臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百五十七話

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「フィンさん!」

 

「来たね、ケンマ。キミならすぐに来ると思ってたよ」

 

 

急いでバベルへと到着すると、そこには既に完全武装の【ロキ・ファミリア】の面々が何十人のアマゾネスたちを警護していた。

 

 

「今回の事件ってやっぱり、フィンさんたちに『鍵』を取られないためのものですよね?」

 

「ケンマもそう思うかい。どうやら僕が元【イシュタル・ファミリア】のテリトリーで『鍵』を探していたことが、今回の事件を誘発させる起爆剤になってしまったみたいだ」

 

「あくまでもそれはきっかけに過ぎませんよ。仕掛けたのは、奴らだ」

 

「そうだね。そう言ってくれるだけで少しだけ肩の荷が降りるよ」

 

「それで被害者状況は?」

 

「見ての通り、奴らの狙いは元【イシュタル・ファミリア】のアマゾネスたちだ。多数の重軽傷者を出し、中には死亡した者もいる。そして何より、今回使われた凶器にはいずれもキミから教えてもらった不治癒の呪詛が込められていた」

 

「あの武器が大量生産されていたってことですか!?」

 

「ああ。更には、使い手は恐らく都市外の暗殺専門の犯罪系【ファミリア】だ」

 

 

やっぱり存在するのか、暗殺を専門に行う【ファミリア】が。オラリオでも探索系【ファミリア】や生産系【ファミリア】があるのだから犯罪系の【ファミリア】があっても何らおかしくはない。

 

そう考えていると後ろから二つ名を叫び呼ばれて、振り返るとそこにはアイズとリヴェリアさんと共にやって来たアイシャの姿があった。

 

 

「【刀剣の支配者】、何故お前がここにいる!春姫の奴はどうした!!」

 

「アイシャか。安心しろ、春姫はウチの団員たちと一緒にギルドにいるし、念のために魔剣も渡してある。あまり言いたくないが、俺もギルドで春姫の安否を確認するまではお前みたいに焦り散らかして、皆の前で春姫を抱き締める始末だ」

 

「……プッ、そうかい。あのへっぽこは無事か。それにしても、公衆の面前であいつを抱き締めるたぁ随分と御執心じゃないか、ええ?」

 

「そ、それよりもアイシャ。春姫の存在は闇派閥に伝わっているのか?」

 

「いんや、それはないよ。春姫の存在は、イシュタル様が徹底して隠蔽していたからね。ギルドの冒険者名簿にも載っていないはずだよ」

 

「そうか。なら、今の所は春姫の安全は確保されたと思っていいか」

 

 

アイシャの口から闇派閥に春姫の存在を知られていないと聞いただけで、俺の心労の荷が少しだけ楽になる。そして残るは、今回の事件の首謀者と実行犯の鎮圧及び捕縛だけになるが、恐らく首謀者は地下に籠っていて無闇に出てくることはないだろう。

 

となれば、捕縛するにはなにかしらの釣り餌───『囮』が必要になってくる。でなければ、奴らを誰一人として捕縛することは叶わない。そしてその餌となるのは、今回の標的であるアマゾネスであることが一番望ましい。

 

しかし、人道的な面からしてアマゾネスたちに自分の命を犠牲して『囮』になれとは俺の口からは言えない。ならば、どうするか?そんなのは決まっている。俺が変身してその『囮』の役を担えば、アマゾネスたちが傷付くことはないのだから。

 

 

「んー、仕方ない賭けに出るか」

 

「何か策があるのかい、ケンマ?」

 

「あるちゃありますけど。この作戦は俺にしか出来ないことなので、フィンさんたちには悪いですけど念のため歓楽街を囲むように待機していてください」

 

「歓楽街を囲むだけでいいのかい?」

 

「……はい。万が一にも奴らに逃げられでもしたら面倒なので、それだけで大丈夫です。あとは、俺が全部片付けますから」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

あの後、フィンさんを筆頭に何人かの【ロキ・ファミリア】の団員を連れて、俺は元【イシュタル・ファミリア】のテリトリーである歓楽街へと赴いていた。

 

 

 

「春姫の件は片付いたからもうここには来ないと思っていたんだけどなぁ………まさか、また来ることになるとは」

 

 

そう呟きながら俺は一人で、歓楽街の中心へと向かう。そして、その道中で一度物影に隠れてからリリの魔法である【シンダー・エラ】の変身魔法を【魔力操作】で再現して、俺の容姿をアイシャに似せているアマゾネスへと変身する。

 

それから迎撃用に『魔剣創造』で創造した《侘助》の能力を付与してある二本の短刀を携え、闇派閥の奴らかあるいは実行犯の奴らが釣れてくれるまで警戒しながら元【イシュタル・ファミリア】の宮殿を目指す。

