臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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どうも、黒牙雷真です。

ちょっとした愚痴になりますが、辻褄合わせるのって書いていて面倒だよね?ラノベ作家の皆さんは伏線とか良く考えられると個人的に毎回思います。






第百十五話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「すまない、少し間食を用意するのに手間取ってしまった。よければ、皆も食べてくれ」

 

 

そう言ったのは、お茶のセットと色とりどりの野菜やベーコン、チーズ、フルーツなどが挟まれた多種多様なサンドイッチが載せられた配膳ワゴンを押して執務室に入ってきたリヴェリアさんだ。

 

お茶のお代わりを取りに行ったにしては長いなと思い、駄目元でフィンさんに団長として心構えや気をつけるべき点などを質問しているとようやく帰ってきたのだが、サンドイッチを作っていたのであればそれなりに時間が掛かっても仕方ないだろう。

 

 

「ありがとう、リヴェリア」

 

「ちょうど小腹が空いてきたところだ」

 

「ママお手製のサンドイッチ!」

 

「誰がママだ!」

 

 

【ロキ・ファミリア】恒例のリヴェリアさんのママ呼びのやり取りを見てから俺も少しばかりお腹が空いてきたので、リヴェリアさんに感謝を述べてからサンドイッチに手を出すことにした。

 

 

「ありがとうございます、リヴェリアさん。いただきます!」

 

「ああ。ガレスとロキに食べられてしまう前に食べてくれ」

 

 

まず手に取ったサンドイッチは、ベーコン、チーズ、レタスのオーソドックスなBLTサンドだ。多分リヴェリアさんの手作りなので、【ロキ・ファミリア】に所属しているレフィーヤを筆頭としたエルフの皆さんにバレたらヤバいことになりそうだなと思う半面、丁寧にパンと挟まれている具材の形を見て食欲が唆られる。

 

そして、一口目を頬張るとベーコンの良い具合の塩加減にシャキシャキとしたレタスの食感、チーズの濃厚な味、三色異なる味を調和させるために作られた特製ソースもフワフワのパンに塗られていて全ての味がベストマッチを奏でている。

 

 

「うん、滅茶苦茶美味い!」

 

「それは良かった」

 

「確かに、神ロキの言うママはリヴェリアさんに合うかもしれませんね」

 

「それはどういう意味で言っているのだ、ケンマ?」

 

「いや、普通にサンドイッチをこれだけ美味しく作れるんだから良い奥さんになれるし、子供ができればピクニックのお弁当に入れて欲しいとおねだりされたりもするだろうし良いお母さんになるんじゃないかなって、そう思っただけですよ」

 

 

普通に思ったことを口にすると、何故かリヴェリアさんから返答がなく、二つ目のサンドイッチを手に取りながらリヴェリアさんの顔を窺うと顔を俯かせていた。

 

もしかして、男の俺が言ったからリヴェリアさんは怒ってしまったのではないかと内心で「ヤベッ!これ謝らないとオラリオ中のエルフに殺されるんじゃ!?」と思い、謝ろうとしたその時にフィンさんから声が掛かる。

 

 

「け、ケンマ?もしかして、キミはリヴェリアを口説いているのかい?」

 

「へ?」

 

 

フィンさんは今、何と?俺がリヴェリアさんを口説いている?

 

んー、今までの発言を思い出すとそうとも捉えられるし、そうとしか捉えられないね。ヤバくね?

 

 

「い、いや、別にそういうつもりで言った訳じゃなくて、ごく一般的なイメージとしてでして…………」

 

「そ、そうか………」

 

 

あれれ?何でリヴェリアさんは綺麗な翡翠の髪から少し覗けてしまう耳をそんな赤くしてらっしゃるんで?もしかして、これはエルフの王族であるハイエルフが故に家族や友人、同じ【ファミリア】の人たちから「将来良いお嫁さんになれるね」とか言われたことがない感じですか?

 

だとしたら、リヴェリアさんチョロイン過ぎやしませんか?流石にこれだと悪い男にホイホイと黙されてしまって、将来的に危ないことになりますよ。例えば、家庭崩壊とかさ。

 

それとこれ以上下手に追求しようものならば藪蛇な感じがしそうなので、話の路線を修正せねば!と逃げるように奥さん云々の話題からアルテミスの冒険者依頼の話へと軌道修正を行う。

 

 

「と、取り敢えずこの話は横に置いておいて、アルテミスの冒険者依頼の話に戻りましょう!」

 

「そ、そうだな!」

 

「ま、まあそれが元々の目的だしね」

 

「それが良かろう」

 

「ケンマはレフィーヤだけやなくて、リヴェリアまでも………」

 

 

リヴェリアさん、フィンさん、ガレスさんの三人は話の軌道修正に賛成してくれたがロキだけが未だに先ほどの話から戻ってこない。

 

 

「えーっと、何処まで話しましたっけ?」

 

「ケンマたちがエルソスの遺跡の最奥でアンタレスと会敵、アンタレスの魔石に神アルテミスの本体が囚われていて、ケンマたちと同行していた神アルテミスの正体が神造武器に宿る思念体であることが分かった所までだ」

