臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第十四話

 

 

 

 

〈sideレフィーヤ〉

 

 

 

『相棒!?』

 

「ケンマくん!?」

 

「ケンマ!?」

 

 

私を突き飛ばして、守ろうとしてくれた名前も知らないヒューマンの冒険者が新種のモンスターの突撃を受けて、上空へと撥ね飛ばされて半壊している屋台へと落ちて行った。

 

それを認識した私は、激情に任せて今までにないほどの高速詠唱を唱え始める。

 

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】」

 

 

詠唱の最後の韻を唱え終わり、魔法が解放される前に魔力が収束したその時、最初と同じように魔力に反応して新種のモンスターは私に襲いかかってくるけど、心配はいない。

 

何故なら、アイズさん、ティオネさん、ティオナさん、仲間たちが守ってくれるからだ。

 

 

「レフィーヤ!」

 

「今よ!」

 

「やっちゃえ、レフィーヤ!」

 

「【アルクス・レイ】!!」

 

 

掌から放たれる一条の光の矢。絶対に逃れることの出来ない必中の矢が新種のモンスターに迫り、屠る。

 

新種のモンスターが完全に灰になるのを確認するよりも先に、私を庇って半壊していた屋台に落下したヒューマンの冒険者の安否確認をしに行く。屋台に近付いに連れて、誰かを呼ぶ男性の声が聞こえてくる。

 

けれど、人影が見当たらない。

 

 

『相棒! 起きろ、相棒!お前は、ここで終わる男じゃないだろう!? イッセーを超えて、歴代最強にして歴代最高の「赤龍帝」になるんじゃないのか!?』

 

「どうして籠手から声が?」

 

『おい、そこのエルフの小娘! 早く相棒を治療してくれ。そうじゃないと、相棒が……相棒が死んじまう。頼む!!』

 

「わ、わかりました」

 

 

目の前で虫の息になっている彼は、自分をLV.1 の駆け出し冒険者だと言っていた。それが本当なら、かなり危ない。それに、命の恩人に死んで欲しくない。

 

 

「【ウィーシェの名のもとに願う。森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ。繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ。至れ、妖精の輪。どうか─────力を貸して与えてほしい】」

 

「【エルフ・リング】」

 

 

私の魔法スロットには、彼を治療する回復魔法はない。けれど、それを覆す魔法が私にはある。同じエルフであれば、その人の魔法を使用できる反則的な魔法、それこそが【エルフ・リング】。

 

そして、ここから先は私が最も敬愛する王族妖精で、私の魔法のお師匠様でもあるリヴェリア様な回復魔法。それを唱えて、彼にかける。

 

 

『もう少しだ。あと、もう少しだけ持ち堪えてくれ、相棒!』

 

「【ヴァン・アルヘイム】!!」

 

 

リヴェリア様の魔法である【ヴァン・アルヘイム】のかけると先ほどまであった裂傷や打ち身などの怪我が治っていく。心なしか、呼吸もさっきよりも安定しているように見えるけど何があるかわからない。

 

 

『感謝するぞ、エルフの小娘よ。お前がいなければ、相棒はあのまま死んでいた』

 

「いえ、私も彼には命を助けられましたから………。それで、あなたは籠手から何かしらの魔道具か何かで私たちを見ながら喋っているのでしょうか?」

 

『まぁ、そんなところだ。あとはお前たちに任せる。相棒を頼むぞ』

 

「は、はぁ………」

 

 

それを最後に、男性の声は完全に途絶えてしまった。

 

 

「レフィーヤ! ケンマは?!」

 

「アイズさん! 今、リヴェリア様の回復魔法をかけたところです。何とか呼吸は安定しているように見ますが、どうなるかわかりません」

 

「わかった。助けてくれて、ありがとう」

 

「いいえ。ところで、アイズさんはこの人とは、お知り合いなんですか?」

 

「うん。前の遠征で、17階層で逃がしちゃったミノタウロスの被害者の一人」

 

「じゃあ、本当にこの人はLV.1 の駆け出しだったんだ!?」

 

 

アイズさんから聞くまでは半信半疑だった。けれど、アイズさんが嘘を付くわけがないから本当にこの人はLV.1 の駆け出し冒険者。なら、どうやってあれだけ魔力をLV.1 が出したのだろうか?

