臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百四十五話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「よし、ここまで来ればいいだろう」

 

 

追手の戦闘娼婦たちからある程度距離を稼いで、身を隠せそうな場所でベルと命を離してやり、俺は自分の息を整える。

 

すると、俺から解放された命は、これから俺が何をしようとしているのか分かり切っていることを俺に尋ねてくる。

 

 

「ケンマ殿、本当にこのあと、【イシュタル・ファミリア】に乗り込むつもりなのですか?」

 

「当たり前だろう。春姫にもそう約束したし」

 

「では、自分も!」

 

 

当たり前のことを返答してやると、命も一緒に【イシュタル・ファミリア】へと乗り込むと言い出した。

 

しかし、それは許されないことであると冷静に命を諭す。

 

 

「駄目に決まってんだろう。これは俺と【イシュタル・ファミリア】の戦争だ。他派閥であるお前を巻き込める訳ないだろう」

 

「ですが!?」

 

「今は俺のことよりも、自分の所の団長の心配をしてやれ。それからでも遅くはないはずだ」

 

 

そう言いながら俺の視線は悔しい顔をしながら俯いたままのベルを見下ろしていた。

 

ベルの反応は正しい。アニメ知識がなければ、俺も大派閥である【イシュタル・ファミリア】と正面切って戦争するのは怖いし、団員であるカサンドラとダフネ、主神であるヴィクトリアに迷惑を掛けるからと躊躇するだろう。

 

でも、俺は知っている。今夜、あの【フレイヤ・ファミリア】が歓楽街で【イシュタル・ファミリア】を滅ぼしに来ることを。最悪、来ないのであれば『殺生石』の儀式を止めてから【イシュタル・ファミリア】の団長であるフリュネを倒せば、何とかなるのではないかと漠然的なことを思っていたりする。

 

 

「もしも歓楽街から出るなら、俺が春姫と一緒に戻るまでヴィクトリアたちのことを頼む。でないと、あいつが心配で戦争に集中出来ないからな」

 

「ケンマ殿……」

 

「後は任せた」

 

 

あまり得意な方ではないが、あちらこちらにいるアマゾネスや非戦闘員の娼婦たちのあらやる人目から避けるように心掛けながら動き周り、あと少しで【イシュタル・ファミリア】の本拠地の宮殿付近まで来たら、一度物陰に隠れてそこで休息を取る。

 

ぶっちゃけると何の準備も無しに【イシュタル・ファミリア】と正面切って戦争するのは分が悪いことは分かっている。なので、今回だけは自分で定めたあの四つのルールの抜け道を使うことにした。

 

 

「エクス・デュランダルにはルールを作ったが、エクスカリバーにはルールを作ってないからルール違反ではないだろう」

 

 

そう一人でごちりながら異空間から《真のエクスカリバー》を引き抜いて、手順を決める。

 

まずは、宮殿に侵入するために魔法で目眩ましまたは入り口の門番の撃退。それから《透明の聖剣》で姿を消して、回復薬などの道具を頂いて、春姫がいるであろう天空庭園を目指す。

 

ざっと、脳内でこれからやる手順をしっかりと決めてから震える手に力を入れて抑え、深く深呼吸をしてから己に活を入れる。

 

 

「さぁ、ショータイムだ!」

 

 

某指輪の魔法使いの台詞を口にしながら一気に動き出して、《真のエクスカリバー》を《擬態の聖剣》の能力で某指輪の魔法使いが愛用している剣と銃が混合一体となっている《ウィザーソードガン》のガンモードに擬態させる。

 

そして【イシュタル・ファミリア】の宮殿前で待ち構えている戦闘娼婦に向かって、《ウィザーソードガン》の引き金を引くと銃口から聖なるオーラで形成された九つの青白い龍が宮殿に放たれる。

 

 

「シューティングストライク!!」

 

 

突然の襲撃と未知の攻撃によって本拠地で待ち構えていた戦闘娼婦たちは目を開きながら青白い九つの龍によって吹き飛ばされ、宮殿の入り口にも大きな穴が出来上がる。

 

その大きな穴が出来上がる際に生じた大爆発で内部に居る他の戦闘娼婦たちに襲撃がバレてしまうがそれは想定内。なので、構わず内部へと突入していく。

 

 

「敵襲!」

 

「相手は一人だ!」

 

 

内部に侵入すると、これでもかとぞろぞろと戦闘娼婦たちが沸いてくるのだが、《ウィザーソードガン》のガンモードという射撃武器を装備している今は【月光の傾慕】によって発現する『狙撃者』の発展アビリティのお陰で、射撃による攻撃に補正が入るため、連続で引き金を引いて、聖なるオーラを戦闘娼婦たちに向けて撃つ。

