臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百三十七話

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「フィンさんたち大丈夫かな………」

 

「【勇者】の心配をするなんて、何かあったの?」

 

「相談なら聞くぞ」

 

 

地下水路でフィンさんたちに人造迷宮と待ち構えているであろう闇派閥が使ってくる可能性の高い不治癒の『呪詛』を説明したあと、俺はフィンさんの要望通りに【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院に向い、不治癒の呪詛に対抗するための道具を早急に【ロキ・ファミリア】へと提供するように図れないか試みた。

 

その試みは事態が事態なだけにアミッドさんも了承してくれて、数は少ないが少なくとも一つのパーティーに不治癒の呪詛に対抗する道具を二本は持たせることが出来た。

 

そして俺の役目はここまでだとフィンさんが告げられてしまい、俺自身もその指示に納得している部分や彼らと共に人造迷宮攻略へと乗り出せない理由があったので、それ以降は全て【ロキ・ファミリア】の皆さんに任せることにしたのだ。

 

そのことをヴィクトリアとアルテミスに打ち明けることにした。

 

 

「それが────」

 

「なるほどね。まさか、バベル以外にもダンジョンの入口があっただなんて………」

 

「ケンマは自分が知りうるだけの情報や対策をロキの子供たちに授けたのだろう。なら、問題ないんじゃないか?」

 

「人造迷宮はダンジョン以上に未知数な所が多いんだ。普通のダンジョンならギルドがそれなりに情報を持っている。けれど、人造迷宮の情報は闇派閥が独占している。あまりにもアドバンテージがあり過ぎる」

 

 

ダンジョンと人造迷宮の差は、今述べた通り情報量にある。ダンジョンは歴代の【ファミリア】や先人たちが発見、解明してきてくれたが人造迷宮はそれが皆無なのだ。なにより、人造迷宮のトラップはダイダロスの系譜または『ダイダロス・オーブ』を所持している者ならば自在に操ることが出来る。

 

ダンジョンのようなトラップの予兆がなく、不意にトラップを仕掛けられてそのまま殺られてしまう可能性だって大いにあり得る。

 

 

「はぁ、今更ながらに後悔してるみたいだな、俺」

 

「【勇者】たちに付いて行けばよかったと?」

 

「ああ、【ロキ・ファミリア】の皆に俺の隠している能力がバレようとも全力を出せば、それなりに戦えたかもしれない。そう考えちゃうんだよなぁ」

 

「だが、ロキの子供に止められた時は何の抵抗もなかったのだろう?」

 

「なかった。その時は俺もやることがあったからな」

 

「やること?」

 

 

俺の後悔を打ち明けながら、フィンさんに止められた際に抵抗しなかったことをアルテミスに指摘されて、その答えとしてやることがあると告げた。

 

 

「アルテミス的にはあまりヨロシクないだろうけど、このあと俺は歓楽街に行く必要があるんだ。新しい移籍してきたカサンドラのスキルで、ベルが蛙に食べられるという予知夢を見たらしい。それを俺は止めに行く」

 

「……あの雌の予知夢……確かにケンマの言う通り、処女神としてお前が歓楽街に行くなどヨロシクない!だが、お前が行かなければベルが危ないのだろう?ベルを助けなければ、ヘスティアも悲しむはずだ」

 

「悪いな。アルテミスには自分の心情と友情で板挟みして」

 

「こればかりは仕方のないことだろう。ただし、もしも本当に歓楽街でその………見知らぬ女を抱いたら、お前の眉間を私の矢で射貫いてやるからな!!」

 

「それは勘弁だな」

 

 

何処ぞのヘルメスのようにアルテミスの矢で射貫かれることは勘弁願いたいのと、童貞は本当に惚れた人で捨てたいと童貞丸出しの考えを俺は貫きたい思いがあるので、歓楽街で童貞を捨てるつもりはない。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

 

「自分で決めていたことだが、本当に来ることになるとは………」

 

 

万が一のことを考えて、それなりの金を持ってオラリオの南東部にある【イシュタル・ファミリア】が牛耳っている歓楽街の入口で俺はそう呟く。

 

男の俺からしたら一応、風俗とかにも興味はあった。しかし、日本の法律で十八歳以上でないと風俗店には入れないことになっており、尚且つ学生となると例え十八歳に達していても学校を卒業または退学していない者は校則で禁止されている。

 

前世では、校則に我慢出来ずに自主退学をした煩悩まみれの先輩の噂を校内で何度か耳にしたことがある。この世界に転生して早三ヶ月、例え前世の世界に戻ったとしても俺が所属していた高校からは、無断欠席による出席日数の不足または死亡による退学処分になっているので例の先輩とあまり変わらない気がしなくもない。

 

 

「まぁ、学校が嫌で自主退学してないだけ増しか………」

 