 

ティオナさんやティオネさんが苦戦するような新種のモンスターを魔法で倒して見せた。普通のLV.1 ではあり得ない。どうやって、あれだけの魔力を出したのかを色々と考えていると我が主神であるロキがやってきた。

 

 

「アイズー、レフィーヤー!」

 

「あっ、ロキ」

 

「どうないし…………って、ケンマやないか! なにがあったんや!?」

 

 

取り敢えず、ティオネさんとティオナも交えて、ロキに事のあらましを説明する。

 

 

「そないなことがあったんか………。こりゃ、飲み食いして金を落とすだけじゃ、ヴィクトリアに許してもらえんかもしれへんな」

 

「どういうこと、ロキ」

 

 

ロキの言葉に疑問を抱いたティオナさんは、ロキに訪ねる。

 

 

「ケンマは、うちらが前の遠征で逃がしたミノタウロス被害者のうちの一人やねん。ケンマともう一人、その子らがギルドへ何も言わんといてくれてるからうちらに何の罰則も来てへんのや」

 

「そういうことね」

 

「取り敢えず、レフィーヤとケンマをうちの本拠に連れて戻って、万能薬を飲ましたり。ティオナとティオネはちょっと地下の方へ、行ってもらってええ? まだ何かある気がするわ」

 

「はいはい、任されたわ」

 

「レフィーヤ、一人で大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ。それに彼は、私の命の恩人ですから」

 

「なら、頑張ってね」

 

 

ロキの指示で、ティオネさんとティオナさんはオラリオの地下に向かった。私もロキの指示通り、目を覚まさないケンマというヒューマンを背負って、本拠である『黄昏の館』へと連れて行こうとするのですが男性だからなのか身長が私よりもでかい。

 

けれど、運べない訳ではない。何とか彼を背負って『黄昏の館』に帰ってきた私は、団長とリヴェリア様、ガレスさんにロキに説明したのと同じように事のあらましを伝えた。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

「ん、んん……ここは……?」

 

 

目が覚めると見覚えが全くない部屋だった。取り敢えず、動こうとすると身体中に鈍い痛みが駆け巡る。その痛みで、今まで何があったのか思い出した。

 

 

「そうか、レフィーヤを庇ったあと意識が飛んだのか、俺………」

 

 

そう一人で呟くと、左手の甲に緑色の宝玉が現れて、そこからドライグの声が聞こえきた。

 

 

『ようやく、目が覚めたか相棒』

 

「おう、ドライグ。ところで、ここは何処なんだ?」

 

『【ロキ・ファミリア】の根城だ。エルフの小娘を庇ったあと、お前さんは生死の境を彷徨っていた。流石に俺も焦ったぞ』

 

「悪い悪い、何か身体が無意識に動いてさ………」

 

『そんなところはイッセーに似ているな』

 

「それはちょっと嬉しいかも。んで、生死の境を彷徨っていたあとは?」

 

『ああ、エルフの小娘が施してくれた回復魔法で何とか一命を取り留めて、ロキのお陰で今に至る感じだ』

 

「なるほどね…………」

 

 

ドライグから聞いた限りだと、レフィーヤの使った回復魔法は多分リヴェリアの魔法だろう。レフィーヤの魔法スロットの中には回復魔法はない。その代わりに同じエルフの魔法なら使える【魔法召還】という魔法がある。

 

それで、リヴェリアの魔法を俺に使ってくれたのだろう。正直、カッコ悪ぃ。あれだけ発破をかけて置きながら最終的には逆に助けてられてるじゃんか。ダサいにも程がある。

 

一人で、落ち込んでいると部屋のドアがノックされて、誰かが入ってくる。

 

 

「あっ、目が覚めたみたいすっね。良かった」

 

「【超凡人】ラウル・ノールド」

 

「おっ、自分のこと知ってるんすね」

 

「ええ、まあ」

 

「その様子だと、まだ動けないみたいすっね。今、高等回復薬を飲ませるから待ってるっす」

 

 

そう言って、ラウルさんは慣れた手つきで俺の背中を支えながら起こしてくれて、ゆっくりと高等回復薬を飲ませてくれた。お陰で大分身体の痛みが引いて、一人で動けるくらいには回復した。

 

 

「ありがとうございます。俺、【ヴィクトリア・ファミリア】所属で、LV.1 の石黒ケンマっていいます。ケンマが名前で、石黒から名字です」

 

「ご存知の通り、ラウル・ノールドっす。イシグロくん、もう動けるようなら団長が呼んでるっす」

 

「えっ、【勇者】フィン・ディムナが!?」

 

 

ここが【ロキ・ファミリア】のホームである『黄昏の館』で、次期団長候補のラウルさんが来たってことで何があると思っていたが、まさか【勇者】フィン・ディムナに呼び出されるのは予想外と思ったところで、考えが一変。

 

呼び出される要因が次第に、頭の中にポコポコと浮かび上がってくる。疑似的な【月牙天衝】、ティオナとティオネに与えた『魔剣創造』で創造した魔剣たち、レフィーヤを庇ったあとに使用した《擬態の聖剣》で大楯に擬態させた《エクス・デュランダル》。特に一番最後は、この部屋に《エクス・デュランダル》がないことからフィン・ディムナの手元にあると思って間違いないだろう。

 

色々とバレたらヤバいやつしか、晒してないじゃんか!?

