臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百七十一話

 

 

 

 

 

〈Sideケンマ〉

 

 

 

 

 

街の中なのに慌ただしく完全武装をした冒険家たちを追っていると、たどり着いた場所は街の北側にあるオラリオの入り口である北門だった。

 

アニメ知識から恐らくヘスティアがアレスに拐われてしまったことが原因で、完全武装の冒険者たちが北門に集まったことから直ぐにベルを連れたアイズが来るだろうと思っていると丁度ベルとアイズ、それからフィンさんとロキの四人が会話しているのを発見できた。

 

 

「僕は!神様の────ヘスティア様の眷属です!!だからっ………行かせてください!!」

 

「────勝手にせえ」

 

「しかし、闇雲に追っても本隊に逃げ切られてしまう。確実に神ヘスティアを居る部隊を追えればいいんだが………」

 

 

その会話を聞いてどうやら俺の出番はないと踵を返そうと思ったその矢先、後ろを振り返った瞬間、眼前に気配を消しながらニヤリと笑みを浮かべるヘルメスが居た。

 

その所為で思わず声を上げてしまいベルたちに俺のことがバレると、ヘルメスは俺を他所にベルたちへと歩みよりあろう事かヘスティアを捜索するのに俺とアスフィさんを推薦し出したのだ。

 

 

「うおっ!?」

 

「それについては任せてくれないか」

 

「ヘルメス様!それにケンマも!」

 

「【勇者】、ヘスティアの居場所を見つければいいんだろう?」

 

「できるんか?」

 

「ああ。この、【万能者】アスフィとケンマくんならね!!」

 

「はああああ!?俺もかよッ!?」

 

「諦めてください、ケンマ。こうなったヘルメス様は止まりません」

 

 

勝手に俺まで仲間に引き込んでいるヘルメスに驚きを隠せないでいると、後ろからアスフィさんに肩へ手を乗せられて憐れみの眼差しを向けられる。そんな二人の行動に納得がいかないので反発しようとすると、ヘルメスが先手を打ってくる。

 

 

「ケンマくん、ヘスティアはアルテミスの大切な神友だ。そんな大切な神友が送還されてはアルテミスも悲しむ。だから頼む。オレのためもどうかベルくんに力を貸して欲しい!」

 

「ケンマ、僕からもお願い!神様を取り戻すために力を貸して!」

 

「………はぁ、わかったよ。やれるだけやってみるよ。だけど少し時間をくれ。本拠地に残した春姫たちが帰って来ない俺を心配するし、ベルもリリたちに何も言わずに都市外に出る訳にも行かないだろう」

 

「そ、それは確かに……リリたちも僕と神様のことを心配するだろうし」

 

「だから、俺が春姫にリリたちへの伝言を残して、ここに戻ってくる。それまでにベル、お前は最低限心臓を守れる胸当てくらい借りて来い。護身用のナイフ一本で王国の兵士たちと戦うには心許ないからな」

 

「私も準備に三十分ほど頂きたいです」

 

 

ヘスティアを探していた為に護身用の《ヘスティア・ナイフ》しか装備していないベルの左胸を指で叩きながら、俺は【赤龍帝からの贈り物】をベルに施すと、隣にいたアスフィさんもヘスティア捜索のための準備をするのに時間が欲しいとフィンさんへ述べる。

 

それを聞いたフィンさんは、いつもの癖である右手の親指をペロリと舐めると「わかった」とアスフィさんの要望通り俺たちに準備時間として三十分の猶予を与えてくれた。

 

なので、俺とアスフィさんは北門から素早く動き出し、それぞれの本拠地へと分かれた。そして本拠地に戻ると俺のことを心配してくれていた春姫とカサンドラが真っ先に出迎えてくれた。

 

 

「ただいま」

 

「お帰りなさいませ、ケンマ様!」

 

「お帰りなさい、ケンマさん!」

 

「それで、何があったの団長?」

 

「端的に説明すると、北側の関所で神ヘスティアがオラリオに潜入しようとした王国の兵士たちに攫われたらしい」

 

「「「は………?」」」

 

「「「ヘスティア様が攫われたぁぁああ!!?」」」

 

 

先ほど完全武装をした冒険者たちが街を駆けていたのは、ヘスティアがアレスたち王国の連中に攫われたからだと三人に説明すると分かりやすく驚愕するので助かる。

 

