臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百二十六話

 

 

 

 

 

 

〈Sideフィン〉

 

 

 

 

『な、なんだ今のはぁぁあああ!!【ヴィクトリア・ファミリア】所属のイシグロ・ケンマ、単身丸腰で【アポロン・ファミリア】の拠点へと前進しているかと思いきや、何処からともなくまるで見た目が巨大な包丁のような大剣を抜刀!そのまま、未知の魔法で古城の門を破壊!!てか、あれは魔法?魔剣?ガネーシャ様はどちらだと思います?』

 

『あれはガネーシャか?!』

 

『それは、あんただよ!!』

 

 

【ヘスティア・ファミリア】と【ヴィクトリア・ファミリア】の派閥連合対【アポロン・ファミリア】との『戦争遊戯』が開始されるや否や、開幕早々から覆面エルフの女性冒険者が炎と雷の二振りの魔剣によって古城の側面から強襲を試みていた。

 

しかし、それとは別にケンマが丸腰で真正面から堂々と前進しているかと思えば、僕たちも知らない未知の『魔法』で【アポロン・ファミリア】が放った矢の雨ごと古城の門を破壊してみせた。

 

そのあまりの大胆不敵な攻めに僕たちは目を見張る。

 

 

「ガハハハ!ケンマの奴め、真正面から一撃ぶっ放して、門を破壊してみせたぞ!!」

 

「丸腰で前進していると思えば、いつの間にか大剣を抜き放ち、古城の門を破壊をしてみせた。あの魔法はなんだ?いくらLV.3 といえど、単文詠唱であの威力はおかしい」

 

「あの一撃は『魔法であって魔法ではない』んだと思います」

 

 

ケンマが放った青白い斬撃の魔法についてリヴェリアが色々と考察していると、レフィーヤが彼が放った斬撃は『魔法であって魔法でない』と述べた。

 

その言葉は以前『怪物祭』の時、レフィーヤがケンマに食人花を倒した斬撃について尋ねた際に返ってきた言葉だとベート以外、この場にいる全員が思い出した。

 

 

「魔法であって魔法ではない、どういうことだレフィーヤ?」

 

「以前18階層でリヴィラの冒険者たちのトラブルに巻き込まれた時、ケンマは無詠唱であの斬撃───ゲツガテンショウを撃っていました」

 

「つまり、ケンマにとってはあの青白い斬撃であるゲツガテンショウという魔法は、魔剣のように手軽に放てる魔法だと?」

 

「そこまでは分かりません。ですが、放つまでの速さに加えてあの威力、普通の魔法とは明らかに異なっているように感じます。それと丸腰から包丁みたいな大剣を抜刀してみせた方、あちらがケンマの魔法です」

 

 

この中で一番ケンマと関わりが深いレフィーヤの見解に僕たちは聞き入る。そして、最後に丸腰から大剣を抜き放ってみせた未知の能力をレフィーヤは、あれこそがケンマの魔法だと述べた。

 

それに関して心当たりがあるのか、アイズ、ティオナ、ティオネの三人が反応する。

 

 

「それってもしかして『怪物祭』の時、始めてあたしたちがケンマと出会って、武器を用意してもらったやつのこと?」

 

「多分、それだけじゃない。私とティオナがケンマと鍛練した時にも、似たようなことをしてた」

 

「精神力が尽きるまで、無尽蔵に剣なら作れる魔法ねぇ」

 

「だが、それではおかしい点がある。いくら無尽蔵に剣を作れる魔法だとしても、ケンマはいつその魔法の詠唱をしたんだ?」

 

「「「………」」」

 

 

【ロキ・ファミリア】随一の魔導士であるリヴェリアだからこその指摘にアイズ、ティオナ、ティオネは黙ってしまう。けれど、レフィーヤは違った。

 

 

「既に完成して、発動していたんだと思います」

 

「既に完成して、発動していた?」

 

「はい。【アポロン・ファミリア】の拠点である古城にたどり着くまでの間に詠唱を完了、発動。そして発動中の魔法は、まるで鍛冶師たちの工房のようにいつでも剣を作って抜けて、あのゲツガテンショウを放つ時に行っていた詠唱はフェイク。大剣を作って抜けることを隠すための偽の詠唱だったんだと思います」

 

「もしもレフィーヤの話が当たりだとしたら………」

 

「本当にケンマのやつは歩く武器庫か何かか?」

 

 

