臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百五十八話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

「二度目になるけど、本当にここへまた来るとは思ってもみなかった」

 

 

目の前にある建物を眺めながら俺はそう呟く。

 

そして目の前にある建物は、元【イシュタル・ファミリア】の本拠地である『女主の神娼殿』。何故、ここに再び訪れているかと問われたら、以前18階層でアイズたちの水浴びを覗いたベルを探した時と同じ方法でアマゾネス殺人事件の首謀者らしき強い生命力をこの宮殿に見つけたのでやってきたのだ。

 

生命力の強さからして第一級冒険者並みの強さを感じられるので、宮殿の入口前で【シンダー・エラ】を解除してから『聖剣創造』で某仮想世界の永久凍土とそこに咲く一輪の薔薇が剣となった《青薔薇の剣》と某オサレなバトル漫画で凍結系最強と謳われる氷の刀である《氷輪丸》の二本を創造してから『赤龍帝の鎧』に身を包む。

 

そうしたら取り敢えず十回ほど倍加して、それを右手で握っている《青薔薇の剣》へと譲渡。その後、《青薔薇の剣》の能力である武装完全支配術で宮殿全体を凍結させて誰も逃げられないようにする。

 

 

「咲け、青薔薇」

 

 

しかし、ここには春姫にフリュネの拷問から助けられた秘密の通路と同じように他にもそういった秘密の逃げ道がないとは断じて言えないので、奇襲などにも注意しながら上階にいる首謀者の元へと向かうとしよう。

 

生命力の反応を頼りに宮殿の中を進んでいると柱などの物陰には、やはりと言うべきか敵が待ち構えており、奇襲を仕掛けてきたがそいつらを俺は左手に握っている《氷輪丸》の一振で頭以外を凍りつかせて完封してやる。

 

 

「18階層の時とは色が違うが、その特徴的な戦闘衣はお前たち闇派閥で間違いないな?」

 

「「「ぐっ、くぅぅぅ………」」」

 

「答える気はないか………まぁ、いいや。お前たちの存在のお陰で、今回の殺人事件の首謀者がいることは確定したんだ。お勤めご苦労様」

 

 

それだけ言い残して俺は先へと進む。

 

四階まで上がったところで闇派閥の構成員は、どうやら俺を首謀者の下へと行かせないように足止めをしているように思える。しかし、首謀者は上層階の特定の位置から動きはない、となると考えられるのは何かしらの罠を設置しているというのが濃厚。

 

罠だと分かれば、これ以上足止めされるのは面倒なので吹き抜け部に移動して、そこから【転生悪魔化】による悪魔の羽で一気に首謀者がいる階層へと飛ぶ。それを見ていた闇派閥の構成員たちは、まさか空を飛ばれるとはこれっぽっちも思っていなかったようで驚きのあまり吹き抜け部の手摺に手をついて、俺のことを見上げていた。

 

 

「ノコノコと顔を出して、バカめ………氷輪丸!!」 

 

 

今述べた通り、ノコノコと手摺から顔を出した奴らに向けて《氷輪丸》を振るって手摺ごと凍結させて、更に首謀者がいる階層へと降り立った。そして首謀者のいる階に降り立ったら、奇襲を受けるが面倒になって来たので宮殿を凍結させた時と同様に、十回ほど倍加してから《青薔薇の剣》へと譲渡し、武装完全支配術でそのフロア諸とも首謀者たちを全て凍結させて逃げ場と動かせる駒を奪う。

 

逃げ場と動かせる駒を奪われた首謀者は恐らく、理解が追い付かずに困惑しているはずだ。そして唯一の逃げ道は、これから俺が通ろうとして一歩道のみ、これで準備は整った。

 

 

「チェックメイトの宣言でも、言いに行くか」

 

 

武装完全支配術で凍り付いた床を『赤龍帝の鎧』の足具でジャリジャリと踏み締めながら、玉座間と思わしき空間へと踏み込む。その間、俺は意味もないだろうことを考えていた。

 

何故、人を殺したのか?何故、人を殺そうと出来るのか?何故、人を傷付けることができるのか?何故、人を傷付けることに嫌悪を感じないのか?

