臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
〈sideケンマ〉
『ヘスティア誘拐事件』から五日、未だにベルたちはオラリオに戻って来てない。誘拐当日から二~三日は雨が続いていたのでアニメで描かれていた三人が立ち寄った村で行われる豊穣の祭りは行われない限りは戻っては来ないと分かっていた。そして昨日と今日の天気は、晴れなので今日の夕暮れか明日くらいには三人とも元気にオラリオへ戻ってくるだろうと俺は予想する。そうなれば、ずっとヘスティアたちのことが心配で暇があればを北門でヘスティアたちの帰りを持っているアルテミスも落ち着くだろう。
そうなれば大きな悩み事の一つは減る。他に残っている大きな悩み事で、今直ぐ解決したいのはこの四日ずっと続いている俺を観察あるいは監視するような正体不明の視線だ。その正体不明の視線に気付いてから四日の間、正体不明の輩はこれといって俺やダフネ、カサンドラに何かを仕掛けてくるような素振りは見せていない。本当に唯ただ俺を監視するだけに努めているので、こちらから仕掛けて藪蛇になるのは避けたい。
そんな悩み事を抱えつつ、今日もいつも通りにダンジョンへと赴き17階層の『嘆きの大壁』まで探索していると、16階層までずっと続いて視線がなくなっていることに気付き、思わず『嘆きの大壁』の入り口へ振り向いてしまった。
「あれ?」
「どうしたの団長?」
「いや、ちょっとな」
何故、急に正体不明の視線が消えたのかに疑問を抱えつつ新たなモンスターが生まれる前に18階層へ降りてしまおうと脚を返した刹那、背後から強烈な存在感と風を切る音を耳が捉えて思わず再び振り返り、短い冒険者経験から何か強力なモンスターが迫っているのだと判断。即座にダフネとカサンドラに臨戦態勢に入るように指示を飛ばしながら念のため両手だけ『赤龍帝の鎧』を纏う。
四日前から始めた部分的な禁手化だが、ドライグやヴェルフなどにも相談してみて、両手だけならば人前で発動したとしても普段からヴェルフ謹製の赤い籠手を装備しているのであまり目立つことはないだろうと意見を貰えたので、今回は強烈な存在感を放つモンスターが迫って来ているので出し惜しみはしない。
「ッッ─────二人とも臨戦態勢!何か来るぞ!」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』
「「ッッ!!」」
両手だけとはいえ、俺が『赤龍帝の鎧』を纏いながら指示を飛ばすのを聞いたダフネとカサンドラは即座に魔石を回収する手を止めて、自分の得物へと手を伸ばす。そして三分もしない内にそいつは現れて、全長約百○○Mはある『嘆きの大壁』をビリビリと震わせるような雄叫びを放ってくる。
『───オオオオオオオオオオオオオッ!!』
「あ、あれって……!?」
「わ、ワイヴァーン……!?」
『ワイヴァーン』。俺たちが今いる中層域で階層主である『ゴライアス』に次ぐ強力のモンスターであり、上層で稀に出現する
それによく観察すれば、この
「二人とも気を抜くなよ、恐らくあのワイヴァーンは強化種だ」
「確かに、ウチたちの知ってるワイヴァーンより、あのワイヴァーンは大きいような………」
「それに身体の色もいつもの退紅色から少し黒みを帯びているような………」
ダフネとカサンドラも俺が目の前にいる
「フバーハ、マジックバリア、スクルト」
強化種の
「団長、今の魔法は?」
「炎と氷の攻撃半減、魔法攻撃と物理攻撃への防御力向上の魔法だ。これで万が一の備えはした」
「備えはしたってことは……まさか、ウチたちだけであの強化種のワイヴァーンを倒すつもり!?」
「無理無理無理、絶対に無理です!いくらケンマさんが強くても私とダフネちゃんがいたら足引っ張っちゃいますよ~!!」
「そうだよ!18階層は目と鼻の先なんだからリヴィラの連中に応援を頼もうよ!」
現実的な考えを示すダフネと悲観的な考えを示すカサンドラの二人の意見を聞いたが、俺個人としては二人には早々にLV.3 へと【ランクアップ】をして貰いたい。具体的には、アニメ四期から始まる下層への遠征前くらいまでには。
なので、どうやって二人を説得して
「あれは………血か?」
「血?でも、あのワイヴァーンに傷なんて……」
ダフネの言う通り、
『BoostBoostBoost!!』
『Transfer!!』
今もなお羽ばたきに合わせて滴り落ちる血の出所を探るために、三回倍加してから視力に力の譲渡をすると直ぐに血の出所が判明した。それもよりにもよって最悪の場所から血が滴り落ちていた。
何せ、滴り落ちていた血の出所は
「ッ────な、なんで……どうしてお前がそこにいるんだ!フィルヴィス・シャリア!!」
「「えっ!?」」
「フィルヴィス・シャリアって……確か【ディオニオス・ファミリア】の団長で、【白巫女】って二つ名のウチらの団長と同じLV.3 の第二級冒険者のはずじゃあ………」
「そんな人がなんでワイヴァーンに捕まって………」
二人には悪いけど「どうして」や「なんで」とかはどうでもいい。今は
「取り敢えず、カサンドラは回復魔法の準備、ダフネはカサンドラのサポートを頼む。俺はフィルヴィスを助けてくる」
「分かりました」
「はぁ、団長ならそう言うと思った。ウチらの団長は一人の
「悪いな。これがお前たちの団長である俺だ」
