臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百五十四話

 

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「ぬーん」

 

『ぬーん』

 

「すごい、春姫さん!」

 

「これが春姫殿の新しいスキル!」

 

「精神力も使わずに範囲系でありながら高い治癒能力のレアスキル、ケンマ様に続いて春姫様まで出鱈目とは………リリの心はボトボドデスーッ!!」

 

 

【ロキ・ファミリア】でレフィーヤのおっぱいについての謝罪及び感謝して、万が一にも俺たち【ヴィクトリア・ファミリア】に何かがあった際に春姫の保護をお願いした翌日、俺たちは同盟関係にある【ヘスティア・ファミリア】の『竈火の館』の中庭で春姫が発現させたレアスキルの【赤龍帝の姫巫女(ウェルシュ・トワイライト・ヒエレーア)】の検証をしている。

 

検証結果から言ってやっぱりチートだった。春姫がスキルを使いたいと思えば、彼女を中心として円形状の淡い翡翠色の領域が展開され、その領域内に入ると多少の傷なら高速治癒するという従来の治癒師に喧嘩を売るようなチートっぷりだ。

 

けれど、俺にはこのスキルの発動に見覚えがあった。

 

 

『なぁ、後輩。春姫ちゃんのあのスキル……俺の勘違いじゃなければ……』

 

(大丈夫だ。俺もイッセーと同じことを考えてる)

 

 

春姫のレアスキルは、なんとアーシアの『聖母の微笑』とそっくりなのである。イッセーと共にそう思っていると、何故春姫がこんなにもアーシアと似たスキルを発現させたのかその理由が判明した。

 

 

「まるで、春姫さんの新しいスキルはシスター・アーシアのトワイライト・ヒーリングみたいですね!」

 

「はい。ベル様が空中庭園で、ケンマ様が私をアーシア様のように助けようとしていると仰られてからずっとアーシア様のような傷を癒す力が欲しかったんです。ですから、この度アーシア様と似たようなスキルを発現できて、春姫はとても嬉しく思います。これで、今代の赤龍帝であるケンマ様をアーシア様のように支えることができます」

 

「春姫さんみたいな精神力を消費しないで治癒が出来るなら、精神力を消費しないと治癒できない私の存在価値は………」

 

「ちょっと、こんなことで落ち込まないでよ、カサンドラ。それに春姫まだLV.1 でアンタはLV.2 。それだけでも存在理由になるから元気出しなさい」

 

「うぅぅ……ダフネちゃん……」

 

「団長もこの子になんか言ってあげてよ」

 

「カサンドラは治癒魔法と害悪を消す二つの魔法を持っているだろう。それにカサンドラは弓矢が使えるし、平行詠唱と合わせることが出来ればそれだけでカサンドラだけの強みになると俺は思ってる」

 

「平行詠唱………私、頑張ってみます!」

 

 

カサンドラを慰め、やる気を出してくれたのを確認してから【赤龍帝の姫巫女(ウェルシュ・トワイライト・ヒエレーア)】を使い続けている春姫に体力的にも消耗はしていないかを確認する。

 

 

「春姫、スキル発動中の体力消費は大丈夫か?」

 

「はい、問題ありません」

 

「なら、その聖域を維持したままで散歩する速度で中庭を一週してみてくれ」

 

「畏まりました」

 

 

魔法と違って、このスキルは回復の聖域を維持したままでどのくらい移動をできるのかを検証。その後は、ベルと英雄譚の話をしてもらいながら一週、それによってスキルの任意発動がどのくらいの任意なのかを確認。また、任意の中に集中力維持が必要なのかも細かく確認していく。

 

ざっと色々と確認してみた結果、移動しながらの聖域維持は可能。スキル発動中には多少なりとも集中力、主に自分の意識が何らかの外的要因で途切れない限りは維持が可能。そして最後にアーシアのように回復聖域を自身を中心した展開だけでなく、任意の対象を中心として尚且つ複数展開できるのかを試しにやってもらったが現状ではできなかった。

 

やはり、スキルだからなのかアーシアの『聖母の微笑』ほど自由度はないと見ていいだろう。もしかしたらスキル内容にもあった通り「赤龍帝への想いの丈によって効果範囲向上」と記載されていることから、俺への想いの丈に応じてまた変化する可能性も捨てきれない。

 

 

「よし、これで大体は把握出来たかな。春姫、お疲れ様。もうスキルは止めていいぞ」

 

「分かりました」

 

 

