臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか? 作:黒牙雷真
正直、難産が過ぎて以前投稿してから一話も完成していないため気分転換に一話だけ投稿することにしました。
後は以前にも前書きか後書きに書いたかも知れませんが、返信等は私の気分と偏見によって返す時や返さない時がありますが感想等はありましたらコメントなどをお願いします。もしかしたら、読者の皆様からのコメントが今後の話のネタになったりモチベーションにも繋がるかもしれません。
〈Sideベル〉
「ベル……いや、【ヘスティア・ファミリア】団長ベル・クラネルに告げる。俺たち【ヴィクトリア・ファミリア】は今回の件に関しては不干渉とさせてもらう」
「えっ?ケンマ、どうし───ッ」
親友のケンマからそう告げられて、僕の頭は真っ白になる。けれど、ケンマの目と彼の後ろにいる彼女たちを見て直ぐに理解する。ケンマは【ファミリア】の団長として春姫さんたちを守ろうとしているのだ。
僕がやろうとしていることはその逆で、間違いなく【ファミリア】の仲間を、家族を危険に晒す行為だ。さっきもリリが言ってたように、僕の後ろにいる『ウィーヴル』を匿っているだなんて誰かに知られたら【ヘスティア・ファミリア】はオラリオ所か地上ではやっていけないだろう。
でも、僕はもう決めてしまった。決意を口にしてしまった。このウィーヴルの少女がどうして同族であるモンスターに襲われるのか、どうして僕たち人間の言葉を話せるのかを知りたい。神様に意見を聞いてみたい。あるいは教えてもらいたい。
「悪いな、ベル。俺は団長として背負ってるものがある、守らないといけない奴等がいる。だから、【ヴィクトリア・ファミリア】はこの件に関しては静観させてもらう」
「団長……」
「ケンマさん……」
「ケンマ様……」
ケンマの団長としての発言に、特にダフネさんとカサンドラさんは心底安堵した声を漏らし、春姫さんはケンマに親友である僕たちよりも自分たちの安全を選ばせてしまったことへの後悔と心配が混じったような声を漏らした。
「まぁ、でも、これはあくまでも【ファミリア】としての方針だ。個人的に協力するのはやぶさかではないぞ、ベル」
「えっ……いいの?」
「流石に表だって行動するのは出来ないけど、何かしらの手伝いくらいはやれるだろう。それに今の【ヘスティア・ファミリア】には春姫の件で借りがあるしな。ということで、ダフネ、カサンドラ、春姫、個人で動く分にはとやかく言うつもりはないが目立った事は控えてくれ」
数秒前の【ヴィクトリア・ファミリア】の団長としての眼差しから打って変わり、いつもの僕らが知っている親友の優しい瞳にケンマの目は変わっていた。
「はぁ……やっぱりウチらの団長も【リトル・ルーキー】と同じくらいのお人好しだよね」
「ですが、それがケンマさんの良いところだと、私は思います」
「私もカサンドラ様と同じ思いです。娼婦であった私を何の見返りもなく救ってくださった
ダフネさん、カサンドラさん、春姫さんの順でケンマの優しさを言葉にすると、ケンマは春姫さんの言葉を聞いて僅かに目を見張ると共に何か感傷深い表情をする。
もしかしたら、春姫さんが口にした言葉を先代赤龍帝であるヒョウド・イッセイも誰かに言われたことがあるのだろうか?