 

「そうでした。解説ありがとうございます、リヴェリアさん」

 

 

リヴェリアさんの解説で、自分が何処まで話したのかを思い出したので続きを話すことができる。

 

 

「アンタレスと会敵して、奴の魔石にアルテミスの本体が囚われていることが分かると俺は先手必勝とばかりにアンタレスに攻撃を仕掛けました。けれど、奴はそれが想定内だったのか標的を俺ではなく、背後にある神々を変えて俺たちが翼竜に乗っていた時と同じ攻撃を使って来たんです」

 

「同じ攻撃なら今回も奥の手とやらで防いだのかい?」

 

「いいえ。今回はそれが間に合わず、偶然にも誰も死ぬことはありませんでした。ただし、その代わりにアンタレスの攻撃によって一部の地盤が崩落、俺たちはグループに分かれて遺跡の地下にある洞窟へと落とされることになりました」

 

「ケンマたちがアンタレスと戦って、遺跡が無事なのは地下洞窟で戦闘を行ったからか。それならば遺跡が無事なのも納得がいくな」

 

 

普通ならば『神の力』を行使できるようなモンスターと戦って、戦場となったはずの遺跡が何故無事なのかをずっと考えていたのか、納得が行く説明を聞いたリヴェリアさんはなるほどと頷いている。

 

 

「遺跡の地下に落とされたグループは二つ、俺とアルテミス、それからベルの三人のグループと他全員のグループです」

 

「地理も把握していない場所で戦力が分断されるのは痛いね」

 

「そして、地下洞窟で最初に目にしたのは光景はあまりにも残酷な光景でした。何故なら【アルテミス・ファミリア】の冒険者たちの亡骸が無数に転がっていたからなんです」

 

「アルテミスの子供たちの亡骸やと!?」

 

「はい。恐らくアルテミスがアンタレスに食われたことで恩恵が消えて、あとは…………」

 

 

今までも思い出せる。あの地下洞窟で見た光景を、嗅いだ死臭を、改めてこの世界がライトノベルのお伽噺ではなく現実なのだと突き付けられた瞬間を。

 

 

「そうして【アルテミス・ファミリア】の皆を発見すると残滓のアルテミスは、多分団長だった人の亡骸に寄り添うとその頬を撫でながらと悲しそうに「帰ってきたぞ」と報告していました」

 

「「「「…………」」」」

 

 

四人も幾度となく眷属や仲間を失い、彼ら彼女らの亡骸をその手に抱いてきたことだろう。だからこそ、アルテミスの悲しみが理解できるから四人もあの時のアルテミスと同じ顔をする。

 

いずれはヴィクトリアも俺も大切な眷属や団員を、家族を失う。そう思うと同じ顔をするのだろうかと考えてしまう。

 

 

「アルテミスが眷属の皆さんに色々と報告していると空気を読めない輩が少し離れた場所に降って来ました。そうアンタレスです。奴は、俺の持つ矢と残滓のアルテミスを追って、遺跡から降りてきました。そこからは正直、フィンさんたちが想像するよりも激闘になっいききました」

 

「僕たちが想像するよりも激闘?一体、どんな戦いが行われたんだい?」

 

「一言で表すなら………一方的な戯れかな」

 

「一方的な戯れ?」

 

「奥の手を含めて、全力で攻撃を仕掛けても魔石以外は即座に自己再生していくんですよ。何回、奴の鋏を吹き飛ばしてやったことか………」

 

「モンスターの自己再生、まるで以前にケンマとレフィーヤから聞いた18階層で現れたという黒いゴライアスに似ているね。もしかしたら、今後は総じて黒いモンスターには自己再生または別の厄介な能力が備わっていると考えた方がいいかも知れないね」

 

 

フィンさんの言葉にリヴェリアさんとガレスさんは頷いた。

 

 

「そんな訳で一回戦目は俺の方が負けてしまいましたが、二回戦目のリベンジでは裏技中の裏技を使って何とかアルテミスを救いだしてアンタレスの討伐に成功したんですよ、これが」

 

「「「「アンタレスを倒した!?」」」」

 

「ロキ、ケンマの言っていることは?!」

 

「う、嘘やない………ケンマたちはホンマにアンタレスを討伐しとる。でも、どうやってアンタレスに食われたアルテミスを取り返して、アンタレスを討伐したんや!?」

 

 

嗚呼、この反応にデジャヴを感じる。あの時も俺がアンタレスを討伐したと皆に報告すると、ヘスティアとアルテミス、それからヘルメスの三柱による嘘発見機能を使って俺が嘘を付いていないかの確認をしていたな。

 

 

「アルテミスを救い出して、アンタレスをどうやって討伐したかの詳細までは教えられないですけど、かなりの代償を払ったとだけ教えておきます」

 

「かなりの代償………一体どんな代償だい?」

 

「まぁ、それくらいならいいか。でも、アルテミスには絶対に伝えないことは約束してください」

 

「何で、アルテミスなんや?」

 

「アルテミスが代償の話を聞いたら、絶対にどんな償いでもすると土下座で懇願しかねないからです。それこそ、送還すら用意に受け入れてしまうほどに」

 

