臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
……………ネーミング………センス………皆無。
〈Sideヴィクトリア〉
『戦闘終了~~~~~~っ!?まさにっ、まさに大判狂わせ!戦争遊戯の勝者は【ヘスティア・ファミリア】アンド【ヴィクトリア・ファミリア】の派閥連合─────!!』
ギルドに設置されている実況席から実況の『戦争遊戯』の終結と勝者がわたしとヘスティアの派閥連合であることがオラリオ中に響き渡る。
しかし、バベル三十階の大広間では静寂が支配していた。そして、遂に神々がケンマの話題で一気にあれこれ騒ぎ始める。
「なぁ、さっきのあれ、なに?」
「さ、さぁ?ボクチンには【太陽の光寵童】の魔法がイシグロ・ケンマに掻き消されたように見えたけど……」
「嫌々、どうやって消したんだよ!?」
「こー、力ずくで?」
「んな、アホなッ!」
「他にも、あの変身!あれを使ってから終始【太陽の光寵童】を圧倒してたよな!?」
「たしか、テンサザンゲツだったよな?」
「そうそう!俺もやってみてぇよ、バンカイ・テンサザンゲツ……ってよお!!」
「バンカイって叫んだ途端、砂煙で何にも見えなくなったと思ったらジャラリンって音が聞こえて、そのあとすぐに砂煙が消し飛んでそこに現れたのは変身してるイシグロ・ケンマ!」
「いやー、わかってるねぇ!彼、わかってるよ!私たちの興味を一身に奪っていくのをさぁ!」
娯楽好きに神々からしたら、最終局番で見せたケンマの活躍はまさに『未知』であり、興味を惹かれない者はいないだろう。
「なぁ、ヴィクトリア!あんな珍しいレアなヒューマン、何処で見つけたんだよ!?」
「おれにケンマくんをください!」
「あっ、ずりぃ!わたしもケンマくんが欲しい!」
「わたくしも欲しいわ!」
「あたしもー!」
皆がケンマを欲するのも分からなくもない。けれど、譲らないわ。あの子はわたしの眷属だもの。
それはそうと今はやるべきことがあるから、まずはそれを片付けてしまいましょうか。
「ヘスティア」
「わかってるよ、ヴィクトリア」
ヘスティアもこれからやることを理解しているようで、一緒に立ち上がり後ろの席に座っているアポロンに振り返る。
「──ア~ポ~ロ~ンッ!」
「ひ、ひぃいっ!?」
「覚悟は出来ているんでしょうねぇ?」
「ま、待ってくれヘスティア、ヴィクトリアッ!?こ、これは出来心だったんだっ、キミたちの子供が可愛かったからつい…………」
「だ・ま・れ」
「ケンマが可愛いのは間違いないけど、それとこれとは関係ないわ。さて、あなたはわたしたちが戦争遊戯に勝利した暁には、わたしとヘスティアの要求をなんでも飲んでくれるのよねぇ、アポロン?」
激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームのヘスティアと清々しいほどにとても良い笑顔のわたしを見て、アポロンは顔を青くしながらその場に座り込む。
逃がしはしないわ。だって、周りでニヤニヤ顔でわたしたちを見ている神々が証人なんですもの。逃れられる訳がない。
「ホームを含めた全財産は全て没収、【ファミリア】も解散────そして主神であるキミは永久追放、二度とオラリオの地を踏むなァ─────ッッ!!」
「それからあなたの眷属たちの中で故郷に帰りたい者は、あなたが責任を持って家族の下へと送り届けて、家族たちやその街や村で迷惑を掛けたことを地に頭を付けて謝罪なさい。無論、オラリオも含めてね。それがわたしとケンマからの望みよ」
「ひぎゃあああああああああああああっっ!?」
自分の眷属を付け狙う危険神物に、ヘスティアが容赦するはずもなく罰則を叩き付けた。わたしとしては敗北者であるアポロンには天界への送還でも良いと思っていたのだけれど、ケンマに止められてしまった。
あの子曰く、いずれやってくるであろう『黒竜』との戦いで【アポロン・ファミリア】には戦闘に参加出来なくとも周辺の街や村にいる一般人の避難誘導やオラリオの外にいるモンスターたちの駆除などを任せた方が良いと言われてしまったのだ。
だから、わたしはアポロンを天界に送還することが出来なかった。まぁ、なんにせよアポロンには重い罰則になったことだろう。
「あー、ちょっとええか」
「ロキ?まさか、あなた、アポロンの援護を───」
