臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第十七話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

エイナさんからソロで7階層まで進出階層の許可をもらった翌日、今日は【ロキ・ファミリア】が逃したミノタウロスの一件の償いや『怪物祭』での食人花からレフィーヤを庇った一件でのお礼ということで、戦闘衣を買っていただけるということでバベルの前にある噴水公園で、【ロキ・ファミリア】の人を待っている。

 

待ってる間、今日はダンジョンに行かないので【魔力操作】で魔力を身体に循環させるていると聞き覚えのある男性の声が聞こえたきた。

 

 

「お待たせしてすまないっす、ケンマくん」

 

「おはようございます、ラウルさん。それと……隣のあなたは、【貴猫】の二つ名を持つアナキティ・オータムさんですね」

 

「ええ、そうよ。今日は団長たちが仕事で出れないから私とラウルが、キミの防具を見繕うことになってるわ。よろしくね」

 

「【ヴィクトリア・ファミリア】所属の石黒ケンマです。よろしくお願いします。あっ、ケンマが名前で、石黒が名字です。ケンマと呼んでください」

 

「私のことはアキでいいわよ、ケンマ」

 

 

噴水公園にやってきた【ロキ・ファミリア】の方々は、先日知り合ったラウルさんと推しキャラの一人であるアナキティさんだった。

 

お互いに自己紹介を終えてからバベルの中にある【ヘファイストス・ファミリア】のテナントへと向かうことになった。テナントに向かう途中の昇降機────つまるところ、エレベーターに乗っているとラウルさんから目的の防具の種類について訪ねられる。

 

 

「ケンマくん、新しい防具はどんなのを考えてるっすか?」

 

「個人的には、普段着としても使える戦闘衣が理想的ですね。ちょっとした事で、すぐにダンジョンへ行けるような戦闘衣がいいです」

 

「普段着としても使える戦闘衣か…………」

 

「だとなるの、駆け出し冒険者にして値が張るかもしれないすっね。ちなみに、普通の駆け出し冒険者なら一万ヴァリス前後が妥当すっね」

 

 

ラウルさんから駆け出しの冒険者では値段が高いかもしれないと言われて、思わず焦ってしまう。ベルが買うであろう防具ですら、九九◯◯ヴァリス。となれば、それをちょっと越える値段になるだろう。

 

思わず、腰に下げている財布の中を確認してしまうほど焦った。

 

 

「因みに予算は心配する必要はないわよ」

 

「あっ、そういえばフィンさんが全額負担するって………」

 

「そうっす。何か、団長とロキがキミとの親好を深めて置きたいみたいすっよ。ケンマくんは、何か心当たりとかあるんすっか?」

 

「あー、あるにはあるんですけど、言えないです」

 

 

下手に未来で起きるであろうとことを伝えたら、SF小説のようなタイムパラドクス的な何かが起きても困る訳だ。けれど、そもそもの話、俺という元々の『ダンまち』の世界にいないはずの人間が入り込んでいる訳だから、ここが数あるIFの世界だという考えも捨てきれないが…………。

 

 

「ん~」

 

「どうしたのケンマ。突然、腕を組んで悩みだして」

 

「いや、ちょっと個人的に思うところがあったんですけど、これは考えれば考えるほどに思考の深海に沈むので止めます」

 

「そ、そう………取り敢えず、予算の方はある程度ならこっち負担するから安心していいかね」

 

「すみません、ありがとうございます」

 

 

これは何かしらのお返しをしないといけない。【ロキ・ファミリア】でも手に入れるのが難しい物、簡単に思い付くのは魔剣だよな。威力の保証は出来ないけど、使用回数が従来の魔剣よりも倍以上も多い物をお返しに送るとしよう。

 

そうと決まれば、ラウルさんとアキさんに【ロキ・ファミリア】の『遠征』で使われる魔剣の属性を聞いて置こう。

 

 

「あの、アキさん」

 

「なに?」

 

「ちょっと聞きたいことがあって、魔剣という魔道具についてなんですけど、【ロキ・ファミリア】の皆さんは遠征とかで魔剣はどんな属性をよく使うんですか?」

 

「詳しいことはいえないけど、威力がそこそこあって、効果範囲の広い魔剣は必ず持って行くわね」

 

「なるほど、深層での『遠征』で使う魔剣は威力よりも効果範囲重視か…………教えてくれて、ありがとうございます」

 

