臆病な『赤龍帝』が冒険都市にいるのは間違っているだろうか?   作:黒牙雷真

19 / 176








第十九話

 

 

 

 

 

〈sideケンマ〉

 

 

 

 

 

「さぁ、何処からでもかかってきな!」

 

 

そう言ってくるのは、オラリオの中でも数少ないLV.6という歴戦の猛者であり、今は『豊穣の女主人』という飲食店の店主を勤めるミアさんで、その手には何故か木製のお玉が握られている。

 

しかし、木製のお玉といえど歴戦の猛者が使えばそれは武器へと変貌するのを俺は前世のオタク知識が知っているので侮ったりなどしない。

 

 

「それじゃあ、今回は最初から【プロモーション・クイーン】!!」

 

 

最初から全基本アビリティに超高補正をかけてくれる『女王』へと昇格してから『聖剣創造』で創造した木刀ではない真剣で、ミアさんへと距離を詰める。

 

ここ一週間で掴んで来た自分の間合いにミアさんが入ったところで、聖剣で斬りかかるもそのこと尽くをどういう訳か木製のお玉で捌いて見せた。

 

 

「なん……だと………お玉で剣を………」

 

「ほらほら、どうしたんだい。アタシはまだ、一歩も動いちゃいないよ」

 

 

言われずとも分かっている。聖剣をお玉で捌かれている最中、ミアさんはその場から動かず、片手を腰に当てながら楽々と対象していた。それだけでLV.1 とLV.6 との差を理解させられる。それに良く見れば聖剣を捌いてお玉には、傷らしい傷が一つも出来ていない。

 

つまり─────

 

 

「完全に封殺されてるってことかよ………」

 

 

最初からミアさんに勝とうなんて思ってはいない。けれど、何にもしないで終わるつもりもない。

 

 

「体は剣で出来ている────トレース・オン!!」

 

 

前世のアニメで『魔剣創造』や『聖剣創造』に似た剣を生み出す魔術を使う青年の台詞を口にしながら左手からスキルで魔力を放出しつつ『聖剣創造』で新たにもう一本、剣を創造する。

 

以前にも述べたが、こうすることで俺が何もないところから剣を生み出す『魔法』を持っていると勘違いしてくる。

 

 

「短文詠唱の魔法…………いや、違うね。魔力を感じたがあんたがやったのは『魔法』とは異なる………本当に何にもないところから剣を出した。あるいは、造ったってところかね」

 

「!?」

 

 

ミアさんの考察に、思わず冷や汗が垂れる。

 

 

『どうやら初見から見破られたみたいだな、相棒』

 

(みたいだな。ちょっと……いや、かなり初見では見破られないと思っていたんだけどなぁ)

 

『どうする? ブーステッド・ギアも使うか』

 

(いや、使わない。【プロモーション】に『聖剣創造』まで使ったんだ。これ以上、手の内を見せる訳にはいかない)

 

 

これ以上、手の内を晒さない以外にも、この後にはベルたちとダンジョンへ潜る。そのため、ブーステッド・ギアで必要以上に体力を消費するようなことはしたくない。他には、俺のちっぽけなプライドだ。

 

ドライグと心の中で会話したお陰で少しだけ冷静さを取り戻した俺は、二振りの聖剣を握る手に力を入れ直し、【魔力操作】で脚力を強化しながら再びミアさんへ突貫。

 

 

「はああああ!!」

 

「粋の良い踏み込みだ。嫌いじゃないよ!」

 

 

大きく懐へ一歩踏み出して逆袈裟を繰り出すもそれをミアさんは、お玉の持ちで聖剣の腹に当てて左へと受け流す。受け流されたのを感じた俺は、無理やり身体を捻り、左の聖剣で後ろへ回転斬りを仕掛けるがミアの親指と人差し指で受け止められてしまう。

 

何とか抜け出そう踠くが左手の聖剣はびくともしない。ならばと、前世から何度もイメージした通りに聖剣を手放し、さっきとは逆の右回転斬りを繰り出す。

 

 

「シッ!」

 

「フン!」

 

 

それはミアさんも読んでいたようで、俺が手放した聖剣で右回転斬りを相殺。聖剣同士が衝突したことで、聖剣は衝撃に耐えきれず砕ける。

 

聖剣が砕けるのは半分予想していた。だから、止まりはしない。そのまま、ルノアさん直伝の格闘戦に持ち込むと見せ掛けながら拳の握りは柔らかく、丸めた指の間には何と棒の様な物を差し込めそうなほどの空洞を作って置いた。