「そんなに重い代償なのかい?」

 

「ええ。なんせ、代償は…………俺の寿命ですから」

 

「「「「は?」」」」

 

 

アルテミスをアンタレスから救い、アンタレスを討伐するのに支払った代償が寿命だと聞いた四人は何度目になるか分からないけど、今回のも理解が追い付かないといった表情だろう。

 

 

「代償が………寿命?」

 

「嘘じゃろ……?」

 

「ろ、ロキ?」

 

「今回も嘘や……ない。何年や………何年分の寿命を支払った!?」

 

 

俺の話が嘘ではないことを理解したロキは、自分の眷属ではないけどあまりにも高すぎる寿命という代償に、俺が何年分の寿命を対価にアルテミスを救い、アンタレスを討伐したのかを一柱の神としてテーブルに前のめりで尋ねてくる。

 

 

「正確には分かりませんけど、寿命を対価に使う技を三回は使いました。予想では、三年または三十年は寿命を削ってるはずです」

 

「三十年………嗚呼、こんなんあのド真面目なアルテミスが聞いたら、そら自ら送還してくれと涙ながらに懇願するに違いないわ、ボケが………」

 

 

支払った寿命の年数を聞いたロキは、ヨロヨロとソファーに座り込むと両肘を太ももの上に乗せて手を組み、それに額を付けながら垂れて弱々しくアルテミスがこのことを聞いたらどうなるかを口にする。

 

フィンさんたちも主神であるロキがこんなにも弱々しい所を見せることに驚きながらも、何で寿命を代償にするような力を使ったのかを聞いてくる。

 

 

「ケンマ、キミはどうして寿命を削るような力を使ったんだい?寿命を削れば、本来よりも早く死んでしまうのに怖くはなかったのかい?」

 

「そりゃあ怖いですよ。でも裏技中の裏技にも時間制限があって、短期決戦で決着を着ける必要があったんです。だから駄目押しとばかりに三回使いました」

 

「そうか………そう、だね。キミからしたら、神殺しをして大罪人になるか、寿命を削って神アルテミスを救うかの二択しかない。この質問は意地悪が過ぎた、すまない」

 

 

フィンさんもフィンさんで、自分の寿命を削ると分かっていながらそれを行うことに恐怖を抱かなかったのかと問いてくるが、その問いに返答すると俺には二択しか選択肢がないことを理解して、意地悪な質問をしたことに謝罪してくる。

 

リヴェリアさんとガレスさんは、まだ若く、年端も行かない子供に寿命を削らさせるような真似をさせたことを悔いているのか苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

まぁ、何も知らない側からしたらそうだろう。しかし、俺はそうではない。何故なら精々三十年程度の寿命を削ったところで俺は老衰などしないからだ。その理由は、以前ドライグに支払った臓器の中に心臓も含まれており、そのお陰もあって俺の寿命はドラゴンと同じくらいまで延びているのだ。

 

 

「なんか凄く雰囲気が悪くなってしまったので、このあとの展開は簡単に説明しますね。アンタレスを倒したあと、奴は死ぬ間際にその身体に取り込んだアルテミスの力と自分が産み出したモンスターの魔石の力を全てを、空に作り出した『純潔の矢』へと注ぎ込みました」

 

「アンタレスはトコトン厄介なモンスターだったようだね」

 

「『純潔の矢』は既にアルテミスの制御から離れてしまっていたようで、残滓のアルテミスと一つになった本体のアルテミスは世界のために自分を送還しろと懇願して来ますが、俺はそれを許しませんでした」

 

「許さんかったって、神ですら送還する他ないと言っておるのにお主には何か手立てがあったのか?」

 

「おい、まさかケンマ、もしやあの大穴はお前が……!?」

 

 

『純潔の矢』がアルテミスの制御から離れて、暴走状態になってしまった以上、アルテミスを送還する以外に世界を救うには手立てがないと誰しもがそう思うだろう。

 

しかし、今までの話を聞いていて、リヴェリアさんとフィンさんだけは俺がどうやって『純潔の矢』を消滅させて見せたのかに当たりを付けた。

 

 

「そう、あの大穴を………空間の壁をぶち破り、その先にある世界と世界を繋ぐ狭間、全てを無に還してしまう次元の狭間に『純潔の矢』を放り込む。それが俺の考えた誰も傷付けないで世界を救う方法でした」

 

「誰も傷付けないで世界を救うって………それじゃあまるで………」

 

「「「『英雄』」」」

 

「いやいや俺は英雄なんてものには成れませんし、成りませんよ。だって、英雄なんて面倒な職業や称号は臆病者の俺には相応しくありませんから。俺はただ、守りたいモノのために戦う、一人の冒険者に過ぎませんよ」

 

 

フィンさん、リヴェリアさん、ガレスさんは俺の行いを『英雄』だと言って来るが俺はそんなつもりはない。俺は助けたいと思う仲間を助けるだけの『赤龍帝』だから皆を救うような『英雄』には成れない。

 

もしも『英雄』に成れるとしたら………ベルだろうしな。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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