 

以上の質問を今回の殺人事件の首謀者に尋ねても共感できるものは一つも返ってはこないと思う。これが誰かを守るために己の人生を犠牲にする他になかった等、誰かの希望を守るために血で両手を染めるしかなかったという返答ならまだ共感または理解できる。

 

しかし、玉座の間にいる首謀者はそうじゃない。大方、殺すことに快楽を感じ、人が痛みや恐怖で表情が歪んだり絶叫の叫びを聞くことに生き甲斐を感じるようなサイコパスな輩だと俺は思っている。

 

 

「あぁん?なんだよ、【九魔姫】じゃねぇのかよ。氷魔法をぶっ放してきやがったから【九魔姫】だと警戒してたら別の奴かよ。んで、てめえは何者だ?」

 

「人に尋ねる前に、普通は自分から名乗るも────」

 

 

玉座の間にたどり着くと、そこにはピンク色の髪に毛皮付きの外套を身に纏うヒューマンの女性がいた。ここにいる時点で彼女が闇派閥であるのは間違いなく、それで居て《青薔薇の剣》の武装完全支配術からも逃れてみせるほどの強者であり生命力の強さもずっと補足し続けていた首謀者のものと合致している。

 

更には、何故か彼女の容姿と装備を見た途端、先日フィンさんから教えてもらった人造迷宮で亡くなった【ロキ・ファミリア】の団員を殺した闇派閥の幹部の特徴と目の前にいる女性の特徴が合致していることに気付いた。

 

 

「───まさか、お前……ヴァレッタ・グレーデか?」

 

「なんだよ、知ってるじゃねぇか。ま、私のことを知っていようがいなかろうが関係ねぇ。どちらにせよ、てめえはここで殺すからな」

 

「そうか。貴様がヴァレッタ・グレーデ、人造迷宮で【ロキ・ファミリア】の死んだ六人を殺した張本人か」

 

「おいおい、お前、まさかフィンの所の冒険者か?」

 

「そうだと言ったら?」

 

「ハッハハハ!これは面白れぇや、こいつは傑作だぜ!私の所へ一番にたどり着いたのが愛しのフィンでじゃなくて、【九魔姫】や【重傑】でもねぇ。ましてやあいつらの幹部連中でもねぇただの一端の団員だとはなぁ!これが笑わずにいれるかよ!ま、てめえの目的は大方、今言ってた人造迷宮の中で不治癒の呪詛が込められたナイフで私がめった刺しにしてやった雑魚どもの敵討ちってところか?」

 

「…………」

 

「フィンにもあの雑魚どもが私に命乞いをする声を聞かせてやりたかったぜ。「なんで、お前がこんな所にいる!?い、いや止めて来ないで!!だ、誰か助けて!助けて、リヴェリアさん!助けて、ガレスさん!助けて団長!」ってな……。あれは最高に心地が良かったぜ。ただ、フィンの奴が仲間の死体を見て、どんな絶望の表情をしていたのかを直接見れなかったのは惜しかったがな」

 

「言いたいことはそれだけか………」

 

 

嗚呼、駄目だ。目の奴がヴァレッタ・グレーデだと分かってから胸の中にあった黒い炎が、次第にその熱量と激しさを増している。ぐつぐつとそれでいてどろどろした復讐の憤怒で今にも『覇龍』を使ってしまいそうだ。

 

 

「ないのなら、俺から言わせてもらうぞ…………貴様は、赤龍帝の逆鱗に触れたぞ」

 

「はっ、何が赤龍帝だ。フィンでも【九魔姫】でも【重傑】でもねぇ、幹部ですらないてめえみたいな雑魚に一体何ができるんってんだよ?」

 

「なら、特と味わえよ!」

 

 

最早、怒りの臨界点まで一歩まで差し掛かった所で俺はゆっくりと登校の道を歩くようにヴァレッタ・グレーデへとの距離を詰める。その際、ドライグから俺の怒りが限界まで迫っていることから本当に『覇龍』を使うつもりなのかと静止の言葉がかけられる。

 

 

『相棒、少し落ち着け!これ以上は奴の思う壺だ!それに本当に「覇龍」を使うつもりなのか?!近くにはあのエルフの小娘もいるんだぞ!!』

 

(悪りぃ、ドライグ。少し黙っててくれ!こいつだけは、産まれてきたことを後悔させてやらないと気が収まらねぇんだッ!!)

