臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百三十八話

 

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「一応言って置くけど、これはあくまでも俺の空想だからな。種族的な差別とかの意味はないからそのことだけは分かっていてくれ」

 

「はい、分かりました」

 

「それじゃあ、始めるぞ。その物語は太古の昔、神と悪魔、相反する者同士と『聖書の神』と呼ばれる神の子供である天使が邪な感情によって堕ちてしまった堕天使と呼ばれる種族の三種族が世界の覇権を求めて争っていた」

 

「神に悪魔、聖書の神様のお子様である天使様が邪な感情で堕ちてしまった堕天使でござますね」

 

「その三種族の争いには、俺たちヒューマンや亜人までもが協力した。しかし、そんな時、二天龍と称された赤と白の二匹の龍が三種族の戦争を巻き込んで大喧嘩を始めた」

 

「戦争中に大喧嘩ですか!?」

 

「ああ。それで当事者たちはいい迷惑だと激怒して、三種族を筆頭に種族の垣根を越えて、彼ら彼女らは二天龍の討伐に踏み切った。だが、二天龍はあまりにも強かった。それこそ、この世界の神々でいうところの『神の力』を使った聖書の神や神と対等に渡り合う四人の悪魔の王、魔王ですら命の危機に瀕するくらいにだ」

 

 

『神の力』を使えるはず神ですら大いに苦戦する二天龍の話に、春姫は空想の話から本当の物語を聞いているかのように驚いて片手で口を抑える。

 

 

「でも、長い戦いの末に三種族は二天龍を討伐することができた。そして、聖書の神は二天龍の亡骸や他にも黄金の獅子など様々なモノを使って作り上げた武具、神器と書いてセイクリッド・ギアと呼称される武具を聖書の神はあろうことかヒューマンの血が流れて産まれてくるでろう子供たちへ無差別にばら蒔いた」

 

「二天龍に黄金の獅子を使った武具をヒューマンに産まれてくる子供たちに!?なぜ、そのような物騒なものを?」

 

「聖書の神曰く、子供たちがより良い暮らしができるようにという思いかららしい。けれど、その思いは聖書の神の身勝手な押し付けだと後に分かることになってしまった」

 

「神の身勝手な押し付け………」

 

「二天龍を討伐したあとの三種族は、あまりにも戦力が激減、兵士も疲弊していて、このままで三種族共に共倒れだということで停戦をすることにした。それから月日はかなり流れて、とある町に二天龍の片割れである赤き龍の帝王ドライグ・ア・ゴッホの魂が封じ込められている籠手のような武具、ブーステッド・ギアを宿す以外に何の才能も持たずに女性の胸ばかりを日々追いかけるスケベな青少年こと、兵藤一誠と呼ばれる主人公の物語が始まっていく」

 

「ようやく主人公の登場なのですね」

 

 

プロローグように神、堕天使、悪魔の三大勢力による過去の戦争とその戦争に乱入した二天龍の話を終えて、これからイッセーの話を始めようとした所で俺たちが居る部屋の襖が開かれた。

 

開かれた襖の先には、息を乱しながら全力で逃げて来たことが見てわかる有り様のベルがそこに立っていた。

 

 

「よう、ベル。無事で何よりだ」

 

「え?ちょっ、え?は、ケンマ!?なんで、こんな所に居るのさ!?」

 

「カサンドラの予知夢でここに来れば、蛙から逃げて来たベルに会えるってあったのと、個人的に春姫と話をして見たかったから来た」

 

「えーっと、色々と聞きたいことがあるけど!取り敢えず、僕追われてるから少しだけでも良いから匿ってくれない!?」

 

 

藁にもすがる思いでベルがそう懇願してくるので、部屋の主である春姫に確認を取ることにした。

 

 

「春姫、構わないか?」

 

「え、ええ、イシグロ様が宜しければ」

 

「そんじゃあ、ベル。隣の部屋にでも隠れてろ」

 

「うん、ありが─────」

 

「別にそういうことをしてないから安心しろ」

 

 

布団が敷かれている部屋に隠れていろと促すと、ベルは隣の部屋にある布団に俺と春姫を見て、ここが娼館であることから俺が春姫とズッコンバッコンチョメチョメしたのだと勘違いしそうになった即座に否定してやる。

 

何が悲しくて、ダチに未だに自分は童貞です!と言わなきゃならんのだ。悔しいです!!