それを横目で見ながら俺は念のために自室で防具を付け始め、開けたままの扉を通して春姫たちにこれからの指示を残す。

 

 

「ちょっと、団長!ヘスティア様が王国に攫われたってどういうこと!?」

 

「神ロキ曰く、じゃが丸くんの素材を都市外に取りに行こうとして神ガネーシャが検問を通らせたら偶然そこにオラリオへと入ろうする一般人や商人に紛れていた王国の主神アレスに捕縛、そのまま連れ去られたそうだ」

 

「そんな……!?」

 

「だから、これから俺とベル、アイズ、アスフィさんで捜索隊の第一陣としてオラリオの外に出ることになった。そういう訳だから春姫には悪いけどこれから【ヘスティア・ファミリア】に戻って、リリたちに神ヘスティアが攫われたこと、俺たちが捜索隊として動いているから下手に動くなと伝えて欲しい」

 

「しょ、承知しました」

 

「ダフネとカサンドラは春姫を【ヘスティア・ファミリア】まで送って欲しい。その後はここで待機、もしもフィンさんたち【ロキ・ファミリア】か【ガネーシャ・ファミリア】、ギルドから指示があったらそれに従ってくれ。それから日没までに俺が帰って来なかったら豊饒の女主人にいるヴィクトリアと【ヘファイストス・ファミリア】のテナントでバイトしてるアルテミスの迎えを頼む。本拠地の鍵は置いて行くから使ってくれ」

 

「わかりました」

 

「わかった。任せて、団長」

 

 

二人には万が一にも俺のいない間や今日中にオラリオへ戻って来れなかった時に備えての指示を出し終わると丁度防具も付け終わったので軽く感覚を確かめたあと、本拠地の予備鍵を副団長であるダフネに渡してから本拠地を後にする。

 

 

「それじゃあ、行ってくる」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈side春姫〉

 

 

 

 

「は、春姫殿……今なんと!?」

 

「ヘスティア様が攫れた!?」

 

 

ケンマ様がベル様たちと共にヘスティア様奪還に向かわれた後、私はダフネ様とカサンドラ様のお二人に【ヘスティア・ファミリア】の本拠地である『竈火の館』への送っていただき、その後暖炉のある居間にてリリ様たちにヘスティア様が王国の兵士に誘拐されたことをお伝えしました。

 

 

「はい………ヘスティア様が北門の関所で一般人や商人の方々に紛れていた王国の兵士に攫われてしまい、今は行方知らずと」

 

「ベル様は、ベル様は今なにを!?」

 

 

ヘスティア様が誘拐されたというこんな時に【ヘスティア・ファミリア】の団長であるベル様は何をされているのかとリリ様から尋ねられます。

 

 

「ベル様は、ケンマ様、【ロキ・ファミリア】の【剣姫】様、【ヘルメス・ファミリア】のアスフィ様の四名で先遣隊としてヘスティア様を追われています。ですので、ケンマ様から自分たちのようにヘスティア様を追わず、下手な動きもしないようにと伝言を承りました」

 

「ふざけろ……また王国の奴らかよ!それもヘスティア様を誘拐しやがって、今度はあの方を人質にしてまで俺と魔剣を手に入れようってか!どこまであの国はクソッタレなんだッ!!」

 

「ベル様……ヘスティア様……」

 

 

ケンマ様のご指示通りに伝言を伝え終わるとヴェルフ様は、今度のヘスティア様誘拐の原因が自分にあると察して握り拳を作りなが自分と王国への怒りで体を震わせ、リリ様はベル様とヘスティア様を心配されて窓が曇天の空を見上げられます。

 

斯く言う私もヘスティア様たちの事が心配で、お三方が無事にお戻りになられるよう願う他ありません。

 

 

「皆様、どうかご無事で………」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈sideベル〉

 

 

 

 

「はあっ、はあッ、はっっ……がっっ……!?」

 

「おら、どうしたベル!速度が落ちたぞ!もうへばったか?手助けが必要か?」

 

「ッッ………いらッ……ないッ!!」

 

 

