臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
毎度打ちのめされますがあります。私、ネーミングセンス皆無だとをいうことに………。
ネーミングセンスが欲しいいいい!!
〈Sideケンマ〉
「ベル、最初は俺がヒュアキントスの相手をする。それで、出来るだけ奴の精神を揺さぶる。そして、最後はお前が決めろ。この戦争遊戯にお前が終止符を打て」
「分かった。僕があの人を倒す!」
「よし!クライマックスと行こうぜ!」
「うん!」
この『戦争遊戯』も残すは最終局面だけだ。決戦に挑む覚悟が出来た俺たちは、吹き抜けになった塔を何度も跳躍して上へと登っていく。
そして、最上階である玉座の間へと到達するとヒュアキントスの焦ったように砂煙の中、仲間を呼ぶ声が聞こえてきた。
「カサンドラ!?ラオン!?どこだ!?」
「返事がないならリタイアしたんじゃないのか?」
「その声は………!?」
砂煙が晴れると声音の通り、焦りが表情に出ているヒュアキントスが俺たちを見据えた。
「よう、ヒュアキントス。クライマックスタイムには間に合ったか?」
「イシグロ・ケンマ!?ベル・クラネル!?こ、こんなことが………こんなことがあってたまるか!」
塔を破壊したのが俺たちだと分かるや否や、ヒュアキントスは自慢の波状剣を鞘から抜き放つ。それを見て、俺も臨戦態勢に入るために《斬月》を前に突き出す。
「こっからは手加減なしの全力全開で行くぞ」
「ほざけええッ!!」
「卍解!!」
『魔剣創造』で《斬月》を聖剣から魔剣へと上書き、更に『魔剣創造』の禁手を発動。この際だから、もう禁手の名前は開き直って某死神代行の物と同じ物にしてしまおう。見た目こそ似ているが能力なんかの細かい部分は異なる点があるし。
そんなことを思いながら禁手による膨大なオーラによって再び最上階が砂煙に覆われて視界不良になるが、『天鎖斬月』の黒い魔剣を軽く振るって、一瞬で砂煙を払ってみせる。
「天鎖斬月」
「な、なんだ……それは……!?」
「答える義理があると思うか?」
禁手によって、俺の防具がヴェルフの作った赤いライトアーマーから光を通さない漆黒の戦闘衣に変化していることにヒュアキントスは酷く動揺する。
対してベルは俺の装備を見て、直ぐに『赤龍帝の鎧』と似たような物ではないかと考察してみせた。やっぱり、既視感があるとすぐに分かるものなんかねぇ?
「ケンマ、もしかしてその姿って………」
「ああ、例のアレと同じだ」
「あははは………僕もそろそろリリが言うように、ケンマのことを規格外が人の皮を被った何かに思えてきたよ」
「なら、せめてドラゴンにしておいてくれ」
一応、俺、赤龍帝だからさ。
「たかが姿が変わった程度で、調子に────」
「乗るな、ってか?」
「なッッ────い、いつ私の背後に!?」
ヒュアキントスが「調子に乗るな」と言い終わる前に【瞬歩】で奴の背後を取り、首筋に魔剣を添える。ヒュアキントスからしたら今の俺の動きは一瞬で消えて、背後に現れたように感じるだろう。
それはまるで、某死神代行が某わかめ大使にやったような芸当と全く同じやり方である。そんなことを知らないヒュアキントスは、いつ、どうやって俺が背後を取ったのか理解出来ないでいるが【アポロン・ファミリア】の団長としての矜持があるのか振り向き様に波状剣を振るってくる。
けれど、今の俺にそんな攻撃が当たるはずもなく。【瞬歩】でベルがいる元の位置へと戻る。
「なんだ、なんなのだ!その力は!?」
「そうだな……敢えて答えるとするならば、斬る覚悟の力だ」
「斬る覚悟だと!?」
そう答えてから俺はヒュアキントスの周りを【瞬歩】を使っての高速機動を披露する。現れては消え、消えては現れて、仕舞いには無数の残像が奴の周りを駆け巡る。
あまりの速さに俺を捉えられていないのか、自分の周りをキョロキョロと振り返るヒュアキントスを見て、俺は某死神代行と同じ台詞を口にする。
「どうした、ついて来れねぇか?」
「くそッ………!」
「まだもう少し速くできるんだけどな」
この言葉は嘘偽りなくマジである。何故なら俺は、この『戦争遊戯』の間に一度も【プロモーション】の魔法を使っていないからだ。その気になれば、『騎士』や『女王』へと昇格して『敏捷』の基本アビリティに補正をかけることができるのだ。
まぁ、これ以上はヒュアキントスを相手にする意味はないし、奴を倒すのはベルでなければならないので、ここいらが終い時だろう。
「これでお前は二回死んだぞ、ヒュアキントス」
「ッッ──────」
「俺の出番はここまでだ。あとは、お互いに因縁の相手とやってくれ」
「い、一体なんなんだお前は!?」
「石黒ケンマ、二つ名を持たない【ヴィクトリア・ファミリア】所属のただの冒険者だ」
それだけ言い残して俺は再びヒュアキントスから放れて、ベルの下へと戻ってきた。二度も首筋に剣を添えらてしまえば、否が応でも自身と俺との間にある力の差を理解しただろう。
俺自身、奴の格付けは済んだものと判断して、最後の仕事としてベルに激励の言葉を掛けることにした。
「とっとと倒して、俺と同じ高みにさっさと昇って来いよ。待ってるからな、親友」
「うん。すぐにあの人を倒して、キミのいる高みに昇って、肩を並べるよ親友」
お互いに激励と意気込みの言葉とハイタッチを交わして、選手交代をする。
そういえば、カサンドラが出てこないな。もしかしたら、俺が速過ぎてヒュアキントスの助太刀が出来なかった感じか?
