臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
今回も何とか投稿が出来ました。また催促のメッセージをくれた読者の皆さま、お待たせしました。
最近になって執筆途中のソードアート・オンラインの作品に再熱したり、新しい作品が頭に浮かんだりと時間と労力が足らなくて大変です。
それでは、新章『黄金の狐姫と継承の真紅』の始まりです。
第百三十話
〈Sideケンマ〉
「えー、それでは!戦争遊戯の勝利を祝って、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
『戦争遊戯』に勝利してから三日、『豊饒の女主人』でヴィクトリアの音頭に合わせて俺たちはそれぞれ飲み物が入ったジョッキを打ち合わせて一気に呷る。
「さぁ、じゃんじゃん注文するニャ!」
「今回の祝勝会の支払いは全部ケンマ持ちだからねぇ!」
「高い物を注文して、ミャーたちのために金を使うニャー!」
上からクロエさん、ルノアさん、アーニャさんの順で好き勝手言ってくる。それを聞いて、善神であるヘスティアが本当に料金は俺持ちで大丈夫なのかを確認してくる。
「本当にいいのかい、ケンマくん?」
「ええ、問題ないですよ。クロエさん、例の物をお願いします」
「はいはーい!」
クロエさんに例の物を持ってくるように頼んでからしばらくして、彼女は俺たちのテーブルにこれでもかと包まれたヴァリス金貨の入った皮袋を六袋もどっさりと乗せてくる。
そのあまりの光景に『豊饒の女主人』にいる従業員と俺、ヴィクトリア、アルテミスを除いた皆の目が全てヴァリスに引き寄せられてあんぐりとした表情で固まる。
「ざっと、合計七九九万ヴァリスだったニャ!」
「思っていた以上に儲かりましたね。それじゃあ、この九◯◯◯◯ヴァリスをクロエさん、ルノアさん、アーニャさんで三等分してください。態々、色々な酒場へ賭けに行ってもらった報酬です」
「「「やった!(やったニャ!)」」」
皮袋の中から九○○○○ヴァリス分だけ取り出して、クロエさんたちは喜びのあまり歓喜を上げる。
「あとは、こっちの二分した四五○○○○ヴァリスの片方はミアさんに渡してください。今回、俺たちの助っ人をしてくれた覆面冒険者さんの斡旋料や他諸々含めて。そして、こっちは助っ人として参加してくれた覆面冒険者さんへの報酬です」
「!?」
丸三日、俺たちの助っ人としてリューさんを借りてしまったので、その謝礼金としてミアさんに四五○○○○ヴァリスを払う。そして自分のことがオラリオ中にバレるかもしれないというリスクを冒してでも、助っ人として『戦争遊戯』に参加してくれたリューさんにも四五○○○○ヴァリスの報酬を支払う。
まさか、自分にまでお金が支払われると思っていなかったリューさんが不意打ちを喰らったような顔をするが、これは当然の権利として受け取ってもらう。
「す、すげぇなこりゃ…………一体いくら賭けに賭けたんだ、ケンマ?」
「俺のポケットマネーオールイン」
「は?えっ、マジ?!」
「ああ、本気と書いてマジだ。だって、最初から勝ち確の出来レースだったし。やっぱり、このステーキは美味いなぁ!」
ヴェルフの問いに俺はステーキ肉を頬張りながら果実ジュースを飲んで普通に答える。
だって、アニメでもベルがヒュアキントスに負けることはなかったし、俺がLV.3 に【ランクアップ】してその上『魔剣創造』が禁手に至ってるのにどうやって負けろと?八百長以外で負けろと言われる方が難しい。
俺の話を聞いて、ヴィクトリアは遠い目をしていた。
「そうよねぇ………あれだけの【ステイタス】をしていれば、間違いなく出来レースだわ」
「ヴィクトリア、ルール違反を承知で聞くけどケンマくんのLV.2 での最終【ステイタス】ってどんな感じだったかちょっとだけ教えてくれたり………?」
「知りたい?なら、教えであげるわ。覚悟を決めてから手を出しなさいヘスティア」
「覚悟を決めてから手を?うん、分かった」
ヘスティアは俺のLV.2 時点での最終の【ステイタス】を知りたくてヴィクトリアに駄目元で問いかけて、幸いにも教えてもらえる流れになり、教えてもらうために手を差し出すとその手にヴィクトリアが指で何かを書いていた。
「は?これは一番高くて?」
「いいえ、オールよ。ケンマの【ステイタス】を見たことがあるあなたなら分かるはずよ、ヘスティア」
「……………は、ははは、あははははははははははは!!?」
「か、神様!?」
「ヘスティア様!?」
「ちょっ、ヘスティア様に何を教えたんですかヴィクトリア様!?」
「ヘスティア様、お気を確かに!?」
ヴィクトリアから教えてられた俺の【ステイタス】を聞いて、ヘスティアはあまりの内容に脳が拒絶反応を起こして笑い発狂する。