スキル検証の結果を纏めた悪魔文字で書いたメモを眺めながら、春姫が狙われる要因が増えてしまったことに不安が募るがこれはこれで嬉しい誤算だったとポジティブに考えることにしよう。

 

ここで一つ疑問に思ったことがあるだろう。何故、俺はメモを書く時に日本語ではなく、態々悪魔文字を使っているかだ。答えは簡単で、こういったスキルや魔法などの情報を書いたメモや紙などが万が一にも外部に漏れた場合を考慮してだ。

 

そして悪魔文字は今の所は俺とイッセーにしか解読不可能な文字のため、こういう重要な内容を書き留めておく時にとても役立つ。といっても俺もスキルのお陰で読めはするが、イッセーの補助無しにはまだ悪魔文字をひらがなや漢字みたいに使いこなせている訳ではない。

 

 

「次は俺に【ウチデノコヅチ】を掛けて欲しい」

 

「分かりました」

 

「それと全員聞いてくれ。今後は春姫の魔法を呼ぶ時、少し呼び難いかもしれないが【ウチデノコヅチ】で統一したい」

 

「そうですね。毎回、『階位昇華』と呼ぶと他派閥の冒険者に聞かれたら、それだけで春姫様の魔法の内容がバレてしまう可能性を捨てきれません」

 

「だから、皆も今後は【ウチデノコヅチ】と呼ぶようにしてくれ」

 

 

春姫の『階位昇華』を今後は、【ウチデノコヅチ】と改めて呼んで欲しいと伝えるとリリの補足もあって、皆は素直に頷いて受け入れてくれた。

 

 

「それじゃあ、春姫。頼む」

 

「では、参ります!【──大きくなれ。其の力にその器。数多の財に数多の願い。鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華と幻想を。──大きくなれ。神饌を食らいしこの体。神に賜いしこの金光。槌へと至り土へと還り、どうか貴方へ祝福を。──大きくなぁれ!ウチデノコヅチ】!!」

 

 

詠唱を終えて、春姫から【ウチデノコヅチ】を付与されると効果通りLV.3 からLV.4 へと一時的に【ランクアップ】しているようで身体が軽い。今の状態の感覚をしっかりと確めながら脳裏にイメージを固める。

 

イメージが完成すれば自分の感覚でこの魔法は再現可能だという自信があるので、【魔力操作】による再現は可能だろう。

 

 

「よし、いけそうだな。春姫、お前の魔法を少し借りるぞ」

 

「は、はい。私の魔法で宜しければ……ですが、魔法を借りる、というのは一体……」

 

「まぁ、見てな。【──大きくなれ。其の力にその器。数多の財に数多の願い。鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華と幻想を】」

 

 

【魔力操作】を用いながら【ウチデノコヅチ】の詠唱を唱えると、まさかの自分が勝手知ったる魔法が行使され始めたことに春姫は尻尾とケモ耳がビンッ!と逆立つ程に驚く。

 

それを横目で見ながらニヤリと笑みを浮かべる。 

 

 

「こんっ!それは私の……!?」

 

「【──大きくなれ。神饌を食らいしこの体。神に賜いしこの金光。槌へと至り土へと還り、どうか貴方へ祝福を。──大きくなぁれ】!」

 

「まさか、本当にケンマ殿は春姫殿の魔法を………!?」

 

「【ウチデノコヅチ】!!」

 

 

全ての詠唱を唱え終わると俺の頭上には黄金の小槌を模した魔力の塊が形成される。そしてその黄金の小槌は、そのまま春姫へと振り下ろされて、黄金の魔力は彼女の身体へと宿る。

 

多分、これで【ウチデノコヅチ】は再現されているはずだ。けれど、春姫は自分に【ウチデノコヅチ】は掛けられないので未知の経験になるだろう。

 

 

「どうだ、春姫。初めて自分の魔法を受けてみた感想は?」

 

「えっと、何と申したらよいか、その……身体は軽く感じます」

 

「なら、成功だな。俺の持っているレアスキルの一つで、強いイメージによって魔法を行使できるスキルがあるんだ。だから、今回は春姫の魔法を受けてから強くイメージして再現してみた」

 

「リリはずっと、ケンマ様のレアスキルは魔法スロットを無視するスキルだと思っていましたが、まさかイメージをそのまま魔法として行使できるとは……」

 

「あのちょっと待ってください!ケンマさん、私の勘違いなら良いんですけど、もしかしてそのスキルって詠唱しなくても魔法が使えたりするんじゃ………」

 

「はっ!空中庭園で、自分の肩の怪我を治してくれた時は、ケンマ殿は魔法の詠唱をしておりません!」

 

