臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

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灰被りの小人
第十八話


 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

「今日からいよいよ本格的に7階層に進出だね、ケンマ」

 

「だからと言って、あまりはしゃぐなよ? 前に防具の資金を集めるために少し無茶をした時、ベルはキラーアントをキラーアントと知らずに斬りかかろうしてヒヤヒヤしたからな」

 

「その説はご迷惑をおかけしました」

 

「全くだ」

 

 

俺とベルは、お互いに防具をしっかりした物に新調したことで本格的に7階層への探索が今日から始まる。それ故か、ベルは遠足を楽しみにしていた子供のようにソワソワしている。

 

そんなことを思っている俺も興味が半分、不安が半分といったところだろう。ゆっくりと他の冒険者の波に流れながらダンジョンへと向かっていると背後から声をかけられる。

 

 

「お兄さん、お兄さん!白髪と茶髪のお兄さん。初めまして、お兄さんたち。突然ですが、サポーターを探したりしていませんか?」

 

 

背後から俺たちに声をかけたのは、およそ身長はベルの腰より少し高いくらいで、顔を僅かに隠すようなゆったりとしていると少しボロボロのローブに身を包み、背中には全く身体に釣り合っていないほどバカみたいな大きさのバックパックを背負う少女がいた。

 

彼女のことを前世で知っている俺は、もうその時期なのかと一人で思っていると隣にいるベルからサポートについて訪ねられる。

 

 

「ねぇ、ケンマ。サポーターって、なに?」

 

「はぁ?」

 

「え?」

 

 

いきなりベルがすっとんきょうな事を言い出したことに、二人して唖然としてしまうが、そこでベルがサポーターについて知らないのは俺が原因なのではないかと結論が至った。

 

本来であれば、ベルはアニメ通り、今日までずっとソロでダンジョン探索に挑んでところへ、心配したエイナさんが「せめて、サポーターでも」と話の振り出しから始まって、ベルはサポーターについて知ることになる。

 

 

「すまないけど、キミからサポーターについて隣の奴に説明してくれないか? 要はキミを雇う前の面接だと思ってくれ」

 

「わ、わかりました」

 

 

押し売りサポーターこと、リリルカ・アーデーによるサポーター講義兼面接が行われている間、バレないように『聖剣創造』で腰に差している剣をいつのもの直剣ではなく小太刀へと上書きする。また、バックパックの中を探る動作をしながら新たにもう一本小太刀を創造する。

 

秒で剣の上書きと新しい小太刀の創造が終われば、俺も実際にサポーターから得られる情報を得るためにリリルカの講義をしっかりと耳に入れる。

 

 

「────と以上がサポーターという訳です。ご理解頂けたでしょうか?」

 

「うん。サポーターがどういう者なのかは良く分かったよ」

 

「俺も実際にサポーターからの話を聞けたお陰で、より理解を深めることができた」

 

「それでは改めまして、お兄さん、お兄さん。サポーターを探したりしていませんか?」

 

 

改めて、サポーターとしての自分を売り込むリリルカ。アニメの知識を抜きにしても、こちらとしては人手が欲しいので雇う方向で考えるが、ここは敢えてベルに投げてみることにした。

 

 

「ベル、お前が決めろ」

 

「えっ、僕!?」

 

「当たり前だろう。お前も団長なんだからサポーターを雇うか雇わないかくらいは考えろ。因みに俺はもう決まってる」

 

「それならケンマが決めればいいじゃない。ケンマだって、団長なんだからさ」

 

「そんなことを言ったら、このパーティーを作ったのはベルだろうが。ベルが俺を誘さわなれば、このパーティーは存在しなかったんだから」

 

「それは、そうだけど…………キミ、昨日のパルゥムの女の子だよね?」

 

「パルゥム?」

 

 

ベルが装備を新調したのと、このタイミングでリリルカが接触してきているのでアニメ通りであれば昨日の帰りにベルは、魔法を使っていない時のリリルカと出会っている。

 

そのため、彼女に小人族ではないかと訪ねてみるが頭を隠しているフードを取り払われると、そこには髪と同じ色をしてピョコピョコと揺れ動く獣耳があった。

 

 

