臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第十五話

 

 

 

 

〈sideフィン〉

 

 

 

 

イシグロ・ケンマの一言で、僕やリヴェリア、ガレス、ロキといったアイズの過去を少なからず知る者からしたら意識を引き締めるしなかった。

 

そして、彼の要望通り、僕たち四人とイシグロ・ケンマ、神ヴィクトリア以外のアイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤには団長命令で部屋から出てもらうようにお願いしたが、アイズとティオネが反発したためロキが主神命令で渋々部屋の外へと追い出した。

 

 

「これでキミの要望通りのメンバーだけになった。約束通り、全てを話してくれ」

 

「わかりました。まずは俺についてですけど、俺は■■■(転生者)なんです」

 

「ん? すまない。もう一度言ってくれるかい?」

 

「わかりました。俺は、■■■(転生者)なんです」

 

 

駄目だ。聞き直してもイシグロ・ケンマが口にする一部の言葉が変な音に邪魔されて聞き取れない。

 

 

「リヴェリア、ガレス。キミたちは彼の言葉を全部聞き取れたかい?」

 

「いや、一部が聞き取れたなかった」

 

「儂も同じじゃ。変な音に邪魔されておる」

 

 

リヴェリアとガレスも同じとなると、僕たち下界の人間ではイシグロ・ケンマの言葉を聞き取れないということになる。なら、下界の者ではない天界の住人、神であるロキならばと期待を込めたが、まさかのロキでも駄目だった。

 

言葉で駄目なら字で話してもらおうと思い、僕は執務机からメモとペンを取り出して、彼に聞き取れたなかった部分を共通語で書いてもらったが文字とは別のぐちゃぐちゃとした何かに遮られてしまって、全く読めない。

 

 

「駄目だ読めない」

 

「私もだ」

 

「儂も駄目じゃな」

 

「うちも駄目やわ」

 

 

結果、全員が駄目のようだ。

 

 

「もしかしたら、『世界の修正力』みたいな物が働いてるのか?」

 

「世界の修正力? どういうことだい、イシグロ・ケンマ」

 

「あっ、俺のことはケンマでいいですよ。例えば……俺の故郷だと、レフィーヤが迷宮神聖譚に出てくる■■■■(フィーナ)という人物に容姿が似ていたり、ガレスさんも■■■■(ガルムス)に似てたり、ベートさんも■■■(ユーリ)に似てたり、アイズも■■■■■(アリアドネ)にそっくりなんです。どうですか、聞き取れましたか?」

 

「駄目だ。レフィーヤ、ガレス、ベート、アイズに似ている迷宮神聖譚の登場人物の名前の部分だけが聞き取れない」

 

「なるほど、それじゃあ■■(ベル)■■■■(クラネル)という少年が■■■■■■(アルゴノゥト)に似ている、なんてことも聞き取れないですか?」

 

「すまない。今回は、人物名が全て駄目だ」

 

「そうですか、じゃあ本題に戻りましょうか」

 

 

僕たちがケンマの言葉を一部聞き取れないと分かると、明らかに安心したような表情で本題の話に戻させた。まったく、キミは何者なんだ。

 

 

「それじゃあ改めて、ケンマはどこで新種のモンスターについて知ったんだい?」

 

■■(前世)■■■(アニメ)でやっていた『■■■(ソード)■■■■■(オラトリア)』という物語を見たからですね。その物語の何話かに新種のモンスターを大量に産み出している親個体のようなのが出てたんですよ」

 

 

最早、ケンマから放たれる言葉で聞き取れない部分は切り捨てる他ないようだ。そうでなれけば、話が進まない。

 

 

「新種のモンスターにその親個体か………。これは、有力な情報だ。他に知っていることは?」

 

「えっと、このことが伝わるか分かりませんが■■(人間)■■■■■(モンスター)が融合した敵がアイズの前に現れます。そいつは、アイズのことを『アリア』と言っていました」

 

 

一番重要だと言っても過言ではない事をケンマから聞けた。これらは大いに役に立つ。アイズのことを『アリア』と呼び、敵対する輩ならば対処する必要がある。

 