 

因みに、聖なるオーラを弾丸として使っている所為か、『ハイスクールD×D』のフリード・セルゼンが使っていた祓魔の銃と同様に、撃つ時に生じるマズルフラッシュや発砲音などは全くしないので、いつ撃たれたか分からない仕様になっている。

 

加えて、聖なるオーラの弾丸は《支配の聖剣》の能力で基本的に狙った相手に当たるよう軌道を操作しているので、弾丸の種類こそ異なるがまんま某指輪の魔法使いのように、標的への追尾機能があるのだ。

 

 

「この使い方は使い勝手が良いなぁ。今度から聖剣創造と一緒に使おうかな」

 

 

あまりにも今の《真のエクスカリバー》の使い勝手が良すぎるので、椿さんから回収したあとの《エクス・デュランダル》とも併用することで、聖なるオーラを高めながら近接と遠距離の両方の戦い方が出来ると俺の中で高評価が生まれていた。

 

今後の戦い方のヒントに一人で喜んでいると、お代わりの戦闘娼婦が沸いてきたので即座に意識を切り替える。

 

 

「居たよ、あいつだ!」

 

「はああああ!!」

 

「せやあああ!!」

 

「敵の武器の種類を確認しない、ましてや射撃武器に対して何の対策も無しに飛び掛かってくるとか愚策だろう」

 

 

新たに沸いて出てきた戦闘娼婦の何人かが二階から手摺を踏み台にして飛び掛かってくるので、飛んで火に入る夏の虫の如く空中にいる間に聖なるオーラを乱射、そのまま聖なるオーラによって来た道を遡るようにして吹き飛ぶ。

 

 

「「「きゃあああっ!?」」」

 

「「「ぐああああっ!?」」」

 

「あの六人が瞬殺!?」

 

「な、なんだあの武器は!?」

 

 

おや?この世界にはまだ銃が存在しないのか?バリスタは存在するのだからてっきり銃も存在しているとばかり思っていたが、これは嬉しい誤算だ。まぁ、偶々知らなかっただけかまだ普及していないだけという可能性もあり得るので下手に喜ぶのは止して置こう。

 

嬉しい誤算に喜ぶのもそこそこに沸いて出てきた残りの戦闘娼婦にも、聖なるオーラを乱射して気絶させてから二階に上がり、まずは回復薬などが保管されている部屋を目指す。

 

 

「現実で道具の現地調達とか、面倒のレベルがゲームと比べものにならないな!」

 

 

ゲームでは現地調達系ミッションは何度かしたし、自分でも縛りプレイの一環でやったことがあるがこうして自分の身になってやるとなると面倒と難易度が格段に跳ね上がる。それが敵拠点でとなればダンチだ。

 

道も分からず、取り敢えずひたすらに上への階段を目指していると大きく吹き抜けた広間へと出た。その吹き抜けから上を覗いて、この宮殿が一体何階建てなのかを確認しようと手摺から頭を出すと斜め上から弓矢を持った戦闘娼婦たちが矢を放ってきた。

 

 

「あそこに居たぞ、三階だ!弓部隊、射て!」

 

「ヤバッ!?」

 

 

吹き抜けに頭を出すという藪蛇なことをしたせいで上階にいた戦闘娼婦に見つかり、即座に頭を引っ込めると頭を出していた手摺部分に何本もの矢がドスドスッと突き立つ。

 

弓に次の矢を番えるには僅かに手間が掛かる。けれど、《ウィザーソードガン》を使っている俺はその限りではないため、即座に聖なるオーラを込めてから照準を弓兵たちがいる上階に合わせて引き金を引いて、青白い龍たちを襲い掛からせる。

 

 

「そろそろ、この技の名前も考えないとな」

 

 

【九頭龍拳】を元にした新しい技の名前をどうしようかと僅かに頭を悩ませていると、背筋がゾワリとした嫌な感覚に襲われたので本能的に《天閃の聖剣》の能力を使って、高速でその場から退避すると弓兵たちがいた階よりも更に上階から戦斧を二本持ったフリュネが飛来してきた。

 

 

「【刀剣の支配】!!アタイが恋しくて戻ってきたのかいッ、感激じゃないかァ~!?」

 

「ふざけんな!テメェみたいなヒキガエルを恋しく思うわけねぇだろうが!!」

 

「嫌よ嫌よも好きのうちってねェエ!」

 

「最初からテメェには嫌悪感しかねぇっての!」

 

 

てか、今のフリュネの台詞には覚えがあるぞ。本来ならベルが標的になるはずだが、俺が先に宮殿へと突入したから本来の流れと異なってしまったのだろう。となると、このまま行けば、ベルの代わりに俺がイシュタルに背中の【ステイタス】を見られるはめになるのではないかと《天閃の聖剣》でフリュネの攻撃を躱しながら思う。

