臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百三十五話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「改めて、【ヴィクトリア・ファミリア】所属の石黒ケンマだ。石黒が名字で、ケンマが名前。二つ名は【刀剣の支配者】。んで、こっちが───」

 

「わたしが主神のヴィクトリアよ。司るのは勝利ね」

 

「ウチは、元【アポロン・ファミリア】所属のダフネ・ラウロス。二つ名は【月桂の遁走者】。で、こっちが───」

 

「カサンドラ・イリオンです。二つ名は【悲観者】です。よろしくお願いします」

 

 

【ヘスティア・ファミリア】の借金爆弾事件の翌日、アーニャさんとの鍛練を終えて野菜の皮剥きをして、昼間のカフェが開店するとヴィクトリアと俺に会うため、ダフネとカサンドラが『豊饒の女主人』に訪れていた。

 

開店早々ということでお客も皆無に等しいので奥のテーブルを使わせてもらい、こうして俺たちは主神のヴィクトリアを交えて顔合わせをしている。

 

 

「二人が俺たちを訪ねてきたってことは、俺たちの【ファミリア】に移籍するって認識でいいのか?」

 

「そうだね。今のキミたちは【ヘスティア・ファミリア】と並んで、今のオラリオでも勢いがある【ファミリア】って認識が強いし、何より団長自ら態々スカウトしてくれたしね」

 

「私もダフネちゃんとよく相談して、その上でイシグロさんの【ファミリア】が良いなって思って」

 

「なるほど、なるほど………うん、スカウトした身としてはとても有難い話だ。ヴィクトリア、二人と顔合わせしてみたがどうだろう?」

 

「問題ないと思うわ。なにより、ケンマが態々自分でスカウトしたのでしょう?なら、二人にはケンマが認めるだけの何かがあるってことだもの。わたしとしては、それだけで喜んで【ファミリア】に迎え入れるわ」

 

 

ヴィクトリアもダフネとカサンドラの印象は悪くないようだ。

 

 

「主神のヴィクトリアもこう言ってるし、ようこそ【ヴィクトリア・ファミリア】へ」

 

「これからよろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

 

こうして、タブネとカサンドラは俺たちの【ヴィクトリア・ファミリア】へと移籍することになった。移籍するに当たって『改宗』の作業をするために二人は『豊饒の女主人』の更衣室に向かっていった。

 

それを見送ったあと、俺は深く息を吐きながら今後の展開に思考を巡らせる。

 

多分、今夜が命と千草が春姫を探して【イシュタル・ファミリア】の根城である『歓楽街』へと向かう日だろう。俺としては、レフィーヤと並ぶ推しである春姫をベルと共に助けるつもりだ。

 

ただ、彼女を助けるに当たって障害となるのが【イシュタル・ファミリア】の団長で第一級冒険者のフリュネ・ジャミールと幹部であるアイシャ・ベルカだ。アイシャの方はベルに任せればいいが、フリュネはきっと俺が相手をすることになるだろう。

 

 

「あと問題なのは………アルテミスの説得だな」

 

 

純潔と貞節を尊び、俺に好意を寄せているアルテミスだ。俺に如何なる理由があろうと歓楽街に向かうなどと言えば、弓矢で頭を射貫いてきかねないだろう。

 

それをどう説得するかが、一番目の前に迫る障害だろう。

 

 

「カサンドラが何か予知夢で見ていてくれればなぁ………」

 

「予知夢なら見ましたよ」

 

「え?」

 

 

カサンドラが『予知夢』を見ていないかと期待していると、『改宗』の作業が終わった彼女が『予知夢』を見たと述べたので早速聞いてみることにした。

 

 

「見たのか、予知夢!なら、覚えていることだけでいいから書いてみてくれ!」

 

「わ、分かりました」

 

 

カサンドラに書いてもらった『予知夢』の内容を読んで行くと、やはり今夜はベルが歓楽街へと向かう日のようだ。

 

焔、鼠、忍、草、兎。これらの単語はベルたちの特徴からイメージされる単語なのだろう。そんで龍は間違いなく俺だろうな。予知夢の内容からしてアニメ通りの展開になるけど、どうやら俺も向かう流れになるのか。

 

ただ………『深紅の龍は、妖精の果実を糧に紅き力を継承する』のこの一文に嫌な予感がするのは俺だけだろうか?まぁ、それよりも『紅き力を継承する』の方に興味を惹かれてしまう。

 

 

「紅き力………もしかして、真紅の赫龍帝か?」

 

 

もしも、本当にそうなるとすればワクワクが止まらない。でも、『真紅の赫龍帝』を継承するにしてもイッセーの残留思念はブーステッド・ギアには居なかったし、何より今はブーステッド・ギアが使えない。

 

けれど、この予知夢の内容からは近いうちにブーステッド・ギアが使えることを示唆するような文がある。しかし、文には全く同じ意味を示す単語もある。

 

 

「深紅?」

 

 

真紅』と『深紅』、意味は全く同じだけど英語にすると少し異なる。前者はただのクリムゾンと読むが、後者はディープクリムゾンと読める。一体、この違いはなんだ?