 

誰に説明する訳でもなく一人で内心そう思っていると、今度は部屋の入り口から春姫に声を掛ける娼婦たちの問い掛けが聞こえてきた。

 

 

「春姫、いるか!?」

 

「は、はい!只今、旦那様とお話中でございます!」

 

「なんだよ、客の相手をしてんのかよ。なら、ここにヒューマンのガキが来なかったか?見た目は白髪に赤い眼をした奴で、まるで兎みていなヒューマンのガキだ」

 

「いえ、旦那様以外にヒューマンの方は来られて居りませんし、旦那様の髪も瞳も、白でも赤でもありません」

 

「そんなに気になるなら自分の眼で確認したらどうだ?」

 

 

下手をしたらそのまま中へ入って来そうなので、ならばとこっちから部屋の外にいる娼婦へと向かうことにした。ベルのことを探しているからアマゾネスの戦闘娼婦だろう。

 

そして、襖を開けて俺の姿を見せてやると戦闘娼婦は別の意味で驚き出す。

 

 

「ヴァ、【刀剣の支配者】!? なんで、こんなところに………」

 

「なんでって、春姫を買ったからに決まってんだろう」

 

「そ、それもそうか。ちぇっ、春姫ってば良い玉の輿で羨ましい限りだぜ」

 

 

俺がここにいる理由を述べてやると、ベルを追いかけていたはずの戦闘娼婦は春姫が羨ましくて文句を垂れながらその場から去って行った。

 

この階から戦闘娼婦の姿が消えるのを確認してから襖を閉じて、部屋の中へと戻り、隣の部屋に隠れているベルに追っ手の戦闘娼婦は去って行ったことを知らせる。

 

 

「戦闘娼婦はもう行ったぞ、ベル」

 

「ほ、本当に行ったの?」

 

「ああ、それよりどうしてこうなったんだ?」

 

 

アニメで知ってはいるけど、念のため知らない振りをしておこう。

 

 

「それが、命さんが昨日の夜から変だったから尾行してきたんだ。そしたら、千草さんと一緒に歓楽街が来てて、僕らもそれを追ってたら僕だけヴェルフたちとはぐれて……それから【イシュタル・ファミリア】の戦闘娼婦の人たちに追いかけられて……」

 

「なるほどな。まぁ、なんにせよカサンドラの予知夢通りになった訳か」

 

「カサンドラさんの予知夢?一昨日、僕らのホームに来た時もカサンドラの予知夢で枕を取りに来たって言ってたね」

 

「まぁな。カサンドラ曰く、予知夢を見ると大体がその通りになるそうだ。多分、スキルか何かだろう。俺もまだカサンドラの【ステイタス】は確認してないし」

 

「【ステイタス】の確認ってことは………カサンドラさんはケンマの【ファミリア】に改宗したの!?」

 

「今日の朝にダフネと一緒にな。やっと一人じゃなくなったが男一人だと肩身が狭くなったと今になって少し後悔してる」

 

「あははは………」

 

 

自分から勧誘しておいて何を言ってると言われても仕方ないが、男の身としては俺以外が女性となると色々と気配りをしないといけない部分が目立ってくる。他にも近い内に新しい本拠地の候補を探さないといけない。いつまでカサンドラとダフネに宿で寝泊まりさせるのは金銭的にもよろしくない。

 

ベルに追ってがいなくなったことを伝えてから色々と話し込んでいると春姫から遠慮がちに声が掛かる。

  

 

「あの……イシグロ様、そちらの殿方は?」

 

「ああ、悪いな春姫。こいつがさっき俺が言ってた親友で相棒のベル・クラネルだ。【ヘスティア・ファミリア】所属の冒険者で、二つ名は【リトル・ルーキー】」

 

「は、初めまして、ベル・クラネルです」

 

「サンジョウノ・春姫と申します」

 

 

二人の自己紹介が終わった所で、さっきまで春姫に語っていた物語の続きを話すことにした。

 

 

「さて、ベルの所為で物語が途中だったな」

 

「物語?ケンマは何かの物語を春姫さんに話してたの?」

 

「ああ。俺の考えた空想の物語だけどな」

 

「へぇ、僕も気になるから一緒に聞いててもいいかな?」

 

「別にいいんじゃないか。春姫はどうだ?」

 

「私もクラネル様がご一緒でも構いませんよ」

 

「だってよ、ベル」

 

「ありがとうございます、春姫さん」

 

「いえ」

 

 

春姫の許可が降りたので、ベルを交えて今度こそ『ハイスクールD×D』の物語の続きを語る。

 

 

「さて、今回の物語の主人公である兵藤一誠は十七歳の男子であり、とある学舎に通う何の才能を持たない一般人だった。ただ、彼は常日頃からスケベを丸出しで可愛い女の子や美人な女性を見るたびに彼女たちの胸を揉みたい、吸いたいと性癖を暴露する変態だ」

 

「ちょっ、そんな変態が主人公なの!?」

 

「ああ。そんな主人公だが、何の奇跡が彼に告白する天野夕麻という美少女が現れた。周りから変態変態と嫌悪されていた自分に告白する美少女が現れるだなんて、夢または星の数ほどの確率でしかあり得ないと有頂天になってイッセーは夕麻の告白を受けた」

