臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百二十五話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「遅かったな」

 

 

俺とベルが『アグリス』に臨時で設置されたギルド職員の指示で【ヘスティア・ファミリア】と【ヴィクトリア・ファミリア】の派閥連合拠点へと案内されると、そこには既にヴェルフを筆頭に命、リューさんがいた。

 

リリがいないのはアニメ通り、『変身魔法』で【アポロン・ファミリア】に潜入中なのだろう。そして、明日には『戦争遊戯』が始まる。

 

 

「ごめん」

 

「いや~、椿さんの所にエクスカリバーたちを受け取りに行ってたら馬車に乗り遅れてな」

 

「お二人とも、もう準備はいいのですか?」

 

「はい。神様にも【ステイタス】を見てもらいました」

 

「俺はまだちょっとだけ。リューさん、あとで少しだけ鍛練を付けてもらえませんか?」

 

「この土壇場で鍛練────まさか!?」

 

「はい。昨日、オラリオを出る直前にLV.3 に【ランクアップ】しました」

 

 

俺が【ランクアップ】を果たしたことを説明すると、一同ゴクリと唾を飲み込む。

 

 

「なぁ、ベル。この感じ前にも」

 

「うん。初めて中層に行く時と似てるよね」

 

「リリスケじゃないが、俺もこいつが人の皮を被った規格外か何かに見えて来たぞ」

 

「あははは………」

 

 

人が【ランクアップ】をしたと報告すりゃ、言いたいことを言いやがって、少しばかり脅すか。そう思って、片足だけ全力で地面を踏み込むとバランスボール程のクレーターが出来上がる。

 

それを見た、ベルとヴェルフが静かになったタイミングで黒い笑みを二人に向ける。

 

 

「何か言いやがったか、あ"ぁ"ん?」

 

「「いえ、何でもありません!」」

 

「よろしい」

 

 

二人を黙らせてから改めて、リューさんに【ランクアップ】の後に生じる精神と肉体のズレを修正するための鍛練をお願いする。

 

 

「リューさん、この通り【ランクアップ】をしてからまだ精神と肉体のズレが完全には直ってないので、そのズレを直すための鍛練をお願いします」

 

「そういうことでしたら、わかりました。しかし、我が弟子ながら脅威的な速さで【ランクアップ】しましたね。今回の【ランクアップ】が出来るようになった『偉業』は、やはりアンタレスですか?」

 

「はい」

 

 

俺がLV.3 へと【ランクアップ】をするために必要な『偉業』が『アンタレス』の討伐だと、当たりを付けたリューさんに正解だと返答する。

 

それを聞いていたベルとヴェルフは納得したような表情をする。唯一、『エルソスの遺跡』での戦いに参加していない命は何の話なのか付いて行けないので静寂を努めていた。

 

 

「そうだ、ベル。約束してた短刀を今の内に渡して置く。一代目より切れ味は抜群だ、保証する」

 

「ありがとう、ヴェルフ」

 

「ヴェルフ殿………例のものは?」

 

「用意してある。ただ、やっぱり時間がなかった所為で二振りしか出来なかった」

 

 

新しい《牛若丸》をベルに渡し、命が例のものはと尋ねるとヴェルフは荷物の中から二振りの魔剣を取り出した。アニメでは赤い方が炎の魔剣、紫の方が雷の魔剣だったはずだ。

 

魔剣嫌いのヴェルフが今回の『戦争遊戯』に備えて魔剣を打っていたことにベルは驚きを隠せず、思わず尋ねてしまう。

 

 

「……その、ヴェルフ、良かったの?」

 

「ああ。………意地と仲間を秤にかけるのは、もう止めた。それに、何処ぞの野郎は俺なんかよりも凄い魔剣をポンポン生み出してくるし、伝説の剣なんかも使うから今更だ」

 

「あははは……それは……」

 

 

ニヤニヤしながらこっち見んな。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈Sideヘルメス〉

 

 

 

【ヘスティア・ファミリア】&【ヴィクトリア・ファミリア】対【アポロン・ファミリア】による『戦争遊戯』の当時、幸いにも天候は晴れ。まさに『戦争遊戯』日和と言えよう。

 

しかし、それは『戦争遊戯』だけではなく。それを催しとして一際活気付くオラリオにも恩恵をもたらしている。

 

 

『あー、あー!えー、皆さん、おはようございますこんにちは。今回の戦争遊戯実況を務めさせて頂きます【ガネーシャ・ファミリア】所属、喋る火炎魔法ことイブリ・アチャーでございます。二つ名は【火炎爆炎火炎】。以後お見知りおきを』

 

 

バベル三十階の大広間からでも聞こえるガネーシャの所の子どもの声を聞きながら、オレは一番気になっているケンマくんの主神であるヴィクトリアに声をかける。

 