精神力が尽きるまで無尽蔵に剣を作れる魔法、剣を扱う者からしたら喉から手が出るほどに欲しい魔法に違いないだろう。それに、ケンマを鍛えていた七日間も思い返してみるに、剣を作れる魔法に剣の形状の制約はない。

 

これがオラリオ───延いては【ヘファイストス・ファミリア】や【ゴブニュ・ファミリア】といった鍛冶を主体とする生産系【ファミリア】にバレたら大変なことになるのは間違いないだろう。

 

 

「しかし、よくケンマの魔法と詠唱のフェイクに気づいたねレフィーヤ。ずっと彼のサポートをしていた賜物かな?」

 

「あ、いえ、それは、その………ぁぅぅぅ」

 

「おっと、これは失言だったかな」

 

 

ケンマがどうやって魔法の詠唱を終えていたのかをレフィーヤが解き明かしたことを称賛すると、彼女は顔を赤くして俯いてしまったことから七日間の鍛練の間にケンマと何かあったのだろうと察するのは難しくなかった。

 

けれど、それ以上の深掘りはプライベートにも関わるし、何よりレフィーヤの師であるリヴェリアから鋭い視線が飛んできているので止めておこう。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈Sideリリ〉

 

 

 

やっぱり、やっぱりですかケンマ様ぁぁああああ!!?

 

規格外が人の皮を被ったようなケンマ様ならやりかねないとリリは想定はしていましたが、やっぱりやりやがったよ!【ゲツガテンショウ】で城門をぶち壊してみせたよ、あの人!!それにLV.3 に【ランクアップ】!?

 

古代に封印されていた『アンタレス』からアルテミス様を救いだして、御一人で討伐してみせるという前代未聞の『偉業』を成し得たからできると思っていたましたが、よりにもよってこのタイミングですか!?

 

リリが【アポロン・ファミリア】の団員に化けているこのタイミングでやることですか!?

 

 

「はぁ、もうやだ………あの人といるとリリの常識がどんどん崩壊していく

 

「なにをくっちゃべっている、ルアン!小人族のお前でも偵察くらいならできるだろう!!」

 

 

名も知らない【アポロン・ファミリア】の団員に声をかけれて、現実逃避をしていたリリは我を取り戻し、作戦を実行するために動き始めます。

 

城内から中庭へと出て、部隊長を務める赤い外套で口元を覆っているエルフに偽の報告を流す。

 

 

「魔剣だ!魔剣で攻撃されてる!」

 

「なに?」

 

「ヒュアキントスからの命令だ。城門と城壁に二十五ずつ、二手に分かれて、相手を倒しに行けって!」

 

「二手に二十五だな?」

 

「ああ。魔剣にも限りがある。どちらかを速く倒して、もう片方へ加勢しに行けばいい!」

 

「◯◯◯、そっちの小隊は任せる。残りは私に続け!」

 

「「「「おおおおおおおお!!」」」」

 

 

これで敵の兵力を少しは減らせることができる。正直、城門はベル様たちも通るルートなので心配ではあるが相手はケンマ様。あの方ならば、たかだか二十五の敵が居ようと倒してくれるはずです。

 

そう信じながらリリは場所を移動し、リュー様が魔剣で開けた城壁の穴から命様が突入するのを確認次第、大声で敵襲だと【アポロン・ファミリア】の連中に知らせる。

 

 

「敵が入り込んだぞ!ヒュアキントスを直接狙う気だ!誰でもいい、止めろぉおおおお!!」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「居たぞ、あいつだ!」

 

「おうおう、リリのやつ、アドリブなのによくもまぁこんなに差し向けてくれちゃって………俺に恨みでも………いや、今回は間違いなく俺が悪いな」

 

 

【ランクアップ】したことでテンションが上がったまま、俺強ぇえええムーブで城内を破壊したことでリリの予定ががらりと狂ってしまったことに反省しながら、リリが差し向けたであろう【アポロン・ファミリア】の冒険者たちを見据える。

 

ざっと見た感じだと、この中にはヒュアキントスのようなLV.3 はいないようだ。よくて、LV.2が片手で数えられる程度くらいだろう。残る大半はLV.1 の上位といったところだろうか。

 

 

「そんじゃまぁ、いらっしゃいませぇえええ!!」

 

 

某不死鳥のゲームに出てくるソルジャーの台詞を口にしながら《斬月》を携えて、駆け出す。

 

ぞろぞろ向かってくる【アポロン・ファミリア】の冒険者たちをLV.3 の反応速度にモノをいわせて極力得物だけを破壊していく。

 

