臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百三十二話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「せあああ!!」

 

「せいッ!」

 

 

真剣と木刀が衝突して、空気を揺らす。

 

 

「でやあっ!!」

 

「フッ!」

 

 

真剣が木刀に受け止められたのを認識した刹那、即座に剣の向きを変えて、木刀に沿うように斜めに銀閃を煌めかせるも相手はLV.4 の格上の冒険者、その程度の小手先など見えているぞとばかりに切り返しで真剣を再び受け止めてみせる。

 

それを内心で舌打ちしながらも攻める手を止めることなく、再度剣の向きを変えて今度は突きを放ち、距離を取らせるように誘導すると流石にそこは相手側も敢えて距離を開けてくれた。

 

 

「身体は剣で出来ている────トレース・オン」

 

「今度は二刀流ですか」

 

「そうです。まぁ、その気になれば二刀流だけじゃなくて多刀流も出来なくはないですけどまだまだなので使いません」

 

「タトウ流………名前からしたら多くの剣を扱う流派と書いて、多刀流と言った所でしょうか?」

 

「それで合ってますよ」

 

 

『魔剣創造』で某指輪の魔法使いが愛用している剣をもう一本創造して、くるくる回転させながらリューさんの問いに答える。

 

その後、感触を確かめ終わったら何の合図もなくリューさんへと斬り掛かる。それをリューさんは冷静に捌き、隙があれば普通に突いてくる。

 

 

「はッ!ふッ!でやあああッ!!」

 

「たああッ!ふんッ!せいッ!」

 

 

俺が二刀流になってからお互いの剣速が増して行き、無意識に剣へ込める力も増して行く。そんな中で回転乱舞、クロス突き、左右交互の斬り付け、タイミングや軌道をズラしたりと色々と試して見るが当たらない。出来たのは意表を突いて、新しく創造した魔剣を死角から放ち、リューさんの髪を僅かに何本か切れて宙に舞うだけ。

 

それでも二ヶ月前と比べれば遥かな進歩だ。そして、そんな激しい攻防を続けていれば、それを受け止めている剣にも限界が訪れてくる。

 

 

「チッ………!」

 

「そこッ!!」

 

「なんのッ、まだまだぁあッ!!」

 

 

一合一合剣を交える度に剣の磨耗が激しいため、某正義の味方のような剣が折れてから新しい物を創造するのではなく、常に新しい物へと上書きするという無茶苦茶な試みを無意識下でしばらく続けているといつの間に鍛練の時間が過ぎていたのか、脳天にLV.3 の『耐久』を持ってしても激痛を感じるような一撃を受けた。

 

その一撃の正体は目の前で俺と一緒になって、涙目で頭を抑えているリューさんではないことは確かである。

 

 

「ギャンッ!?」

 

「グフッ!?」

 

「いつまでやり合ってんだい、このバカ共がッ!!」

 

「……す、すみませんミア母さん!直ぐには着替えてきます!?」

 

「ちゃんとシャワーで汗も流すんだよ!」

 

「はいいいい!!」

 

「痛ってぇ………」

 

「あんたもとっとと皮剥きをしな」

 

「は、はい………」

 

 

俺たちの返事を聞いたミアさんは、お玉を片手に店の中へと戻って行った。

 

 

「毎回思うけど、ミアさんのあのお玉は普通のお玉じゃないだろう!?ミスリルで出来ているだとか言われても普通に信じられるぞ!?」

 

 

お玉で殴られた箇所のたん瘤の確認と無詠唱で回復魔法を使いながらそう叫ばずにはいられなかった。取り敢えず応急手当の回復魔法を使ったあと、中庭から店に入る扉がある廊下に置かれている山盛りの野菜たちを中庭へと出す。

 

野菜たちを出したら、『魔剣創造』の禁手を発動させてから一個1個手に取りながら【魔力操作】で皮だけ剥いて、向いた野菜は水が張られている専用の籠へと放り込む。禁手状態は膨大な体力などを消費するので、そんな状態で皮剥きをするだけで『魔力』の基本アビリティや『超回復』の発展アビリティを鍛えるには十分鍛練になる。

 

 

「俺も皮を剥くのが手慣れて来たもんだ。ま、魔法で剥いているだけだけど」

 

 

野菜の皮剥きが終われた今日は何をするを考える。ベルたち【ヘスティア・ファミリア】は、今日の午後から新団員の面接を行うとヴェルフから聞かされているので、今日も一日暇を持て余すことになってしまっているのだ。

 

エイナさんの所を訪ねて、早めに『下層』についての情報を学ぶかあるいは他に何をと考えた所で、まずやらないと行けないことがあったのを思い出して、冷や汗が背中を伝う。

 

 

「ヤバいヤバいヤバい!これはマジでヤバい!?」

 