まぁ、無理もない。基本アビリティオールSSSで最高値が三五○○を越えているのだから、まともな神ならば発狂しない方がおかしい。ベルもその気になれば、俺と同じくらいの【ステイタス】にできるはずだ。その場合は【ランクアップ】ができるようになってもしばらくは先送りする必要がある。
そこまで考えてから俺もちょっとヤバいことを考えた。それは次の【ランクアップ】する時は、基本アビリティの数値を軒並み三○○○越えか四○○○を越えてから【ランクアップ】してやろうという普通なら考えも付かないことである。
【ランクアップ】を果たすとそれまでの【ステイタス】は潜在能力値または裏【ステイタス】として『恩恵』に残る。その潜在能力値が高いほど次【ランクアップ】した際のアドバンテージとなる。その証拠にベルも格上であるLV.3 のヒュアキントスを倒している。
「なら、レベル×一○○○または一五○○くらいでいいか」
「なんの話だ?」
「ああ。また、ちょっとした規格外なことに挑戦してみようかなって話」
「………自覚あったんだな。てか、自覚して置きながら意図的に規格外なことをやろうとするなよ!流石にそろそろリリスケの情緒が不安定になるぞ!?」
「大丈夫、大丈夫。今度はリリたちに迷惑は掛からないから………かかるのはヴィクトリアくらいだから」
次にやろうとしている規格外の被害者が自分の主神だろうと口にすると、それを聞いていたヴェルフは呆れた眼差しを俺に向けるのだった。
それでも『豊饒の女主人』で開かれた祝勝会は続いて行く。
○●○
「さぁ、ケンマ!ミャーに噂の変身を見せるニャ!」
【アポロン・ファミリア】の『戦争遊戯』に勝利した打ち上げを行った翌日、日課となっている早朝鍛練を始めようとすると開口一番に何故かクロエさんから『天鎖斬月』を見せるように要求されてしまう。
「えっ、ここで卍解をですか!?」
「そうニャ!そのバンカイとかいう変身をミャーに見せて欲しいのニャ。戦争遊戯の時は仕事が忙しくて、ケンマの晴れ舞台を見逃したのニャ………」
「ああ、そういうことですか」
てっきり、この世界でも珍しい能力だから鍛練中に使わせてその能力と性能を確かめてみようとかいう好奇心からと勘違いをしてしまった。
まぁ、見せるだけなら問題はないだろう。別段、クロエさんは警戒している【ファミリア】所属の眷属ではないので大丈夫だろう。
「分かりました。言っておきますけど見せるだけですからね。卍解状態で鍛練しろとか言わないでくださいね。もしも、卍解状態で鍛練しようものなら何の対策もしてない中庭は簡単に壊れますから」
「言わニャい言わニャい」
「本当かなぁ………引けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ。叫べ、我が名は────斬月」
「おお!それが例の包丁みたいな大剣かニャ!」
「そうです。それじゃあ、卍解しますよ。卍解!」
取り敢えず、クロエさんに『魔剣創造』の禁手を見せるために『戦争遊戯』と同じように擬似詠唱で《斬月》の魔剣を創造、そのまま禁手の『天鎖斬月』を発動させる。
『魔剣創造』の禁手を発動させたことで《斬月》から禍々しいオーラが迸り、そのまま剣と俺の格好を『戦争遊戯』で披露した『天鎖斬月』へと変化させる。
「天鎖斬月」
「ほ、本当に変わったニャ!?」
「これでもういいですか?せっかくの鍛練の時間が勿体ないですよ」
真面目に鍛練の時間が勿体ないので禁手を解除しようとすると、少し本気の短剣がクロエさんから振るわれたがそれを親指、人差し指、中指の三本で挟んで止める。
「なんのつもりですか?」
「いやー、その姿に変身したケンマからLV.3 に成り立てとは思えない威圧感を感じたから試してみたくなったニャ。でも、どうやら正解だったみたいニャ」
「また、面倒なことを………」
獣人族としての野生の勘または元暗殺者としての勘なのか、禁手状態の俺が明らかにLV. を越えた強さを手に入れていることを看破して見せた。
まぁ、ガレスさん曰くLV.2 の時の禁手状態の俺がLV.4 相当だと言っていたので、禁手状態になると春姫の【ウチデノコズチ】のように一時的に【ランクアップ】をしている状態と似た状態なのだろう。【ウチデノコズチ】と違う点をあげるなら、禁手は二段階の【ランクアップ】をしている状態で尚且つ基本アビリティはゼロにはならずそのまま受け継がれているという二つの違いだ。
「それにしてもよくミャーのナイフを見切れたニャ」
「まぁ、戦争遊戯まで七日間【ロキ・ファミリア】で鍛練してまして、そのうちの二日は【勇者】、【九魔姫】、【重傑】のお三方に朝・昼・晩とサンドバッグにされてましたから卍解状態であれば、今くらいの剣速は反応してみせますよ」