 

「やぁ、ヘスティア、ヴィクトリア、アルテミス。調子はどうだい?」

 

「調子は良く悪くも普通だよ」

 

「私もヘスティアと同じく」

 

「ええ、いつも通りよ。それと何故、あなたはアスフィを連れているの?」

 

「なに、ガネーシャの子どもの実況でもいいんだけど、より詳しい実況と解説ができるアスフィが居てくれた方が娯楽に餓えている神々には良いかなと思って連れてきただけさ。別に深い意味はないよ」

 

「そう」

 

「連れないなぁ……」

 

 

興味がないとばかりに袖にされてしまっていると、アスフィから声が掛かる。

 

 

「ヘルメス様、間もなくです」

 

「ああ、じゃあ始めよう。ウラノス、『力』の行使の許可を!」

 

【─────許可する】

 

 

オレの願いを聞いたウラノスは、ギルド本部がある方角から重々しく神威が込められた声が大広間に響き渡り、それを合図にオレたち神々は一斉に指を鳴らす。

 

そうすることで、下界で唯一例外を除いて使える『神の力』によって離れた場所でも一部始終を見ることができる千里眼のような能力がある『神の鏡』を行使することができる。

 

また、『戦争遊戯』で行使される『神の鏡』はオレたち神々だけではなく、下界の子供たちにも『戦争遊戯』を観て楽しんでもらうために酒場や街角など色々な場所の虚空へと出現する。

 

 

『では鏡が置かれましたので、改めて説明させて頂きます!今回の戦争遊戯は【ヘスティア・ファミリア】と【ヴィクトリア・ファミリア】の派閥連合対【アポロン・ファミリア】、対戦形式は攻城戦!!両陣営の戦士たちは既に戦場に身を置いており、正午の始まりの鐘が鳴るのを待ちわびております!』

 

 

さぁて、キミたちはどんな番狂わせをオレたちに見せてくれるのかな? 一人、ニヤニヤと『神の鏡』に映る古城を眺めているとギルド本部前に設置された実況席から何やらガネーシャの子供が慌てた声が響き渡る。

 

 

『えっ、これ本当なんですか!?あっ、主神自ら……なるほど、わかりました。コホン、えー、正午が迫っている最中ではありますがギルドから緊急速報です!な、ななななんと!【ヴィクトリア・ファミリア】所属、イシグロ・ケンマがLV.3 に【ランクアップ】したとの知らせが届きました!!』

 

「は?」

 

「なにィィイ!?」

 

 

まさかの知らせにオレたち神々は一斉にヴィクトリアの方へと視線が集中し、視線を集めたヴィクトリア本人は優雅に唯々笑みを浮かべている。

 

その笑みを横から覗いてしまったアポロンは顔こそ冷静を取り繕っているが、その実『戦争遊戯』に負けるのではないかと焦っているのがモロバレである。

 

 

「やってくれるねぇ、ケンマくん」

 

 

ギルドからの通達だからケンマくんが【ランクアップ】を果たしたこと自体は偽造であると思わないだろう。例え、この場にいる誰かまたは街の子供たちがギルドへ真偽を問いに行ったとしてもウラノスがそれを治めるだろう。

 

なんせ、ケンマくんがLV.3 に至るだけの『偉業』はオレを始め、ヘスティア、アルテミス、ウラノス、そして彼の主神であるヴィクトリアが知っているのだから【ランクアップ】の知らせを覆すことはできないだろう。

 

嗚呼、これだから下界は面白い。下界の子供たちはなんて『未知』と『可能性』に溢れ返っているのだろう。そんなことを一人でとある神々を他所にオレは思っていた。

 

さて、ここでとある神々の紹介を少ししよう。そのとある神々は以下の奴等だ。

 

 

「うわぁぁあああ!ここに来て、LV.3 に【ランクアップ】かよ!?」

 

「終わった……これで俺様の今月の小遣いが全パーだ」

 

「うへ、うへへ、うへへへへ……明日からじゃが丸くん生活………」

 

「うひひひ、これで派閥連合が勝てば借金とおさらばだー!!」

 

「ああ、派閥連合が勝てば、明日から飲んだくれる」

 

「てかさ、これでヴィクトリアの子供も世界最速記録持ちなんじゃねぇの?」

 

「ああ、確かに。LV.3 への最速記録樹立だもんな」

 

「なら、LV.2 の世界最速記録とLV.3 の世界最速記録を相手にするアポロン………ヤバくね?」

 

「「「うん、ヤバい。超ヤバーい」」」

 

 

