臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百四十話

 

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

ダイダロス通りからホームに帰り、約一時間ほど軽い仮眠を取ってからいつも通りに『豊饒の女主人』で今日の鍛練相手であるミアさんに惨敗したあと、迎えに来たカサンドラとダフネと共に連携の練習をするために14階層へと赴いている。

 

 

「フッ!」

 

「はっ!」

 

「やあああッ!」

 

 

俺は片手剣とテーブルナイフ、ダフネはエストックと思われる刀身が細剣のように細い剣と鞭、カサンドラは普段治癒師として杖を使うが後衛として弓矢も使えるようだ。

 

更に全員が上級冒険者ということもあって、14階層程度のモンスターならば手こずることもなく余裕を持って対処出来ている。

 

 

「即興にしては問題なく連携が取れてるな」

 

「それは団長のキミが積極的にモンスターのヘイトを集めてくれているからだよ」

 

「ダフネちゃんの言う通りだと思います。私も矢で射るのが楽でしたから」

 

「それはよかった。何分、ベルたち以外とパーティーを組んだことが殆どなかったから上手くやれるか心配だった」

 

 

なんせ、今日が【ヴィクトリア・ファミリア】のみでの初めてのダンジョン探索なのだ。ヴェルフがパーティーに加わった時のように中層へ来るまでの道中で軽い連携練習はしていた。その甲斐もあってか、さっきも述べた通り問題なく連携が取れている。

 

取り敢えず、一番の課題であった連携の問題は大丈夫。次は、二人に俺の隠している力について教えて置かないとベルたち【ヘスティア・ファミリア】と合同で探索や遠征した際に毎回驚かれては、リリ辺りに事前に話していないのかと文句を言われそうだ。

 

 

「団長、今日の目的はこの階層の食料庫で団長の秘密をウチらに教えるで、いいんだよね?」

 

「ああ。駆け出しの時から長い付き合いの【ヘスティア・ファミリア】には教えてはあるが、一部を除いた他所の【ファミリア】に俺の秘密がバレるのはまだ避けたい」

 

「一体、どんな秘密なんですか?」

 

「それは無事に食料庫についてからのお楽しみだ。俺の秘密を知ったら、二人は絶対に驚くと自信を持って言っておく」

 

「【ロキ・ファミリア】との繋がりがある以上に、驚くことなんて滅多にないと思うけどね、ウチは」

 

「でも、前の団長様を圧倒してたケンマさんなら本当にありえるかも」

 

 

モンスターの魔石を回収しながら会話で二人が呼ぶ俺の呼び方だが、ダフネは団長と呼び、カサンドラはケンマさんと呼ぶようにそれぞれ好きな呼び方をさせている。一応、ダフネにはもう一度好きな呼び方でいいと言ったのたが「団長なんだから団長呼びでいいでしょう」と押し切られてしまった。

 

そんなこともあったが無事に14階層の食料庫まであと一歩という所までたどり着いたのだが、イレギュラーに出くわしてしまったようだ。

 

 

「ライガーファングが七体!?」

 

「15階層から上がってきたにしても数が多すぎる!?団長、ここは撤退をッ!!」

 

「大丈夫だ、ダフネ。これくらいなら殺れる。二人とも絶対に俺の後ろから離れるなよ。下手に離れるとお前たちを巻き込みかねないからな」

 

「巻き込みかねないって、どういう───」

 

『ガァアアアアアア!!』

 

 

ダフネが言い終わる前に、前世でいう所のホワイトタイガーに似た白い身体と鬣を持ったライオンのようなモンスターが俺たちに向かって疾走する。

 

しかし、それよりも先に俺は解号を口にして、久しぶりに《千本桜》を使用する。

 

 

「散れ、千本桜」

 

『───────』

 

「なっ、今なにが………!?」

 

「これは、どういう……!?」

 

 

俺たちに向かって疾走して、飛び掛かってきていたはずの『ライガーファング』が突如として空中でバラバラになって、魔石だけを残して灰へと消えた。その光景にダフネとカサンドラは驚愕のあまり理解が追い付けていないようだ。

 

なので、解説をしてやることにした。

 

 

「これが俺の隠していた秘密の一つで、魔剣創造と書いてソード・バースと読む。こいつは俺がイメージする魔剣を体力が続く限り無尽蔵に、あらゆる魔剣を生み出せる能力だ」

 

「魔剣を無尽蔵に!?」

 

「じゃ、じゃあこれも魔剣なんですか!?」

 