そう言い残してから部分的だった『赤龍帝の鎧』を全身へと纏い直してから
「ドライグにイッセー!速度優先でアレを使うぞ!」
『ほう、イッセーのアレを使うか』
『いいぜ、後輩!俺の力で捕らわれの美少女を神速の勢いで救って来い!』
「モードチェンジッ、『
『Change Star Sonic!!!!』
【イシュタル・ファミリア】との一件で真『女王』と共に継承した『
「ナイフッ!!」
『グオオオオッ!?』
「う、ァ……」
「フィルヴィス!!」
突如として股関節から綺麗に右脚を落とされた
神速でカサンドラの下にたどり着くと、彼女は即座に俺が抱き抱えたままのフィルヴィスに治癒魔法の【ソールライト】を行使してくれる。それによってフィルヴィスの身体に刻まれていた無数の裂傷がまるで時間を遡るかのように綺麗に消えて行く。
「ありがとう、カサンドラ」
「いえ、ですがその姿は………?」
「後で説明する。それよりもまずはあのワイヴァーンをどうするかだ」
治癒魔法で傷が治り、呼吸が安定したフィルヴィスを地面に優しく下ろしながら治癒魔法を掛けてくれたカサンドラをお礼を述べてつつ、ボタボタと股関節から潜血流しがら右脚を失ってもなお羽ばたき続けている
まずは、その戦法をやるために俺は一度『赤龍帝の鎧』を解除して『聖剣創造』を使えるようにし、そのまま某オサレなバトル漫画で病弱な隊長が使う十手を逆にしたような刀の二刀流の聖剣を創造しながら解号を口にする。
「波悉く我が盾となれ、 雷悉く我が刃となれ────双魚理!!」
独特な形状をして、柄尻に一本の縄と複数の札で繋がっている二振り刀である《双魚理》を聖剣として創造したら、団長としてダフネとカサンドラに少し無茶な指示を下す。
「ダフネ、カサンドラ。二人には悪いが、二人であのワイヴァーンをここで倒してもらう」
「二人で倒してもらうって、ウチとカサンドラだけで団長は手伝ってくれないの!?」
「いや、無論手伝うさ。だけど、俺から積極的に攻撃を仕掛けることはない。何故なら二人には、コイツを倒して【ランクアップ】をしてもらいたいからだ」
「ら、【ランクアップ】って……」
「あ、あの
ダフネが俺の指示に信じられないと顔をする傍ら、カサンドラは地面で寝ているフィルヴィスを一瞥しながら俺たちの戦闘が始まれば間違いなく彼女もその余波や逸れた攻撃に巻き込んでしまう可能性がある。それに対してどうするのかと俺へ尋ねてくるが、それは想定定済みである。
その証拠に、次のように述べながら『聖剣創造』で強度の高めながら炎を無力化する能力を付与した聖剣たちでフィルヴィスを守るようにドーム状の聖剣壁を創造する。
「これでフィルヴィスは守るし、二人も俺がワイヴァーンの攻撃から守って見せる。矛盾したことを言うようだが、無茶はせずに確実に奴を倒して行こう」
「本気なの?」
「ああ、本気────って来るぞッ!!」
「「ッ!!」」
今もリヴィラの街にいる冒険者たちに応援を頼もうとしているダフネに、俺もカサンドラと共に【ランクアップ】してもらいから
炎の息吹が
「返すぜ、お前のブレス」
『!?』
まさか自慢の息吹が返されるとは思っても見なかった
その一部始終を見ていたダフネとカサンドラは、さっきとは別の意味で信じられない物を見るような眼差しを俺と握っている《双魚理》に向けてくる。
「だ、団長……今、なにが、どうなって……?」
「見ての通りだ。ワイヴァーンのブレスを左手の剣で吸収して、柄尻の縄を伝って右手の剣から返してやっただけ。これがこの刀の────双魚理の能力だ」
「つまり、敵の攻撃を吸収して反射する剣……」
「そ、そんなの見たことも聞いたこともないわよ!」
「そりゃそうだ。今造ったばかりだからな」
「リリルカたちから団長は色々と規格外だと聞いてるし、ウチもこの半月で団長が如何に規格外な存在なのか分かったつもりだった。けど、これは最早そんなレベルを超えてる!なによ、敵の攻撃を吸収して、それを反射する剣って!『クロッゾの魔剣』と同等かそれ以上に規格外な代物じゃない!!」
「だ、ダフネちゃん落ち着いて!?」
《双魚理》について尋ねられたのでそれに対して説明すると、ダフネはまるでリリのように自分の常識が破壊されて行くことに発狂して、それをカサンドラが宥める。
「取り敢えず、これで分かったろう? 双魚理がある限りお前たちをブレスから守り続ける。だから、二人も頑張ってワイヴァーンを倒してくれ」
「…………嗚呼、もう分かったわよ!その代わり、もしも死んだらあの世でアンタのことを呪ってやるからね!!」
「わ、私はケンマさんのことを信じてます。ですから、危なくなったら私たちを助けてくださいね」
「任せろ。俺がお前たちの『最後の希望』だ!」
オリ主たちの新本拠地候補
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第六区画 『竈火の館』の近く
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第七区画 元ヘスティア廃教会
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西地区 豊穣の女主人の近く
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北地区 適当に