 

今直ぐにでもやらねばならないことを思い出した俺は、即座に行動へと移すことにした。まずは、主神たるヴィクトリアの確保である。

 

皮剥きが終わった野菜たちを店の廊下へと置いてから客席のある方へと向かって、店の準備をしているヴィクトリアへ慌てて声をかける。

 

 

「ヴィクトリア!」

 

「そんなに慌てて、どうかしたのケンマ?」

 

「どうかしたは後で説明するから悪いけど直ぐに着替えてくれ!?」

 

「そんないきなり言われてもバイトはどうするのよ?」

 

「バイトよりも今は、戦争遊戯までの七日間の鍛練で世話になった【ロキ・ファミリア】にお礼の挨拶が先だ!」

 

「はぁ……そんなことはしなくても良いと思うわよ。そもそも、その七日間の鍛練はミノタウロスの一件や怪物祭でレフィーヤを助けたことの対価としてケンマが要求したことでしょう?対価として要求したのに、そこへお礼なんてしたらまたケンマにロキたちは貸しになってしまうわよ」

 

「え?ん?んん?」

 

 

確かにヴィクトリアの言う通り、『怪物祭』の後に俺はロキとフィンさんたちに「もしも【ロキ・ファミリア】以外との【ファミリア】と戦争遊戯になった際、秘密裏に幹部の方々と鍛練をしたい」とそう俺は述べながら要求した。

 

しかし、その要求を遂行してくれたことへの感謝の挨拶をしに行くのは間違っているのだろうか?あるいはヴィクトリアからしたら、同盟関係でもない【ファミリア】に感謝の挨拶をするのは反対ということなのだろうか?日本人の俺からしたら助けてもらったならば、しっかりと感謝の言葉を述べるなり感謝の品物を贈るべきだと思うのだが………やっぱり、神の視点からしたらそこら辺は違うのだろうか?

 

まぁ、最悪ヴィクトリアが行かなくても【ヴィクトリア・ファミリア】の団長として、こういうことはしっかりとしておいて損はないはずだ。

 

 

「………わかった。ヴィクトリアが行く気がないなら俺だけでもフィンさんたちに感謝の挨拶をしてくる。別にいいよな?」

 

「ええ、構わないわよ」

 

「了解。準備の邪魔をして悪かったな、ヴィクトリア」

 

「これくらいバイトを休ませられるよりは問題ないわ」

 

「まぁ、確かにそれと比べたら、なぁ」

 

 

ということで【ヴィクトリア・ファミリア】からは俺一人が【ロキ・ファミリア】へ感謝の挨拶をしに行くことになった。あとは【ヘスティア・ファミリア】に向かって、ベルとヘスティアを連れて行く必要があるので直ぐに準備に取りかかる。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

今日の午後には【ヘスティア・ファミリア】で新団員の面接があるので、それまでにベルとヘスティアを連れて【ロキ・ファミリア】に鍛練の感謝の挨拶をしに行かないといけないので『魔剣創造』の禁手状態を維持したまま【瞬歩】を使って、ベルたちの新本拠地に向かっているとその途中でカサンドラとダフネを発見した。

 

彼女たちが向かう方向は俺と同じ【ヘスティア・ファミリア】の本拠地、つまり元【アポロン・ファミリア】の本拠地であることからアニメ知識でカサンドラの枕を取りに向かうのだろうと察した。

 

これも何かの縁だと思い、思い切って二人に声をかけることにした。

 

 

「おーい、カサンドラ!」

 

「へ?」

 

「よう!」

 

「あんたは【刀剣の支配者】!?」

 

 

取り敢えず、面識のあるカサンドラだけに挨拶をするとダフネが突然現れた俺に驚き、二つ名で呼んでくる。

 

 

「もしかして、二人はこれから【ヘスティア・ファミリア】の所に行くのか?」

 

「は、はい。予知夢で枕がそこにあるって………」

 

「だから、無闇矢鱈と訳の分からないことを言うんじゃないの!」

 

「お願いだから信じてよぉ~~~~っ」

 

 

カサンドラが言っている「夢」とは彼女の『スキル』から見る『予知夢』のことだろう。俺の記憶で一番新しい『ダンまち』の四期ではそれがストーリーに大いに関わってくる。

 

なので、敢えてそれを信じてやることにした。

 

 

「なら、探しに行こう。俺もベルと神ヘスティアに用があるからさ」

 

「しょ、正気……? この子が見たのは夢、夢よっ、妄想なのよ?」

 

「強ち、夢で見たことはバカに出来ないかもしれないぜ。夢は夢でも、もしかしら正夢になるかもしれないし、悪い夢ならそうならないように未来を変えられるように努力することも出来る」

 

 