 

更に警戒しながらしばらく歩いていれば、あれよあれよとまるでゴ○ブ○ほいほいの如く全身真っ黒くろすけのTHE暗殺者といった格好の不審者がワラワラと集まってくる。これで照りを帯びていたらマジで○キ○リだと思うわ。

 

 

「さぁて、どのタイミングで仕掛けてくるのかなぁ」

 

 

いつ仕掛けられてもいいように心構えはしているが、狭い路地裏で縦横無尽に襲い掛かられても面倒なので、俺という餌に釣られた奴らを連れて、焦ったように見せかけながら少し開けた場所へと誘導する。

 

そうするとどうだろう?奴らは有り難いことに俺が焦っていると勘違いしてくれて、これまたノコノコと後ろを追ってきた。

 

こいつら、本当に暗殺者なのだろうか?こんなにも分かりやすい誘導に簡単に釣られてるとか大丈夫なのか?もしかして、逆に俺が誘導されてるとか?

 

 

「どちらにせよ、やることは変わらないけど」

 

 

そうして上手いこと暗殺者たちを何かしらによって砕かれて、まるで岩のベットのような形のモニュメントのある開けた場所と誘導することが出来たら、俺はそのモニュメントに座り込んで暗殺者たちが出てくるのを待つ。

 

そうすることで暗殺者たちも俺が観念して、死に場所をここに選んだと勘違いして一人また一人と姿を現してくれる。

 

 

「やっと出てきたか、待ってたぜ暗殺者共。一応聞くが今回の事件の首謀者は誰だ?」

 

「「「「…………」」」」

 

「答えないか、まぁいいさ。ざっと見た感じ三十人くらいか………」

 

 

周りを軽く見回して、敵の数を把握。

 

 

「それじゃあ、手短に……這いつくばれ」

 

「「「「!!」」」」

 

 

『魔剣創造』による意識外からの攻撃を受けて、暗殺者たちはたちまち地べたへと這いつくばる。それもそのはず、今創造した魔剣にも《侘助》と同じ斬られたら総重量が二倍になる効果を付与してある。それを意識外からまるで針山に刺されるように何本も極細の魔剣が刺されば、一体彼ら彼女らの総重量は何倍または何十倍にまで膨れ上がっているのかは魔剣を創造した俺にすら把握することは出来ない。

 

しかし、そんな中でも片手で数えるくらいの人数は未だに地べたに這いつくばることなく、重くなった身体を何とか両足で支えながら立っている者がいた。

 

 

「やっぱり残るか。ま、それも想定内だけどな」

 

 

《侘助》を使っての攻撃を凌ぐ奴らがいるのは想定内、なので次の攻撃に移ることにした。

 

モニュメントから一度立ち上がり、【プロモーション】と【転生悪魔化】によって二重に昇格した『女王』の『魔力』を活かして、某狩猟ゲーに登場する『雷狼竜』と呼称されているモンスターをイメージしながら身体を丸めて、バチバチと放電現象を起こさせる。

 

そしてイメージが完全に固まった所で、胸を張りながらまるで狼人族のように雨空を貫くかの如く憤怒混じりの雄叫びをあげながら、俺は身体から碧色の電撃を放つ。

 

 

「『ウォォオオオオオ!!』」

 

 

後に聞いた話だが、この日、オラリオの街には二度に渡るドラゴンの咆哮が響き渡った。一回目は【ガネーシャ・ファミリア】への合図であることは直ぐにわかったが、二度目の咆哮は誰に向けられたのか分からない上に歓楽街にとてつもない雷が落ちたとかで、もしかしたら本当にドラゴンがオラリオの街にやってきたのではないかと騒ぎになったそうな。

 

そんな未来が待ち受けているとは露とも思わない俺は、そろそろ頃合いだろうと思い、大放電を止めると放電の余波がまだ残っているのか雨で塗れた地面や娼館からは時折バチリッ!バチバチリッ!と碧雷の稲妻が短い橋を作っていた。

 

それを一瞥しながら放電を受けたであろう暗殺者たちを見渡せば、殆どの奴らが大放電によって身体が痺れているのかビクンビクンッと死に際で弱々しく跳ねる魚のように痙攣し地べたに這いつくばりながら完全に意識を失っていた。

 

 

「ふぅ……これで暗殺者は制圧完了かな。あと残るは………」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈Sideフィン〉

 

 

 

 

「団長、今のはッ!」

 

「多分ケンマの魔法で、僕たちへの合図だろう。アキ、キミはガレスたちにあの雷の発生源へ円形陣形を維持したままで向かうように伝令を出してくれ!」

 

「わかりました!」

 

 

