてしまい【ヘルメス・ファミリア】の皆さんも攻略できるのはここまでだったようです」

 

「門を開く方法は?」

 

「勿論、ありました。門を開く方法は古代の大精霊が崇めている存在……つまりアルテミスの神威が必要だったんです。けれど、俺は遺跡に入ってからモンスターが一匹も出現してないことに違和感を覚えて、以前『怪物祭』に使った青い剣を構えることにしました。そして、アルテミスに門を開かせるとそこには疑似ダンジョンと化していた遺跡の続きが露になりました」

 

「疑似ダンジョンやと!?」

 

「その言葉からして、遺跡の最奥部はかなり不味い状況だったようだね」

 

「フィンさんの言う通り、滅茶苦茶ヤバい状況でアルテミスと神ヘスティアは絶句し、ヘルメスも思わず「まさか、ここまでとは………」と冷や汗を垂らしながら呟くほどでしたから」

 

「三柱の神が驚愕するほどに不味い状況だった訳か」

 

「まぁ、疑似ダンジョンと言ってもアンタレスが遺跡に寄生して、あの蠍型モンスターを無尽蔵に生む領域のことなんでその領域を根こそぎ破壊してしまえば問題はありませんでしたよ」

 

「つまり、ケンマはそれをやってのけたと?」

 

「はい。ただし入り口だけです。それ以上はあまりにも時間が掛かりすぎるのと体力的な問題であれ以上は愚策だと判断して、アルテミスの誘導の下、俺たちはアンタレスが待ち受けるエルソスの遺跡の更に最奥へと進んで行きました。最奥部で待ち受けていたのはアンタレスを中心として無数の血管のようなものが遺跡のあちこちへ伸びている光景でした」

 

「無数の血管………それがリヴェリアの故郷にあった古文書に掛かれていた、陸を腐らせ、海を蝕み、森を殺し、あらゆる生命から力を奪う能力の正体か」

 

「間違いないと思います。そして皆さんが気になっているアルテミスの謎、それについてもここで判明することになりました」

 

 

フィンさんたちがずっと気になっていたアルテミスが二人もいる謎について、ようやく教えられるところまで話が進んだのかと感慨深くなってしまう。

 

 

「アンタレスは俺たちを視認すると、胸部にある蕾のような甲殻を開くとそこには……奴の魔石に囚われたアルテミスの姿があったんです」

 

「アンタレスに囚われる方が本物のアルテミスっちゅうことやな?」

 

「はい。後にもう一人のアルテミス、この場合は『残滓のアルテミス』と呼称します。残滓のアルテミス曰く、本体がアンタレスに食われて間もない頃に最後の力を振り絞って、天界から神造武器を召喚して力の全てを召喚した『矢』に注ぎ込んだ。それが神月祭で俺が引き抜いた槍の正体でありもう一人のアルテミスの正体です」

 

「なるほど、それで神アルテミスは二人に分かれた訳か」

 

 

ようやくアルテミスが二人に分かれた理由を聞けたフィンさんたちは、納得がいった様子でそれぞれお茶やお菓子などを口にする。俺も少し喉が乾いたのでお茶のお代わりを貰うとしたが、ポットの中身がなかった。

 

流石に五人でお茶を飲んでいれば、お茶が足らなくなるのが自然だ。すると、議事録を書いていて身体が少し凝ってしまったリヴェリアさんが率先してお茶の代わりの用意をすると立ち上がった。

 

 

「お茶の代わりが切れたようだ。私が新しいのを淹れてこよう」

 

「いいのかい、リヴェリア?」

 

「議事録で少し身体が凝ってしまってな。ちょうど良いから散歩がてら行ってくるさ」

 

「なら、話は少し休憩にしよう」

 

 

フィンさんの提案で話の続きはリヴェリアさんが戻ってからすることになった。

 

そんな時、ロキからヴィクトリアの側に居なくても大丈夫なのかと心配される。

 

 

「なあ、ケンマ」

 

「何でしょう、神ロキ」

 

「ホンマに今更やけど、ヴィクトリアのとこに居なくてええの?ヘスティアやあいつん所の子供みたいにヴィクトリアも狙われてるちゃうん?」

 

「ああ、そのことなら問題ありませんよ。もしも、ヴィクトリアに手を出したら【アポロン・ファミリア】はとある女将の怒りを買うことになりますから」

 

「とある女将?」

 

「ええ、とびっきり怖い女将さんです」

 

 

そう、ヴィクトリアは怖い女将さんのところで匿って貰っているのだ。本人に怖い女将さんと呼称していたことを知られたら間違いなく、俺の顔がボコボコになってしまうが表現は間違っていないはずだ。

 

女将さんの話をしていたら酒場関連で割かし重要な情報を思い出した。これからお世話になる【ロキ・ファミリア】の皆さんにも恩返しとして教えておかなければ。

 

 

「そうだ、フィンさん」

 

「なんだい、ケンマ」

 

「戦争遊戯の当日、酒場で俺たちと【アポロン・ファミリア】のどちらが勝つのかの賭けが行われると思うんですけど、俺たちの方に賭けてみませんか?」

 

「それを言うってことは、今回の戦争遊戯に勝てる勝算はあるってことでいいのかな?」

 

「ぶっちゃけ八割方」

 

「残り二割の敗北要素は?」

 

「ヒュアキントスの【ランクアップ】」

 

「なるほどね、確かにそれはあり得そうな敗北要素だね。悪いけど、この話は戦争遊戯の当日まで考えさせてもらうよ」

 

「勿論です。これはただの提案であって、決定権はフィンさんたち【ロキ・ファミリア】にありますから」

 

 

酒場での賭け話はあくまでも恩返し代わりの提案と情報の提供。まぁ、戦争遊戯が行われる際に酒場でも冒険者同士での賭けが行われるのは古参勢の【ロキ・ファミリア】ならば知っているだろうけどね。

 

少し話が変わるのだが、ベルの奴は大丈夫だろうか?そう思い、ふと執務室の窓の外に視線を向けるとフィンさんがその行動だけで俺がベルを心配しているのだと見抜いてくる。

 

 

「ベル・クラネルが心配かい?」

 

「ええ、まぁ、親友ですから」

 

「それなのに、キミは僕たちにベル・クラネルの救出を頼まなかったのは何か考えがあってのことかい?」

 

「【ロキ・ファミリア】の皆さんの面子を守るため………というのは建前ではないですけど、俺は大切な親友を信じてるんですよ」

 

 

なんせ、ベルはベル・クラネル(原作主人公)なのだからこれくらいは問題ない。ましてや、アルテミスの冒険者依頼の間にマンツーマンで鍛練を積んでいたので寧ろアニメよりも【ステイタス】が上がっている可能性すらある。

 

もしかしたら、その影響で既にヒュアキントスを撃退していたらというIFルートを考えてみるが、流石に無理があるか?と思ったりするが流石にそれは世界の修正力が許してはくれないだろう。なにせ、ベル・クラネル(原作主人公)だからな。大事なので二回も内心で言いました。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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