「LV.6 が三人同時に………いじめかニャ?」
「そうですよねぇ、今思い出すだけでもあの二日は本当の意味で地獄でしたもん。フィンさんは二槍流を使ってくるし、リヴェリアさんは平行詠唱、ガレスさんは大楯二枚………は、ははは、ははははは!」
「なんかトラウマスイッチを押して、ごめんニャ」
ぶっちゃけた話、三巨頭による二日間の鍛練を見学しに来た【ロキ・ファミリア】の皆さんはクロエさんの反応と同じように俺がいじめられているように見えていたそうな。
思わぬトラウマスイッチが押されてしまったが禁手状態を一度解除してから擬似詠唱を唱えながら『魔剣創造』で、武器を《斬月》から某指輪の魔法使いの片手剣へと上書きする。
「さあ、気を取り直して鍛練をお願いします!」
「仕方ないニャ~。今日も適当に遊んでやるニャン♪」
「行きます!【プロモーション・クイーン】!!」
LV.3 に【ランクアップ】したことで【プロモーション】の『魔法』も強化されているはずなので、それを確かめるためにもクロエさんとの鍛練では最初から『女王』へと昇格して感覚を確かめていく。
『戦争遊戯』の前夜にリューさんとした鍛練は、主にLV.3 に【ランクアップ】したばかりの身体と精神のズレを直すための鍛練だけだったのと、LV.3 になってしまえばヒュアキントスに負ける訳もなかったのもあって魔法の確認はしていなかったのだ。
そんな訳で開幕速攻から【プロモーション】を使ってクロエさんに攻め込んでいくと、何故か彼女は目を見開いて慌て出す。そして、慌てながらもクロエさんは二本の短剣を交差して、俺の剣をしっかりと受け止める。
「ッッ────ちょっ、まっ!?」
「どうかしましたか?」
「どうも、なにもッ!その速さとこの力はなんニャ!?」
「別に普通に魔法で強化した速さと力ですけど?」
何を当たり前のことを?今までもそうやって、基本アビリティに補正をかけて鍛練していたのに何をそんなに慌てることがあるのだろうか?
『力』の方は新しく発現した【剣乱武闘】の効果で、俺に戦う意思がある限り『剣士』の発展アビリティが発現しながら修得発展アビリティが一段階強化されるので、剣を持っていると基本アビリティに補正があるのだろう。更に【勝利の祝福】と【月光の傾慕】のスキルも相まって、修得発展アビリティが最大三段階強化されるので『力』の強さに驚いたのだろう。
速さ───『敏捷』については、【瞬歩】は使っていないので普通に【プロモーション】で補正がかかっているだけの『敏捷』による速さなので、何故クロエさんが驚くのかはわからない。
「それじゃあ、そろそろ速度上げて行きますよ」
「まだ速くなるのかニャ!?」
「やだなー、卍解状態なら更にもっと速くなりますよ」
「今よりも速くなる上に手加減!?」
「そんなことよりも行きますよ!」
一声かけてから【瞬歩】を使おうと足裏に魔力を溜めて、爆発させるように加速したその瞬間。足元からブチブチッと筋繊維が千切れるような音と感触が足に伝わるとそのままズルりと踏み込んだ足か滑り、顔面から地面へとキスをする羽目になった。
「めええええええん!!?」
「うわぁ………今の音は絶対に痛いニャ」
「い、一体、何が………あっ、ブーツが破けてら」
「それも相当無理な動きをしたような剥け方ニャ」
何で地面にキスをすることになったのか、先ほど感じた感触と音から足元に何があったのではないかと確認すると案の定、ブーツが靴底と爪先の間からベロベロと破けてしまっていたのだ。
そして、クロエさんから「無理な動き」という言葉を聞いて、先日の『戦争遊戯』で披露したあの高速機動や【ロキ・ファミリア】の鍛練場での【一刀修羅】など、色々と思い当たることだらけなので随分と無理な使い方をしたもんだと苦笑いが出てしまう。
「これじゃあ鍛練はできないわね。今日はここまでにするニャ」
「そうですね。ブーツがこれじゃあ、鍛練を続けるのは危ないですもんね」
「装備の整備はしっかりとしておくのが基本ニャ!」
「返す言葉もありません」
幸いなことに、このブーツを作ってくれたヴェルフは絶賛【ヘスティア・ファミリア】が元【アポロン・ファミリア】の屋敷への引っ越し作業中なので、新しいブーツの作成依頼自体は出来る。
しかし、それまでの間は以前使っていたブーツを使うことになるだろう。もしもブーツが壊れていなければ、ソロで行けるところまで探索してやろうと思っていたが、ブーツが壊れるのがダンジョンの中ではなく地上でよかったと偶然に救われたとそう思うことにした。
「もしかして、これも『可能性』の発展アビリティによるものか?」
2025/11/30 内容文を一部加えました。
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に