「あー、ちゃうちゃう、そんなんやない。何人か足らんけど、せっかくこれだけの神々が集まってるんや。やることは一つやろ?」
「やること?それは一体───」
「んなの決まってるやん。臨時『神会』を開いて、ヴィクトリアのところのケンマの二つの命名式や!」
まさかのロキからの鶴の一声に、再び神々は湧き立つ。
「いい!いいなあ、それ!」
「流石はロキ!天界屈指のトリックスター!」
「そのままの勢いで僕にアイズちゃんとリヴェリアちゃんをプリーズ!」
「あっ、俺も!」
「某もよろしいかな?」
「己ら三人、殺すぞ」
「「「さーせんした!!」」」
馬鹿な神々は放っておいて、どうやらケンマの二つ名を決めることは避けられないようだ。そう言うわたしも、いつまでもケンマには無名であって欲しくはない。
せめて、無難な二つ名が付けられることを神ながら天に祈るとしましょう。
「ケンマくんの二つ名は、もうテンサザンゲツでいいんじゃない?文字は極東風に入れ換えてさぁ」
「お前バカだなぁー。テンサザンゲツはあの黒いコートに黒いカタナに姿形が変わった時の名前で、二つ名に同じ名前を付けてどうするんだよ!?」
「あっ、そっか」
「じゃあ、【黒の剣士】と書いてブラッキー!」
「それは髪も含めて全身黒装束のソロぼっち野郎だろうが!ケンマンは茶髪だ!?」
「んー、じゃあ───」
それから幾度となく、ケンマの二つ名があれやこれやとあげられてくるがどれもしっくりと来る物がなかった。
そこでヘルメスが一つの案を出した。
「オレから一つ、ケンマくんはあの黒い姿になる前からアポロンの子供たちを終始圧倒していた。それはまるで支配者のように」
「支配者か………」
「例のテンサザンゲツって、あの包丁みたいな大剣も刀に変化してたよなぁ。それにちなんで、さしずめ【刀剣の支配者】って感じか?」
「じゃあさじゃあさ、フリガナはヴァストローデ・エスパーダなんて、どうよ?」
「刀剣の支配者と書いて、ヴァストローデ・エスパーダと読む。いいね、それ!」
「よっしゃ!そんじゃあ、今日からヴィクトリアん所のケンマの二つ名は、刀剣の支配者と書いて【
「「「「異議なし!」」」」
こうして、図らずともケンマに二つ名が付けられた。
◇◆◇
〈Sideケンマ〉
「んー、終わったなぁ」
「うん。僕たち勝ったんだよね?」
「当たり前だろう?それにミアさんが言ってたろうが、生きて帰って来た奴が勝ち組だって。んで、ベルは今も生きてるし、このあとはオラリオで待ってる神ヘスティアの下に帰る。それだけでお前は勝ち組なのさ」
「そっか………そうだね!」
最初こそ、『戦闘遊戯』に本当に勝てたのかあまり手応えがない感覚に陥っていたベルだが、俺と会話を交わしているうちにジワジワと勝者としての感覚が理解出来て来たのだろう。
さて、これ以上の戦闘はないので俺も『天鎖斬月』を解くことにした。禁手だった『天鎖斬月』を解除すると、握っている魔剣はそのままに防具だけが戦闘衣からヴェルフが作ってくれた赤いライトアーマーへと戻る。
すると、そこへダフネと戦っていたヴェルフが下の階から登って来ており、偶然にも『天鎖斬月』を目撃されてしまった。
「あああああああッ!!ケンマ、お前ぇええええ!?」
「あっ、やべえ」
「またなのか?またなんだろう、この鍛冶師泣かせ!!一から十まで全部説明してもらうからなあ!?」
いつかは話すつもりであったがこのタイミングでヴェルフに『魔剣創造』の禁手である『天鎖斬月』がバレたのは、完全にイレギュラーである。最終的には遅いか早いかの違いかと悟りを開くことにした。
そうしているうちにリリや命、リューさんも塔の現屋上まで登って来た。そして俺がヴェルフに詰め寄られている光景を見て、リリはまたなのかとベルに尋ねていた。
「ベル様、もしやまたですか?」
「うん。今度は鎧じゃなくて真っ黒な戦闘衣で、ヒュアキントスさんが使ってきた魔法を片手で掻き消してた」
「やっぱり、人の皮を被った規格外でしたか」
「だから、せめてそこはドラゴンにしてくれ!」
そこだけは譲れない俺である。
取り敢えず、目先の大きな面倒事はこれで終わり。次に起こるのは、今回の『戦争遊戯』で俺たちに目を惹かれた冒険者たちが移籍してくるかもしれないイベントと更にその後の春姫を巡った【イシュタル・ファミリア】との抗争が迫ってきている。
「次の相手は第一級冒険者のフリュネか………」
「第一級冒険者がどうしたって?」
「いや、別に………あっ、そうだ!」
