臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
どうも、黒牙雷真です。
前話の前書きに載せるを忘れてしまいたが、オリ主たたちの新しい本拠地候補が決まりました。アンケートにお答えしてくださった読者の皆様に感謝いたします。
アンケート結果として、豊饒の女主人がある【西地区】に決まりました。
今後は【フレイヤ・ファミリア】にも目をつけられていくのか、それとも何にもないのかは後々の話でお楽しみください。
ではでは。
〈Sideケンマ〉
「何の真似だ、アイズ」
いやー、危なかったぁ。真『女王』になってなかったらLV.6 の身体能力をフルに使った今のアイズの一撃は止められなかったかもしれない。しかし、俺は止めてみせたぞ。アニメの強キャラ感を出しながら。
けどさぁ、アイズの奴ってば良く観察すれば瞳孔がガン開きよ。まるで、ドSサディストを守護霊に持つ某真撰組の副長さんみたいにだよ。尚、殺意も増し増しで向けられています。
どういうこと、これは?
「何をやっているアイズ!それはケンマだ!剣を下ろせ!アイズ、聞こえているのか!?」
「─────!!」
どうやら完全にアイズは殺意にキマってしまっているのか、リヴェリアさんの声を無視して俺から《デスペレート》を引き抜こうと試みている。
まぁ、離さないけどね。
だが、一体俺の何がアイズをこうまで殺意を募らせる? アイズが殺意を剥き出しにするのは、基本的にモンスターや彼女の悲願である黒竜─────あっ、そういうことか。
「フィンさん、アイズは龍───ドラゴンに対して強い殺戮衝動とかありますか?」
「ああ、ある。しかし、それが今のアイズと何の関係が………待て、ケンマ。キミがそんなことを尋ねてくると言うことは、その力は──」
「はい、とある強力なドラゴンの物になります。っと、あたっ!?」
呑気にフィンさんと話していると、アイズの奴が愛剣が抜けないと分かると戦い方を変えてきたのか体術を仕掛けてくるようになった。その体術による蹴りが俺の首に炸裂して、鈍い音と共に衝撃波が鍛練場を包み込む。
幸いなことにその衝撃波によって、一般人並みの身体能力しかないロキとLV.1 の春姫が怪我を負うことはなかった。けれど、これ以上激しくなるようなら危険だと思う。
「仕方ねぇ。あんまりこういうのはやりたくないけど、やるしかないか」
「ケンマ、一体なにを?」
「【プロモーション・ビショップ】」
フィンさんの質問に答えるよりも先に【プロモーション】で『僧侶』に昇格、更に六回ほど倍加でこれから使う魔法の効果を上げる。
「今は眠れ、アイズ。スリプガ」
「ッッ─────」
睡眠効果のある【スリプガ】で強制的にアイズを眠らせる。仮に『耐異常』の発展アビリティが高くても倍加で効果を高めているので、第一級冒険者の『耐異常』も簡単に貫通する。
その証拠に、【スリプガ】を受けたアイズは糸が切れた人形のようにその場で崩れるように倒れて、スゥースゥーと基礎的な呼吸が続く。
「ケンマ、今のは睡眠系の魔法か?」
「そうです。下手に威圧して我に返らせたら怯えられそうだったので、安牌策を取ることにしました」
「ウチの団員が済まなかったね、ケンマ」
「いえ、こちらこそ知らなかったとはいえアイズの過去を刺激してしまったみたいで………」
俺も浅はかだった。アニメでアイズはとある村で『黒竜の鱗』を睨んでいたシーンがあったはずなのに、同じ龍の力を使う真『女王』で龍としての存在感が増せば襲ってくるのも予測できたはずだ。
取り敢えず、真『女王』のお披露目はこれで完了、けど解除はしない。あとは、フィンさんたちに春姫の『階位昇華』の魔法がどういった感じなのか、そしてその優位性を体験してもらおう。
「さて、次は春姫の番だな。春姫、フィンさんにウチデノコヅチの魔法をかけてくれ」
「は、はい!畏まりました!」
「よろしく頼むよ、サンジョウノさん」
ガチガチに緊張している春姫の緊張を解すために、恥ずかしいのを我慢して俺は彼女の頭を優しくポンポンと叩く。初めて、こんなことを女子にやるから恥ずかしいのと嫌がられないか心配だったがどうやら春姫は喜んでくれているようでケモ耳と尻尾がピコピコブンブンしていた。ついでに【赤龍帝からの贈り物】も付与することも忘れていない。
春姫の頭ポンポンを見ていたレフィーヤはジト目を俺に向けてくるが、同じ【ファミリア】の人間じゃないし況してや恋人でもないので苦笑いを浮かべる他に手立てはなかった。
「そ、それでは参ります!」
「気負わなくていいからな」