ぶっちゃけ、前世で見た夢が正夢になった経験が俺にはある。その夢は授業で朗読させられる夢だったり、その夢は美味しい何かを腹一杯食べる夢、その夢は担任の世間話だったと色々である。

 

そして、この世界に転生して夢が正夢になった物もある。それは冒険者だ。モンスターを倒して、可愛いヒロインと出会うなんていう在り来たりのものだ。

 

 

「し、信じてくれるんですか………?」

 

「信じる信じないかと聞かれたら、俺の場合はその時々によるな。まぁ、とあるお人好しのヒーローは信じないで後悔するよりも信じてから後悔した方が良い、って言うから今回は信じても良いと思ってる」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ」

 

 

恐る恐る尋ねてくるカサンドラに俺はアニメ知識から笑顔で答える。すると彼女は感極まったように瞳を潤ませて俺を見つめてくる。

 

まぁ、カサンドラの『予知夢』は神々でも解読出来ないと動画サイトのショート動画で見たことがあるので、そのことを知らない者からしたら彼女のことを口説こうとしている悪意のある奴としか映らないだろう。

 

そんな訳で、ダフネから訝しむような眼差しを俺は絶賛向けられています。

 

 

「それじゃあ、急いで【ヘスティア・ファミリア】に行こうぜ。俺も午後から始まる【ヘスティア・ファミリア】の新団員面接が始まる前にベルと神ヘスティアを連れて行かないといけないし」

 

「他派閥の団長と主神を連れて行くって、何処に連れて行くつもりなの?」

 

「んー、まぁ教えてもいいか。ベルたちを連れて行くのは【ロキ・ファミリア】だ」

 

「は?【ロキ・ファミリア】!?言っちゃあ悪いけど、【ヘスティア・ファミリア】も【ヴィクトリア・ファミリア】も零細派閥のはずじゃあ………」

 

「ちょっとした縁でな」

 

「はぁ、どっちにしろウチらは喧嘩を売る相手を間違えてた訳ね」

 

 

とまぁ、こんな感じでダフネとカサンドラを連れて俺は【ヘスティア・ファミリア】に向かって歩を進めるのだった。

 

 

「ねぇ、【刀剣の支配者】」

 

「石黒ケンマ、それが俺の名前だ。名字が石黒で、名前がケンマ。好きに呼んでくれ」

 

「じゃあ、イシグロで。ウチはダフネ・ラウロス。それでカサンドラから聞いたけど、ウチらをあんたの【ファミリア】にスカウトしたいって話は本当?」

 

「ああ、もちろん本当だ。ダフネは副団長、カサンドラは治癒師として是非うちの【ファミリア】に欲しい」

 

「でも、ギルドや何処にも団員募集の張り紙なんて………」

 

「あー、実はそれ、俺のレアスキルが関係してるんだ。あまりにも効果がぶっ飛んでるものが多いから今の所は俺かヴィクトリアが個々に勧誘してる。そういう訳で団員募集の張り紙をしてないんだ。何処ぞの【ファミリア】みたく膨大な借金まみれでは決してないから安心してくれ」

 

「膨大な借金まみれって………」

 

 

スカウトとしておいて、後ろめたい話があると俺たちの【ファミリア】に二人が移籍してくれない可能性があるので、できるだけ話せる内容を伝えておく。

 

そして元【アポロン・ファミリア】のホーム改めて、【ヘスティア・ファミリア】の新本拠地である『竈火の館』に来たはいいが門扉にインターホンや呼び出し鈴がない。

 

 

「なぁ、呼び出し鈴ってまさか門扉の先か?」

 

「ウチらが居た時は門扉の前に門番が常にいたから呼び出し鈴が使われたことはないよ」

 

「ってことは、普通に玄関か………」

 

 

前世のインターホンや呼び出し鈴が門扉にあることを期待したが見た限りではないので、諦めて門扉を開けて『竈火の館』の中庭へと踏み込んで行く。

 

玄関まで辿り着いたら普通に呼び出し鈴があったので、それを俺は躊躇なく押す。すると一分もしないで命がやってきた。

 

 

「これはケンマ殿じゃないですか」

 

「よう、命。ベルと神ヘスティアはいるか?」

 

「ベル殿とヘスティア様ですか……一体、なに用で?それとそちらのお二方は確か【アポロン・ファミリア】の………」

 

「後ろの二人は引っ越しの忘れ物。俺は前の戦争遊戯でベルと共に世話になったとある【ファミリア】に、一緒に挨拶に行こうと思って声を掛けに来た」

 

「なるほど、そういうことでしたか。なら、お二人を呼んで来ますので少々お待ちを」

 

「ああ、頼む」

 

 

命がベルとヘスティアを呼んでくるまで、俺たちはしばらく待つことにした。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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