臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈Sideケンマ〉
『Cardinal Crimson Full Drive‼‼』
アニメでは聞くことのなかった『真紅の赫龍帝』の音声がブーステッド・ギアから流れ、赤よりも紅い真紅のオーラが俺の身体を包み込み、『赤龍帝の鎧』を真紅の鎧へと変化させた。
「カーディナル・クリムゾン・プロモーション!!」
「よ、鎧が変化した!?」
「け、ケンマ殿があの時、黒いゴライアスを殴り飛ばした赤い鎧の冒険者だったなんて……!?」
「な、なんだい!高々、姿形が変わっただけじゃないか、虚仮威しにもなんないねぇえ!!」
紅の鎧の変化にアイシャは驚き、命は18階層での黒いゴライアスを殴り飛ばしたのが俺だと分かり驚き、フリュネは鎧の色と形が変わっただけの虚仮威しだと舐めてかかるという三者三様の反応を見せる。
なので、三者の中でも舐めてかかっているフリュネにだけ返答してやることにした。
「姿形だけが変わっただけの虚仮威し、ねぇ。だったら、本当に虚仮威しかどうかお前に分からせてやるよ」
「ほざくじゃないか、クソガキが!春姫、アタイに『階位昇華』を掛けな!」
「なっ、駄目です春姫殿!」
「そうです、駄目です春姫さん!」
フリュネが春姫に【ウチデノコヅチ】を自分に掛けろと命令を出し、それに対して命とベルが春姫に静止の声を掛ける。
しかし、俺は命とベルとは真逆の答えであるフリュネに魔法を掛けるよう春姫を促す。せっかく、『真紅の赫龍帝』を継承したんだ。一時的にフリュネがLV.6 になった程度の難関を突破できなければ、その先にいる兄弟子を越えることなど到底できない。
「春姫、フリュネに魔法を掛けてくれ」
「「「なっ………!?」」」
「本気かい、【刀剣の支配者】!?」
「ああ、本気だ。例え一時的に【ランクアップ】を果たそうが、この真紅の鎧の前では例えLV. が一つ上がろうと越えられないことを、兄弟子であるオッタルに勝とうなんて驕りが過ぎていることを証明してやるよ」
「オッタルが兄弟子ぃぃい?」
まさかの俺の言葉にアイシャは驚きのあまり聞き返して来たが、いくら一時的に【ランクアップ】をしようが今の俺には通用しないと返答しながら俺がオッタルの弟弟子であると述べるとフリュネが反応する。
けれど、俺はフリュネの反応を無視して、どうしたら良いのか迷い困っている春姫に再度【ウチデノコヅチ】を奴に施すように促す。
「春姫、大丈夫だ。俺は、こんなヒキガエルなんかに負けない。だって、蛙が龍に勝てるはずがないんだからさ」
「…………分かりました」
「春姫殿!」
「春姫さん!」
二度目の促しで春姫は俺のことを信じてくれたのか、命とベルの声を振り切り【ウチデノコヅチ】の詠唱へと入る。
「【───大きくなれ。其の力にその器。数多の財に数多の願い。鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華と幻想を】」
「命、春姫のことを頼むぞ。LV.1 の春姫じゃあ、俺たちの戦いの余波だけでも怪我をする可能性がある。だから、春姫を守ってやってくれ」
「承知!」
「【大きくなれ。神饌を食らいしこの体。神に賜いしこの金光。槌へと至り土へと還り、どうか貴方へ祝福を】」
「そろそろだな」
「【大きくなぁれ。────ウチデノコヅチ】!!」
春姫の詠唱が終わると彼女が形成した魔力の塊は、フリュネの頭上で黄金の円を描き、そして魔法名と共にその魔力の塊はフリュネへと落ちる。それによってフリュネの身体に淡い黄金の光が纏わりついて、【ウチデノコヅチ】が付与されている状態であることを証明している。
【ウチデノコヅチ】をその身に受けて、沸き上がるような力の高まりに酔いしれているのかニヤニヤとした嫌な笑みをフリュネはその蛙顔に浮かべる。
「ゲゲゲゲゲ!これでアタイはLV.6 になった。たかがLV.3 ごときの雑魚がどう足掻いた所で勝てやしないよ!」
「そうか。お互いに準備が出来たみたいだから、先行は貰うぞ」
一時的にLV.6 へ【ランクアップ】したことで自分は負けるはずがないと完全に舐め腐っているフリュネに、先行を貰うことを伝えてから俺は石床を蹴り、神速で奴の背後を取って、そのまま勢いを利用しながら回し蹴りを放ち、フリュネを空中天園から宮殿の方へと蹴り飛ばす。
あまりの一瞬の出来事に命、ベル、アイシャ、春姫の四人は俺がフリュネを蹴り飛ばした時に生じた鈍い打撃の音でようやく反応して驚愕し、俺も駒の特性を使っていない『真紅の赫龍帝』の加速に驚いて思わずイッセーにサイラオーグのレーティングでこれをぶっつけ本番で使いこなせていたことに尊敬の感想を述べる。
(速ッいぇエエエエ!?『騎士』の特性を使ってないのになんて、速さだよ………。あと、めちゃめちゃ『真紅の赫龍帝』の制御難ゥッ!!よくこんなのをイッセーはサイラオーグとのレーティングで使いこなせてるなァ!?)