◇◆◇
〈???Side〉
「────不味いぞ、ウラノス」
暗闇が支配し、僅かな松明の明かりだけ照らす『祈祷の間』にて男とも女とも捉えられない独特な声が響き渡る。
「理知を備えるモンスターが、冒険者たちと遭遇した。今、『バベル』を出る」
「モンスターを連行しているのか?」
「いや、どうかな……水晶越しでは保護しているようにも見える」
「冒険者は誰だ、フェルズ」
「ベル・クラネル、【ヘスティア・ファミリア】。それとイシグロ・ケンマ、【ヴィクトリア・ファミリア】だ」
フェルズからもたらされた内容に、私は己の瞳を細める。
「都市を賑わす新人冒険者たち……
「どうする、ウラノス。【ヘスティア・ファミリア】と【ヴィクトリア・ファミリア】は良くも悪くも都市の注目を集め過ぎている。何か起きた後からでは───」
「処女神の眷属たちに一度は世界を救った『英雄』だ、我々が追う件の狩猟者たちではないことは間違いない。何より……」
私は台座に置かれた水晶の奥に浮かんでいる二人の少年の顔を見据える。
「見極めたい。処女神の眷属達と勝利の眷属達がどのような変化をもたらすのか……『彼等』の希望となりえるのか、否かを」
「…………」
私の神意を聞きしばらく沈黙した後、フェルズの頷く素振りと共にバチリッと松明が火の粉と共に弾ける。
「わかったよ、ウラノス。あなたの神意に従おう」
「『目』を放て。ベル・クラネルとイシグロ・ケンマ、双方の動向とモンスターの少女を監視しろ」
「ああ」
◇◆◇
〈Sideケンマ〉
あの後、俺たちが地上に帰還したのは深夜に迫ろうとしている時間帯で、リリが18階層でウィーネを連れて帰るに当たって帰還時刻を提案した通り、時刻が深夜に近いということですっかりと人気がなくなって簡単にウィーネをバベルから連れ出すことが出来た。
その後は、俺たち【ヴィクトリア・ファミリア】は表向きはウィーネに関して不干渉ということにしているので、ダフネとカサンドラの二人には先に拠点にしている宿屋に戻ってもらい、俺は団長として春姫の安全を考えてベルたちと【ヘスティア・ファミリア】の本拠地である『竈火の館』へと赴き、数日分の着替えと春姫の布団を持って俺が寝泊まりしている現在の【ヴィクトリア・ファミリア】の本拠地へと帰宅することにした。
「ただいま」
「た、ただいま戻りました」
春姫と共に本拠地へと戻ると、何の連絡も無しに深夜に帰って着た俺たちを心配して瞳の端に涙を溜めていたヴィクトリアとアルテミスが飛び掛かるように出迎えくれた。
「遅い!一体今まで何処をほっつき歩いていたの!!」
「全くだ!遅くなるならせめて事前に説明するか、何かしらの方法で私たちに帰りが遅くなることを報告しろ!!」
「悪いな、ちょっと………いや、かなり面倒な事に巻き込まれてな」
「ご心配をお掛けてして申し訳ありません、ヴィクトリア様、アルテミス様」
力一杯抱き締めてくるヴィクトリアとアルテミスに謝罪をしつつ自分たちの荷物を取り敢えず居間に置く。
そして二人が落ち着きを取り戻した所で、今日は春姫も一緒に帰って着たことにヴィクトリアが違和感を覚えて、理由を尋ねてくる。
「あら、今日は春姫も一緒なのね?ヘスティアの所に何かあったの?」
「んー、あったと言えばあったが、取り敢えず………アルテミス。ちょっと、こっちに座ってくれ」
「なんだ?」
これから話す内容は、アルテミスにとって許容できるものではないことは間違いなく。下手をしなくとも即座に弓矢を持って、『竈火の館』へ突撃をしかねないのでそれを防ぐために羞恥心を覚悟しながら彼女を椅子に座らせて、その後ろから抱き締めるようにして身動きを封じる。所謂、あすなろ抱きと呼ばれる格好である。
そんなことをいきなりやられたアルテミスは、心の準備もなく、突然背後から抱き締められ、身動きを封じられて彼女の中の羞恥心のキャパシティーがオーバーフローしたのか首から上が真っ赤に染まり、声も上擦る。
「お、おおおオリオン!? い、いいいいきなり何を────!?」
「悪いけどしばらくこのままの状態で、大切な話をするから我慢してくれ」
「は、話をするのは別に構わないのだが……さ、流石にこの体勢はその……お、オリオンの吐息が耳に掛かって……私の心臓が持ちそうにないのだが」
「実は俺もめちゃくちゃ恥ずかしい。てか、この体勢は大分腰にくるな」
「ならば、普通に座れば良くないかッ!?」
「それだとこれから話す内容を聞いて、間違いなくアルテミスは飛び出すから絶対にそれだけはさせないためにこうしてる」
「ッッ───それはどういうことだ、ケンマ?」
アルテミスの顔が羞恥心の顔から一気に武闘派の女神の顔へと変わったがそれを無視して、俺はヴィクトリアとアルテミスの二柱に今日のダンジョン探索であった下界の『未知』とやらを語り出すことにした。