「そうだ。こいつは刀身を極東に咲く桜の花弁にして、約千枚の小さな刃で敵をズタズタに切り裂く能力の魔剣だ。他には、斬り付けた対象の重量を二倍にしたり、刀身が鞭のようにしなりながら伸び縮みする魔剣なんかも生み出せる」

 

 

呑気に二人へ『魔剣創造』の解説をしながらもライガーファングの群れを屠り、更に他のモンスターたちも順調に屠り去っていく。

 

あまりにも一方的な光景に二人とも未だに驚愕したままだが、そんな時、ふとカサンドラが何かを思い出したのかこんなことを尋ねてくる。

 

 

「あの、ケンマさん。もしもこれを私たちの戦争遊戯に使ってたら………」

 

「まぁ、俺一人でも完封出来たろうな」

 

「はぁ………ウチらは知らず知らずに虎の尾を踏んだのね」

 

「そこはドラゴンの逆鱗に触れたで頼む」

 

 

そんな呑気な会話をしている内に粗方モンスターたちを討伐したので、ゆっくりと魔石の回収を行うことにした。

 

 

「二人とも悪いけど魔石の回収を頼めるか?千本桜はかなりの集中力を必要とするから手が離せなくてな」

 

「そういうことなら任せて。団長が次々に桜の魔剣でモンスターを仕止めてくれるから楽でいいよ」

 

「私も安心して魔石を回収できます」

 

「そう言って貰えると助かる」

 

 

二人が魔石やドロップアイテムを回収している間、俺は次々とやってくるモンスターを二人に近付けさせないように注意を払いながらどんどん倒していく。

 

しばらくそれを続けているとダフネから声が掛かった。

 

 

「団長、これ以上は帰りに拾う魔石やドロップアイテムも入らなくなるから地上に戻ろう」

 

「わかった」

 

 

やっぱり、ダフネを副団長として採用してよかった。《千本桜》を使っていると花弁の維持とモンスターへの注意で他の団員の行動管理などが疎かになってしまう。なので、こういう時に俺の代わりに団員に指示を出せる者がいると大いに助かる。

 

まぁ、団員と言っても今はダフネとカサンドラしか居ないからそこまで苦労することはないんだけど、《千本桜》によってあまり苦労することなく二人分の大型バックパックが目一杯に魔石とドロップアイテムが手に入って二人ともホクホク顔だ。

 

そんな二人を眺めながら俺は、地上までの帰りの道中で鍛練の一環である禁手による精神力を消費して、『超回復』の評価値を上げる鍛練を行う。

 

 

「卍解・天鎖斬月」

 

「団長、その変身もさっき言ってた魔剣創造ってやつの能力なの?」

 

「当たりだ。こいつは通常の能力と違って、俺たち冒険者でいう所の一時的な【ランクアップ】に近い能力だな」

 

「「一時的な【ランクアップ】!?」」

 

「正確には、基本アビリティをそのままに二段階【ランクアップ】しているみたいなんだが、その反面この姿になると膨大な体力と精神力を消費するんだ。あと、この姿になる技を習得するには身体的または精神的に劇的な変化がないと習得できない」

 

「劇的な変化って、ケンマさんはどんな劇的な変化でそれを身に付けたんですか?」

 

「それはなぁ『誰かを守るために斬る覚悟』、これが俺の中での劇的な変化だな」

 

「そんなことで、団長はその力を手に入れたの!?」

 

「そんなことで、って言うが俺はこう見えて臆病なんだぜ?」

 

「「えっ?」」

 

 

俺が自分は臆病だと言うと、二人は信じられないような眼差しで見つめてくる。今までの戦いで二人に映っていた俺は、かなり度胸がある冒険者に見えていたのだろう。これはレフィーヤやラウルさんの時と似ている。

 

 

「嘘じゃないぞ。俺は元々、誰かを傷付けることも誰かに傷付けられることも怖がってた臆病者だったんだ」

 

「だった、ってことは今は違うの?」

 

「ああ。とある冒険者依頼で誰かを犠牲にしきゃな誰一人として助からない状況に陥ってな。その時に、パーティーメンバーの女性冒険者に涙を流させながら自分を犠牲して、他のみんなは助かってくれと言わせてしまったことがあった」

 

 

俺は、もう半月も前のアルテミスの冒険者依頼を思い出しながら二人に語る。

 

 

「その時、誰かが犠牲になるなら俺が何とかしてやる!って無茶なことをして何とかなったけど、もしもそこでその女性冒険者を犠牲にしてたら、あとで絶対に後悔してたと思う。だから、今も誰かが犠牲になるような終わりじゃなくて、誰も犠牲にならずに皆が笑顔で終われるように強くなろうとしている最中だ」