 

「その敵の特徴は?」

 

「名前は■■■■(レヴィス)、性別は女性、赤色の髪に短髪、緑色の瞳。そして、巨乳です。あと武器は剣を使います」

 

「意外と情報が得られたな。敵の強さは?」

 

「推定でLV. 5以上でLV.6未満、新種モンスターを自由に操れる『調教師』です」

 

「ふむ…………」

 

 

更に詳しく重要な情報が得られたな。間違いなくケンマは、これから起こるであろう未来の話をしている。であれば、それを有効活用しない手はないね。

 

 

「敵の出現場所は?」

 

■■■■(18階層)■■■■(リヴィラ)の街です」

 

「流石に、敵の出現場所を聞かせてくれるほど『世界の修正力』とやらは優しくないか……。因みに何か対抗策はあるかい?」

 

「えっと、アイズのLV. を上げるのが一番ですね。けれど、時期的に合いません。例の敵と遭遇後に■■■■(38階層)にいる■■■■■(ウダイオス)を単独撃破した後にアイズはランクアップしますから」

 

 

所々聞き取れないが「単独撃破」という言葉を聞き取ることができた。つまりは、アイズはいずれ何処かの階層主を単独で撃破するということなのだろう。だが、肝心のその階層と階層主の名前が聞き取れない。

 

それさえ聞き取れれば、即座にギルドで階層主のインターバルを調べて、『小遠征』として幹部たちのみで行かせるのだが情報が足りない。せめて、遠征なのかは聞いてみよう。

 

 

「それは大規模な『遠征』かい?」

 

「いいえ。武器の借金を返すための資金集めで、フィンさん、リヴェリアさん、ティオネとティオナ、レフィーヤ、アイズだけです。他はいなかったと思います」

 

「ありがとう。それが聞けたのと聞けなかったとでは、かなり違いが出てくるからね」

 

 

大規模ではないなら、近いうちにケンマが言ったメンバーで『小遠征』をやる価値はありそうだね。なにより、強くなろうとしている今のアイズを少しは落ち着かせることができるはずだ。

 

他には、ティオナとティオネが言っていた地面から生えた剣について訪ねてみるか。彼はどうやらバカ正直…………いや、この場合は言っても彼らに不利益がない情報を与えられたに過ぎないか。有力な情報がポンポンと出てくるもんだから見誤ったかな。それに外で待たせている彼女たちをそろそろ入れてやらないと面倒なことなりそうだ。

 

 

「改めて礼を言わせてくれ、ケンマ。こんなことをアイズたちに知らせる訳には行かないからね」

 

「いえ、俺の方でも『世界の修正力』がこういう風に働くと知れたので良かったです。あとは、高級な高等回復薬のお返しだと思ってください」

 

「そうさせてもらうよ。それじゃあ、四人を呼び戻すけど、構わないね」

 

「はい、大丈夫です」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

部屋の外で待たせていたティオナ、ティオネ、レフィーヤ、アイズを招き入れてから『怪物祭』でケンマが使ったと能力について、駄目もとで訪ねる。

 

 

「それじゃあ、ケンマ。駄目もとで訪ねるけど、ティオネとティオナ、レフィーヤから聞いた話だと、新種モンスターを一撃で屠ってみせたようだけど、本当にキミはLV.1で間違いかい?」

 

「はい。間違いないです」

 

「ロキの反応を見るからに嘘じゃないようだね。次に、ティオナとティオネに提供した剣だけど、あれはスキルか何かかい?」

 

「んー、ヴィクトリア。どうしたらいい?」

 

「ノーコメント」

 

「ということです」

 

 

流石に、スキル関連については教えてくれないか。なら次だ。

 

 

「次に、キミが使っていたであろう、あの青い剣。レフィーヤ曰く、元は黒い刀だったがレフィーヤを庇う際に大楯に変化し、キミの手元から離れると青い剣に変わったと聞いている。これもキミのスキルかい?」

 

「えーっと、ノーコメントでお願いします。それと出きれば、その剣は返していただけると助かります」

 