『いや~、あの時の俺は自分の夢の為だったり、俺を応援してくれるおっぱいドラゴンファンの子供たちの夢の為だったり、リアスの為にリタイアしていった仲間やリアスの夢の為だったり、色々な想いを拳に込めて無我夢中でサイラオーグさんと戦ってただけだしなぁ』
(無我夢中であれだけの戦いが出来るって、主人公補正はやっぱりチートやチーターやろう、そんなんッ!?俺もドライグに才能がある方だなんて言われてるけど、『真紅の赫龍帝』のあまり加速に驚いて僅かに回し蹴りに移るまでに反応が遅れたもん)
『俺の力を初めて使うのに、僅かに反応が遅れたってお前…………』
(速度だけなら『天鎖斬月』で一刀修羅を使った時と殆んど変わらないくらいだったから何とか反応はできたけど、これが倍加や駒の特性を発揮しながらとなると今以上に扱いが難しくなってくる)
これはマジな話。ガレスさんとの鍛練でやった『天鎖斬月』+【一刀修羅】は全体的に身体能力が向上するが、『真紅の赫龍帝』の場合は更にそこへ倍加や駒の特性が加わるので普通の禁手とは訳が違う。そういう点では、流石は『覇龍』を安全に使えている能力と言った所だろう。
また原作と違って『龍神化』に至ることがなかった世界線の残留思念のイッセーでは『真紅の赫龍帝』をまだ完全に使いこなせていない。そのことを考えると今後は俺もイッセーと共に『真紅の赫龍帝』の使い方を模索していく必要がありそうだ。
大雑把に新しい今後の目標を立てていると、宮殿の方から頭や鼻から血を流しているフリュネが目を血走らせ激昂しながら出てくる。
「よ、よくもアタイの美しい鼻を折ってくれたねぇ!もう許さねぇ!挽き肉にしてやる!!」
「あのヒキガエル 、完全に頭に血が上ってやがる」
「上等だ。ダンジョンでのお礼を返してやる!」
ダンジョンで受けたボディープレスの恨みを俺は忘れていない。なので、ここからは各駒の特性を使いながらフリュネに報復の御礼参りといこうと思う。
お互いに床を蹴り肉薄するが、速度は俺の方が明らかに上。そこへ更に『戦車』の駒特性を使用して攻撃力と防御力をトリアイナの『戦車』と同等にまで引き上げる。
『Solid Impact Booster‼‼』
そして互いに間合いへと踏み込んだその瞬間、拳と戦斧がすれ違い、戦斧は俺の鎧へと当たるもその刃には亀裂が走っていき砕け散る。その光景にフリュネは自慢の戦斧の強度が鎧に負けるとは信じられないのか目を見開いた。
対して、俺はアニメで当時十三種存在する内の一つである『獅子王の戦斧』の禁手である『獅子王の剛皮』の一撃でも亀裂すら走ることのなかった紅の鎧ならば、同じ戦斧でも『獅子王の戦斧』と比べたら普通に耐えられると確信があった。
なので、それを信じてフリュネの戦斧を受けながらも前へと背中の噴射口からオーラを放出しながら一歩踏み込んで、奴のがら空きになっている腹部目掛けて紅のオーラで肥大化させた右腕を突き出しながら撃鉄を打ち鳴らして渾身の一撃を叩き込む。
「ぶっ飛べぇえええ!!」
「ぐッぴぎやぁぁあああ!?!」
肉を切らせて骨を断つような渾身の一撃を受けたフリュネは、ご自慢の贅肉たっぷりの腹を窪ませながら宮殿の中へと何枚もの壁を貫きながら文字通りぶっ飛んで行った。
追撃をするためフリュネを追いかける前に、俺たちの戦いをポカーンと観戦しているベルに指差しを三秒ほど続けてからサムズアップを残して、俺はフリュネが開けた穴を利用して本拠地へと乗り込んで行く。
(ドライグ、真『女王』はどのくらい持つ?)