「いいわよ、これくらい」

 

 

アキさんの意見で、魔剣の威力と効果範囲が分かれば後は適当な属性をそれぞれ一本ずつ『魔剣創造』で創造してラウルさんとアキさんに渡せばいいだろう。

 

その際、二人にはフィンさんかリヴェリアさん、ガレスさんに見てもらうように言って置こう。

 

装備の代金の代わりに魔剣を数振り、お返しとして渡すことを考えていると昇降機が目的のフロアに着いたようでゆっくりと静止する。

 

 

「ここが戦闘衣専門のフロアよ」

 

「ここが…………」

 

 

昇降機から降りて、このフロアに立ち並ぶ店のショーウィンドウを眺めると前世のデパートのような感じだと思った。しかし、値段はアホたいに違う。一番安い上着で、三五◯万ヴァリスという高級品だ。

 

普段着としても使える戦闘衣を選ぼうだなんて浅い考えをしていた自分が「バカじゃねぇの!」と思えてしまった。前世でも、それなりに高いブランドの店は知っているが戦闘衣は前世のいうところの作業着に当たる。作業着でも三◯◯万もする物を俺は聞いたことがない。

 

 

「それ、値段の割に性能良くないっすよ」

 

「そうね。ここの戦闘衣は、見せ掛けだけだから冒険者もあまり買わないわよ。この値段なら直接契約している鍛冶師にドロップアイテムを渡して、一から作ってもらった方が性能が沼と湖くらいの差が生まれるわ」

 

「ま、マジすか…………」

 

「フフフ。驚き過ぎて、ラウルの口調が移ってるわね」

 

 

クスクスと笑うアキさんと苦笑いするラウルさんを追いかけながらショーウィンドウに飾られている戦闘衣の中から自分の中の感性で良さそうな物を探す。

 

けれど、素人の目では何れもが凄い戦闘衣に見えて仕方ない。それこそ、目だけが欲しがってしまうほどだ。いずれは、これが軽く買えるくらいまで成長しないとイッセーを越える『赤龍帝』に到底成れないだろう。

 

そんな時、ふと視界に入り込んだフード付きのパーカーに目が惹かれた。デザインは、前世のような現代物ではなく。アニメとかで良く見る異世界物のパーカーだった。

 

 

「どうしたんすか、ケンマくん」

 

「もしかして、それが気に入ったの?」

 

「あっ、はい。ちょっと、目が惹かれたんで」

 

「ふーん、ならちょっと見てみましょうか。こういう装備選びは直感がものをいうときがあるから」

 

 

長年の冒険者としての経験則なのか、そう言ってアキさんはフードパーカーが飾られていた店に入って行き、店員に飾られているフードパーカーを触れさせてもらえるか交渉を始める。

 

交渉を初めて二分もしないで店の中からアキさんに手招きされるので、ラウルさんと共に店の中へと入っていく。

 

 

「ケンマ、あなたの直感は当たりだったわよ」

 

「え?」

 

「どういうことすっか、アキ」

 

「この戦闘衣はなんと…………アラクネの糸とアダマンタイトをふんだんに使用して作られた物なのよ。それに値段もかなり安いわ」

 

「それは掘り出し物っすね!」

 

 

第二級冒険者、それも【ロキ・ファミリア】のラウルさんとアキさんが「掘り出し物」だと認めたのなら間違いなく、駆け出しの冒険者にとってはお宝に近い代物だろう。ここで、このパーカーを逃すのは良くない。買おう。

 

 

「これ買います。いくらですか?」

 

「二十万五◯◯◯ヴァリスになります」

 

「ッ…………すみません、ラウルさん、アキさん。お願いします」

 

「はいはーい」

 

「元からそのつもりすっよ」

 

 

『アラクネ』は、下層に一番近い中層でしか現れないようで、いくら掘り出し物といえどこれくらいの値段はするのだとアキさんから教えてもらった。

 

他にも、同じアラクネの糸で作られたズボンや『メタル・ラビット』の毛皮を加工した物を手の甲と指の第二関節の部分にあしらったフィンガーグローブと同じく、メタル・ラビットの角を加工して作成したブーツを含めて買ってもらってしまった。

 

フードパーカー、ズボン、フィンガーグローブ、ブーツ、全ての合計金額は六八◯◯◯◯ヴァリスと絶対に雑に使えないほど高価な物になってしまった。これだけ買ってもらって、なにもしないのは申し訳なさ過ぎていたたまれない。