「剣を返すのは約束する。次は、レフィーヤがキミを助ける時に、左手にあった赤い籠手からキミを心配する男性の声が聞こえてきたらしい。それは、何かしらの魔道具の類いかい?」

 

「それもノーコメントでお願いします」

 

 

今、ケンマの左手にレフィーヤが言っていた籠手はない。つまりは、『魔道具』だと普通は思うだろうけど僕の親指はそうではないと言っている。

 

 

「よし、僕から聞きたいことはこれで全部だ。他に聞きたい者はいるかな」

 

 

僕の質問が終わると、他に質問した者がいないか訪ねるとティオネが挙手をした。

 

 

「はいはーい! あたし、聞きたいことがある。ぱんくふらわー、ってなに?」

 

「あの新種のモンスターは、なんか花みたいな外見で、パクパクと捕食しようとするからパックンフラワーって呼称してみただけだ」

 

「ふーん、なら今後からあのモンスターことをパックンフラワーって呼ぼうかな」

 

「安直に、食人花でいいんじゃないか?」

 

「じゃあ、それで」

 

「軽っ!?」

 

 

ティオネの能天気さにケンマも困惑してしまっているようだ。次にケンマへ質問したのは、レフィーヤだった。

 

 

「次は、私から質問です。イシグロさんが一体目の食人花に放った赤い斬撃、あれは魔法ですか?」

 

「ケンマでいいよ。他の皆も。その代わり名前で呼ばせてもらうから。えーっと、あの斬撃は『魔法であって魔法じゃない』が正解かな」

 

「魔法であって魔法じゃない? どういうことですか?」

 

「詳しくは言えないけど、俺の『スキル』で魔力を斬撃として放てると思ってくれればいいかな」

 

「…………分かりました」

 

 

今、とんでもない『レアスキル』を持っているとケンマが自ら暴露した気がするが、下手に追及するのは止めておこう。隣で必死に我慢している魔法オタクがウズウズしているからね。

 

僕たちからの質問が一通り終わったところで、主神であるロキの出番となった。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

フィンさん、ティオネ、レフィーヤから色々と質問され、答えられるものだけ答え終わると今度は【ロキ・ファミリア】の主神であるロキが口を開く。

 

 

「次は、うちからや。まず、一週間前のミノタウロス件、すまんかった。主神として改めて謝らせてもらう。んで、今回のレフィーヤを助けてくれたこと、ありがとう」

 

 

ロキが頭を下げて、謝罪と感謝を述べたのに続いてフィンさんも団長として頭を下げた。するとヴィクトリアが普段とは違って冷たい眼差しで【ロキ・ファミリア】を見つめる。

 

 

「確かに、あなた達が見す見す逃したミノタウロスの所為で、たった一人の眷属であるケンマが死にかけたのは事実。そして、今回もケンマは死にかけた」

 

「おい、ヴィクトリア。ミノタウロスの件はともかく、今回のは俺から出しゃばって……「黙りなさい、ケンマ。今は、親同士で話をしてるの」…………」

 

「それで、あなた達は死人が出そうだったのに万能薬と高等回復薬を一本ずつと謝罪だけで済ませるつもり? 安い物ね、人ひとりの命がたかだが五十万ヴァリス程度だなんて…………」

 

「ちょっ、まさか万能薬まで使わせたのか俺!?」

 

 

その言葉に、今まで仲間を失ってきたことのある者たちにとっては重い言葉だった。特にレフィーヤは、自分を庇った所為で俺が死にかけたと思っているから余計に重く感じるはずだ。

 

そんな彼らとは裏腹に俺は、万能薬と高等回復薬まで使わせてもらったことに酷く狼狽えてしまう。だって、ウチの【ファミリア】は弱者の弱者だ。それなのに、高級な回復薬を二種類も使わせてしまったのだから狼狽えずには居られない。

 

 

「わかった。うちの主神権限で何でも償ったる。ただし、【ファミリア】の解散、団員の引き抜き以外でや」

 

「ロキ、いいのかい?」

 