とまぁ、こんな感じの奴等だ。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

同時刻

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

『えっ、これ本当なんですか!?あっ、主神自ら……なるほど、わかりました。コホン、えー、正午が迫っている最中ではありますがギルドから緊急速報です!な、ななななんと!【ヴィクトリア・ファミリア】所属、イシグロ・ケンマがLV.3 に【ランクアップ】したとの知らせが届きました!!』

 

 

虚空に浮かんでいる『神の鏡』によって、ギルドから正式に俺がLV.3 へと【ランクアップ】を果たした知らせが世界中に伝わる。

 

 

「盛大に発表されたな。ま、それが狙いなんだけど」

 

「心理作戦は成功ですね」

 

「確かに相手側からしたら、唯一自分たちの方にLV.3 がいるからという優位性がケンマ殿の【ランクアップ】したという知らせで、その優位性は覆されました」

 

「となれば、敵も情勢が不安定になるな」

 

「そういうこと。情報とは、剣であり盾でもある。情報が多ければ多いほどに、手札として切れる幅が広がって戦いを優位に動かせる。無論、その情報がある程度正しくないと使えないけどな」

 

 

俺が『戦争遊戯』の開始間際に【ランクアップ】をギルドに知らせたその意図をリューさんが成功したと述べ、命がどういう意図なのか解き明かし、ヴェルフが補足して、最後に俺が答え合わせをする。

 

それが終わると時刻は正午を回ったのか、実況役が『戦争遊戯』の開始を宣言する。

 

 

『正午になりました!戦争遊戯───開幕です!』

 

 

開始を告げる銅鑼の音が響き渡ると俺たちもそれぞれ動き出す。

 

 

「それでは、私は強襲に向かいます」

 

「気を付けてください、リューさん、」

 

「心配は無用です」

 

 

アニメ通り、ヴェルフ謹製の二振りの魔剣を持って、リューさんは【アポロン・ファミリア】の注意を集めるため、単身で強襲に向かって行った。

 

 

「さて、俺も行くかな」

 

「えっ、ケンマは僕たちと一緒じゃあ?」

 

「俺が居なくてもヴェルフと命が一緒なら問題ないだろう。せっかくの戦争遊戯だ。対人戦の【経験値】稼ぎをしないと勿体無いだろう?」

 

 

そう。俺にとって、この『戦争遊戯』は最早対人戦の【経験値】を稼ぐ場でしかないのだ。それにその気になったら本気で敵大将であるヒュアキントスを捕りにいくつもりだ。

 

他にもベルの【ステイタス】は明らかにアニメよりも強くなってるはずだ。なんせ、俺が発破をかけておいたのだからこれで負けそうになりました、なんてことになったら『戦争遊戯』が終わった後にでもダンジョンで扱くだけのことだ。

 

 

「対人戦の【経験値】稼ぎって………」

 

「こいつ、自分の命運が掛かってるの分かってるのか?いや、わかった上での発言なんだろうな……」

 

「ケンマ殿は大胆不敵ですね」

 

「それじゃあ、先に行くな」

 

 

三人へ先に行くと残してから俺は真正面から【アポロン・ファミリア】の拠点である古城へと向かって行く。

 

そして、真正面から向かって行く俺を『神の鏡』を通して、実況役が実況することで【アポロン・ファミリア】の連中にも知れ渡る。

 

 

『な、なんと!イシグロ・ケンマ、真正面から【アポロン・ファミリア】の拠点へと前進しております。それも武器も持っていない丸腰だぁあ!!これは一体何が狙いだ!?』

 

「狙いも何も、真正面から全てぶった斬るだけだって」

 

 

実況の声にそう反応してやると、古城の城壁から【アポロン・ファミリア】の団員たちが放ったであろう矢の雨が空を覆う。

 

 

「引けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ!叫べ、我が名は────」

 

 

空を覆った矢の雨など気にせず、俺は某オサレなバトル漫画の主人公の力の一端であるオッサンが言っていた言葉を口ずさみながら歩き続け、最後には抜刀術の構えで矢の雨を向かい撃つ。

 

一度はやって見たかったんだよな、これ。待ちに待った、俺強ェエエエムーブってやつをさ。

 

 

「────斬月!!」

 

 

無手の状態から抜刀する動作に合わせて、『聖剣創造』で初期の《斬月》を創造。そして、そのまま全力で青白い方の【月牙天衝】を古城の門へとぶっ放す。

 

すると、どうだろう?全力の【月牙天衝】の勢いで【アポロン・ファミリア】が放った矢の雨はあっという間に消し飛び、《斬月》から放たれた斬撃は地面を抉りながら門を爆散させて、勢いが止まることなく古城の中心にある一番背の高い建物の外壁へと到達する。

 

 

「ま、ざっとこんなもんか。さぁ覚悟しやがれ、【アポロン・ファミリア】!!」

 

 

《斬月》を肩に担ぎながら俺は一人、そう口にする。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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