 

そんな時、背後から声が聞こえてきた。

 

 

「何処へ行く気だい!」

 

 

咄嗟に横へと転がると俺の頭があった場所を大朴刀が通り過ぎていくのを俺は見逃さなかった。そしてそれを振るう相手と声に、自分に宿る龍としての性質である強敵を引き寄せる性質に舌打ちをする。

 

 

「ここに来てアイシャも同時に相手とか、難易度ルナティックにも程があるだろう!?」

 

「私たちを相手に無駄口を叩けるだなんて!」

 

「随分と余裕じゃないか、アァン?」

 

「何処にそんな余裕があるように見える!?

 

「そういう所だよ!」

 

「ゲゲゲケゲ~ッ!!」

 

「くそったれ、 卍解!!」

 

 

フリュネとアイシャの二人を相手では《天閃の聖剣》だけは身体能力に差があるので、『天鎖斬月』で身体能力を上げつつ、七本の《エクスカリバー》たちの能力を使って何とか対抗する。

 

しかし、ここで思いがけないことが起きた。それは、思っていたよりも禁手で身体能力が上がっていないのだ。正確には『天鎖斬月』の状態で七本の《エクスカリバー》の能力を使えば、例えフリュネとアイシャが相手でも圧倒できるとそう思っていたのだが、そうはならなかった。

 

そこで俺は思った。俺の『魔剣創造』の禁手が木場佑斗のような『聖魔剣』ではないから思っていたよりも上がっていないのではないかと。つまり何が言いたいかと問われると、『聖魔剣』のような聖剣属性を宿さない純粋な魔剣属性だけによる禁手である『天鎖斬月』では、伝説の聖剣である七本の《エクスカリバー》たちと力が反発し合って中途半端にしか能力を発揮出来ていないということである。

 

加えて、心無しか《ウィザーソードガン》に擬態させている《真のエクスカリバー》が重く感じられるのもその影響なのだろう。

 

 

「まさか、こんな相性問題があったなんて!?」

 

「ほらほら、そんなんでアイツを私たちから奪えると思ってるのかい!?」

 

「あの不細工をアタイ達の道具にしたら、次はアンタを玩具にしてやるよ!!」

 

「ッッ─────!!」

 

 

アイシャはともかく、フリュネの春姫を道具と罵ったことに頭が怒りで一杯になり、二人共々全力の【月牙天衝】で消し飛ばしてやろうかと思った矢先、俺たちの間に十条の雷炎が飛来して来た。

 

その雷炎には酷く見覚えがあったのと下の階から俺の名前を叫び呼ぶ声で、誰が雷炎を放って来たのか理解できた。お陰でフリュネに対しての怒りで一杯になっていた頭も少しだけ冷静さを取り戻すことが出来た。

 

 

「ケンマ!」

 

「【リトル・ルーキー】!?」

 

「ゲゲゲゲ!あの兎小僧も来たのかい」

 

「サンキュー、ベル」

 

 

冷静さを取り戻させてくれた親友に感謝の言葉を口にしながら俺は、『魔剣創造』で漆黒の魔剣を上書きして、俺の記憶に残っている魔剣の中でも珍しい部類に入る魔剣を上書き創造する。

 

その珍しい魔剣とは─────太陽の魔剣《ミリオンサンズ》である。この魔剣は、魔剣でありながら光属性を持つという珍しい魔剣で作中では主に闇属性の敵や目眩ましなどに使われることが多い。

 

 

「照らし輝け、太陽剣!!」

 

「ぐあああああああ!!?」

 

「目が、目がぁあああ!!?」

 

 

《ミリオンサンズ》から放たれる強烈な太陽光に目を焼かれたアイシャとフリュネは、思わず手に持っていた得物を手放して即座に両目を覆う。それによって大きな隙が出来たので、大きく距離を取って《ウィザーソードガン》を二人に向かって引き金を引いて、九頭の青白い龍たちを彼女たちに命中させる。

 

 

「シューティングストライク!!」

 

「があああッ!?」

 

「ぐぴぃやああああッ!?」

 

 

目を焼かれている所為で、まともに回避行動すら出来なかったアイシャとフリュネの二人は、青白い龍たちによって吹き抜け通路の手摺を壊しながら最低階へと落下して行った。

 

それを確認したあと俺はベルと合流せず、手短に指示だけ出して上へと目指すことにした。

 

 

「ベル、空中庭園を目指せ!春姫はそこにいる!」

 

「わかった!」





照らし輝け、太陽拳!!

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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