まずは18階層でボールズのおっさんから19階層で異常発生した『ファイアーバード』討伐の冒険者依頼を受けたこと、標的の討伐中にベルが一人で遭難したこと、そしてベルが人間の言葉を喋る『ウィーヴル』を見つけたこと。
「「モンスターが……人間の言葉を……喋る?」」
「ああ。本来ならあり得ないはずなんだろうが事実だ」
「しかし、それだけでは私が飛び出す理由にはならないと思うが?」
人間の言葉を喋るモンスターが存在するという話を聞いてからアルテミスは顔を上げて、俺を見上げるようにしてそう言って来る。
しかし─────
「本題はここからだ。その喋るウィーヴルだが……ベル曰く、同じモンスターからも襲われていたらしい。当然、冒険者たちからもだ。それで……あろうことか、ベルはそのウィーヴルを保護しようと言い出した」
「「は?」」
「更に悪いことに、現在そのウィーヴルは神ヘスティアのいる『竈火の館』でベルたちに保護されている」
「ッッ────!!」
「だっ、落ち着けアルテミス!神ヘスティアの周りにはベルたちがいるから、もしものことがあっても直ぐに討伐される!」
「離せ、ケンマ!ヘスティアが、ヘスティアの側にモンスターが居るんだぞ!!」
やはり俺の予想通り、ウィーネがヘスティアの居る『竈火の館』で保護されていると聞いた途端、アルテミスは即座に飛びそうと動きだし、今も俺の拘束から逃れようと力一杯動いている。
それもそのはず、いくら知性を持つモンスターだと言っても、アルテミスからモンスターはモンスター以外の何者でもない。過去にアンタレスに喰われ、自分の『神の力』で眷属たちを皆殺しにされてる経験から神友であるヘスティアやベルたちが心配で仕方ないのだろう。
でも、先のことを考えると今のアルテミスをウィーネに近付かせる訳には行かない。どうにかして彼女の冷静を取り戻せないかと色々と手段を考えていると左手の甲から緑の光が点滅し、そこから残留思念としてブーステッド・ギアに宿った【アルテミス・ファミリア】の団長レトゥーサさんの声が聞こえてくる。
『落ち着いてください、アルテミス様!!』
「ッ────レトゥーサ?」
『御友神のヘスティア様の近くにモンスターが居て心配なされるのは分かります。ですが、私たちも件のモンスターについてケンマ殿の中からずっと監視していました。あれは我々が知っているモンスターとは少し異なります』
「それは人の言葉を喋るからか?」
『確かにそれもあります。ですが、決定的に異なるのは、あのウィーヴルはまるで自分が何者であるからすら分かっていない幼子のように私は感じました』
「……幼子……そうか……」
レトゥーサさんからウィーネは自分が何者であるからすら分かっていない幼子の様だと、そう例えられるとアルテミスから無理矢理にでも逃げ出そうとする必死さと力みが弱まった。
けれど、また飛び出さないという保証が今のアルテミスにはない。なので、そのままあすなろ抱きは継続するのだが、アルテミスが彼女を抱き締めている俺の手に自分の手を添えてきた。
「ヘスティアが司るのは『炉』、『家庭』、『秩序』。ならば、自分が何者であるかすら分かっていない迷子の幼子を彼女は放っては置かないだろう。それが例え、人類の敵であるモンスターであっても」
「まぁ、路地で路頭に迷っていたベルを初めての眷属にするくらい慈悲深い女神だし、神ヘスティアなら何とかなるだろう。そんな神ヘスティアには悪いが、俺たちは表立って【ヘスティア・ファミリア】に協力することはできない。もしも、あのウィーヴルのことが街の連中に知られれば俺たちにまで飛び火しかねないからな」
「分かっている。例え事情を街の子供たちに説明した所で誰も信じ───いや、受け入れはしないだろう。それだけ、人類とモンスターとの間には埋めることの出来ない深い溝が出来上がってしまっているのだからな」
アルテミスが完全に落ち着いた所で、夜も深まっているのでこれ以上は明日の早朝鍛練やらバイトやらに差し支えてしまう可能性があるので直ぐに寝ることにした。因みに春姫の寝床はアルテミスと共に居間で寝てもらうことにした。
流石に春姫から好意を向けられているとはいえど、歳頃の男女が同じ部屋で寝るのはかなり勇気がいるし、まだ誰かと恋仲になるつもりも覚悟もないのでケモ耳と尻尾をヘニャリと垂らす春姫には申し訳ないけど、アルテミスと共に居間で寝てもらう。
大事なことなので二回言いました。
オリ主たちの新本拠地候補
-
第六区画 『竈火の館』の近く
-
第七区画 元ヘスティア廃教会
-
西地区 豊穣の女主人の近く
-
北地区 適当に