 

 

「大丈夫すか? 何かめちゃくちゃ汗が流れてるっすけど」

 

「多分、大丈夫じゃないです。八割方で主神に怒られます」

 

「マジでヤバいじゃないっすか!?」

 

 

最早、怒らないことは諦めながらラウルさんの手を借りて【ロキ・ファミリア】の団長室へとやってきた。

 

 

「団長、イシグロくんを連れて来たっす!」

 

「入ってくれ」

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

 

団長室に入ると、そこには【ロキ・ファミリア】の主神ロキ、団長の【勇者】フィン・ディムナ、副団長の【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アールヴ、【重傑】ガレス・ランドロック、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン、【怒蛇】ティオナ・ヒリュテ、【大切断】ティオネ・ヒリュテ、【千の妖精】レフィーヤ・ウィリディス。そして、我が主神であるヴィクトリアが集まっていた。

 

この面子からするに、『怪物祭』で起きた事件の当事者とその主神の集まりと言ったところだろう。これは、下手なことは言わないように注意が必要だなと覚悟を決めると、フィンさんがラウルさんに俺をソファーに座らせるように促す。

 

 

「それじゃあ、まずは自己紹介からしようか。僕は、この【ロキ・ファミリア】の団長を勤めているフィン・ディムナだ。団員の命を助けてくれて、ありがとう」

 

「同じく、副団長を勤めているリヴェリア・リヨス・アールヴだ。此度は、我が弟子を助けてもらい感謝する」

 

「同じく、ガレス・ランドロックじゃあ」

 

「知ってると思うけど、アイズ・ヴァレンシュタイン。アイズでいいよ」

 

「私は、ティオネ・ヒリュテよ。この子の双子の姉よ。ティオネで構わないわ」

 

「あたしは、ティオナ・ヒリュテだよ。あたしもティオナでいいからね。よろしく」

 

「レフィーヤ・ウィリディスです。先ほどは助けていただいて、ありがとうございます。レフィーヤで構いません」

 

「んで、うちが主神のロキや。よろしゅうな」

 

 

【ロキ・ファミリア】の自己紹介が終わったところで、今度は俺たちの番だ。

 

 

「【ヴィクトリア・ファミリア】所属の石黒ケンマです。ケンマが名前で、石黒が名字です。あと回復魔法と高等回復薬、ありがとうございます」

 

「主神のヴィクトリアよ。ケンマを助けてくれて、ありがとう」

 

 

各々の自己紹介が終わったところで、フィンさんが本題へ切り出した。

 

 

「それじゃあ、本題に入ろう。イシグロ・ケンマ、キミは今回の新種モンスターについて何か知っているかい?」

 

 

いきなり確信をついて来たな。どう答えたものか、神の前では嘘は通じない。ならば、一層のことバカ正直に答えてしまうか。

 

 

「正直、知ってはいます。ただし、最初に言っておきます。俺もヴィクトリアも闇派閥ではないということ」

 

「ロキ」

 

「嘘やない」

 

 

初手から俺たちが闇派閥でないことを説明したのは正解だった。これを言うのと言わないとでは信頼度が大いに変わってくる。

 

 

「続けてくれ、イシグロ・ケンマ」

 

「あの新種モンスターは、他の新種のモンスターから産まれたモンスターで今もダンジョンの中で大量に産み出されているはずです。そして、俺の記憶が正しければ闇派閥で『27階層の悪夢』で死んだとされている者がいたはずです」

 

「その者の名前は?」

 

「すみません。俺も一度見た限りで、記憶が朧気です」

 

「ロキ」

 

「嘘やない」

 

「そうか…………では、なぜキミはそこまで詳しい情報を持っているんだい? アイズとレフィーヤから聞いた限りでは、キミはLV.1 の駆け出し冒険者だときいているが」

 

 

あー、やっぱりそこに行き着きますよね。ここまで話したら話さない訳には行かないよな。ごめん、ヴィクトリア。だから、呆れた顔を向けるなよ。できるだけ人間は減らすように努力するからさ。

 

 

「それを話すに当たって、フィンさん、リヴェリアさん、ガレスさん、神ロキ。そして、ヴィクトリアだけで話がしたいです」

 

「何故、ティオネたちには話せないんだい?」

 

「アイズの秘密に少し触れると言えば、わかってもらえますか?」

 

 

その発言で、空気が一変する。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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