「【──大きくなれ。其の力にその器。数多の財に数多の願い。鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華と幻想を。──大きくなれ。神饌を食らいしこの体。神に賜いしこの金光。槌へと至り土へと還り、どうか貴方へ祝福を。──大きくなぁれ!】」
春姫の『階位昇華』をアニメではなくて実際に見るのはこれで二回目だが、綺麗な魔法だと俺は思う。
「【ウチデノコヅチ】!」
「ッ─────これは!」
前代未聞の『階位昇華』をその身に受けたフィンさんは、一時的とはいえどLV.7 へと【ランクアップ】を果たした。その感触を確かめるように手を閉じたり開いたりを繰り返してからその場でボクシングのシャドーのように仮想敵を思い浮かべながら拳と蹴りを虚空に繰り出す。
それとどうやら真『女王』は、普通の禁手の強化系のためか某スーパーな野菜人の第二形態みたく戦闘力が禁手の約十倍になっているのか、真『女王』の状態だとLV. が四段階上がっているようで今のフィンさんの動きが全く捉えることが出来ないのではなくて、辛うじて何重にもブレながら捉えることが出来ている。
やっぱり『ハイスクールD×D』のパワーインフレの方が可笑しかったようだ。
「どうですか、フィンさん。一時的とはいえ、LV.7 になってみた感想は?」
「うん、これは凄い。凄い魔法だ!」
「フィンの奴め、珍しくはしゃぎおって」
「しかし、ケンマが言っていた通り、彼女の魔法を宿した魔道具が闇派閥の手に渡ると考えたら目も当てられなくなる」
「狐人の娘っ子、儂にもフィンと同じ『階位昇華』の魔法をかけてくれ!LV.7 の頂きがどんなものか試してみたい」
フィンさんのはしゃぎ様を見て、ガレスさんも春姫に自分へ『階位昇華』の魔法を掛けて欲しいと要求してくるが、【ウチデノコヅチ】には付与されている間の【経験値】が半減するデメリットの他にも、次に使用するまでにしばらくの間リキャストタイムが生じるというネットゲームのようなデメリットが存在する。
そのため、直ぐにガレスさんへ春姫は『階位昇華』の魔法をかけることが出来ないのである。
「すみません、ガレスさん。春姫の【ウチデノコヅチ】は連続使用が出来なくて、しばらく間を開けないと使えないんですよ」
「ふむ……ならば、仕方あるまい。次に使えるまで待つか」
「一時的とはいえ、誰でも【ランクアップ】が可能なのだ。何のデメリットもなく、彼女にほいほい『階位昇華』を使われては敵対した時に我々も困る」
「他にも、この魔法には普通の【ランクアップ】と同じように身体と精神のブレが生じるみたいだ。土壇場の起死回生の一手として使うのは良いかもしれないけど、頼り切りになると間違いなく足元を救われる。ケンマ、キミも団長として使い時を見誤らないように気を付けた方がいい」
「分かりました。貴重な意見、ありがとうございます」
フィンさんがこうまで言うんだ。やっぱり予め考えていた通り、俺も一度『階位昇華』の魔法を受けてから【魔力操作】で再現可能なのかを検証する必要がありそうだ。
それからインターバルを置きつつ、ガレスさんとリヴェリアさんにも春姫に『階位昇華』を掛けてもらったあと、俺は気になっていたことを尋ねることにした。
「フィンさん、ずっと気になっていたんですけど人造迷宮での攻略と被害はどうなりましたか」
「………………攻略自体はそこまで進んでいない、僕らは撤退を余儀なくされた。敵は『穢れた精霊』を既に何体かをダンジョンから持ち出し、人造迷宮の何処かに隠している。そして被害だけど…………死亡した者と行方不明者が出た」
「!!」
「交流があったかは分からないけど……ロイド、クレア、アンジュ、リザ、カロスの計五名が今回の人造迷宮の攻略による被害者だ。すまない、キミにはあれだけ情報を提供してもらい、道化の旗印の下に全員が生きて帰ると約束したのに」
フィンさんから告げられた人造迷宮攻略の被害を聞いて、自分への怒りと闇派閥への怒りの感情が高ぶり龍のオーラが暴風のように吹き荒れて綺麗になった鍛練場に無数の亀裂を刻んでしまう。
『抑えろ、相棒。オーラが暴走しているぞ』
(でも、ドライグ!あの時、俺が付いていれば助かった命が……!)
『自惚れるな、ケンマ!お前は春姫ちゃんと被害が出るあろう【ロキ・ファミリア】のどちらも平等に天秤へとかけて、その末にお前は春姫のちゃんの方に傾けた。なら、それがケンマの選択だろう。過去のことはやり直せない、受け入れる他ないんだよ』
「チクショ………」
本当は分かってる。でもさ、約束したじゃないか。道化の旗印の下、ロキの下に皆生きて帰るって、あの時約束したじゃないか!!