 

そして、拳がミアさんの顔に迫ったところで本命である『聖剣創造』で本日三本目の聖剣を創造して斬りかかる。

 

 

「これならどうだッ!!」

 

「へぇ、考えたね。でも、甘いよケンマ」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、眼前に人差し指を丸めた手が迫っていることに遅れて気付いたのも束の間、次の瞬間には額に今までの感じたことの激痛と身体が後ろへ引っ張られる感覚、僅かな浮遊感が襲いかかってきた。

 

 

『相棒、受け身だ!』

 

「ぐっ……!!」

 

 

ドライグの叫びを聞いて慌てて、身体を丸めると背中から地面に落ちたのか背中へ強い衝撃と痛みが走ったあと、何回か短い浮遊感があった。バトル漫画の如く、ミアさんの攻撃の勢いが強くて地面の上を跳ねたのだろう。

 

背中に受けた衝撃で、肺の中の酸素が強制的に吐き出されて低酸素状態に陥り、意識が混濁する中で頭だけは冷静に状況を把握出来ていた。

 

 

「ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!はぁっ、はぁっ、はぁっ………」

 

『大丈夫か、相棒』

 

「正直、キツいなぁ………。ただのデコピンでこの威力、どこのドタバタ忍法帳だよ………」

 

 

前世で見ていた忍者のアニメと同じ構図を受けて、思わず愚痴混じりにそう吐き捨てた。

 

 

「もう終わりかい? アタシはそれでも構わないよ」

 

「ッ!!」

 

 

ミアさんのその言葉を聞いた途端、俺は前世のことを思い出した。それに伴って、胸の奥から感情が爆発する。

 

前世で、俺には取り柄という物がなかった。常に常人の平均よりも下のラインにいた。周りの皆ができることを俺はかなり遅れてできるようになった。周りよりも覚えるのが遅い俺は、いつしか二次元創作に逃げた。

 

二次元創作ならば、理想の自分を描くことができる。その物語の中の自分は、英雄、勇者、ヒーローと何でも成れる。それに伴って、自分の分身と呼べるオリジナル主人公には色々なチートを持たせたこともあった。

 

ならば、今の俺はなんだ? 『赤龍帝の籠手』、『魔剣創造』、『聖剣創造』、《エクスデュランダル》、【プロモーション】、【魔力操作】、これだけのチートがあるのにここで終わるのか?

 

 

「いやだ………俺はまだ………まだ終わりたくない!」

 

 

こんなところで終わりたくないと思い、口にしてみると不思議なことに身体の奥からどんどん力が沸き上がってくる。

 

 

「俺は、あいつを越えるまでは終われないんだぁあああ!!」

 

 

近所迷惑上等で、感情を吐き出す。すると、その想いに呼応したのか、意識していないのに独りでに左腕の『赤龍帝の籠手』が具現化して、更に籠手が赤いオーラを放つ。

 

 

『Dragon booster second Liberation!!』

 

 

左腕から聞き覚えのある音声が聞こえたのを認識するのと共に俺の我は返ってきた。

 

 

「今のって…………あっ、やっぱり出ちゃったか」

 

 

具現化する気がなかった『赤龍帝の籠手』が見慣れた姿へと変化し、具現化していることに悔しさを覚える。自分から出すのでもなく、出さざるを得ない状況に陥ったのでもない、自分の意思とは別に無意識で出させられた。それが例え、パワーアップするためのものであっても悔しことには変わりない。

 

一人で悔しがっていると、ミアさんから『赤龍帝の籠手』について訪ねられる。

 

 

「なんだい、それは? 魔道具か何かかい?」

 

「ノーコメントで」

 

 

しかし、これで『赤龍帝の籠手』の第二の能力である『譲渡』を行使することができるようになった。更に、感覚を研ぎ澄ましてみれば先ほど感じた内側から沸き上がる力を感じることができるようになっていた。

 

この力は一体──────

 

 

『相棒が「譲渡」の力に目覚めたことで、龍のオーラが増し、今まで感じ取れなかった力を感じれるようになったんだろう』

 

(それじゃあ、これをそのまま魔力にして撃ち出したり出来る訳か?)

 

『そういうことだ。試しに、あのドワーフの女に撃ってみればいい。そうすれば、身体で理解できるはずだ』

 

(店が壊れるだろう!!って、怒られないかなぁ……?)