 

武装したアマゾネスが警備する石材で出来ているアーチ状のゲートを越えた先には、独特な匂いとアダルティーをこれでもかと象徴するようなピンクの街灯が煌びやかに輝いている。その光景はまるで、この世の欲望を詰め込んだような光景だった。

 

衣服の面積が極めて少ないアマゾネスを筆頭に、ケモ耳や尻尾を魅力とした獣人、小柄故の保護欲や幼さを魅力とした小人族、普通なら自らが認めた相手にしか肌を許さないはずのエルフ、アマゾネスと対称的に色白の肌をするヒューマン、何れの種族も前世ならば女優やアイドルや読者モデルとしてやっていけそうな程に顔面偏差値が高水準な娼婦たちの勧誘を躱しながら俺はベルを探し回る。

 

 

「居ねぇなぁ………アニメ通りなら何かしらのアクションが起きるもんだと思ってたんだがなぁ」

 

 

適当に歩いてみるがそれなりに広い歓楽街にベルの姿は見当たらないので、せっかく金を持っているので日本の京都のような作りである遊廓に居るであろう春姫に接触を試みてみようかと少し考える。

 

正直、できることならば歓楽街の建物の屋上に飛び乗って、高い所から遊廓の建物を探したいが下手な動きをすれば【イシュタル・ファミリア】の戦闘娼婦に目を付けられ兼ねない。

 

 

「一か八か、新しい発展アビリティに頼ってみるか」

 

 

取り敢えず広めな十字路の中心まで移動して、サイフから一枚のヴァリス金貨を取り出して、親指に乗せる。そして、親指でヴァリス金貨を弾く瞬間に戦意を高めて、そのまま弾く。

 

ヴァリス金貨には兜を被った男性の絵が彫られているので、弾いて落ちてた時にその男性の顔が向いている方へと進路を進めるというギャンブルめいた方法だが、何にも策がないのならばLV.3 になったことで発現した『可能性』のアビリティに賭けてみた方が良いのではないかという直感に任せることにした。

 

 

「顔の向きはあっちだな。よし、行くか」

 

 

『スキル』の効果で発展アビリティの評価値が三段階上がった『可能性』を信じて、ヴァリスを拾ってから金貨の男性の顔が向いた方へと足を進める。

 

足を進めた先は第二の案として考えていた京都のような作りである遊廓が聳えていた。どうやら『可能性』の発展アビリティは、俺を春姫と巡り合わせたいらしい。

 

 

「悪い、ベル。これも運命だ」

 

 

今頃、アイシャやフリュネを筆頭に戦闘娼婦に追いかけ回されているであろう親友に謝罪の言葉を呟きながら俺は意を決して、生まれて初めての娼館へと足を踏み入れる。

 

娼館に入ると煙管を咥えながら煌びやかな着物で身を包む美人のヒューマンが店番をしていた。彼女は俺に気付くと、くすりと笑みを浮かべながら声を掛けてきた。

 

 

「お兄さん、娼館は初めてかい?」

 

「あ、ああ………」

 

「ってことは、頑張って金を貯めて男になりに来たのかい。どんな娘が好みだい?」

 

「……る、狐人……金髪に翡翠の瞳をした春姫という名前の狐人を……」

 

「おや、あのヘッポコ狐を知っているのかい?」

 

「し、知り合いから勧められた」

 

「そうか。なら、○階の○○○部屋で金額は○○○○ヴァリスだよ」

 

「はい」

 

「毎度あり」

 

 

初めての娼館ということもあって、緊張しながらも何とか春姫がいる部屋の情報を聞き出すことが出来た。マジで『戦争遊戯』の時にクロエさんたちを使って賭けをしておいて、よかったぁ。

 

春姫との時間の値段がまさか、持って来ている所持金の殆どだとは思ってもみなかった。あれだけの金があれば、俺が使っている装備を新しく一新できると思いながらもヒロインキャラとのエンカウトと比べたらどちらを選ぶなど決まっていると思いながら、彼女の待つ部屋に向かう。

 

アニメでは何階の何の部屋なのかまでは明かされていなかった。劇中では、高さから二階以上の階で木製の廊下で無数の襖が張られているだけだったので、春姫に与えられた専用の部屋という描写はなかった。

 

ベルもアイシャたちに追いかけられていて、必死に逃げていた末、偶然にも春姫がいた部屋へと転がり込んだ形だったしな。

 

 

「ここで……いいん、だよな?」

 

 

誰に打ち明ける訳でもないが、俺は童貞だ。それ故に、この襖の先では夜伽をしようと待ち構えている推しヒロインの一人である春姫がいる。なので、アルテミスにはああ言ったが少なからず期待はしている。

 