 

この二つの単語から以前、『神月祭』の時に残滓のアルテミスが俺の魂を『真紅』と言っていたのを思い出した。もしかしたら、あの時のアルテミスが言った『真紅』は『真紅』ではなく『深紅』だったのかも知れない。他にも『エルソスの遺跡』でブーステッド・ギアの中で『希望の赤龍帝』の詠唱した時に現れたドラゴンもただの紅色ではなく、もっと深くて紅色だった。

 

真紅』と『深紅』について色々思い出してみたり、仮説を立てたりとしてみたがこれといった答えにたどり着くことはなかったので、ドツボに嵌まる前に『深紅』については一度思考を放棄することにした。

 

 

「カサンドラ、予知夢で見た何かでイメージまたは具体的に表現できそうな場面はあったか?」

 

「えーっと……月……燃える街の中、一番高い場所で綺麗な満月に照らされながら真紅(あか)い龍の戦士と大きな蛙みたいな人が戦ってました!」

 

「燃える街の中……一番高い場所……赤い龍の戦士と大きな蛙……そして、金色の姫君は救われる」

 

 

今言ったカサンドラの予知夢の内容を俺のアニメ知識から導き出すと、『燃える街』は恐らく【フレイヤ・ファミリア】に襲撃を受けた歓楽街のことだろう。次に一番高い場所、これは最初バベルのことかと思ったが多分違う。『燃える街の中、一番高い場所』という一文にしてみることで、場所はバベルではなくて【イシュタル・ファミリア】の本拠地でそれも満月に照らされる位置だから屋上ということになるだろう。

 

そして『赤い龍の戦士』、これは俺を意味していて『真紅』または『深紅』に至った俺が、大きな蛙の人ことフリュネと一対一のサシで戦うということなのだろう。最後の『金色の姫君』は春姫で何とか無事に救われるということだろう。

 

 

「なるほど、そういうことになるのか」

 

「もしかして、予知夢の内容が分かったですか!?」

 

「ああ。でも、ちょっと厄介な内容ではある」

 

「一体、どんな内容なの?」

 

「んー、まぁ分かってる範囲で言えば、どこぞの兎が嫉妬の女神に狙われるという予言らしい」

 

「兎に嫉妬の女神?」

 

「他にも色々とあるが、そこは何とかするから大丈夫だろう。カサンドラの予知夢で誰かが死ぬような内容は無いようだし。あっ、今のダジャレじゃないからな」

 

「それを言ってる時点で寒いよ」

 

 

ダフネから鋭いツッコミを受けると『豊饒の女主人』の店に見覚えのある人影がやって来た。その人影の正体は、昨日ちょっとした誤解を解いたレフィーヤだった。

 

 

「やっぱり、ここに居ましたかケンマ」

 

「レフィーヤ?」

 

「すみませんが今直ぐ私に付いて来てください。団長がケンマを呼んでいます」

 

「フィンさんが?」

 

「理由は、18階層で倒した例の極彩色のモンスター関連とだけ」

 

「ッッ─────分かった」

 

 

この場には俺以外にもヴィクトリア、カサンドラ、タブネ、『豊饒の女主人』の従業員たちがいるので下手に闇派閥関連でフィンさんが俺のことを呼んでいると伝えられないレフィーヤは、敢えて俺にだけ分かるように18階層での話を持ち出した。

 

そのことからフィンさんたちは、もしかしたら名工ダイダロスが作成した人造の迷宮である『人造迷宮』の入口を見つけたのではないかと俺は当たりを付けた。

 

そして、フィンさんは俺が何かしらの情報を持っているのではないか、または例えなくとも情報を共有しても良い相手だと認めてくれたのだろう。

 

 

「悪いな、カサンドラにダフネ。せっかく移籍してきてくれたのに歓迎会も開けず、出掛けることになっちまった」

 

「何か問題ごとならウチらも……」

 

「それは有難いけど、今回は駄目だ。今回の件はちょっとヤバいかもしれないから、連携の練習もしていないのに二人を連れていくのは危険すぎる」

 

「危険って、そんなに危ないことなんですか?」

 

「多分な」

 

 

もしもこれから俺も闇派閥との戦いに巻き込まれたら厄介だ。それに伴って、カサンドラとダフネも巻き込み兼ねないので二人には俺に付いてくること以外は自由にしてもらう方が安全だ。

