臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百三十三話

 

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「やあ、ケンマくん。命くんからキミはボクとベルくんに用があって、そっちの二人は引っ越しの忘れ物だったね」

 

「はい、そうです。俺の方が、時間が掛かるのでカサンドラは先に忘れ物の話をしてくれ」

 

 

命が呼んでくれたベルとヘスティアに立ち話では何だと『竈火の館』へと招き入れてもらい、応接室にて今回の俺の訪問目的を話している。

 

 

「実は……予知夢で私が使っていた枕はこの館にあるって………最初はダフネちゃんに相談したんですけど、信じてもらえなくて。でも、イシグロさんが信じてくれて、正夢になるかもしれないって言ってくれて……それで……」

 

「ふむ、ちなみに枕がどの部屋にあるかまで分かっているのかい?」

 

「いえ………でも、多分、私が使っていた部屋だと思います」

 

「ま、それが無難だろうね。わかった、カサンドラくんの枕に関しては命くんと一緒に探してもらうとしよう。命くん、頼めるかい?」

 

「畏まりました。それでは、カサンドラ殿、こちらへ」

 

「はい」

 

 

命が先導して、カサンドラと共に応接室から出ていく。

 

 

「さて、次はケンマくんの用事だね」

 

「はい。二人への用事は、前の戦争遊戯でお世話になった【ファミリア】に挨拶へ行こうかと思ってまして、一緒にどうかと」

 

「なるほど、なるほど。ちなみに何処の【ファミリア】だい?」

 

「多分、神ヘスティアにも心当たりがあるかと」

 

 

そう述べるとあからさまにヘスティアは嫌な顔を表に出す。

 

 

「はぁぁぁ、ヴァレン某くんがいるロキの【ファミリア】か………」

 

「しかないです」

 

「ベ~ル~く~ん?」

 

「は、はい!」

 

「ボクはあの時、誰よりも強くなってくれと言ったけど、よりによってヴァレン某くんを頼るとは何事だぁあああ!!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 

ヘスティアにしたらベルが強くなるのは嬉しい。しかし、ベルを強くしているのがアイズというのが許せないというジレンマに悩み、怒りをぶつけてしまっているのだろう。実に理不尽である。

 

けれど、今はそんな面白いやり取りを眺めていられる時間がない。【ヘスティア・ファミリア】にも時間がないだろうし、今を逃したら一気に【イシュタル・ファミリア】との抗争へ展開が移ってしまうからだ。

 

 

「あー、すみませんが喧嘩なら後でしてもらってもいいですか?【ヘスティア・ファミリア】は午後からは忙しくなるとヴェルフから聞いているので、【ロキ・ファミリア】への挨拶は午前中の方がいいと思うんですけど………」

 

「え?午後から何かあるんですか、神様」

 

「んー、まさかケンマくんから言われるとは思ってもみなかったけど、一応ベルくんにはサプライズで計画してたことだから………うん、午後から忙しくなることは認めよう。だけど、どうして忙しくなるのかはキミの目で確かめるといいよ、ベルくん」

 

「………神様がそう言うんでしたら、わかりました」

 

「それで、二人は【ロキ・ファミリア】への挨拶はどうしますか?無理ならば、俺一人でも行きますけど」

 

「いや、ボクたちも行くよ。全くケンマくんから今回の話を聞けてよかったよ………もしも、知らぬ存ぜぬで通していたら、ロキに後でなんて言われるか分かったもんじゃないからね」

 

 

うわぁ………すげぇ、嫌そう。

 

言葉にはしないがヘスティアの表情と態度を見て、ロキの所に挨拶へ行くのはとても嫌であろうことが察せられた。

 

 

「それでは、二人は俺と一緒に【ロキ・ファミリア】へ挨拶に行くということで間違いないですね?」

 

「うん、間違いないよ」

 

「僕もアイズさんやティオナさんにお礼を言わないと」

 

「なら、一団長としてお礼の品物も用意しないとな」

 

「あっ、そっか!でも、何が良いんだろう?」

 

「無難にお菓子とかで良いんじゃないか?ベルもアイズとティオナの好みをそこまで知らないだろう」

 

「んー、アイズさんはじゃが丸くんで、ティオナさんは多分英雄譚だと思う」

 

「意外と自信有り気だな」

 

 

アニメでもアイズはじゃが丸くんが好きで、ティオナは多分英雄譚で間違いないと思う。強化種のミノタウロスとの戦闘を観戦していた時に、アルゴノゥトの英雄譚が好きだと言っていたし。

 

 

「なら、二人にはそれで………あとは神ロキとフィンさん、リヴェリアさん、ガレスさん、ティオネの分をだな」

 

「あっ、そう言えば!ティオナさんとアイズさんからケンマは僕があの日、【ロキ・ファミリア】に来ることを予言してたって……本当なの?」

 

「バカ、お前!それをここで言うか!?」

 

 