「やっぱり……。強いイメージだけで魔法を使えるなら態々詠唱までは必要はないんじゃないかなって思ったんです。だから、ケンマさんが態々詠唱をするのはより強いイメージを固めるための手段の一つだから、違いますか?」

 

「カサンドラ、大正解!俺のこのレアスキルは、強いイメージをすればする程に効果がオリジナルに似て来る。イメージが弱いと魔法そのものが使えなくなる。他にも、態々詠唱を唱えることで敵に詠唱しなきゃ魔法を使えないという固定概念から抜け出させないための作戦の一つにも使っているが、実質詠唱はあってもなくても大丈夫だ」

 

 

そこまで説明してやれば、春姫以外の皆はまたしても俺のことを規格外が人の皮を被ったなにかを見るような眼差しを向けてくる。

 

別に、お前らに攻撃系の魔法を使う訳じゃないんだからそんなヤバい奴を見るような眼差しを向けるなよ。春姫を見ろ、自分の魔法と同じ魔法を使ってもらえて嬉しいそうに尻尾をブンブンさせて、ケモ耳もピコピコ動いてるじゃないか。

 

うん、そのケモ耳も尻尾を今すぐに愛でたい。

 

その後は、春姫の代わりに俺が【ウチデノコヅチ】を使って、全員に『階位昇華』の感覚を体験してもらった。こうすることで、いざダンジョン探索中に【ウチデノコヅチ】を受けて慌てることのないように経験を積ませた。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「ちわ~っす、エイナさん」

 

「こんにちは、ケンマくん。今日はどうしたの?」

 

「新しくうちの【ファミリア】に移籍することになった団員の冒険者登録です。元々、非戦闘員で冒険者登録をしていなかったみたいなんで」

 

「へぇ、そんな人がいたんだ」

 

「春姫、この人は俺とベルの冒険者アドバイザーのエイナ・チュールさんだ。これからよく顔を合わせることになるだろうから挨拶してくれ」

 

「サンジョウノ・春姫と申します。宜しいお願い致します」

 

「こちらこそ、イシグロ氏の担当アドバイザーを勤めています、エイナ・チュールです。宜しいお願いします」

 

 

軽くエイナさんと春姫の顔合わせを済ませてから春姫の冒険者登録を済ませると、エイナさんが春姫の元所属していた【ファミリア】に目がいった。

 

 

「ケンマくん、春姫さんの元所属って……」

 

「それに関してはオフレコで、下手に目立つと面倒なんで」

 

「分かったわ。それにしても、また女の子の団員が増えたのね。それも春姫さんも前の二人と同じで綺麗で可愛いし、もしかしてケンマくんは……その……自分だけの花園を作ろうとしてるの?」

 

「自分だけの花園?あー、そういうことか。正直、俺も【ファミリア】の男女比に困ってるんですよね。【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯を皮切りに新しい団員が三人も増えてから新しく広めな本拠地を探してまして、それによって生まれる異性としてお互いに配慮すべき点とかが目立ってくると思うんですよ」

 

「確かに、男女が一つ屋根の下に住むとなるとそうかも。特に歳頃の男女となると、ね」

 

「だから、男の身としては肩身が狭い訳ですよ。けど、毎回団員たちに宿屋に泊まらせる訳にもいかないし……かといって、直ぐに男性団員を含めて新しい団員をほいほいと募集できない理由が【ファミリア】にもあって団長として苦悩の山積みです」

 

「そ、そうなんだ………」

 

 

エイナさんから【ファミリア】内の男女比について突かれたので思わず愚痴ってしまう。

 

 

「もういっそのこと、新しい本拠地は【ヘスティア・ファミリア】のド真ん前に構えてやろうかな。そうすれば、お互いにパーティーを組んでる訳だから色々と楽になるだろうし」

 

「わ、私にそんなことを言われても………。でも、【ヘスティア・ファミリア】の本拠地は第六区画の高級住宅が多い区画だから維持費もバカにならないと思うよ」

 

「ですよねぇ………」

 

 

取り敢えず、当初の目的である春姫の冒険者登録は済ませたけど、新しい本拠地の候補はどうしよう?

 

てか、そもそもの話なのだが、オラリオの街にア○マ○ショップやS○U○Oのような不動産屋が存在するのかすら俺は知らないんだが………どうしよう?

 

取り敢えずはオラリオに存在する空き家などの場所が記載された地図を貰ってから本拠地に持ち帰り、皆で会議を開いて決めるとしよう。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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