 

『だったら空にでも撃て、何もない空にだったら誰の迷惑にもなるまい』

 

(言われてみればそうだな。んじゃあ、空に撃ってみるか!)

 

 

新しい能力の覚醒と龍のオーラを感じ取れるようになった俺は、それを使ってみたくて新しい玩具を与えられた子供のように何にも考えず行動に移したことを後に後悔する。

 

ドライグのアドバイスとサポートを受けながら龍のオーラを練り上げる。そして、練り上げたオーラを左手に凝縮して、ふらふらと立ち上がりながら拳を空へと振り上げてオーラを放った。

 

 

「龍拳だぁああああ!!」

 

 

放たれたオーラは、初めてということあってイメージ通りの大きさよりも半分以下くらいの大きさになってしまったが、それでも一般ピーポー出身の俺からしたら大きいと思える赤い飛龍が咆哮を上げながら天を昇っていく。

 

やがて、肉眼では捉えられない高さまで赤い飛龍が飛んで行くのを見送ると全身のオーラを使ったのか今までに感じたことのない脱力感と倦怠感、両方がやってきてその場に尻餅を付いてから大の字に倒れてしまう。

 

 

「つ、疲れた………」

 

『身体中のオーラを集めた一撃だ。疲労を感じるのは当たり前だ』

 

(身体中オーラって、それってイッセーが禁手に至った時、黒歌に放つ技と同じやつじゃない? それを俺は、禁手に至ってもいない撃ってみせたのかよ)

 

『約一週間でブーステッド・ギアの第二の能力である「譲渡」に目覚めた。イッセーの時は、神器に目覚めてから二ヶ月くらいはかかっていたからな』

 

 

アニメや原作にも描かれていなかったイッセーがブーステッド・ギアを覚醒させてから『譲渡』の力を使えるようになるまでの期間をドライグから直接聞いて、改めて俺はイッセーよりかは才能があるのだと分かった。

 

加えて、さっき放った技は、名前こそ前世のアニメから引用したが技自体は俺だけのオリジナルの技だと思う。そのことに、ふつふつとした喜びを感じていると一人蚊帳の外にしていたミアさんが上から俺の顔を覗いてくる。

 

 

「ケンマ、さっきの一体なんだい? 速攻魔法に似ていたようだけど」

 

「あははは…………俺も初めてだったんで、しっかりと理解できる訳ではないんですけど、どう言ったらいいのか分かんないです」

 

「自分ことを自分でわからないなんて、それじゃ世話ないよ」

 

「………すみません」

 

「その様子だと、最後の一撃で体力を使い果たしたみたいだね。今日の鍛練はここまでにして、回復に勤めな。このあと、あの白髪の坊主とダンジョンに行くんだろう」

 

「はい」

 

「なら、少し休んでからいつも通り野菜の皮は頼んだよ。アタシは、厨房の仕込みに戻るからね。それから最後の一撃は良かったよ。腑抜けた剣よりも強い想いが込められた良い拳だった」

 

「ありがとうございます」

 

 

未だに脱力して動けない俺を一瞥してからミアさんは、裏口から店の中へと姿を消して行った。完全に裏口の扉が閉まるのを見計らってから目を瞑り、ドライグに語りかける。

 

 

(なぁ、ドライグ。さっきの技の名前はどうしようか?)

 

『龍拳ではないのか?』

 

(あれは、俺が撃った技とはまた別の技なんだよ。イメージとしては、飛龍系じゃなくてヴリトラやウー・ロンみたいな見た目の龍が拳から出てくるイメージなんだよ)

 

『なら、飛龍拳とでも名付けるか?』

 

(飛龍拳…………んー、元々俺はネーミングセンスとかないからな。ここは前世の戦隊アニメやカードアニメから引用して、擊龍拳なんてのはどうだ?)

 

『相棒が気に入ったのなら、それで構わないぞ』

 

(それじゃあ、擊龍拳に決まりだな)

 

 

こうして、俺は自分だけのオリジナルの技に名前を付けたのであった。また、最後のミアさんが言っていた言葉に何故か引っ掛かりを感じていた。

 

 

「腑抜けた剣、か………………」

オリ主たちの新本拠地候補

  • 第六区画 『竈火の館』の近く
  • 第七区画 元ヘスティア廃教会
  • 西地区 豊穣の女主人の近く
  • 北地区 適当に
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。