嗚呼、ベルの所為でヘスティアだけじゃなくてずっと沈黙を続けているダフネにも注目されるし、多分廊下にはヴェルフとリリが待ち構えてるだろう。

 

 

「どういうことだい、ケンマくん?」

 

「まぁ、色々とありますが単純にベルと神ヘスティアの行動パターンを先読みしただけです。あの日、【アポロン・ファミリア】に襲われた二人は、オラリオから出るか戦争遊戯を真っ向から受けるかの二択だったはず」

 

「うん、そうだね」

 

「『英雄』を目指しているベルとそれを応援している神ヘスティア、理想的な主神と眷属でも八割が逃げ出すでしょう。でも、ベルは逃げることをしない。『英雄』に憧れを抱き、アイズに憧憬を燃やす、そんな俺が知っているベル・クラネルなら逃げずに戦う。そう思ったからちょっとしたコネを使って【ロキ・ファミリア】に頼み事をしておいたんです」

 

「頼み事?」

 

「ベルがアイズと特訓することを【ファミリア】として黙認すること」

 

「「「ッ!!」」」

 

 

そこまで言えば、ベルはティオネが門扉前で自分に述べた言葉の意味を、そしてアイズとティオナが言っていた言葉が点から線になったように感じただろう。

 

 

「じゃあ、やっぱり僕が【ロキ・ファミリア】の入り口でティオネさんからあの言葉を掛けられたのも………!」

 

「ぶっちゃけ、戦争遊戯を確実に勝つために俺が仕組んだことだよ。戦争遊戯の時にも言ったろうが、情報は剣であり盾でもあるってな。今回は【ロキ・ファミリア】とのコネという剣の手札を切らせてもらった訳だ」

 

「あのさ、もしかしなくても、ウチらって最初から負け戦だった訳?」

 

「八割がそうだな。残りの二割は、可能性としては有り得たかもしれないヒュアキントスの【ランクアップ】。これをされてしまえば、いくら特訓したベルでも相手がLV.4 ならば敵わないだろう。ま、そうなったら俺が全力でヒュアキントスを仕留めていたかもしれないタラレバの話だから意味はないけどな」

 

 

ずっと沈黙としてダフネが、沈黙を破って質問をしてきたので普通に答えてやる。

 

そして、俺が答えた内容は文字通りタラレバだ。戦争遊戯が終わって、俺たちが勝利した今となってしまえばそんなあったかもしれない話なんて何の意味もなさない。

 

既に終わった戦争遊戯の話をしているとヘスティアからとんでもない質問を受ける。

 

 

「ねぇ、ケンマくん。キミ、未来視とか出来たりしないよね?」

 

「あのー、神ヘスティア?それは俺の【ステイタス】を見たことがあるあなたが一番理解しているのでは?」

 

「いや~、そうなんだけどさぁ……あまりにもキミの先読みというかベルくんへのサポートというかレール敷きが上手いもんだからさぁ」

 

「まぁ、自分でも上手くやれている方だと思いますけど、未来視があるならもっとやりようがあったのかと思う所もありますね。特にアルテミスの件とか」

 

「そ、それは………」

 

「ええ、分かってます。あれも今ではタラレバです。救えない命があるのは分かっているつもりです」

 

 

本当に『未来視』が出来るならばアルテミスの眷属である【アルテミス・ファミリア】だって救えたかもしれない。そう考えないことは一度もなかった。

 

その後、少し話し込んでしまったがカサンドラが命と共に大事そうに枕を抱き締めながら戻ってきたのを頃合いに俺、ベル、ヘスティアは【ロキ・ファミリア】に向かうのだった。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

『竈火の館』が出た俺たちは、まずカサンドラたちと分かれてからお礼の品物を買うためにメインストリートへと赴き、それぞれ必要なお礼の品物を購入。俺の場合は、ベルと違って【ロキ・ファミリア】の皆さんに色々としてもらったのでそれなりに購入する必要がある。

 

流石にリアカーが必要になる量を購入するとベルもヘスティアもドン引きしていたが、相手は団員数が百人以上を越える大手派閥だ。これくらいの量になるのは普通だろう。

 

値段は、まぁ………総額一五○○○○ヴァリスくらいほどだと記して置く。

 

 

「こんにちは、【ヴィクトリア・ファミリア】の石黒ケンマです。戦争遊戯前の鍛練の件で感謝の挨拶に来ました。神ロキと団長のフィンさんに面会できますか?」

 

「分かった。少し待っていろ」

 

 

【ロキ・ファミリア】の本拠地である『黄昏の館』に到着したら、まずは門番の団員にフィンさんとロキに面会出来るか話を通してもらうことにした。

 

今日の門番たちは、会話こそしたことはないが顔合わせくらいは七日間の食事の時にしているので俺の顔くらいは覚えてくれているだろう。

 

しばらくすると『黄昏の館』の中から俺たちの案内役なのか、二軍のラウルさんとアキさんがやってきた。

 

 

「お待たせしました。団長とロキが面会は可能ということなので、応接室まで私たちがご案内します」

 