◇◆◇
〈Sideベル〉
ケンマから激励の言葉を受け取り、ハイタッチを交わした僕は《神様のナイフ》と《牛若丸》を抜いて、ヒュアキントスとの距離を歩いて詰める。
「まったく馬鹿な男だ。あのまま私を倒していれば、この度の戦争遊戯に勝てたものを自ら手放すとは」
「ケンマは馬鹿なんかじゃない!ケンマは僕が勝つことを信じてくれたから敢えてあなたを倒さなかったんだ!その思いに答えるために僕はあなたを倒す!!」
「兎風情が吠えるなッ!!」
この『戦争遊戯』は神様を侮辱されて我慢が出来なかった僕と神様を侮辱した【アポロン・ファミリア】とで起きた出来事だ。なのに、僕は無関係なケンマまで巻き込んでしまった。
それなのに、ケンマは僕が『戦争遊戯』に勝つためにアイズさんの所へ特訓を頼むであろうことを先読みして、予め僕がアイズさんたちとスムーズに特訓できるように環境を作ってくれていた。
これだけのことをしてもらった恩人であり親友を馬鹿にされて、僕はそこまで優しい人間でもお人好しでもない。大切な家族を侮辱されれば怒りが沸く、大切な恩人で親友を馬鹿にされれば怒る。ただの冒険者だ。
だから、この一騎討ちは絶対に負けない!!
「はあああッ!!」
「くっ!」
「せああああッ!!」
攻める手を止めるな。僕の持ち味は『敏捷』だ。今はLV. を一つ先に行かれてしまったけど、僕も同じLV.3 へと【ランクアップ】ができれば『敏捷』の基本アビリティだけはケンマにだって負けていないはずだ。
右左、左右、上下、下右と『敏捷』にものをいわせて僕は連続で攻め続ける。それをヒュアキントスは必死に波状剣で捌こうとするけど、徐々に裂傷が増えていき、ついには腹部へ明確な切り傷が刻まれて団員服の戦闘衣に血が滲む。
「バカな……速すぎる!?以前、戦った時とはまるで………だ、誰だっ、お前はっ!?」
「僕はベル・クラネル!神々より賜りし二つ名は【リトル・ルーキー】。そして【ヘスティア・ファミリア】所属のただの冒険者だ!!」
僕が誰だと問われたので、ケンマみたく僕は【ヘスティア・ファミリア】の冒険者であることを宣言する。
その時だった。以前、ギルドでアポロン様が主催する『神々の宴』の招待状を赤髪の女の人と一緒に、僕へ直接渡しに来た紺色の髪をした女性が瓦礫の中から飛び出して、僕に向かってくる。
けれど、彼女の手が僕に届くことはなかった。
「やあーっ!?」
「はーい。せっかくの二人の一騎討ちの邪魔をしないようにねぇ」
「へ?」
「え?え?え?あれえええ!?」
「おら、お前は目の前のことに集中しろ、ベル。それともミノタウロスの時のように、ケツに蹴りを入れられないと活が入らねぇか?」
紺色の髪をした女性の首根っこをいつの間に掴んでいたケンマが、警戒が疎かになっていたからなのか僕にそう言ってくる。それはまるで出来の悪い弟を兄が叱るようにだ。
「いらない!」
「なら、集中しやがれ!ヒュアキントスはもう詠唱に入ってるぞ!」
「!!」
ケンマに言われて視線をヒュアキントスに戻せば、さっきよりも距離が離れており、右手を天に掲げながら詠唱に入っていた。
「───【我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ】!」
「させない!」
ヴェルフには悪いけど、ヒュアキントスの詠唱を止めるために僕は《牛若丸》を彼に向かって投げる。普通、魔法の詠唱をしている最中は精神力を魔法に込めるために集中力が必要となる。なかには並行詠唱という例外がいるみたいだけど、多分彼は違う。
あの七日間の特訓中、密かにケンマを真似て短剣や短刀を咄嗟に投げる練習はしていた。お陰で何回かはアイズさんの意表を突くことができて、顔色を変えさせることが出来たのだ。
しかしヒュアキントス、彼は僕が投げた《牛若丸》を避けることをしなかった。寧ろ、天に掲げていない左手を犠牲にして詠唱を続けてみせた。
「ぐっ……!【我が名は罪、風の悋気。一陣の突風をこの身に呼ぶ】!」
「まずい!」