 

「うおらッ!!」

 

「がっ!?」

 

「せぁあッ!!」

 

「ぐわあああッ!?」

 

「でりゃああッ!!」

 

「うわあああッ!?」

 

 

ざっと軽く十人ほどの片手剣、大剣、槍、両手斧などを《斬月》でぶっ壊してやれば、アマゾネスじゃない限り大抵は攻める方法を失うので敵を倒したのと同義になるはずだ。

 

 

「武器を失ってもまだやるってんなら………ここから手加減しねぇぞ?」

 

「「「「ッッ!?」」」」

 

 

《斬月》を両手でしっかりと持ち直して、斬る覚悟を固めながら龍のオーラを放出して威圧してやると【アポロン・ファミリア】の連中は威圧に気圧されたようで顔を青くしながらガタガタと震え始める。

 

それを見て、俺は優しく連中に声をかける。

 

 

「恐怖するのは別に悪くねぇよ。ただ、大切な誰かを、絶対に譲れない何かのために恐怖を乗り越えて戦う覚悟は、絶対に持っておいた方が良い。でないと、後で必ず後悔するからよ」

 

「「「「………」」」」

 

「戦う覚悟がない奴は、武器を捨ててくれ」

 

 

そこまで言うと殆どの奴等が武器を手放した。それでも、なかにはアポロンへの忠義や敬愛から戦おうとする者が少なからずいた。

 

 

「貴様ら、何をやっているか!」

 

「この戦争遊戯に負ければ、アポロン様の名に傷が付くのだぞ!!」

 

「アポロン様に見初められておいて、武器を捨てるなど恥を知れ!」

 

「どいつもこいつもうるせぇな。アポロンアポロンうぜぇし、バカかよ」

 

「なんだと!?」

 

 

俺の言葉を聞いた忠誠心が高い奴が顔を赤くして激怒する。

 

 

「そもそもお前らがそこまで忠義やら敬愛を向けるアポロンは、名前に傷が付いただけで何かあるのか?ねぇだろ、そんなの。そんなことで傷付いた程度で何かある神風情ならその神の眷属なんて止めちまえ」

 

 

これはマジでアニメを見ていた時から思っていたことだ。忠義やら敬愛を主神に向けるのはいい。それは推しキャラを好きになると似ているから共感できない訳ではない。

 

ただし、行き過ぎた忠義や敬愛ならばそれは別だ。

 

 

「てかさ、お前たちはそこまでの忠義や敬愛をアポロンに向けておきながら何で、街でベルのことを襲ったんだよ、普通は止めるだろう?眷属または臣下として主神のためを思うならば、なぜその主神の過ちを止めようとしない。そんなのただ主神を敬愛して、忠義を捧げてる自分格好いいって酔ってる、ただの厨二病じゃん」

 

「「「「……………」」」」

 

「そんなのは敬愛だとか、忠義だなんて言わねぇ。ただの承認欲求なんだよ。てめえらのアポロンへの忠義はその程度か?」

 

 

そこまで言い放ってやると自分の忠誠心や敬愛心が間違っているのではないかと疑問が生まれ始めた。

 

 

「言っておくが俺は別に主神であるヴィクトリアに忠義やら敬愛なんてものは持ち合わせていない。その代わりにあいつには俺を見つけてくれたことに対する恩と感謝だけがある。その恩に少しでも報いるために俺は戦うだけだ」

 

 

そうだ。俺はヴィクトリアに対して、忠義やら敬愛なんてものは一切ない。最初は利害の一致、ロキ、フレイヤを除いたヘスティアを含めた何処の【ファミリア】に入団するか迷っていた時に彼女と出会い、そのまま眷属となった。

 

だから、ヴィクトリアの我が儘に毎回付き合うつもりもなければ、間違っていることがあれば遠慮なく頭に拳骨を落としてやるつもりだ。でも、ヴィクトリアとはもう約三か月の付き合いだ。それを、はい、さよならとは日本人として誠意に欠けるようなことはしない。

 

俺が思っていることを口にしたが、それでも中には自分がアポロンに捧げる忠義や敬愛に間違いはないと盲信や狂信する輩はいた。

 

 

「うるさい!貴様などに、我らのアポロン様への忠義の何が分かるか!!」

 

「そうだ!アポロン様への愚弄、死をもって償え!!」

 

「やっぱり、世の中には救えない奴等がいるもんだ。いいぜ、来いよ。ここからは本気で───斬る!」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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