 

「ケンマさんはまるで、英雄譚の『英雄』みたいですね」

 

「ウチには、自分よりも誰かが犠牲にならないようにしている無謀で自己犠牲な男に感じるけどね」

 

「あははは、ダフネは手厳しいな」

 

 

確かにダフネの言い分も分からなくもない。絶対に誰の犠牲も出さないなんて状況が常にある訳じゃない。必ずいつかは誰かを犠牲にしなきゃならない状況がやってくる。

 

そんな時、誰かを犠牲にするくらいなら俺が何とかしてやるなんて、明確な方法がなければ無謀で自己犠牲の奴だと思われて仕方がない。あの時だって、『次元の狭間』を開けるなんてのはあまりにも無謀だったと今なら思える。

 

でも、やっぱり誰かを犠牲にしたトゥルーエンドより誰も犠牲にしない笑顔で終われるハッピーエンドの方が、ふとした時に懐かしい思い出として語れるからその方が俺は良いと思うからこの考えを変えるつもりはない。

 

なんせ、俺は今代の『赤龍帝』なのだから。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

魔石とドロップアイテムの回収を限界まで行って14階層の食料庫から地上へと戻り、バベルで魔石とドロップアイテムを換金してからカサンドラとダフネの二人と今日の収入成果を三等分したあと、俺は一度ホームに戻って『ゴライアスの硬皮』を持ってヴェルフに新しいブーツの発注依頼をするため【ヘスティア・ファミリア】の本拠地へと赴いた。

 

そして、ヴェルフを呼んでもらうと何故か命が血相を変えて、俺の肩を掴んで突撃してきた。

 

 

「ケンマ殿!は、春姫殿を………サンジョウノ・春姫殿を知っておられますか!?」

 

「ちょっ、命落ち着け!」

 

「どうなんですか、答えてください!ベル殿から昨晩、ケンマ殿が春姫殿を遊廓で買ったと!!」

 

「あの、お喋り兎めぇえええ!」

 

 

親友の嘘をつけずにベラベラと喋ってしまう単純さ苛立ちを覚えながらも何とか命を落ち着けさせて、『ゴライアスの硬皮』をヴェルフに渡すことが出来た。

 

そして、一息付いたところで『竈火の館』の中にで春姫の話を命とすることにした。

 

 

「んで、春姫のことだっけ?」

 

「はい!そうです!」

 

「何が聞きたいんだ。俺が知ってるのは、ベルが知ってるのとそんなに変わらないぞ」

 

「それでも構いません!どうして、あの方は娼婦なんかに………」

 

「俺たちの【ファミリア】のこともあるからどうやって春姫を探し当てたのかは省かせてもらうが、春姫が娼婦になったのは父親に勘当されたかららしい。これは俺の憶測に過ぎないが、神事を任されているサンジョウノ家として春姫は何か父親の機嫌または御家としての尊厳を損なうように嵌められて勘当されたんだと思う」

 

「そ、そんな………あの御家には春姫殿以外に跡取りは……」

 

「言い方が悪いがサンジョウノ家の現当主は後妻を作るつもりなんだろう。春姫が駄目なら新しく作ればいい、そうすれば神事でやらかした春姫はお役御免。それが貴族というものさ」

 

 

どのアニメやラノベでもそうだ。貴族というのは総じて、いらない子供や後継者に向いていない我が子は殺すか捨てるまたは女の子であれば、御家同士の交渉材料として御家のため使うというのが俺の中でのイメージだ。そして、春姫はグレーゾーンの捨てるに該当する。

 

 

「これも俺の憶測だが、春姫は【イシュタル・ファミリア】の黒い話に巻き込まれている」

 

「黒い話とは、一体………」

 

「そこまでは分からないが、俺が彼女を身請けすると言った時に涙を流したあと何かを悟るような眼をしていた。あれはまるで、自分の死を理解しているようなそんな眼だった」

 

「自分の死期を………?」

 

「俺の勘違いならいいんだが、あまりにも情報が少な過ぎて判断がつかない。もしも、春姫を助けるなら俺に教えてくれ。【ヘスティア・ファミリア】が動けなくても俺たちなら動けるかしれない」

 

「ケンマ殿は、春姫殿のためにそこまで………」

 

「んー、気に入ったってのもあるけど、目の前で涙を流して胸の中で救いを求めてるのに、そいつに手を伸ばさなかった絶対に後悔するかさ」

 

「手を伸ばさなかった絶対に後悔する」

 

「何より、俺は───希望の赤龍帝だからな」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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