『相棒が奇跡的に中途半端に覚醒させた「希望の赤龍帝」とやらと比べたら大分持つ。しかし、分かっていると思うが真「女王」は相棒にもまだ浸透しきっていない。気を付けて戦えよ』
(分かってる)
ドライグに『真紅の赫龍帝』の制限時間の確認と原作通りまだ俺の身体に浸透しきっていないが故の注意事項を聞きながら、宮殿の吹き抜け広間の所までたどり着くとそこには腹を抱き抱えながら蹲って、涎と涙を流しながら俺を睨みつけてくるフリュネがいた。
「ぐぞっ……ぐぞっだれぇ………LV.6 になったアタイが……なんでお前みたいな雑魚に……」
「ああ、俺は雑魚だ。だから強くなる。春姫や【ファミリア】の皆を守るために今もこれからもな」
「そ……そんなことでお前はこんなに……」
「強いかって?言ったろう、俺たちは春姫の最後の希望だって。誰かの願いや想いを背負って戦う奴は、何者よりも強いんだよ。さぁ立てよ、ヒキガエル!蛙と龍の格の違いってやつを、てめえの心身に叩き込んでやるよ!!」
もう二度と春姫を狙えないよう心身共に叩きのめすために、俺はフリュネの胸ぐらを掴んで【魔力操作】による治癒魔法を施す。
すると、痛みがなくなったことで元気を取り戻したフリュネはニヤリと笑みを浮かべて、俺のことをタコ殴りにしてくるがそんなのは想定内。
「くたばりな、青二才が!!」
「…………春姫の魔法でLV.6 になってるのに、本当にこの程度なのか?」
「なっ、バカな!アタイはLV.6 で、アンタはLV.3なのに、なんでアンタは無傷なんだよ!?」
「だから言ったろう。蛙と龍とでは格が違うって!」
「そ、そんなバカなことがあるか!?」
自分の打撃を受けてもびくともしない俺に対して、ジワりジワりと恐怖を募らせているのかフリュネの表情が次第に怒りから恐怖へと変貌しかけていた。
「もういいのか?なら、散々殴ったり蹴ったりしてくれたんだ。俺も同じことをしてもいいよな?」
「ま、待って!そ、そうだ、特別にアタイを抱かせて────」
「俺はてめえみたいな下手物よりも春姫みたいな女が好みなんだよ!!」
フリュネがくそみたいな発言をする前に、ルノアさん直伝の体術で一見誰なのか分からなくなるほどにボコボコにして、吹き抜け部分から上に向けて力任せに蹴り上げる。『戦車』の駒特性が加わっている今、あまりの力にフリュネは天井を破って屋上へ、そして夜空へと上がって行った。
それを眺めながら最後の一撃を叩き込むためにドライグへ翼を出すように指示を出して、飛行のサポートを頼むことにした。
「ドライグ、翼!」
『JET‼‼』
『赤龍帝の鎧』の時に出るドラゴンの翼と違って、『真紅の赫龍帝』の翼は某ブリタニアのアニメに出てくる赤いロボットのエナジーウイングのような翼が展開される。
翼が展開されたら背中の噴射口からオーラを放出し、蹴り上げたフリュネの行く手を先回りして制空権を取り、そのままアンタレスの時のように空中でこれでもかとオーラを収束させた右足を急降下しながらボコボコのフリュネにめり込ませて、落下の勢いに任せて本拠地の一階にダイブアタックを決める。
「であああああああ!!」
「─────────」
超高層階の屋上からのダイブアタックを受けたフリュネは完全に白眼を剥きながら顔を横にして沈黙しており、また何の因果かダイブアタックの余波で宮殿一階の床に大きなドラゴンの紋様が刻まれていた。それはまるで某バイオリン技師の仮面ライダーの必殺技の如く。
フリュネの沈黙で全てが終わったと少しだけ安堵していると、かなり強い気配を感じ取ったので警戒しながらそちらに顔を向けると、そこには無言で俺と沈黙して動かないフリュネを見ている兄弟子のオッタルがいた。
「フリュネ・ジャミールは負けたか」
「………………」
「面白いものが見れた」
アイエエエエ!?兄弟子!?オッタル何でェエエエ!?
声には出さないが思わず、甲冑の下で目玉が飛び出そうなほど驚いているとオッタルは何故かほんの僅かに口元に弧を描くと、踵を返して何処かへと行ってしまった。
バレてないよね?甲冑の下が俺だってバレてないよね?バレてたらそれはそれでかなり不味い状況になるのだが、それはマジで止めてモロテ。
「はぁー、取り敢えず終わったな」
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に