 

 

ドライグの静止を振り切りながらゆっくりと距離を詰めながら《青薔薇の剣》と《氷輪丸》を投げ捨てた俺に、ヴァレッタ・グレーデは完全に格下だと舐め腐っているようで気持ち悪い笑みを浮かべながら『呪詛』が込められた大剣で斬り掛かってくる。

 

 

「態々、武器を捨てて距離を詰めてくるなんざ………そんなに死にてぇみたいだなぃ、おい!」

 

「…………」

 

 

しかし、俺はその一撃を敢えて鎧で受け止める。

 

そして僅かに鎧へ、十円玉で車を擦ったような傷が付くがその程度ならば問題はない。逆に俺はこの状況を望んでいた。何故ならば、斬り掛かってくれたお陰で態々ヴァレッタ・グレーデを追う手間が省けただからだ。

 

そんな俺の思惑も知らない奴を気にすることなく、俺は素早く『呪詛』の大剣と奴の首を右手で鷲掴みにする。

 

 

「があっ!?」

 

「浅はかだな、ヴァレッタ・グレーデ」

 

「て、てめえ……この力………ただの平団員じゃあ!?」

 

「誰がそんなことを言ったよ!」

 

 

最初から最後まで俺のことを【ロキ・ファミリア】の団員だと勘違いしていたヴァレッタ・グレーデは、危機感を覚えたのかLV.5 のポテンシャルで俺から逃れようと暴れ出すが既に決着は付いている。

 

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

「あぐっ!?」

 

「どうしたよ、その程度で終わりか?」

 

 

倍加の効果によってヴァレッタ・グレーデの首を掴んでいる手の力が増して、呼吸が出来なくなってきたのか血走った目で俺のことを睨んでくるがこれで終わりではない。

 

寧ろ、ここからが貴様に送るショータイムだ。

 

 

「苦しいか?助けて欲しいか?貴様は今まで何人の罪なき一般人と冒険者たちの命乞いを無視して、殺し尽くして来た?」

 

「あがががっ!!」

 

「今更、貴様が命乞いしようが俺は貴様を許すつもりはないぞ!」

 

「ぐぎぎぎぎ……!!」

 

 

暴れて逃げ出そうとするの止めるためにそのままヴァレッタ・グレーデを玉座の後ろにある壁へと玉座を貫きながら叩き付ける。その際、背中から強く叩き付けられたのと首を強く掴まれて続けたことで酸欠気味になったのか、握っていた『呪詛』の大剣が音を立てながらヴァレッタ・グレーデの手から滑り落ちる。それを見て、俺は思った。ヴァレッタ・グレーデに産まれてきたことを後悔させてやるには、この手が一番効くだろうと再び倍加の力を高める。

 

その後、高めた倍加の力をすかさずヴァレッタ・グレーデの神経細胞へと譲渡する。そうすることでこれから行うことは、今までにない程に産まれてきたことを後悔することになるだろう。

 

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

『Transfer!!』

 

「取り敢えず、一発だ。歯、食い縛れ!!」

 

 

怒りを込めた左拳をヴァレッタ・グレーデの顔面にめり込ませると歯と鼻の骨が折れて、それによって奴の返り血が兜を汚すが知ったことではない。

 

それよりも拳を叩き込まれたヴァレッタ・グレーデは、倍加の力を譲渡したことにより某緑の戦士のように常人の約一○○○、正確には一○二四倍も神経が研ぎ澄まされており、当然痛感も同じ倍率で研ぎ澄まされている。

 

つまり、今の一撃でヴァレッタ・グレーデは歯と鼻の折れた痛感が一○二四倍になって感じる訳で、そうなればいくら第一級冒険者といえど痛感が一○二四倍となれば激痛の絶叫を上げてしまう訳だ。

 

 

「~~~~~~~~~!!?」

 

「さぁ、地獄を楽しみな」

 

 

某二人で一人の仮面ライダーの劇場版主題歌を歌っていたアニキが演じる仮面ライダーのような台詞を口にしながら、俺はヴァレッタ・グレーデの顔を無詠唱の治癒魔法で治してから第二打を叩き込む。

 

ロイドさん、クレアさん、アンジュさん、リザさん、カロスさん、聞こえてますか? これが今の俺に出来るあなた方へのせめての鎮魂歌です。

 

 

アハッ!アハハッ!アハハハハハハッ!!





もっと強くなって、僕を笑顔にしてよ。アハハハハ。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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