 

 

「俺なら大丈夫。ヒュアキントスとの戦いでもまだまだ全力は出し切ってないから、ちゃんと帰ってくるさ」

 

「その言葉、信じるわよ、ケンマ」

 

「ああ」

 

 

そこまで話したところで、フィンさんを待たせるのも悪いので俺はレフィーヤと共に『豊饒の女主人』を出る。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

レフィーヤに先導されながら向かった先は、オラリオの街の真下にある地下の下水道だった。その下水道を見て、俺は『ソード・オラトリア』でベートさんがロキを連れて、『怪物祭』で突如として現れた食人花の調査をしていたシーンを思い出した。

 

そして、どんどん奥に進んで行くとそこには【ロキ・ファミリア】の皆さんと彼らの前に聳える大きな扉とその先に続く『人造迷宮』の通路と思わしき物があった。

 

 

「団長、ケンマを連れて来ました」

 

「ご苦労、レフィーヤ」

 

「フィンさん、これは………」

 

「恐らく、僕たちが18階層で発見出来なかった闇派閥たちのアジトに繋がる通路かなにかだろうね。ケンマは、この通路について何か知ってるかい?」

 

 

フィンさんの問いに俺は正直に答えるべきか悩む。ここで正直に答えたら、多分ウィーネたち『異端児』とのストーリーに支障が出る。しかし、【ロキ・ファミリア】の特に幹部の皆は俺に期待を寄せているような眼差しを向けている。

 

更に異端児たちのストーリーで思い出したことがある。そのことから何の対策も無しに【ロキ・ファミリア】の皆さんを人造迷宮に突入させる訳には行かないと俺は判断した。

 

 

 

「………多少ではありますが、知ってます」

 

「話してくれ」

 

「この門から先は彼の有名な名工ダイダロスが何代にも渡って作り上げた人造迷宮ことクノッソスです」

 

「人造迷宮───クノッソス」

 

「ここからよく聞いてください。この扉は、とある魔道具がないと入ることも出ることも叶わなくなります」

 

「その魔道具とは?」

 

「名工ダイダロスの一族の目玉を使った魔道具で、名前はダイダロス・オーブ。特徴はこれくらいの玉で、その玉には赤くDと刻まれています」

 

 

人造迷宮の扉を明け閉めする魔道具である『ダイダロス・オーブ』が人間の眼球だと聞いて、皆さんの顔が険しくなりながら、無闇に人造迷宮へと突入するのは愚策だと理解する。けれど、俺は更に彼らを追い詰める。

 

 

「あとは、多分俺の考えが正しいければ闇派閥の奴等の中には、傷が塞がらなくなる強力な『呪詛』が込められた武器と超短文詠唱で周囲の敵を狂乱させる呪詛を持った冒険者が待ち受けているはずです」

 

「「「「ッ!!」」」」

 

 

傷が塞がらなくなる『呪詛』が込められている武器に、狂乱させる『呪詛』を扱う冒険者が、この先で待ち受けていると聞いて彼らの顔は更に悪くなる。

 

 

「傷が塞がらなくなる呪詛………つまり、不治癒の呪詛の武器。そういうことかい?」

 

「はい。そして、それを一番に使う相手として俺ならフィンさん、あなたに使います。そうすれば、【ロキ・ファミリア】は瓦解。更に部隊を分断してやれば、あとは極彩色のモンスターを使って追い詰めるのというのが奴等の筋書きだと思います」

 

 

これは、目の前にあるオリハルコンの扉を見て俺が闇派閥の立場となって考えたことだ。

 

【ロキ・ファミリア】は確かに強い。けれど、それは指令塔であるフィンさんがいるからだ。正直、それさえなければ【ロキ・ファミリア】の戦力は【フレイヤ・ファミリア】の足元にも及ばなくなる。

 

 

「リヴェリアの提案通り、キミをレフィーヤに呼びに行かせて正解だったよ。ケンマ、もしもキミを呼ばずに人造迷宮へと踏み込んでいたら、間違いなくキミの言っていた筋書き通りに僕は不治癒の呪いを受け、部隊は分断されて少なからず死者も出ていただろう」

 

「フィンの言う通りだ。ケンマの筋書きはあまりにも有り得たかもしれない内容だ。しかし、これだけの情報があれば対策もできるはずだ」

 

「そうじゃな。先ずは、一番厄介な不治癒の呪詛かのう?」

 

 

俺の話を聞いて、フィンさん、リヴェリアさん、ガレスさんは不治癒の『呪詛』などの対策についた考え始める。

 

しかし、そこでとある女性冒険者から待ったの声が地下水路に響く。

 

 

「ちょっと待ってくれ!」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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