胸に生まれてしまったこのどうしようもないやるせなさを残しながら俺は冷静になるように努める。そして一つの解決方が見つかる。それはあまりにも虚しくてよくアニメや漫画などで出てくるモノだった。
「フィンさん、その五人のうちの何人かを殺した犯人は分かってるんですか?」
「ああ。僕らとも因縁深い相手だ」
「名前と特徴、性別、武器、所属を教えてもらっても?」
「………名前はヴァレッタ・グレーデ。特徴はピンク色の髪に毛皮付きの長外套を纏い、性別は女。武器は生き残った者からの情報と合わせて、ケンマが提供してくれた情報通り、不治の呪詛が込められた大剣と短剣を使っていたそうだ。短剣の方は既に【ディアンケヒト・ファミリア】に提供済み。所属は不明。これでいいかな?」
「ありがとうございます。もしも、もしも俺が先にそいつを見つけたら、【ロキ・ファミリア】の皆さんに代わって道化の旗印の下に帰って来れなかった人たちの分も殴っていいですか?」
「………その時はキミに任せるよ」
「分かりました。それとまた鍛練場を壊してすみません」
「夢半ばで散っていた団員のことを思ってこうなったんだ。ケンマが気に病むことはないよ」
フィンさんは苦笑いしながらそう言ってくれるが、今の俺は言い表しようもない真っ黒でドロドロした感情が胸の中で渦巻いていた。初めての感情で定かではないが、これが復讐心と言ったものなのだろう。
イッセー以外の歴代赤龍帝はこれを何代にも渡って怨嗟として『覇龍』へと至らせたのだろう。初代赤龍帝かあるいは何代目かの赤龍帝かは分からないけど、大切な誰かを知人を愉快犯に殺されては『覇龍』のような危険な力を使ってでも復讐しようとするのも頷ける。
『相棒』
『ケンマ』
(分かってる。俺の代で覇龍を復活させるつもりはないさ。でも、やっぱり憎いよ。前世だとテレビとかに報道される殺人事件は赤の他人だからそこまで心に来ないけど、一週間とはいえ同じ屋根の下で同じ飯を食べた知人が殺されたって聞いたらこの感情は止まらないも思う)
『俺もアーシアがシャルバに殺されたと思ったあの時、最初は現実を受け止められなくて、でも目の前にアーシアがいなくて起きたのは現実で、それがどんどん理解していったらアーシアを殺したシャルバが憎くて憎くてどうしようもなかった。でも、俺たち赤龍帝が憎みのままに動いたら周りの大切な仲間たちにも被害が出る。俺のことを知っているならそれがよく分かるだろう?』
(もちろんだ)
ふと、脳裏に某皆の笑顔のために戦う戦士もこんな感じだったのだろうかと共感してしまった。今まで助けられなかった人たちをまるでゲームのように殺していって、更に自殺する人まで出たのに尚も被害者を増やそうとする古代の戦闘民族の奴らに対して、激しい怒りが爆発するようなこの感覚。
正直、この胸の奥に生まれてしまった復讐心の黒い種火は、ヴィレッタ・グレーデ本人にぶつけないと消えることはないと思う。
「ケンマ……」
「ケンマ様……」
「大丈夫、俺は『希望の赤龍帝』だからさ」
復讐の感情のぶつけ所を決めるとレフィーヤと春姫が俺のことを心配して声をかけてくれる。最初の頃よりかは大分冷静になれて来たので真『女王』と禁手を解除して、深く深呼吸をして二人を少しは安心させられるように作ったような笑顔を見せる。
俺は『希望の赤龍帝』になると決めた。だから、『覇龍』のような『絶望を振り撒く赤龍帝』には成らない。仮にこの感情をぶつけるとしたら周りに被害が及ばない場所で闇派閥のみにぶつける。
「ヴァレッタ・グレーデ……てめえを見つけたら必ずぶん殴ってやるから覚悟しやがれ」
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サンジョウノ・春姫
Lv.1
《基本アビリティ》
力 :I8 →I28
耐久 :I32 → I39
器用 :I15 →I18
敏捷 :I23 →I25
魔力 :E403 →D593
《魔法》
【ウチデノコヅチ】
・階位昇華。
・発動対象は一人限定。
・発動後、一定時間の要間隔。
・術者本人には使用不可。
詠唱式【──大きくなれ。其の力にその器。数多の財に数多の願い。鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華と幻想を。──大きくなれ。神饌を食らいしこの体。神に賜いしこの金光。槌へと至り土へと還り、どうか貴方へ祝福を。──大きくなぁれ】
【】
【】
《スキル》
【
・任意発動。
・赤龍帝への想いの丈によって効果向上。
・赤龍帝への想いの丈によって効果範囲向上。
・赤龍帝への想いに丈によって聖域展開。
・聖域内にいる者に高治癒効果付与。
・聖域内にいる者へ『耐久』のアビリティに高補正。
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オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に