ケンマからは歓楽街の周りを見張る以外は何にも伝えられていないが、あれだけ大規模な魔法を使ったんだ。大方、暗殺者たちに囲まれて一人では対処しきれないと思って広範囲による一撃で制圧しようとしたんだろう。

 

けど、お陰で暗殺者たちの居場所がわかった。ケンマが放った雷の魔法で動けなくなった暗殺者を捕縛し、尚且つ彼らの口から自決薬を取り除いてからじっくりと尋問すれば多少なりとも闇派閥の情報を聞き出せるはずだ。

 

そうして僕らは物陰からの暗殺者による奇襲に警戒しながらも円形陣形を維持したままで、先ほどの電撃が発生したであろう場所を目指す。しかし、その途中で僕は進行方向に違和感を感じて皆に止まるように指示を出す。

 

 

「全体、止まれ!」

 

「「「「!!」」」」

 

「どうしたんすかっ、団長。何か見つけたんすか?」

 

「あれを見てくれ」

 

「えーっと、あれは………雷?」

 

「恐らく、ケンマが放ったであろう電撃系の魔法のなごりだろうね。迂闊に踏み込めば、僕らもあの電撃にやられてしまうかもしれない」

 

 

急に皆へ進軍を止まることを指示した僕に、何か見つけたのではないかとラウルが尋ねてきたので愛槍の矛先を違和感を感じた方へと向ける。次期団長候補であり長い間僕らの背中を追ってきてくれただけあって、その動作だけで僕の感じた違和感の先がそこにあると理解してくれたようだ。

 

そして僕が感じた違和感はラウルが口にしたように雨で塗れた地面や娼館に、時折碧色の稲妻が短い橋を作っている。その稲妻の色は先ほどケンマが広範囲で放った雷撃魔法と同じ色で、つまりその魔法のなごりがまだそこに残っているということだ。

 

 

「これは一度リヴェリアと合流する必要がありそうだ。ラウル、僕が戻ってくるまでここの指揮はキミに任せる」

 

「了解っす!」

 

 

ラウルに指揮を任せて、僕は屋根伝いにリヴェリアの元へと向かう。彼女の第二魔法である【ヴェール・ブレス】には魔法攻撃への耐性を上げる効果がある。あの碧雷も魔法である限りは、リヴェリアの魔法は有効なはずだ。

 

 

「リヴェリア」

 

「フィンか。私の所へ来たということは、【ヴェール・ブレス】をかけた少人数で、あの稲妻が走っている中へ切り込むつもりなのだろう?」

 

「ああ。人選は既に決まってる。キミたちの部隊からは、リヴェリアとレフィーヤ、それからアリシアだ」

 

「【ヴェール・ブレス】を使える私と召喚魔法を使えるレフィーヤ、それと弓に長けたアリシアか。納得の人選だな。他は、ガレスたちか?」

 

「うん。万が一にも取り逃がしたくないから今出せる最高戦力で中へ切り込むつもりだ」

 

「思い切ったな」

 

「これがダンジョンや例の人造迷宮ならばこうはいかないけど、ここは地上だ。なら、地の利は僕らの方にもある」

 

「なるほどな」

 

 

暗殺者たちはヴィレッタが使っていたのと同じ不治癒の『呪詛』が込められた武器を所持していることをリヴェリアとアイズから聞いているため、ここからは下手に大人数ではなく少数精鋭で先に進むのがベスト。

 

それにアミッドからもらった対呪詛用の道具にも限りがあるから大人数で行く訳にもいかないのだ。必要な素材があるのならば、僕らの方で採取してくると彼女に提案してみたが返事は否だ。なんでも、必要な素材の中には()()()()()()()()()()かアミッドの血が必要とかで、前者に関しては特定の人物にしか採取できない超レアアイテムらしい。

 

そういう訳で道具にも数に限りがある。

 

 

「僕の予測が正しければ、その生き血はケンマの血だと思うんだけどね」

 

「ケンマの血がどうかしたのか?」

 

「これは僕の予想だけど、例の赤き龍の帝王の生き血……あれはケンマの血だと思っている」

 

「なに?ケンマの生き血だと!?」

 

「先日の鍛練場でのケンマが唱えていた詠唱の中には、『赤龍帝』という単語があった。そこへアミッドが言っていた『赤い龍の帝王』という言葉を照らし合わせてみれば、自ずと答えがケンマということになる。加えて、ケンマは呪詛への耐性を持つ『耐呪』の発展アビリティを持っている。これだけの判断材料があれば明白だ」

 

「そう言われてしまえば、そうとしか思えんな。全く、我々はケンマに何度貸しを作ればいいんだ」

 

「本当だね。いつか全部返せるといいんだけど」






ヤベッ、フィン目敏い!バレた!?

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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