「リリは獣人。犬人なのですが?」

 

 

リリルカが昨日出会ったであろう小人族ではなく、正真正銘の犬人であることが証明されると、ベルも思わずといった感じでリリルカの獣耳に触れる。

 

その光景を見て、俺は思わず「羨ましい、けしからん!」と思ってしまったのは仕方ないだろう。だって、リアルのケモ耳だぞ? 犬や猫は、耳を触ろうとすると怒るからあまり触れたことがない。しかし、ここは異世界で獣人族が実在する世界。一度は、その頭に付いているケモ耳や尻尾などに触れてみたいと思うのはオタクの性としか言えないのである。

 

そこで俺も便乗してリリルカのケモ耳を触れたい欲求に狩られるが、残念なことに俺の中にあるヘタレな理性がベルの奇行を止めるべく、羨みを込めた手でその頭を引っ叩いて、我を戻させる。

 

 

「あたっ」

 

「いい加減にしろ、ベル」

 

「ごめん」

 

 

我を取り戻しベルがやらかしたことで、結果的にアニメと同じようにリリルカを今日一日は雇い、三人でダンジョンへと潜ることになった。

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

サポーターとして、リリルカをパーティーに加えた俺たちは、彼女のサポートもあってか普段よりも快適にモンスターを倒すことだけに専念出来ていた。

 

けれど、それとは裏腹に戦闘スタイルを未だに模索している俺は、弱いモンスターでもたまにだが手間を取るが少々あったりもする。顕著に出るのが、二刀流という慣れない戦い方を始めた所為かクロス字に切ろうとすると小太刀同士が衝突したりするのだ。

 

 

『戦い方がぎこちないようだな、相棒』

 

(五月蝿いな!これでも必死に戦ってるんだぞ!?)

 

 

俺の戦い方がぎこちなさ過ぎるのを見かねたのか、ドライグが俺だけ聞こえるようなに話かけてきた。

 

 

(てか、約二週間前まで剣すら握ったことなかった一般ピポーだったんだぞ!? ぎこちなさが出るのは仕方ないだろう!!)

 

『それはイッセーも同じだ。あいつは、訳も分からずに初恋だった堕天使に殺され、悪魔へと転生させられた。それからは、ドラゴンを宿した者の宿命故か様々な騒動に巻き込まれ、成長していった。いずれ、相棒もそうなるだろう』

 

(まぁ、ベルとパーティーを組んでる時点で今後のアニメに出てきた騒動には巻き込まれるのは覚悟してるけどなッ!!)

 

 

今後の展開に億劫な気分になりかけながらもそれを振り払うようにモンスターの懐へと一歩踏み込み、下段から力一杯切り上げて、肉体を両断する。

 

残りのモンスターが一体になったところで、ベルの援護を信じながら【魔力操作】で魔力を使って脚力を強化、強化された脚力を使って高く飛び、更に身体を捻ってコマのように回転しながら二刀流小太刀で切り裂く。

 

 

「うおおおお!!」

 

 

そこまでやって俺は大きなミスを侵した。モンスターの身体を回転しながら切り裂くまではいいが、着地の練習をして来なかったので無様にも肩から地面に落下して、続けて頭も打ってしまう。

 

 

「あがっ!?」

 

「ちょっと、ケンマ大丈夫!?」

 

「大丈夫………着地に失敗しただけ………たん瘤出来てない?」

 

「多分、大丈夫だと思うけど………」

 

 

打ち付けた頭を擦りながらベルにたん瘤が出来てないか確認している間、リリルカは俺のことは心配いないと判断したのか、せっせとモンスターの残骸から魔石を回収している。

 

ベルにたん瘤の有無を確認してもらったら、小太刀を鞘に戻して、戦闘で乱れた息を整える。どうも、俺の中の価値観が前世のままのようで例えモンスターといえど刃物で肉を切る感触に慣れないようで、モンスターの肉を剣で断つ時には自然と心拍数や体温などが上がってしまう。

 

そのことをリューさんや『豊穣の女主人』の師匠方に相談したら、慣れるまでは仕方ないとバッサリと切り捨てられてしまった。早朝鍛練の時でも、女性に木刀を振ることに躊躇してしまう俺が慣れなんてものが来るのだろうか? まぁ、“人間は慣れる生き物“だと、前世で何かの本に書いてあった気がするから何とかなるかもしれないな……多分。