「しゃあないやろ。うちかて、ヴィクトリアと同じ立場なら同じことをやる。それだけ、自分の子供が大事やねん。せやから遠慮なく言ってくれてかまへん」

 

「ここで断るのは流石に気が引けるので、俺から二つだけお願いします」

 

「言いてみい」

 

「一つ目、誰か戦闘衣の良いお店を知りませんか。あと、出きれば誰か付き添いで戦闘衣について教えて欲しいです。二つ目は、出来たらで構いません。【ロキ・ファミリア】以外との【ファミリア】と『戦争遊戯』を行うことになった際、秘密裏に幹部の皆さんと特訓をお願いします。俺から以上です」

 

「欲がなさすぎやろ、ケンマ!?」

 

 

ロキが欲がないと言われてしまったが、二つのお願いは俺にとってはかなり重要なのだ。まず一つ目は、『怪物祭』が終わったので三日もすれば、ベルがエイナさんと防具選びのデートをする。なので、野暮なことはしたくない。二つ目は、後の【アポロン・ファミリア】との『戦争遊戯』の対策。

 

アニメ通り、ベルに『戦争遊戯』を吹っ掛けるにしろ、イレギュラーで俺に吹っ掛けるにしろ、第一級冒険者が多くいて良心的な【ロキ・ファミリア】に一時的とは特訓を付けてもらえるのは、かなりのアドバンテージになる。

 

 

「こーう、なんかあるやろ!【ファミリア】資産の半分を貰うとか、うちのアイズたんとデートするとか」

 

「俺はアイズよりレフィーヤが好みです」

 

「えっ…………わ、私ですか!?」

 

「せやろ!でも、うちのアイズたんでもレフィーヤでもデートなんて行かさへん!」

 

「わかってます。まず、金なら自分で稼げます。レフィーヤとのデートは、お互いにまだ友人でもないので、それは友人になってから機会があればします。自分で言うのもなんですけど、俺は臆病者でヘタレですから」

 

 

そう言うとレフィーヤ以外の皆は何も言えなくなってしまった。レフィーヤは、一人で「ぁぅぁぅ…」と顔を真っ赤にして狼狽えている。

 

 

「はぁ、ケンマは本当に欲がないなぁ。てか、臆病者なら何でもうちの幹部連中と特訓なんてアホみたいな願いを言うねん」

 

「臆病者だからこそです。臆病者だから、どんな手を使ってでも死なないように備える。それに死なない環境で、格上と手合わせすれば確実に一秒前の自分より強くなる。そんな機会を逃すなんて持ったいないじゃないですか」

 

 

ロキの質問に答えると【ロキ・ファミリア】のスリートップが笑い始める。突然笑い出したスリートップに同じ団員のアイズたちは困惑しているようだ。

 

 

「ケンマの言葉を聞いたかい、リヴェリア、ガレス」

 

「ああ」

 

「なかなかに見所がある坊主じゃのう」

 

「まさか、臆病者だからとその考え方をするなんて、今までの冒険者人生で稀に見ることのできない逸材だ。正直、ケンマがうちの【ファミリア】に来なかったことが悔やまれる」

 

「フィンに同感だ。ケンマは、生と死の線引きをする前に、あらゆることに備えようとする用心深さを持っている。うちの幹部になってくれたら団員の生存率が大いに向上していただろうに」

 

「そうじゃのう。それに死なない環境で、格上と手合わせをすれば一秒前の自分より強くなれる。欲がないと思わせて置きながら、随分と欲深い考えを持っておる」

 

「ほんまや。その腹の中にどんだけ欲深い物を隠してんねん」

 

 

 

結果から言うと二つのお願いは聞き入れて貰えた。けれど、二つ目のお願いに関しては【ロキ・ファミリア】が敵対していない【ファミリア】との『戦争遊戯』に限ると厳命されてしまったがそれは想定内。

 

予想外とすれば、戦闘衣の費用を【ロキ・ファミリア】の方で持つと言われたことだ。何回も断ったが最終的はフィンさんのゴリ押しに負けてしまった。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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