臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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第百七十二話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「────神様ッッ!!」

 

 

アイズを援護するために彼女を囲んでいる王国の兵士たちを手加減しながら倒し続けていると、渓谷の置くの方から切迫したベルの声が聞こえてきた。その声に意識を持っていかれるとそこには渓谷の横を流れている川にヘスティアを抱き締めたベルが落ちて行く姿が見えた。

 

それを見た途端、アニメ知識からではなく親友が渓谷の谷底へと落ちて行くという認識から反射的にアイズへ二人の後を追うよう叫びながら、兵士たちの視線を俺へ釘付けにするためにかなり手加減した弱めの青白い方の【月牙天衝】を兵士たちへ放ち、何人か吹き飛ばす。

 

 

「二人を追え、アイズ!!」

 

「ッ────!!」

 

 

すると案の定、『魔剣』が大好きな王国の兵士たちは詠唱もしていないのに剣から青い斬撃が放たれたのを見て、俺が握っている剣が『魔剣』だと盛大に勘違いをする。それによって兵士たちの動きも完全に止まり、その隙を突いてアイズはまるでリューさんの二つ名のような疾風の如き速さで激流の川に流されたベルたちを追跡する。

 

アイズがベルたちを追って渓谷の横に流れている川へと姿を消すのを視界の端まで見送った後、俺は意識を直ぐに兵士たちに戻して、アイズたちの後を追わせないように牽制しようと考えるがその必要はなかったようだ。

 

何故なら───────

 

 

「おい、マリウス見たか!魔剣だ、彼奴は魔剣を持っているぞ!それも見たこともない類の魔剣だ!あれを奪えばオラリオの冒険者たちに一泡吹かせてやれるぞ!!」

 

「アンタ、相手が誰だか分かって言ってんのか!あの冒険者は、先の【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯で十人以上の冒険者を一人で倒した上に私と同じLV.3 の【太陽の光寵童】を終始圧倒した実力者だぞ!?そもそも、魔剣一本奪った所でオラリオの冒険者たちが泡なんて吹くわけないだろうッ!!」

 

「そ、それは………だが!アポロンの兵士たちを圧倒したのはあのバカでかい包丁のような見た目をした大剣とバンカイとやらが使えたからであろう!しかし、今の彼奴が持っているの魔剣だ。あの大剣ではないぞ!!」

 

 

王国の主神であるアレスとマリウスと呼ばれた金髪の青年のやり取りを眺めながら思う。マリウスは敵ながらアスフィさん並みに苦労人なのではないかと………敵ながら可哀想に。

 

そうなことを思っていると上空で待機していたアスフィさんが、俺一人で一個小隊を相手にするのは流石に危ないと思ったのか援護するために降下してくる。

 

 

「ケンマ!」

 

「させるか!」

 

「アスフィさん!?」

 

「これはミスリルの鎖……!」

 

 

けれど、それを阻む者がいた。それはアレスの隣にいるマリウスだった。彼は懐に隠していた鎖を降下してくるアスフィさんへ投擲、上手く彼女の足に鎖を絡ませることに成功するとそのまま綱引き状態へと持ち込んだ。

 

 

「【万能者】、お前さえ討てばオラリオは私達を捕捉する術を失う。絶対に逃がさないぞ」

 

「マリウス・ウィクトリクス・ラキア────愚王の実子と聞いていましたが、中々の器のようですね……!」

 

「私も面白い話を知っているぞ?とある海国の美姫が神に連れ去られ、冒険者に身を堕としていると!彼の国は決して認めようとしないがな!」

 

「やっぱり、アスフィさん王女だったんだ!?」

 

 

アスフィさんとマリウスの話を聞いて、前世のアニメサイトか何かでアスフィさんは何処かの国の王女であるという記憶が頭の何処かにあったのだが、それが今は確信へと変わった。

 

 

「でかしたぞ、マリウス!あやつとそこの魔剣を持っている冒険者を倒し、ヘスティアを追うぞ!」

 

「却下ァ!!」

 

「何故だ!?」

 

「あの白髪の冒険者と【剣姫】が女神の側にいるんですよ?それに魔剣の彼と【万能者】がいる今、戦況維持だって難しい!そもそも、この高さから落ちて女神が無事かどうかも分からないでしょう!大体、アンタが無謀にも【剣姫】に挑んだりするから状況が悪くなったんですよ!?ちょっとは自覚しろ、この愚神がぁ!」

 