 

なので、こっそりと大きめの梱包袋を店員さんに貰って、ラウルさんとアキさんにはトイレに行ってくるの一声かけてからそのうちに『魔剣創造』で俺が造れる最高の魔剣を梱包袋に何本か包んで背中のバックパックに閉まっておく。

 

 

「お待たせしました」

 

「大丈夫っすよ」

 

「それじゃあ、帰りましょうか」

 

 

バベルを出て、噴水公園で分かれることになっているので、二人にお礼を述べてからバックパックの中から魔剣が包まれている梱包袋を敢えてアキさんに渡す。

 

 

「ケンマ、これは?」

 

「えーっと、防具の代金を丸々肩代わりしてもらったお返しです。出来ればフィンさんかリヴェリアさん、それからガレスさん。あっ、神ロキでもいいでの直接渡して欲しいです。多分、次の『遠征』に役立つ物だも思うので………」

 

「遠征に役に立つというと、かなり貴重な魔道具か何かすっか?」

 

「考え方によって魔道具ですね。なので、くれぐれもよろしくお願いします。それじゃあ、俺はこれで、今日はありがとうございました」

 

 

アキさんとラウルさんに一礼してから、梱包袋の中身をこれ以上聞かれないためにも早足で自分のホームへと帰還する。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈sideフィン〉

 

 

 

 

団長室で、いつもの様にカリカリとペンを走らせながら間近に迫っている必要な書類にサインをしながら書類の内容を確認する。

 

今日の執務が残り半分以下になったところで、団長室のドアがノックさせる。

 

 

「団長、ラウルです」

 

「入っていいよ」

 

「失礼します」

 

 

団長室の入り口から入ってきたラウルは、見慣れない包みをもらって僕の前へとやってきた。

 

 

「ラウル、それは?」

 

「ケンマくんとの防具選びが終わって、帰り際に彼から渡された代物です。自分も中身は知らないっすけど、ケンマくん曰く「次の遠征に役立つ物」らしいです」

 

「次の遠征に役立つ物か…………確かにケンマはそう言ったんだね?」

 

「間違いないっす。あっ、あと渡す時には団長かリヴェリアさん、ガレスさんかロキに渡すように言われたっす」

 

「なるほど。ラウル、悪いけど急いでケンマが言っていたメンバー集めてくれ。団長命令だと伝えてくれて構わない」

 

「りょ、了解っす!」

 

 

ラウルに頼んで、リヴェリア、ガレス、ロキを呼んでもらい。三人が集まったところで、しばらくの間、誰も団長室に入らないようにラウルには入り口で門番の役割のお願いした。

 

僕、リヴェリア、ガレス、ロキの四人でソファーに座り、僕らの中心にはケンマがラウルに渡したという包みにがテーブルの上に置かれている。

 

 

「それで、団長命令なんぞ使って私たちを呼び出したのは、この包みか?」

 

「こんな包みに、そこまでする理由があるのか儂には検討もつかんぞ」

 

「んで、誰からの贈り物なんやこれ」

 

「ケンマからだ」

 

 

その一言で、一瞬にして緊張が走る。なにせ、先日の会合であれだけの話を聞かされてはケンマからの贈り物がどういった物のなのか、緊張するのも無理もない。

 

 

「ケンマの防具を見繕った帰りにラウルが彼から渡され、なんでも、次の遠征に役立つ物と断言していたそうだ」

 

「ほう。あの坊主がそこまで言うということは、相当な代物だろうな」

 

「間違いないと思うよ。何せ、僕の親指が少なからず確かに疼いているからね」

 

「フィンがそこまで言うからには期待して良さそうだな」

 

「案外、ケンマがくれた贈り物は偶然掘り出した魔剣だったりしてなー」

 

 

さっきまで自室でお酒を楽しんでいたのか、ほろ酔いの状態で冗談めいたことを言うロキだが、強ち神の直感というのが間違っていないことを僕たちは、すぐに実感することになる。

 

包みを開封すると、中身は七振りの短剣。そのどれもが魔剣だと分かると思わず、ロキにやらかしてくれたようと視線を浴びせてしまうのは仕方がないと思う。

 

 

「ロキ…………」

 

「お主…………」

 

「貴様という奴は…………」

 

「ホンマごめん、フラグ回収してもうた」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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