思わず呟いてしまったことヴェルフに聞かれて、咄嗟に誤魔化してから俺は一人でポツンとしているカサンドラに話かける。
「おーい、カサンドラ」
「は、はい!な、なんでしょう?」
「これは多分、というよりも間違いないと思うが、今頃神ヘスティアが勝者の要求として神アポロンに【ファミリア】解散を要求しているはずだから、行く宛てがなかったらダフネと一緒に俺たちの【ファミリア】に移籍しないか?」
「え?イシグロさんの【ファミリア】に、ですか?」
「ああ。部隊長を任せられてたダフネは副団長として、カサンドラは治癒師としてスカウトしたい。ぶっちゃけると天鎖斬月のこともあって、うちはあまり新規団員は求めない方針にしてるんだ」
「あの……とても有難いお誘いですが……その……」
「もちろん、強制はしない。何処の【ファミリア】に移籍するかは本人次第だから、もしよかったら考えるかダフネに相談するだけでもしてくれると有難い」
「それでしたら、分かりました」
「よし。じゃあ、またオラリオでな」
色良い返事ではないが拒否の返答でもなかったので、今はそれで良いと思って、俺はカサンドラから離れてベルたちの下へと戻る。
カサンドラにスカウトの話をして戻ってくるとヴェルフの野郎がニヤニヤとウザイ笑みを向けながら、首に腕を回してくる。
「ケンマ、お前さん、ああいうのがタイプなのか?」
「はぁ、どうせ話聞いてたんだろう?ダフネは副団長として、カサンドラは貴重な治癒師として【ファミリア】に欲しいんだよ」
「本当にそれだけか?」
「他に何があるんだよ?どうせ、天鎖斬月のことは少なからず『鏡』でオラリオ中に知れ渡っている。だから、今さら情報を漏れないようにしても無駄だろう」
「そう言われると確かにな」
「ま、ヴェルフの期待に答えるとしたら、仮にタイプだしても故郷に居た時の俺なら間違いなくアプローチはしないな」
「何でだ?」
「俺の故郷だと、カサンドラみたいな見た目の奴はヤンデレだと思うからだ。もしも付き合ったら粘着質で、料理なんかに自分の髪や血なんかを混ぜていそうって偏見が割かし根付いてる」
「なるほど、そういうことか」
俺の話を聞いてヴェルフは何処か納得していると、まさかのベルから不意打ちを喰らう。
「ヴェルフ、ケンマはレフィーヤさんが好きなんだよ」
「ブフッ!!」
「マジか!?」
「ちょっと待て!確かにレフィーヤのことは好きだが、まだ異性として「好き」と言った訳じゃあ………」
ベルの発言に慌てて訂正を加えようとするが、ベルの追撃が強かった。
「え?でも、18階層でケンマはレフィーヤさんに祝福を貰う時に「好きだからじゃ駄目か」ってあの時……」
「それはリリも聞きました」
「もちろん、自分もしっかりと聞きました」
まさかのリリと命の二人の援護に俺は唖然する。
いや待って、本当にそういう意味で言った覚えがないんだけど!?あの時、俺はレフィーヤに推しとして好きだからじゃ駄目かと、そう尋ねたんだけど………。
まさかの俺の言い間違い?!なにそれ、めちゃくちゃ恥ずかしいやつじゃん!黒歴史間違いなしの恥ずかしいエピソードじゃんか!!
「ぬああああああ!!」
自分がやらかした恥ずかしいエピソードに頭を抱えていると、誰かにめちゃくちゃ強い力で肩を掴まれる。
このメンバーの中で一番『力』が強いのは十中八九LV.4 のリューさんだけなので即座に肩を掴んでいる主が分かった。
「あの……リューさん?」
「あなたの師としてあまり言いたくはありませんが、リヴェリア様の弟子たる同胞のレフィーヤに想いを告げておいて、言い間違いで済むとは思わない方がいい」
「いや、あれは言葉の解釈の違いが……」
「責任を取りなさい、ケンマ」
「いや、あの、だから言葉の解釈の違いが……それと呼び方が……」
「責任、取りますね?取りますよね、ケンマ?」
「はい……責任を持って、誤解を解いてきます」
呼び方まで変えて、どんどん増していく『力』の強さに肩の骨が悲鳴を上げる前にレフィーヤの誤解を解くことをリューさんに強要されてしまった。
二回目になりますが、劇場版編で目覚めたオリ主の新しい赤龍帝のネーミングをどしどし募集中です。
出来ましたら、Hopeは無理でも『希望』という意味になりそうな物がありましたら気軽にお願いします。
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