「なっ、なんだその口利き方はっ!貴様の父親のマルティヌスは私に敬意を払い、なんでも言うことを聞くというのに!」

 

「アンタの言うことをホイホイと聞くから私の父は父親は愚王なんて呼ばれているんだよ畜生!!」

 

 

またしてもアレスとマリウスが言い争いを始めたので、その間に【プロモーション】と【転生悪魔化】で二重に『女王』へと昇格した上で両手だけ『赤龍帝の鎧』を纏う。

 

 

「ダブル【プロモーション・クイーン】からの部分禁手化!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』

 

「よし、成功!」

 

 

初めて部分禁手をやって見たが強くイメージしながら試みたお陰でぶっつけ本番で成功したことに、喜びを感じながら魔剣を鞘に納め、某死ぬ気のバトル漫画に出てくる主人公のように両手から炎の代わりにオーラを推進力として放出して一気に高速飛翔する。

 

またこれも初めての試みのため、某死ぬ気のバトル漫画の主人公みたく超直感的に今の飛び方を理解できる訳ではないので、その都度【魔力操作】で掌や足裏に足場となる魔力場を生成して方向転換に使う。それでもまったく慣れていないので方向転換は直角に曲がることしかできない。

 

 

「やっぱりぶっつけ本番じゃあ、上手く制御できないか!」

 

 

取り敢えず、鎖で動きを封じられてしまってアスフィさんを助けるべく、彼女の下へと飛翔し、そのまま肩に触れてながら龍のオーラで包み込んでから『透過』の能力で鎖から解放させる。

 

 

『Penetrate‼』

 

「怪我はないですか、アスフィさん?」

 

「鎖が!ケンマ、今なにを………!?」

 

「今のはアルテミスを救う時に使った力です。怪我はありませんか?」

 

「え、ええ、この程度なら掠り傷です」

 

「なら、良かった」

 

 

いくら【恩恵】を持ったLV.3 の冒険者でも同じLV.3 から投擲された鎖を受けて無傷という確証はなかったので、アスフィさんに傷の具合を尋ねて掠り傷程度だと返ってきたことに安堵する。

 

そしてお互いに高度を上げ、マリウスからの鎖攻撃を受けないようにしてから俺は魔力場で身体の体勢を整えてから掌のオーラを放出させながら魔力場を蹴る力と合わせて一気に加速、そのままこちらを見上げているアレスの背後を逆さまになりながら奪う。

 

 

「意趣返しだ。来てもらうぞ」

 

「え?は?ちょっ、ぬおあああああああッ!!?」

 

「アレス様!!」

 

 

アレスの背後を奪った俺は、奴が装備している甲冑の襟を掴んでアスフィさんがいる場所まで戻る。これでフィンさんへの手見上げが出来た。

 

 

「アスフィさん、これ以上奴らに付き合う必要はありません。一度撤退しましょう」

 

「そ、そうですね。あちらの主神もケンマが攫って来たことですし、不必要な戦闘は避けるべきです」

 

「おい、こら離せ!私の王国の主神だぞ!?」

 

「…………はぁ、そうか。なら、ほれ」

 

「へっ………?ほぎゃああああああッ!!!」

 

「ちょっ、ケンマ!?」

 

「「「「アレス様!!」」」」

 

 

離せと言うから離してやると案の定、絶叫の叫びを上げるので直ぐに降下して、再度アレスの襟を掴んで捕獲する。

 

 

「よいしょっ!」

 

「グエッ!?」

 

「これに懲りたら俺の手を煩わせるなよ?こちとらヘルメスに神殺しの冒険者依頼を受けた事があるんだ、神の一人や二人殺す覚悟は疾うに出来ている」

 

「す"ひ"は"せ"ん"」

 

「よろしい」

 

 

命綱無しのバンジーを体験したアレスに神殺しをすることに対して、何の迷いもないことを告げるとそれが『嘘』ではないと分かると涙と鼻水を垂らしながら大人しくなったのでオラリオに向けて飛行することにした。

 

そんなやり取りの一部始終を見ていたアスフィさんは、無言で俺のことをヤベェ奴を見るような眼差しと神殺しに対して覚悟を決めさせる原因を作ったヘルメスを後でしばくことを決意しているとは、この時の俺は知りよしもなかった。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「という訳で、勝手ながらアイズにベルと神ヘスティアを追うように指示を出しました。その代わりにこの通りバカ神はしっかりと捕獲して来たので」

 

「あべしッ!?」

 

 