 

「あれ?それって、もうハッピーエンドじゃ?」

 

「いやいや、まだまだ序の口だ。夕麻と付き合って次の休みの日、初めてのデートをして夕陽に照らされる中、二人は噴水のある公園へのやってきた。そして、夕麻はイッセーへと振り返り、お願いがあると言ってからこう述べた」

 

 

これから夕麻がイッセーに言う台詞は何となく予想出来ていると言わんばかりにベルは苦笑いを、春姫は恋のワンシーンにソワソワとしている。

 

しかし、二人には悪いがこの天野夕麻は外見こそ美少女だが、性格は糞野郎なのである。

 

 

「死んでくれないかな?と………」

 

「は?」

 

「え?」

 

 

その一言に二人の表情は氷付く。

 

 

「まさかの言葉をかけられたイッセーは、聞き間違いだと思い、もう一度聞き直したが答えは同じだった。そして次の瞬間、腹部から背中にかけて何が貫通する感覚と激痛、口からは鮮血が吐き出された」

 

「嘘………」

 

「薄れ行く意識の中でイッセーは夕麻に問う「何故?」と、その問いに帰ってきたのはイッセーの彼女である天野夕麻という美少女は存在せずに、彼女の正体は聖書の神の僕である天使が邪な感情で堕ちた堕天使だった。女堕天使は、イッセーには自分たち堕天使にとって危険な力が宿っているから狙い、そんな物を宿らせた聖書の神を恨めてと残して、去って行ってしまった」

 

「そんな……そんな一方的な……」

 

「堕天使に……危険な力……もしかして、その主人公には聖書の神がお作りになった神器が?」

 

「セイクリッド・ギア?」

 

 

神器のことを何も知らず尚且つ今回の話のプロローグも聞いていないベルからしたら、神器とは一体何のか全く理解が追い付かないでいた。

 

 

「セイクリッド・ギアとは、聖書の神がヒューマンの血が流れて産まれてくる子供たちにばら蒔いた、様々な能力や機能を付与した武具のことだ。神が作った器と書いて、神器と読む。まぁ、俺たちでいうところの魔道具とでも思っておけばいいさ」

 

「魔道具……うん、取り敢えずわかった」

 

「イッセーには神器が何のことから分からないまま、女の子の胸を一回も揉めずに死んで行くことに後悔しながら血濡れた自分の手を見て、彼の脳裏には自分が通う学舎で二大お姉様と呼ばれる超絶美人の先輩の二人のうちの一人である血のような紅い髪を持つリアス・グレモリーという少女の姿を思い浮かべた」

 

「死に際に女の子の胸を揉めなかったことに後悔って、本当にその主人公はスケベなんだね」

 

 

死に際にも限らず女の胸を揉めなかったことに後悔するイッセーに、流石にベルも呆れていた。

 

 

「そんな時だった。デート中にもらったチラシを仕舞っていたポケットが輝き、イッセーを中心として赤い魔法陣が形成され、そこの魔法陣から先ほど彼が思い浮かべていたはずリアス・グレモリーが現れた」

 

「えっ、紙から人が!?」

 

「もしかして、そのチラシも魔道具なの?」

 

「ああ。チラシを持っている者が強く願うと魔法陣を紙に刻んだ術者を呼び出す魔法が仕込まれていたんだ。そして、呼び出されたリアスは虫の息のイッセーを見て、何かを感じた。それは堕天使と同じく神器の気配だった。それを感じたリアスは笑みを浮かべて、風前の灯火であるイッセーにとある魔道具を使用した」

 

「それはどのような魔導具なのですか?」

 

「例え死んでいたとしても肉体があれば一度だけ人間から悪魔へと転生させることの出来る、チェスの駒を模した超レアな魔道具で名前は悪魔の駒と書いてイービル・ピースと読む」

 

「死んだ人間を悪魔に転生させる魔導具!?」

 

「そんなものがあるのですか!?」

 

「あくまでも物語の中での話だからな」

 

 

『悪魔の駒』の話をした途端に、二人は前のめりに成りながら反応した。まぁ、この世界の住人からしたら肉体があれば死んだ人間を悪魔に転生させるといえど、一度だけでも生き返らせることの出来る魔導具があると知れば、誰でもが欲しくて血眼になって探すだろう。

 

それから時間が許されるまで俺は二人に、覚えている限りの『ハイスクールD×D』の物語を語った。物語の途中にブーステッド・ギアや『魔剣創造』、七本の《エクスカリバー》たち、《デュランダル》の名前が出てきて、ベルは何度も俺の顔を見ていたが全て無視してやった。だって、せっかく気分よく物語を語っているし、春姫も親切に聞き入ってくれているのに途中で止まることなんてしたくなかった。

 

そして、あっという間に刻限はやってきた。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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