「それにしてもケンマくんは凄い荷物すっねぇ………一体なんの荷物なんすか?」

 

「七日の鍛練でお世話になった【ロキ・ファミリア】の皆さんにお礼の品として、ざっと百五十人分のお菓子とか神ロキとガレスさんへのお酒とかですね」

 

「ぼ、僕もアイズさんやティオナさん、ティオネさんにお礼の品が………」

 

「全く二人とも律儀ね。普通、態々お礼の品を持って挨拶なんてしないわよ?」

 

「まぁ、考え方によっては胡麻すりですけどね」

 

 

裏事情を少し述べるとアキさんもラウルさんも苦笑いを浮かべた。

 

フィンさん、ガレスさん、リヴェリアさん、ロキの今回の挨拶での主要人物以外へのお礼のお菓子はアキさんが呼んだ平団員の人に任せて、四人分のお菓子やお酒を持って案内されるままに応接室へと向かう。

 

そして、応接室前にたどり着くとラウルさんが扉をノックする。

 

 

「団長、ラウルっす。神ヘスティアとベル・クラネル、それにケンマくんをお連れしたっす」

 

『入ってもらってくれ』

 

「了解っす。どうぞ、中へ」

 

 

ラウルさんに扉を開けてもらい、俺たちは応接室の中へと踏み込んで行く。

 

 

「ようこそ、我が黄昏の館へ」

 

「門番から聞いたで、律儀に礼の品持って挨拶に来たってな。どうせ、ケンマかベル坊辺りの考えやろうがな」

 

「言葉を慎め、ロキ。今は主神らしく振る舞え」

 

「ママはカッタイなぁ……別にドチビ相手ならそんなのいらへんやろ。ドチビもウチに礼儀正しくされて鳥肌もんやろう?」

 

「ああ、全くだね。そんな礼儀正しいロキだなんて他の神々も鳥肌が立って、誰だこいつ!って叫ぶに決まってる」

 

「ちょっ、神様!」

 

「ええよええよ、別に。これがウチとドチビとの関係ってことや………所謂、犬猿の仲や」

 

 

最早、恒例行事となっているロキとヘスティアのやり取りを横目に俺は早速お礼の品物をフィンさんたちに献上する。続けて、ベルもお礼の品物を献上する。

 

 

「七日間の鍛練でお世話になったお礼の品物になります。改めて七日間、ありがとうございました」

 

「ぼ、僕もありがとうございました」

 

「おやおや、態々悪いね。有り難くもらうよ、リヴェリア」

 

 

俺たちが献上した品は、リヴェリアさんが代表して受ける。

 

 

「あ、そうだ!あのリヴェリアさん、レフィーヤに会えますか?」

 

「レフィーヤに?なぜだ?」

 

「えーっと、実は師匠からレフィーヤの誤解を解いて置くようにと言われてまして………」

 

「一体、どんな誤解だ?」

 

「それが………18階層の黒いゴライアスとの戦いでレフィーヤにその……額にキスをしてもらった時に好きと伝えたんですけど、その好きの意味を推しとして好きと伝えたつもりが、側で聞いていたベルたちが言うには異性としての告白にしか聞こえないと言われてしまって……それで……」

 

「そ、そうか………」

 

 

流石にリヴェリアさんもこの対応に困るものがあったようだが、なんとかレフィーヤを呼んでもらい色々と説明すると、何故か元々機嫌が悪かったのが更に悪くなり─────

 

 

「私のことがアイズさんよりも好みと言ったくせに」

 

「私の胸を鷲掴みにしたくせに」

 

「私のことを好きって言ったくせに」

 

 

────と誤解させてしまったことを謝るがレフィーヤの機嫌は直ることはなかった。けれど、俺の中にあるレフィーヤへの思いは他の女性とは違うことを伝えることにした。

 

 

「確かにレフィーヤに誤解させてしまったかもしれない。けど、俺の中でレフィーヤは他の女性とは違って特別なんだよ!」

 

「特別?それはどう特別なんですか?」

 

「そりゃあ、レフィーヤみたいな女の子と出会って、友達になって、恋人になれたら嬉しいし、デートや色々な所に一緒に行ってみたいし、二人だけの思い出作りとか色々なことをしてみたいとは本気で思ってる」

 

「ケンマ、それは普通にレフィーヤのことを異性として見ているということじゃないのかい?」

 

「え?」

 

 

フィンさんから指摘を受けて、自分が発言した言葉を思い返してみる。確かに言葉通りならレフィーヤを異性として見ていると捉えられてもおかしくない。けれど、俺の中ではレフィーヤは推しというカテゴライズであることに間違いない。

 

なら、何でフィンさんからこういう指摘を受ける?

 

腕を組んで自問自答を繰り返していると、ヘスティアからとある問いが飛んできた。

 

 

「ケンマくん、もしかしてキミ、誰かを本気で好きになったことがないんじゃないかい?」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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