「【放つ火輪の一投───】!」
どんどん紡がれていく詠唱に僕の中に焦りが生まれ始め、手が空いた左手を突き出して魔法を放つ。
「【ファイアボルト】!」
「~~~~~~~~~っ!?」
炎雷が轟き走り、爆炎が巻き起こる。けれど、彼は耐えていた。左手は短刀で貫かれてドクドクと血が流れているのに、炎雷を受けて身体を焦がして戦闘衣をボロボロにしながらも歯を食いしばりながら『魔力』の手綱だけは手放さなかった。
これは最早打たれ強いとかではない。敬愛する主神への忠誠心による意地だ。その意地だけが彼と『魔力』の綱を繋ぎ止めている。
「【────来たれ、西方の風】!!」
「あれで仕止め切れなかった!?」
「【アロ・ゼフュロス】!!」
完成された魔法は、まるで太陽光の如く輝く、大円盤。そして、振り抜かれた右手から放たれた日輪が僕を目掛けて高速回転しながら驀進してくる。
驀進してくる日輪を、瓦礫の床を強く蹴りながら飛び付くように何とか回避する。しかし、それがいけなかった。何故ならヒュアキントスの狙いは最初から僕ではなく、ケンマだったからだ。
「ケンマ!!」
「アポロン様のお望みなど知ったことかッ!貴様だけは必ず殺す!この私を虚仮にしてくれた、貴様だけはなぁ!イシグロ・ケンマァアアア!!」
◇◆◇
〈Sideケンマ〉
何となくだが、こんなことになるんじゃないかという予感はあった。だって、ヒュアキントスはアポロンが主催した『神の宴』で明らかに俺のことを睨んでいた。
そのことから『戦争遊戯』を利用して俺のことを甚振る或いは殺しに来るだろうと思っていた。けれど、仲間諸ともなんてのは流石に許せねぇわ。
「悪りぃ、カサンドラ。しっかり掴まっててくれ」
「フェッ!?」
「お前は俺が必ず守る」
「フエエエエエエッッ!!?」
左手で首根っこを掴んでいるカサンドラを一度離してから左腕で守るように抱き締める。すると、カサンドラが変な叫び声を上げるが今は知らん。
「まったく救えない奴だよ、お前は。純粋にベルと一騎討ちをしていればいいものを」
「くたばれぇえええッ!!!」
「はぁ………」
格の違いを理解できない哀れなヒュアキントスに対して溜め息を吐きながら、黒い魔剣を床に刺して『魔剣創造』の能力で『天鎖斬月』の鎖衣にとある能力を付与する。
鎖衣に能力を付与した後、日輪が迫り来るがそれを俺はまるで某死神代行が重力の棺を破壊した時のように右腕で払う。それだけで日輪の魔法が不自然に掻き消え、その現象にヒュアキントスとベルは理解が追い付かずに困惑のあまり完全に動きが止まってしまった。
「「は?」」
「 わ、私のゼフュロスが消え……一体、なにが………い、一体なにをしたイシグロ・ケンマァアアア!!」
「そうギャアギャア騒ぐなよ、五月蝿ぇな」
「……あ、あの……そろそろ離して……ください……」
「あ、ああ、悪い。ヒュアキントスの奴がカサンドラ共々、魔法で俺を仕止めようとしてたもんだから、守るために咄嗟に抱き締めちまった。本当にごめん!」
「い、いえ……その守っていただいて、ありがとうございます」
「無事で何よりだ」
「ぁ…………」
怪我をさせることなくカサンドラを守れたので、優しい笑顔でそう答えてやると、突然カサンドラの顔が真っ赤になると彼女はそのまま俯いてしまった。
嗚呼、これはやらかしたかもしれん。なにがとは言わないが。
「さて、これでお前の頼みの綱である魔法も俺には通用しねぇことがわかったな。だったら、とっとベルと一騎討ちしやがれ。それとも俺と殺るか?」
「くっ………!」
そこからはあまり語る物はなく。普通にベルがヒュアキントスに勝利した。無理矢理に語るとしたら俺に力の差を理解させられ、頼みの綱である魔法すら通用しないことを理解してしまった奴の精神状況は、最悪中の最悪だったであろうというくらいだろうか。
まぁ、なんにせよこれで『戦争遊戯』は俺たち派閥連合の勝ちで幕引きだ。
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に