そんな煩悩に頭を支配されそうになるが、俺の目標は春姫の救済だ。それを忘れて欲望のままに春姫を貪るのはあるまじき行いだと、内なる悪の自分を叱責する。

 

 

「よし、行くか」

 

 

意を決して、閉じられている襖に手を掛けて、部屋の中へと入って行く。襖を開けた先はもう一枚、襖があり、左右の襖の間からは魔石灯の燐光が漏れ出ていた。

 

最後の襖を開けるそこは和室になっており、畳の上で三つ指をついて、紅の着物を身に纏い、深々と頭を下げる狐人が待っていた。

 

間違いない、彼女がサンジョウノ・春姫だ。

 

 

「お待ちしておりました、旦那様」

 

「………」

 

「今宵、夜伽をさせて頂きます、春姫と申します」

 

「………石黒ケンマだ。早々で悪いが、俺はキミと夜伽をするためじゃなくて、話をするためにキミの時間を買わせてもらった」

 

「夜伽ではない?」

 

 

今夜、自分は買われたはずなのに夜伽ではなく話をするために買われたと聞いて、春姫も思わずといった形で顔を上げる。

 

嗚呼、やっぱりリアルで見る春姫も可愛いな。レフィーヤもレフィーヤで可愛いが、春姫のはレフィーヤとはまた別の可愛さだと思う。

 

 

「ヤマト・命、ヒグチ・千草……この二人の名前に聞き覚えはあるか?」

 

「ッ!!」

 

 

命と千草の名前を口にした途端、春姫の耳と尻尾がこれでもかと逆立つ。その反応だけでも、春姫が二人の知人であることがはっきりと分かる。

 

 

「二人の名前に反応したということは知り合いなんだな」

 

「………はい。故郷の知人でございます」

 

「二人はキミがこの歓楽街にいるという噂を聞いて、居場所を探ろうとしていた。ま、俺がキミと命たちの関係を知っていることを二人は知らないだろうけどな」

 

 

命と千草が春姫のことを探していることを伝えながら、俺は勝手に彼女と向かい合うように畳の上で胡座をかく。この畳草の筋に沿ってツルツルする感じや極たまにチクリとする感覚が何とも懐かしい。

 

 

「旦那様は、私の居場所をお二人にお伝えするために、今宵、私を買われたのですか?」

 

「それもあるけど、最初に言ったろう。キミと話してみたくて、キミの時間を買わせてもらったってさ。だから、色々と話をしよう」

 

 

それから俺たちは色々なことを話した。お互いの年齢を初めとした故郷や好きな食べ物、好きな趣味、お互いに最近あった出来事等、色々話した。

 

色々と話して次は何を話そうかと考えていると娼館の外が騒がしくなってきた。やれ、今話題の【リトル・ルーキー】が歓楽街が来ているだの。やれ、【リトル・ルーキー】を一番最初に捕まえたものは好きに出来るだの。殆どがベル関係である。

 

 

「やれやれ、ベルも大変だな」

 

「もしや、戦闘娼婦の皆様に追われているのはイシグロ様のお知り合いの方ですか?」

 

「ああ。【リトル・ルーキー】は俺の親友で相棒だ」

 

「まあ!では、お助けに行かれなければ……!?」

 

「いや、その心配はいらない。予知夢だと、あいつはここに来るみたいだからな」

 

「予知夢?」

 

「ウチの【ファミリア】に移籍してくれた奴に、予知夢を見る奴がいるんだ。だから、そいつの予知夢通りなら自ずとベルはここにやってくるから心配はいらない」

 

「イシグロ様がそう仰るのであれば……」

 

 

部屋の丸窓からでも見える歓楽街を躍起に行き交うアマゾネスたちを見下ろしながら俺は、ベルを心配する春姫に心配は無用であると諭す。

 

 

「そうだ!さっき、春姫は英雄譚が好きだって言ってたな。なら、俺が考えたちょっとした物語に興味ないか?」

 

「イシグロ様が考えた物語?」

 

「そう。何の才能も持たないただの平凡な青少年が突然二天龍と称されたヤバいドラゴンの魂と力が宿っていることが分かってから波瀾万丈とそれなりにエッチな冒険が繰り広げられる物語だ」

 

「………分かりました。私で良ければイシグロ様の物語をお聞かせください」

 

「ありがとうな、春姫」

 

 

多分、春姫は俺が今から語ろうとしている物語をただの空想あるいはその場の話を繋ぐために作り上げた物語だと、そう思っているだろう。まぁ、俺としてもそう勘違いしてくれると割かし助かったりするので空想ということにしておこう。

 

でも、何故か春姫には聞いて欲しかった。前世から俺が憧れて、この世界に転生する際に願った力の源である『ハイスクールD×D』という物語を。

 

見た目がケモ耳と尻尾を生やしたアーシアに似てるからか?

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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