息が苦しい!空気が足りない!呼吸が乱れに乱れて、額から流れ出る止まらない汗がうっとしい、脚が鉛のように重い!けれど僕の少し前を走っているケンマは、同じLV.3 で急ごしらえで借りた胸当てだけ装備している僕と違って、いつものダンジョン探索で装備している赤いライトアーマーを身に付けた完全武装でありながら多少なりとも汗はかいているけど平然とした顔で、僕のことを気にしながら僕らの先を駆けているアイズさんを見失わないよう彼女にも気を配っている。

 

また先頭を走っているアイズさんは道中で無謀にも襲い掛かってくる『バグベアー』などのモンスターを片手間であっという間に屠っていることから今走っている速度は彼女の本気ではない。それは『赤龍帝の鎧』や『天鎖斬月』も使っていないケンマも同じで、つまり僕は完全に二人のお荷物で、ロキ様に言われた通りアイズさんの足も引っ張ってしまって、その上ケンマの足も引っ張っている。

 

 

「─────」

 

「~~~~~~~~~ッ!!」

 

 

そして、こちらを様子を肩越しで窺いながら走るアイズさんの視線と息絶え絶えになりながら走る僕の視線が交わった。一秒にも満たない刹那の交わりだったのに、それだけなのに全身が燃えるように熱を帯び、羞恥とくだらない負けん気、男の意地が僕に走る活力を与えてくれる。

 

そんな僕を他所に、ケンマは鼻を数回鳴らすと何かに気付いたのか、それを直ぐに先頭を走っていりアイズさんに伝える。

 

 

「ん、濡れた雑巾臭………。アイズ、これから一雨来るかしれん、アスフィさんを見失わないように気を付けてくれ!」

 

「ん!」

 

 

ケンマの気付きを聞いたアイズさんは先ほどの様に、肩越しから振り返り頷くと直ぐに前へ向き直る。それから十分もしないうちにケンマが言った通りポツリポツリと雨粒が落ち始め、次第に雨は本降りなるけど大雨など気にせず走り続けていると急にアイズさんが走る速度を上げた。

 

今まで僕のことを気にしながら走っていたアイズさんが、突然走る速度を上げたことから神様を連れ去っている王国の一団を見つけたのようで、それを証明するように僕たちを置いて加速したアイズさんが消えた先から大声で次のような声が響き渡る。

 

 

「けっ、【剣姫】だぁああああああああああッ!?」

 

「てっ、敵襲うううううううううッ!?」

 

 

アイズさんの奇襲を受けた王国の兵士たちは混乱しながらも応戦しようと試みるも一太刀のうちに破れ去り、地面に吹き飛ばされる者、宙を舞う者が続々と僕らが走っている場所からでも確認できた。

 

そして僕らが着いた頃には、アイズさんは兵士たちに囲まれてしまい身動きが取れない状況に陥っていた。

 

 

「アイズさん!」

 

「ベル、お前は神ヘスティアを!アイズは、俺が援護する!」

 

「ッ────わかった!」

 

 

悔しいけど、今の状況で優先順位を付けるとしたら間違なく神様の救出が最優先。例え王国の兵士たちに囲まれて居ようとも第一級冒険者のアイズさんなら直ぐに抜け出せるし、更に親友のケンマが援護が向かったのなら大丈夫。本当はアイズさんを助けに行きたい自分にそう言い聞かせながら僕は、息を殺して、地面に這いつくばりながら兵士たちの足元をそろりそろりと掻い潜って行く。

 

そうして兵士たちの中を掻い潜って、神様まで後少しの所まで辿り着いた僕は、周りの意識がアイズさんとケンマに向いている間に神様へ声を掛ける。

 

 

「神様!」

 

「べ、ベルくん!」

 

 

しかし、それがいけなかった。

 

何故なら僕が声をかけた所為で麻布から抜け出そうとしていた神様を意識を僕へ向けてしまったことで、まだ神様の足元にある麻布に神様は足を取られてふらついてしまう。

 

 

「あ………うわあああ、ベルくんッ!!」

 

「─────神様ッッ!!」

 

 

何とか神様は体勢を直そうとするけど、そのまま渓谷の隣を流れている激流の川へと真っ逆さまに落ちて行くのを見て、僕は無我夢中で飛び出して、何とか空中で神様を抱き締めながら僕共々、流れの川に落ちて激流に流され行くのだった。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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