オラリオの北門に仮設テントを立てて、そこで俺たちの帰りを待っていたフィンさんとロキ、ヘルメスの前に手土産だとばかりに捕まえたアレスを放り投げる。

 

バカとはいえ神を雑に扱う俺を見て、フィンさんとロキ、ヘルメスは引いていたが知ったことではない。アニメで知っていたが、こいつの所為で親友のベルはヘスティアと共に渓谷の下にある川へと落ちることになったのだからこれくらいは許し欲しい。

 

 

「そ、そうか………。アイズとベル・クラネルならび神ヘスティアの件はわかった。神アレスの捕縛、ご苦労だったねケンマ」

 

「いえ、俺も試したいことが試せたので好都合でした」

 

「試したいこと?」

 

「ええ。とある物語の主人公がやっていた動きの再現を少々試していたんです。結果は、まぁぶっつけ本番で試したのでオリジナルと比べたら全然まだまだですけどね」

 

 

前世から思い描いていた某死ぬ気の主人公の動き自体は真似られることが今回の事件で分かったので、後はその練度を上げて、いずれはあの『柔』と『剛』の炎で放つ必殺技を魔力かオーラで真似られるように基礎鍛練を怠らないようにするつもりだ。

 

なんせ、あれは厨二心を擽り、アニヲタとしては【月牙天衝】に次ぐ是非ともやってみたいロマンの詰まった必殺技の一つのだからな。

 

頭の中で新しい必殺技のロマンを描きつつ、フィンさんへの報告もそこそこに俺は本拠地に一度戻って、ヴィクトリアたちに今回の事を説明した後、『竈火の館』でベルたちの帰りを心待ちにしているリリたちにベルのことを報告するために動きたい旨をフィンさんロキ、ヘルメスに伝える。

 

 

「すみません、話が脱線しました。報告は以上になるんですけど、何か俺がやることありますか?もしもなければ、このまま本拠地に戻ってヴィクトリアたちに報告した後、そのまま【ヘスティア・ファミリア】にも向かいたいんですけど………」

 

「いや、問題ないよ。ケンマのお陰で残っているのは、神ヘスティアとベル・クラネルの捜索だけ。けれど、生憎のこの雨じゃあベートやアキの鼻も効かないだろうから今日中の捜索は無理だろう」

 

「分かりました。それじゃあ、俺はこれで」

 

「お疲れ様、ケンマ」

 

「おつかれさん、ケンマ」

 

「お疲れ様、ケンマくん」

 

「お疲れ様です」

 

 

フィンさんたちに報告終えたあと、仮設テントを後にした未だに本降りの雨が降る中を大分伸びた前髪を鬱陶し気にかき揚げながら急いで本拠地へと走る。

 

そうして仮設テントで僅かに乾かした装備や髪も再びずぶ濡れになりながら何とか本拠地に戻り、玄関を開けようとするがガチャガチャと鍵が掛かっていた。

 

そこで思い出すのは、自分の鍵をダフネに渡してしまっていることである。

 

 

「あちゃー、やっちまった。しゃあない、呼び鈴鳴らすか」

 

 

仕方ないので呼び鈴を押して誰かが玄関を開けてくれるのを待っていると、ドタバタと誰かが走ってくる音とその走ってくる主に静止の声をかけるダフネの声が聞こえてくる。

 

 

『ちょっと、アルテミス様!不用心過ぎるって!!』

 

 

そして玄関からガチャガチャ、ガチャリ!と音が鳴ると中から焦った様子のアルテミスが出てくる。

 

 

「ケンマ!ヘスティアとベルは!?」

 

「あー、取り敢えずただいま。ベルたちの事は【ヘスティア・ファミリア】で話すわ。まずはシャワーを浴びさせてくれ、雨でベタベタなんだ」

 

「二人は!二人は無事なのか!?」

 

「ああ、二人へ生きてる。けど、詳しい話は【ヘスティア・ファミリア】の本拠地でリリたちにも話す。ここで話したら二度手間だからな」

 

「…………分かった」

 

 

なんとか焦っているアルテミスを落ち着かせた後、俺は自室にて濡れた防具を外してから着替えを持って、直ぐにシャワーで冷えた身体を暖める。

 

その後、準備として某四大行のバトル漫画に出てくる旅団の一人が使っていた傘の仕込み刀を『魔剣創造』で人数分創造して、傘の使い方をレクチャーしてから【ヘスティア・ファミリア】の本拠地である『竈火の館』へと赴く。

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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