 

 

「少しよろしいですか、ベル様」

 

「なに、リリルカさん」

 

「申し訳ありませんがこちらのキラーアントなのですが…………」

 

 

リリルカに声をかけられたベルと共に、彼女の方へと顔を向けるとそこには先ほどの戦闘の最後辺りでダンジョンの壁から新たに生まれようとしていた初心者殺しの『キラーアント』をベルが回転蹴りで仕留めた個体が、リリルカの身長では届かない位置でダンジョンの壁に埋まっていた。

 

アニメでは、ベルの身長で丁度良いぐらいだったので小人族であるリリルカでは届かないの無理もない。

 

 

「あっ、ごめんね。それは僕がやるよ。キラーアントの魔石って、どの辺りのあるか分かるかな?」

 

「キラーアントの魔石でしたら、胴の浅い辺りにあると思います。そいつを回収したら今日はこれくらいしましょう」

 

「えっ、もう? 僕もケンマもまだ余裕があるけど………」

 

 

リリルカからここで引き返す提案をベルは難色を示したので、俺がリリルカの援護に回る。

 

 

「ベル、もしかして忘れたのか? パープル・モスの特性を」

 

「パープル・モスの特性………それって確か鱗粉には『毒』があって…………毒!?」

 

「そうだ、『毒』だ。エイナさんからパープル・モスと戦闘する時は、位置取りに注意するように言われてるはずだが?」

 

「あちゃー、すっかり忘れてたよ。だから、ケンマは壁を蹴った変わった動きをしてたんだね」

 

「そういうこと。本当は、小太刀を投げナイフみたく投げれば良いんだろうが当てられるほどの技量がまだないからな」

 

「ところで、『毒』ってどんな風に表れるのかな?」

 

 

ベルの問いに、俺が前世の知識から答えようとするがそれよりも先にリリルカが答えた。

 

 

「大丈夫ですベル様。パープル・モスの毒鱗粉は即効性ではありません。けれど、何度も浴びれば『毒』の状態が発生します。また、愚鈍なことにリリは解毒薬を切らしておりまして………早急にバベルへ戻って治療してもらうことをお勧めします」

 

「なるほど、だからリリルカさんはここで引き返すことを提案してくれたんだね。サポートがいるだけ色々と助かるなぁー」

 

 

リリルカとベルの会話が一度切れたところで、ここで地上へ引き返すか或いはまだ探索を続けるかの賛否を俺は二人に問うことにした。

 

 

「それじゃあ、リリルカの提案通りにここで切り上げる。で、いいか?」

 

「うん、問題ないよ」

 

「リリも問題ありません。それとリリことはリリと呼んでください」

 

 

 

 

○●○

 

 

 

 

「う~ん、【ソーマ・ファミリア】のサポーターかぁ……」

 

「何か、あるんですか?」

 

 

バベルで魔石の換金とベルの治療を行ったあと、毎度のことながらダンジョンから帰ってきたことをアドバイザーであるエイナさんに報告がてら、ベルがリリルカ改め、リリを今後もサポーターとして雇うのかの相談している。

 

俺は、ベルと違って前世のアニメでリリのことは知っているのでそこまで心配していないが今後の流れに何かしらの影響が出ないといえないので付いてきている。

 

 

「彼らは探索が中心の【ファミリア】で、少しだけお酒も売ってて、そこまでは普通なんだけど………皆、どこか必死なんだよね。どこか死に物狂いっていうか……」

 

 

エイナさんの言う通り、【ソーマ・ファミリア】の冒険者たちはある物を手に入れるために死に物狂いで金を稼いでいる。それを知っているのは、【ソーマ・ファミリア】の冒険者たちと前世の記憶がある俺だけだろう。

 

 

「それより、二人から見てどうなの? そのリリルカさんって子は?」

 

「はい!とってもいい子でした。お陰で今日はこんなに!」

 

「それにベルのストッパーにもなってくれそうです」

 

「ちょっと、ケンマ!それはないよー!?」

 

 

リリルカの評価を見せるかのようにベルは、革袋一杯に詰まったヴァリスをエイナさんに見せる。それを見たエイナさんは、笑顔でこう述べる。

 

 

「そっか、だったら私は反対しないよ。あとは、二人次第。最後はキミたちで決めないとね」

 

「ありがとうございます!それじゃあ」

 

「んじゃあ」

 

 

相談も終わったので、それぞれのホームへと帰ろうとエイナさんに背中を見せたところで彼女からベルへ静止の声がかかる。

 

 

「ん? あれ………ベルくん?」

 

「はい?」

 

「ナイフは、どうしたの?」

 

「え?」

 

 

そこまでのやり取りで、俺はリリがベルから《ヘスティア・ナイフ》を盗む展開があったなと一人で場違いなことを思い出していた。

 

ヘスティアから直接与えられ、製作費が二億ヴァリスの《ヘスティア・ナイフ》を落としたと勘違いしているベルは、次第に顔を真っ青に染め、そしてギルドで絶叫の叫びをあげる。

 

それからしばらく、ベルと共にダンジョン以外で今日通った道を記憶を頼りに探し回っていると小道から誰が飛び出してきてベルとぶつかる。けれど、咄嗟にベルは尻餅を付きながら何とかぶつかってきた人を受け止めていた。

 

その誰かとは、《ヘスティア・ナイフ》をベルから盗んだ張本人であるリリルカ・アーデであった。

 

 

「痛ってて…………り、リリ!?」

 

「うぅ…………ベル様?」

 

「そんなに慌ててどうしたんだ、リリ」

 

「ケンマ様まで!?」

 

 

バベルで別れたはずのリリと偶然再会すると、数秒もしないうちに食材をギリギリ一杯に詰め込んだ紙袋を片手に持ったリューさんが小道から走ってやってきた。

 

 

「………犬人?」

 

 

リリが魔法で犬人に化けていることを知らないリューさんは、パルゥムを追いかけていたはずが犬人になっていることに困惑しているようだ。

 

リューさんが困惑しているなか、少し遅れてリューさんと同様に紙袋を持ったシルも小道から現れた。

 

 

「そんな慌ててどうしたんですが、リューさん。それにシルを置いてくるほど急ぐなんて珍しいですね」

 

「いえ、手癖の悪いパルゥムと出会いまして、そのパルゥムを追いかけてきたのですが………イシグロさんは見てませんか?」

 

「いえ、見てないですけど…………」

 

「そうですか」

 

 

すみません、リューさん。今後の展開のためとはいえ、師匠に嘘を吐く弟子で、本当にすみません。

 

そう内心で、リューさんに謝っていると小道から現れたリューさんとシルの二人に《ヘスティア・ナイフ》を見てないかと訪ね始める。

 

 

「あ、そうだ!二人とも、上から下まで真っ黒なナイフを見かけませんでしたか!?」

 

「これですか?」

 

 

リューさんが懐から出して見せたのは切っ先から持ち手まで真っ黒なナイフ、まさしく《ヘスティア・ナイフ》である。アニメ通り、リリからナイフを取り返していたようで、自分の愛剣を目にしたベルは感極まり、そのまま勢いでリューさんの手を両手で握ってしまう。

 

 

「僕のナイフ…………うああああああぁっ!!」

 

 

流石のリューさんも勢い両手を握られて、空色の瞳を見開いてしまう。

 

 

「ありがとうッッ!!本っ当にっ、ありがとうございますっ!!」

 

「………クラネルさん、その、困る。このようなことを私ではなく、シルに向けてもらわなくては………」

 

「リュー、なにを言ってるの!?」

 

「あははは………」

 

 

アニメで見た展開に俺は苦笑いをするしかなかった。

 

何はともあれ、これでベルの愛剣《ヘスティア・ナイフ》は持ち主であるベルの下へと戻った。ベルの手に戻った際、ナイフは選ばれた者の手に戻ったことで武器としての命が蘇ったかのように僅かに《エクス・デュランダル》とは異なるプレッシャーを放った。

 

その後は、リューさんたちと分かれてから残ったリリに明日から正式にサポーターとし雇うことを話してから今日は解散することになった。

 

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
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